2021年はアフターコロナを視野に入れたコールセンターの運営が必要です。感染症などに左右されない持続性のあるコールセンターを運営するために、現在のトレンドを分析し、「課題」と「解決策」を導き出していきましょう。
後半では、業界ごとに分けてコールセンター最新トレンドを紹介するので参考にしてください。
CCAJ(一般社団法人 日本コールセンター協会)の「コールセンターワンポイントアンケート」と、コールセンタージャパン 2021年7月号(「新型コロナ禍の1年」を振り返る)をもとに考察していきます。
コールセンターが抱える課題と解決策
現在のコールセンターにおけるトレンドを分析すると3つの課題が見えてきます。解決策とともに解説します。
課題1:テレワークが定着しない
コロナ渦ではコールセンターへのテレワーク導入が加速的に進みました。CCAJの2021年5月から6月にかけて行われた「テレワーク」についての調査を見てみましょう。
過去3年間に実施した「テレワークをしたことがありますか?」について、答えは以下のとおりになりました。
2021年にオペレーターや管理者のうち80%以上がテレワークをしたことがあると答えています。2019年が40%だったことを考えると、多くのコールセンターがテレワークをコロナ渦になって初めて導入したことがわかります。
しかしワクチン接種が進み、新規感染が落ち着いてきた今、テレワークの実施率が落ちてきているようです。
「現在の勤務状況はとして最も該当するものはどれですか?」のアンケート結果を見てみましょう。
70%近くが出社していることがわかります。このことからコールセンターのテレワーク化が思うほど定着していないと分析できます。
なぜテレワーク化が定着しないのでしょうか。
システムのクラウド化がひとつの障害になっています。コールセンターのテレワーク化を本格的に進めていくには、コールセンターシステムをはじめモニタリングツールなどをクラウド化しなければなりません。
しかし運営側には、「システムをクラウド化すると情報セキュリティやシステム停止のトラブルが心配」という懸念があり、なかなかテレワークが定着しないのです。
情報セキュリティやシステム停止の問題を克服しながら、テレワークを定着させるには何が必要でしょうか。
解決策
解決策は、コールセンターのハイブリッド化です。
CXMコンサルティング代表取締役社長の秋山紀郎氏は、コールセンターのハイブリッド化についてこう分析しています。
「オンプレミス、クラウドの両基盤を並行的に運用する『ハイブリッド型』への以降が現実的な路線になると思います」
コールセンタージャパン 2021年7月号
コールセンターのハイブリッド化とは、コールセンターシステムを「オンプレミス」と「クラウド」の両方で運用することです。拠点となるセンターではオンプレミス、テレワークではクラウドといった使い方をすることが今後はトレンドになってくるでしょう。
コールセンターをハイブリッド化するのメリットは何でしょうか。
「在宅制度は、パンデミックだけでなく、地震や台風といった自然災害時においても『最強のBCP手段』である。先進事例各社は『コロナ終息後も、常に一定比率(30%前後のところが多い)は在宅でオペレーションし、BCP時にその比率を上げる』ことを念頭に入れて計画している」
コールセンタージャパン 2021年7月号
ハイブリッド化のメリットは、災害発生時に柔軟な対応ができることです。実際に多くのコールセンターでは、全体席数の2割から3割程度をテレワーク勤務、残りをセンター勤務にしています。
結果として、台風や地震といった災害のときにテレワーク勤務の割合を増やしてお客さま対応を続けていけます。
補足:クラウドコンタクトセンターシステムとは
テレワーク定着に、クラウドコンタクトセンターシステム導入は欠かせません。クラウドコンタクトセンターシステムとは、CTI、ACD、IVRなどがクラウド上で機能するシステムです。
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補足:テレワークのセキュリティ対策とは
テレワーク導入時に運営側が気になるのはセキュリティ対策です。「のぞき見による情報漏えいがこわい」「内部不正が起きるかも」といった不安を解消するのにモニタリングツールが役立ちます。
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補足:ソフトフォンとは
ソフトフォンとは、固定電話機やビジネスフォンといった専用機器を使わず、PCにソフトをインストールし、ネット回線を使って通話ができる電話のことです。テレワーク社員のパソコンやタブレットですぐに使用できます。
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補足:オンライン接客とは
テレワーク化にオンライン接客は欠かせません。オンライン接客とは、オペレーターとお客さまがビデオ通話で話すことです。最近は、複雑なシステムを必要とせず、ブラウザ上ですぐに話し始められるツールがあります。
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課題2:オペレーターが不安をいだきやすい
