ECサイトを運営していて「最近売上が減っている」「リピーターが減っている」と感じることはありますか。もしかしたらお客さまの問い合わせ対応がうまくいっていないのかもしれません。

ECサイトの問い合わせ対応が、お客さまにとって満足できる内容でなければ商品の売上は下がってしまいます。

今回は、ECサイトの問い合わせ対応が重要な理由や、よくある5つの失敗例について解説します。最後にはお客様に満足して頂ける問い合わせ対応のコツも紹介するので参考にしてください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

ECサイトの問い合わせ対応が重要なのはなぜ?

「お客さまからの感謝の声が減っている」「満足度のアンケートで点数が低い」ときには、お客さまが問い合わせ対応に不満を持っているのかもしれません。ECサイトの問い合わせ対応にお客さまがストレスを感じることは売上減につながってしまいます。

しかし問い合わせ対応を向上させるには、業務プロセスの見直しなど時間とコストを掛けていかなければなりません。「大変だから改善は後回し」になってしまわないように、どうして顧客対応の品質向上に今注力すべきなのか考えてみましょう。

2つの問い合わせカテゴリ

問い合わせ対応の品質を向上させるには、まず問い合わせをカテゴリごとに分けることが大切です。「購入前」と「購入後」の2つのカテゴリに分けてみましょう。

購入前

購入前の問い合わせは以下の内容が多いです。

  • 購入を検討している商品
  • 商品の色やサイズ
  • 注文後の納期
  • キャンペーン施策
  • セール対象商品
  • クーポン利用
  • アウトレット商品の欠陥

購入後

購入後に多い問い合わせ内容については、株式会社ネオマーケティングが2021年に実施したリサーチから知ることができます。

株式会社ネオマーケティング調べ

商品購入後に問い合わせる内容の第一位は「発送/到着連絡」です。注文した商品の到着を首を長くして待っている顧客心理がわかります。

一方、お客さまが受けたいと希望するサポートの一位は「修理・故障の対応」でした。2位と4位に「商品交換」「購入代金の返金」が入っていることから、購入後に希望するサポートは、商品の保証に関する部分が多いとわかります。

ECサイトでは商品を直に見て触っていないため、思い切って購入した商品に対する手厚い保証をお客さまが希望していると分析できます。

ECサイトの問い合わせ対応が重要なワケ

購入前と購入後に多い問い合わせ内容がわかりました。頻度の多い問い合わせに十分な対応ができるよう準備すべきなのはなぜでしょうか。問い合わせ対応が重要なワケは3つあります。

  • 口コミの評価向上
  • カスタマーエクスペリエンスの充実
  • 売上アップ

それぞれの理由を解説します。

口コミの評価向上

問い合わせ対応の品質を向上させることで口コミ評価が上がっていきます。ECサイトにおける口コミの重要性は年々高まっています。NTTレゾナント株式会社の「購買行動においてクチコミが与える影響」というアンケートを見てみましょう。

「クチコミが購入の決め手になるか」

口コミが購入の決定打になるかの問いに8割の人が肯定的に答えました。ECサイトの売上に口コミが大きな影響を与えるとわかります。

口コミには、他の人にブランドや商品を勧める効果があります。サービスを利用したお客さまが適切な問い合わせ対応を受けられれば、そのお客さまが口コミで満足した対応についてコメントしてくれます。結果として、口コミを読んだ人は、そのブランドを信頼したり商品を安心して買えると感じたりしてくれるのです。

補足:問い合わせ対応の重要性について知るため、以下の調査結果も参考にできます。

株式会社ネオマーケティング調べ

カスタマーエクスペリエンスの充実 

頻度の高い問い合わせ内容は、わざわざ問い合わせてこなくても自己解決できるようにしておけます。自分で答えを見つけられる導線を作っておけば、お客さまは問い合わせに費やす時間と量力を節約できます。つまりカスタマーエクスペリエンスの充実を図れるのです。

