小売業界は2020年から2021年にかけて大きな変化を経験してきました。
大手コンサルティング会社Deloitteは、2020年初頭に「今年は『不確実性』が重要なキーワードになるでしょう」と述べていました。パンデミック前の言葉とはいえ、「不確実性」は小売業界の現状をうまく表しています。
コロナ渦の影響が強くなった2020年3月以降、消費者のショッピングの方法は変化し続けています。

パンデミックの荒波に取り組んでいるリテール(小売業)の担当者は、「2021年は小売業界にとってどんな年になるのだろうか」「今後、小売業界のトレンドがどう変化するのか知りたい」と思われるかもしれません。
まず現在の小売業界の動向をチェックし、今後のトレンドについて分析していきましょう。

2020年以降の小売業界の動向

過去10年間、Eコマースは小売業界でマーケットシェアを拡大してきました。
しかし2020年以降は、オンラインショッピングが便利なショッピングツールの一つから、ほぼ唯一の選択肢に変化してきています。

これまでオンラインで買い物をしたことがなかった多くの人が、2020年に初めてオンラインショッピングを利用しました。特に、高齢者が買い物の習慣を変化させています。米国Mintel社の調査によると、65歳以上の43%が、パンデミックが始まってからオンラインでの買い物を増やしています。

オンラインショッピングの一般化は、小売業者のデジタル化を加速させます。IBMの「2020 US Retail Index Report」によると、パンデミックの影響で、デジタル化が5年ほど早く進んだと報告されています。事実、実際の店舗が閉鎖されるロックダウンが各国で実施される中、オンラインショッピングのチャネルを持たない小売業者は苦戦を強いられました。

現在、小売業者の間でEコマースの導入と改善をめぐる競争は激化しています。これからも続く競争の中で、他社と差別化するには何が大切でしょうか。消費者が求める3つのニーズに対応することです。

  • 利便性
  • 商品を直に見る
  • 店員との会話

消費者はEコマースの利便性を求めているのは当然のことながら、実店舗で商品を見たり、店員と会話をしたりしてブランドとの関わっていくことを求めています。

しかしオンラインの店舗で、実店舗のようなカスタマーエクスペリエンスを実現するのは簡単ではありません。Eコマースでは人間味のある接客が欠けてしまいがちです。そこで2021年以降は、Eコマースでありながらも、実店舗のようなカスタマーエクスペリエンスを実現することが他社との差別化につながっていくでしょう。

2021年以降の小売業界が取り組むべき5つのトレンドとは?

小売業界が目指すのは消費者のニーズに答え、期待を超えたサービスを提供することです。
しかし「カスタマーエクスペリエンスを向上させるために何をしたらよいかわからない」「何から取り組んだらよいかわからない」と感じるかもしれません。
そこで2021年以降に小売業界が取り組んでいくべき5つのトレンドについて取り上げます。消費者、企業の戦略、そしてテクノロジーのトレンドを解説していきます。

1.オンラインと実店舗のギャップを埋める

カスタマーエクスペリエンスの向上を達成するために、オンラインと実店舗におけるサービス、ショッピングエクスペリエンスのギャップを埋めることが必要不可欠です。しかし多くの企業がこの点で苦戦しています。

パンデミックの前からリテール業界では、カスタマーエクスペリエンスが最重要課題となっていました。2018年、65%の消費者がコンサルティング会社PwCに対し、「ポジティブなカスタマー・エクスペリエンスは広告よりも影響力がある」と回答しました。また、4分の3近く(73%)の人が、購入を決める際には、カスタマー・エクスペリエンスが重要な役割を果たしていると答えています。

カスタマーエクスペリエンスの向上は、小売り価格の点でも有利に働きます。小売業者が満足の行くサービスを提供してくれるのであれば、消費者は平均価格より16%高くても購入したいというデータがあるのです。

そのため多くの小売企業がカスタマーエクスペリエンスに投資しています。米国Forrester社の調査によると、70%の小売企業が2020年に向けてカスタマー・エクスペリエンスの予算を増やしました。しかし個人の顧客に最適化されたサービスを提供することに苦労している企業が51%、リアルタイムの接客管理がうまくいかない企業が46%となっています。