2021年にコールセンターで働くオペレーターは、不安をいだきやすい傾向にあると観察されています。「仕事がなくなるかも」「職場でコロナに感染してしまうかも」「テレワークしてるけど上司から評価されてるのかな」といった不安です。
解決策
オペレーターが安心して働けるようにするには、働きがいのある仕事環境を提供することが必要です。
働きがいのある会社研究所の代表取締役社長、荒川陽子氏はコールセンターがすべき施策について説明しています。
「コロナ渦やアフターコロナにおいて、経営陣はこれまで以上に『あなたの仕事の意味と価値』を語る必要があります。…例えばコールセンターならば、より上位のマネジメントが丁寧にやっていくべき」
コールセンタージャパン 2021年7月号
やりがいを感じてもらうための施策として、 表彰制度や他部門やお客さまからの感謝の声をオペレーターへ届ける制度などの仕組みづくりが大切になります。
さらに経営陣のオペレーターに対する評価や感謝の気持を動画を使って伝えることもできるでしょう。
現場のSVやリーダーにオペレータ管理を丸投げするのではなく、teamsのライブイベントやstreamを使って経営陣の言葉をダイレクトに伝える施策も重要になってきます。
補足:teamsのライブイベントとは
teamsのライブイベントとは、大多数の参加者にストリーミン配信が行える機能のことです。いわば規模の大きなウェビナーができる機能です。
課題3:労働人口の減少
コールセンターだけにとどまりませんが、労働人口の減少は大きな課題です。オペレーターの採用状況についてコールセンター白書2020年には、「全拠点でかなり厳しい」が19.1%、「拠点によってはかなり厳しい」が37.1%というデータが載せられています。半数以上のコールセンターが採用難の課題を抱えているのです。
解決策
労働人口の減少を解消する一つの方法は、アバター接客です。チャットやオンライン接客時に、対応するオペレーターが人間ではなくアバターが対応する方法です。
アバター接客のメリットについて、リブ・コンサルティング常務取締役の権田和士氏は以下のように解説します。
「誰が対応してもOKというサポートを実施すれば、例えば海外在住の日本人といったリソースも有効活用できます」
コールセンタージャパン 2021年7月号
アバター接客を導入することで、採用対象を日本国内から海外へと広げることが可能です。
別のアバター接客のメリットは、対人では言いにくいことをアバターに向かってなら言いやすいということです。
デジタルヒューマン代表取締役の荒尾和宏氏は、アバター接客の事例について説明しています。
「スイスの銀行の例では、チーフエコノミストをアバターのモデルに採用して、顧客の信頼を得る自動応答を実現しました」
コールセンタージャパン 2021年7月号
実際の人間に対応してもらうよりアバターに対応してもらったほうが、お客さまの信頼を得られるケースがあります。たとえば銀行で保険の契約をする際、人間には自分の病気について話しづらいと感じても、アバターに向かってなら言いやすいのです。
補足:アバター接客とは
アバター接客とは、対面接客やオンライン接客をする際に、人間ではなくアバター(キャラクター)が対応をすることです。すでに東急ハンズやワコールがアバター接客を導入しています。今後はコールセンターでも使用されていくことでしょう。
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コールセンターの業種別トレンド
コールセンターのトレンドを業種別に検証してみましょう。それぞれの業種の現状と課題、そして解決策について考えていきます。
1.金融業界コールセンターの課題
2020年から2021年の間に、ネット証券会社ではメールによる問い合わせが急増しました。緊急事態宣言による営業時間短縮で、電話による問い合わせができなかったお客様が増えたことが原因です。
たとえば18時までの営業時間が17時までに短縮になり、短くなった1時間の間に電話ができなかったお客さまがメールで問い合わせるようになったのです。
一例としてSBI証券ではどのような状況になったのでしょうか。
「問い合わせフォームからの1日あたりの問い合わせ件数は、コロナ前の通常稼働時はおよそ月間500件。コロナ以降は約1000件」になった。
コールセンタージャパン 2021年7月号
解決策
問い合わせ急増には、AI機能搭載の問い合わせ管理システムで対応するとよいでしょう。AI機能を使ってナレッジを強化することも効果的です。
問い合わせ管理システムにAI機能があると、FAQやメールの問い合わせに自動で返信してもらったり、返信のためのサジェストをしてもらったりすることができます。
補足:問い合わせ管理システムとは
問い合わせ管理システムとは、お客様からの問い合わせを一括で管理できるシステムのことです。最新の問い合わせ管理システムはAIやRPA機能を搭載しています。
2.ECサイトコールセンターの課題
コロナ渦ではECサイトの利用が急増しました。利用者増に合わせて問い合わせや決済処理が急進しています。