たとえば、購入後に多い問い合わせ内容の「発送/到着連絡」「商品交換」「修理・故障の対応」に関する情報を、お客さまが発見しやすいようにしておけます。

次の3つの方法を試してみてください。

  • FAQの上位に頻度の多い質問を設置する
  • 商品ページに補足情報として記載する
  • 文字のデザインを目立つようにする

上記のような工夫をし、カスタマーエクスペリエンスを充実させていきましょう。

問い合わせ対応で売上アップ

購入前の問い合わせをするお客さまは、購入を検討している人です。見込み客であるため、丁寧な対応をすれば高い確率で購入を決定します。売上アップにつながる人なのです。

しかし、対応が遅くなったり不十分であったりすると購入する確率は下がるでしょう。

不十分な問い合わせ対応は見込み客に「買わない理由」を与えていることになるので気をつけてください。

購入後の問い合わせ対応は、リピーターを作れるかどうかを左右します。

しかし購入後の問い合わせにどこまで対応するかは迷うところです。一度使用された商品の交換や修理対応をどこまでするかに正解はありません。

前述した購入後に関するアンケートでは、お客さまが希望するサポートの上位に「修理・故障の対応」「商品交換」が含まれていました。つまり「購入した商品をまだ使い続けたい」との意思が表れているのです。

もし丁寧な対応をするならお客さまに満足していただけます。

リピーターになってもらえるかもしれませんし、口コミ投稿で見込み客を創出してもらえるかもしれません。

いずれにしても売上アップにつながっていくことを覚えておきましょう。

ECサイトの問い合わせ対応がうまくいかない理由5つ

「問い合わせ内容が重要であることは知っている、いろいろ試しているが実際の業務はうまく回らない」「顧客対応でどうしてもミスが頻発してしまう」。このような場合、なぜ業務が非効率になってしまうのか考えてみましょう。

ECサイトの問い合わせ対応がうまくいかない理由を5つ取り上げます。

同じ問い合わせが多い

「似ている問い合わせに、担当者が毎回対応しなければならない」が非効率の理由になっている場合があります。よくある問い合わせは頻度と数が多くなるため、担当者がより重要な質問に対応する時間や複雑な質問を調べる時間を奪ってしまうのです。

返信時間が長い

返信時間が長くなるとお客様のストレスは高まり、クレームに繋がりやすくなります。するとクレーム対応に担当者の時間が割かれて、他の業務がうまく回りません。

クレームが多いカスタマーサポートでは離職率が高くなり、人員不足が発生し、返信時間がさらに長くなる悪循環が生まれます。

対応漏れ・二重返信 

問い合わせ対応をするチームの人数が多かったり、パートタイマーが細切れのシフトで働いていたりすると意思疎通がうまくいかず、対応漏れや二重返信が発生します。リモートワークを導入しているECサイトや、顧客対応を外部へ委託している企業でもコミュニケーション不足によるミスが頻発することがあります。

対応状況がわからない 

問い合わせ内容が少ないときにはOutlookなどの無料メールアプリで対応できますが、一日の問い合わせ件数が20件以上になってくると効率的な対応が難しくなります。それぞれの対応状況がわからなくなってしまうからです。

問い合わせ対応をする担当者が3名以上でも、お互いのタスク状況を共有することが難しくなります。

ナレッジの共有ができていない 

複雑な問い合わせ対応をベテラン担当者に依存してしまうと、その担当者が休暇のとき、退職したときに誰も対応できなくなってしまいます。これでは問い合わせを受け取った後に適切な担当者を探すのに時間がかかってしまいます。社内でナレッジの共有ができていないことが業務の非効率化の原因になるのです。

ECサイトの問い合わせ対応を成功させるコツ

問い合わせ対応業務が効率的でない理由が判明したのであれば、以下の方法を使って解決できるでしょう。ECサイトの問い合わせ対応を成功させるコツ7つをご覧ください。

  • チャットボットの活用
  • FAQを充実させる
  • スタッフの増員
  • ECサイトの改善
  • 問い合わせ管理システムの活用
  • ナレッジの共有
  • 情報管理の一元化

それぞれの方法について説明していきます。

チャットボットの活用 

同じ内容の問い合わせが多い場合、チャットボットを活用して効率的な対応ができます。「発送/到着連絡」が購入後の問い合わせで一番多いですが、一次対応をチャットボットへ任せてしまえば効率的に対応できます。

「発送/到着連絡」の対応で難しいのが、個人の特定と商品の特定です。注文番号やアカウントで特定する仕組みを作ってください。

FAQを充実させる 

FAQや「よくある質問」を充実させることで、お客さまが自己解決できるよう誘導できます。FAQの内容がよく整理されるとAIチャットボットの運用がしやすくなります。AIチャットボットにFAQを学習させ、チャットボット自身がお客さまの質問に柔軟に応えてくれるようにできます。