企業は予算を増やしているにも関わらず、消費者が期待するカスタマーエクスペリエンスが実現できていないのが現実です。

2021年はこの課題がますます深刻化するでしょう。パンデミックによって多くの消費者がオンラインショッピングを利用するようになり、パンデミック後も継続して使っていくと考えられます。従来は店舗での買い物を楽しんでいた人が、オンラインへ移行し、オンラインでも満足できる体験を期待しているのです。

オンラインと実店舗のギャップを埋めることが、小売業界が取り組むべき最重要課題となっています。

2.対話型AIの活用

オンラインでのカスタマーエクスペリエンスに貢献するのが、対話型AIの活用です。

PwCの調査によると、4分の3の人が買い物をするときに、人と関わり合うことを求めています。オンラインショッピングの利用が増加している傾向を考えると、これは意外な結果に思えるかもしれません。しかし多くのECサイトを見ると、たしかに人と人とのつながりが欠けていることがわかります。

特に今、消費者が求めているのは人との交流です。ロックダウンやソーシャルディスタンスによって家族や友人との過ごす時間が減っているため、誰かと感情的なやり取りをしたいというニーズがあるのです。

AIを使うことで顧客のニーズに直接的、また間接的に答えていけます。たとえばAIを使って注文や在庫の管理を行い、従業員自身がダイレクトに顧客へサービスできるよう環境を整えている企業があります。さらに対話型AIを利用したチャットボットやアバターを導入し、間接的に顧客と対話ができるように投資している企業もあります。

2021年は対話型AI自身が接客をするデジタルヒューマンの活用がより進んでいくかもしれません。今後は対話型AIを使った接客をウェブサイトやアプリといったチャネルで使う企業が増えてくるでしょう。

(デジタルヒューマンのコロナ渦における接客ニーズについて以下の記事からもご覧いただけます)

最近の世論調査によると、42%のリテールブランドがチャットボットに親しみやすさが加わるような進化を望んでいるとわかりました。顧客がプロダクトを購入する際に、AIを使ったサービスを利用しつつも、人間的な暖かさを感じるヒューマンエクスペリエンスが、今後の小売業界で求められていくと読み取れます。

(小売業における対話型AIについて詳しく知りたい方は、Digital Human Day 2020でベライゾン社のCXイノベーション担当VPであるJabari Simmons氏に行ったインタビューをご覧ください)

3.XRソリューションの導入

2021年はXRソリューションが本格的に普及する年になるかもしれません。XRとはExtended Realityの略で、現実と仮想世界の距離を短くさせる技術のことです。厳密に言うとXRソリューションには3つの技術が含まれます。

  • バーチャルリアリティ(VR)
  • オーグメンテッドリアリティ(AR)
  • ミックスドリアリティ(MR)

上記の技術はすでにゲームや映画などの業界で使用されているので、耳にしたことがあるかもしれません。3つの技術を組み合わせて企業活動を行っていく施策のことをXRソリューションと呼びます。

近年、大手小売企業はXRソリューションを実験的に導入してきていますが、消費者のオンライン化が進む中、中小企業にとっても必要不可欠な施策となってくるでしょう。

XRソリューションの活用事例をいくつか紹介します。

  • 化粧品メーカー: 試供品をバーチャルで試せるサービス
  • ファッションブランド: 仮想現実で試着ができるサービス
  • 家具メーカー: デジタルストア

すでにXRソリューションを活用している業界は、顧客にステイホームでも便利なショッピング体験をしてもらうことで、ブランドと顧客とのエンゲージメントを向上させています。

Nielsen社の調査によると、消費者の51%は「XR技術を使って製品やサービスを試してみたい」と答えており、XRソリューションへ非常に高い関心を示していることがわかります。2021年もCOVID-19による衛生面の懸念は変わらないでしょう。小売業者は店舗を訪れる何人もの顧客が同じ商品を触るリスクを減らすため、XRや同様のサービスを提供することが期待されます。