ECサイトのサポートセンターでは業務量が増えているため、従業員のストレスが高まり、離職者が後を立たないという課題が発生しているのが現状です。人材が不足するので、サービスの質が落ち、クレームやトラブルの発生率が高まる悪循環が生まれています。
解決策
新しい人材を雇うというのは、一つの解決策です。しかし年間の予算がすでに決まっているため、運用コストがそれを許さないコールセンターも多いでしょう。
実際的な解決策としては、限られた数の従業員で効率よく業務を行うことです。コールセンターの生産性を高めることがカギになります。
そこで役立つのがFAQ強化です。お客さまが自らFAQサイトを見ることで問題を解決できる導線を作ってください。
GMOペイメントゲートウェイではFAQ強化を実施した結果、課題の解消ができました。
「1ヶ月あたり4.6人分のリソースに相当する問い合わせを自己解決に導くことができた」
コールセンタージャパン 2021年7月号
従業員4.6人分に当たる業務をFAQ強化で実現したのです。結果として、各従業員の負担が軽くなり、離職率も大幅に改善しました。
補足:FAQ強化とは
FAQ強化とは、よくある質問のナレッジ情報をデーターベース化し、検索できるようにすることです。
AI機能搭載の問い合管理システムや、ビジュアルIVRでFAQへの動線を整えることで強化していけます。
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3.教育市場コールセンターの課題
コロナ渦ではオンラインで塾に通ったり習い事をしたりする需要が高まりました。一方で、顧客満足度を向上させる難しさも生じています。
たとえばFAQページで自己解決できない人がたらい回しにされるという課題です。コールセンターへ電話をすると、ビジュアルIVRへ飛ばされ、問い合わせ内容を入力していくと再びFAQページへ誘導されるといった状態です。これでは顧客満足度はアップしません。
解決策
解決するためには、ビジュアルIVRの導線を最適化することが必要です。
ビジュアルIVRへつながったお客さまに対し、チャットで早めに問い合わせ内容を吸い上げてあげる、オンライン接客ツールでお客さまが口では説明しにくい問題をビデオでチェックしながら解決してあげる、といった施策です。
お客さまのサポートにはMR技術を使った遠隔サポートツールが有効です。
補足:ビジュアルIVRとは
ビジュアルIVRとは簡単に言うと、IVRを見える化したものです。ビジュアルIVRであれば、お客様は音声ガイダンスを最後まで聞く必要がなく、ビジュアル化されたメニューを見るだけで、すべての選択肢を把握できます。
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補足:遠隔サポートツールとは
遠隔サポートツールとは、相手の映像へ入り込んでサポートできる製品です。複合現実(MR)技術を使い、2つの映像を合成して相手の画像の中へオペレーターの手や道具を入り込ませられる技術になります。アメリカの脳神経外科医によって開発された技術ですが、現在はアプリなどで簡単に利用できます。
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今後のBPO市場トレンド予測
最後に、2021年以降のBPO市場のトレンドを予測します。
デロイト トーマツ ミック経済研究所の主席研究員、竹田啓一氏はBPO市場の動向について以下のように分析します。
「2020年以降は年平均成長率5.7%で推移するとみており、2023年度には1兆円を超え、2024年度は1兆700億円まで市場は拡大すると予測しています」
2021年度はBPO市場規模が引き続き拡大していく見込みです。コロナ終息後におけるコールセンターのトレンドについてはこう語ります。
「今後はBPOベンダー同士だけでなく、ITベンダーとも協業しつつ“競合”という関係になる可能性が高い。テレマーケティング以外のビジネスと融合したスキームを軌道に乗せた会社が、アフターコロナの勝ち組になるのではと思います」
コールセンタージャパン 2021年7月号
今後はアバター接客、オンライン接客、AIお問い合わせ管理システムなどのITベンダーがますます注目されていくでしょう。
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最後に
現在のコールセンターにおけるトレンドは、テレワークの定着を図ること、オペレーターの不安を解消すること、労働人口の減少に対応することです。それぞれのトレンドに対応するためには、クラウドコンタクトセンターシステム導入やオンライン接客ツールの導入が必要になってきます。
「アフターコロナを見据えてコールセンターをどう運営したらよいかわからない」「何から手を付けるべきかわからない」ときには、コールセンターのハイブリッド化からまず手を付けてみましょう。
「どんなツールを導入すべきか知りたい」際には、コールセンター製品のベンダーとして15年の実績があるCBAへお気軽に相談してください。しっかりサポートさせていただきます。
最新のトレンドを押さえて、アフターコロナを勝ち抜くコールセンター運営をしていきましょう。