消費者レベルでは、XRソリューションを使ったハードウェアの導入や活用には時間がかかると思われますが、年内には企業レベルでXRの話題が増えてくるかもしれません。

4.非接触型のショッピング体験を加速

パンデミックによって人々は自分が触るものに敏感になっています。そのため小売業界は非接触型のショッピング体験を加速させていかなければなりません。

実は数年前から、音声操作で買い物ができるシステムの開発や導入が一部の業界で進んでいましたが、これから3年以内には音声アシスタントが消費者に急速に受け入れられるようになるでしょう。来年には音声アシスタントを使った小売の取引額は、世界で400億ドルに達すると言われています。

音声アシスタントを新たなブランディングの機会とみなす企業も出てきています。自社ブランドの音声サービスをブランディングに貢献するために、どのようなフォーマットで顧客へ届けるか模索しているのです。SNSの専門家、ブランドマネージャー、広告代理店が音声アシスタントを使ったマーケティングに、より一層取り組んでいくでしょう。

音声認識デバイスを使ったショッピング体験は、今まで以上のヒューマンエクスペリエンスを利用者に提供します。文字だけでは伝わらない感情、意味、共感、温かさ、親しみやすさを音声では伝えられるからです。今までEコマースが弱かった人間味のあるサービスが、音声アシスタントを使って実現できるのです。

もし音声アシスタントと人間味のあるビジュアルのデジタルヒューマンを融合させるなら、質の高い非接触型のショッピング体験を消費者に提供できるでしょう。

5.オムニチャネル・ショッピングの実現

2020年には多くの人がオンラインショッピングを利用しましたが、複数のチャネルを使ったオムニチャネル・ショッピングも体験しました。つまりオンラインで購入し、実店舗で品物を受け取るというスタイルです。2020年4月だけでも、BOPIS(Buy Online, Pay In Store)の購入額は、6週間で34%増加しました。

オムニチャネル・ショッピングの利用者のうち59%がBOPISを継続したいと答えています。また、米国の消費者93%が、「休暇中はオンラインで購入した商品を店舗で受け取りたい」といったデータもあります。理由は、「配送が混み合って商品の到着が遅れることがない」、「送料がかからないので安くなる」からです。

ここで取り上げた例はオムニチャネル・ショッピングの一例です。しかし上記の調査結果を見ると、消費者は買い物のために複数のチャネルを利用することを面倒と考えていないことがわかります。

優れたオムニチャネル・ショッピングを実現するには、すべてのチャネルで質の高いブランディングとサービスを行っていかなければなりません。主に以下の3つの顧客との接点において、カスタマージャーニーを実現する必要があります。

  • 広告
  • WEB
  • 店舗

顧客との最初の接点になる広告は、ターゲットのニーズや感情、そして価値観へ訴えるものでなければなりません。次に広告を見てWEBを訪れた消費者が、自分の期待通りのサービスを受けられることが必要です。最後に、WEBで購入した品物を店頭で受け取ったときに、もう一度利用したいという気持ちを持ってもらう必要があります。

2021年に消費者に訴えるオムニチャネル体験を提供できない小売企業は、重要な市場シェアを競合他社に奪われる危険性があるでしょう。一方、卓越したオムニチャネル体験を実現すれば、どの接点でも顧客の感情を揺さぶる体験を提供することができます。オムニチャネル・ショッピングでカスタマーエクスペリエンスを実現できれば、顧客はずっとサービスを利用し続けてくれます。

最後に

コロナ渦のため2020年は小売業界にとって厳しい時間でしたが、多くの企業は懸命に対応してきました。

小売業界がいずれは訪れると予測していたデジタル化のトレンドは急速に実現しています。対話型AIやオムニチャネル・ショッピングへのシフトは加速していくことでしょう。

リテールの方法は変化していきます。しかし人間味のある温かい体験が好きという消費者の本質的なニーズは変わりません。孤立がクローズアップされた2020年を経て、2021年は一層ヒューマンエクスペリエンスが必要とされていくと予測されます。

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参考:https://digitalhumans.com/blog/top-digital-retail-industry-trends-for-2021/