▶補足:FAQコンテンツ作成についての参考情報

「FAQの量が膨大になるとかえってお客さまが見づらくなるのではないか」と感じるかもしれません。使い勝手のよいFAQの作り方について、コールセンタージャパン2022年4月号には次のように説明されています。

「“検索リテラシー”が高くない顧客でも解決できるようにするには、FAQサイト内に自然文検索が可能な検索エンジンを実装する、対話形式で要件を絞り込めるチャットボットの活用などが有効だ」

コールセンタージャパン2022年4月号

FAQに検索窓を設けたり、チャットボットを設置したりして使い勝手を向上させられます。

よく使用される検索キーワード一覧を検索窓の横に表示させておくこともできるでしょう。

担当者の増員 

拠点が都市部であったり人員計画に余裕があったりするケースでは、問い合わせ対応の担当者の増員を検討してください。担当者を増やすことで、各人員の負担を軽減できます。

担当者を増やす際には、情報の共有ができるように問い合わせ管理システムなどのツールを活用してください。

新たな人員には顧客対応の基本的なパートを担当させ、ベテラン担当者には新たなツールの導入や運用を任せることができるかもしれません。

ECサイトの改善

「担当者の増員は難しい」と思っても安心してください。担当者を増員しなくてもECサイトを改善すれば、効率的な問い合わせ対応ができるケースがあります。

前述したFAQコンテンツの充実だけでなく、購入ページの見やすさも工夫してください。次のような施策を試せるかもしれません。

購入後に多い「発送/到着」に関する情報を購入ページに見やすく表示する                

「商品交換」についての説明を注文確認メールにわかりやすく掲載する                  

「文字が小さすぎる」「下の方に書いてある」「プルダウンですぐ表示されない」など見にくいデザインになっていないか確認

問い合わせ管理システムの活用

問い合わせ管理システムやメール共有アプリを活用することもできるでしょう。ツールの導入にコストはかかりますが、担当者を増員するより安価で業務を効率化していけます。

最新のAI問い合わせ管理システムでは、AIが過去の履歴や関連情報を担当者へ表示してサポートしてくれます。問い合わせ内容を分析し、過去に対応経験のある担当者へ優先して割り当てることも可能です。

米国のFedEx社やオデッセイ社で導入されている最新の問い合わせ管理システムは、荷物の追跡を自動化させ、問い合わせの平均処理時間を50%短縮させました。

ナレッジの共有 

これまでECサイトの問い合わせ対応で扱った内容を蓄積し、ナレッジの共有をすることは大切です。FAQコンテンツでナレッジを共有することや、問い合わせ管理システムのAIで共有することができます。

最新のAIは日々の問い合わせを分類し、カテゴリやタグごとにナレッジを保管してくれます。必要なときに各担当者はナレッジを検索できますし、AIが関連するナレッジを自動表示してくれます。

情報管理の一元化 

ECサイトで問い合わせ対応をするためには、お客さま情報、注文情報、配達情報、ナレッジといった様々な情報にアクセスしなければなりません。それぞれの情報で違うシステムを使用していると返信に時間がかかってしまいます。問い合わせ管理システムなど、一つのシステムですべての情報を確認できるようにしてください。

問い合わせチャネルが電話やメール以外に、SNSやチャットなど複数になる場合には、全てのチャネルから寄せられる問い合わせを一元管理できるオムニチャネル機能付きのシステムを選ぶ効果的です。

最後に

ECサイトの問い合わせ対応を向上させていくことは急務です。なぜなら問い合わせ対応の品質向上によって口コミ評価が高まり、カスタマーエクスペリエンスの充実につながっていくからです。結果として見込み客やリピーターを増やし、ECサイトの売上は向上していきます。

自社の問い合わせ対応を改善するために、本記事で取り上げた「よくある失敗する理由5つ」と「解決策7つ」を参考にしてください。

「とりあえずどの解決策に取り組んだらよいかわからない」ときには、まず課題の把握からスタートしましょう。購入前と購入後にどのような問い合わせが多いのか洗い出してください。そうすると、FAQの作り直しだけでよいのか、チャットボットや問い合わせ管理システムなど新たなツールが必要なのかが見えてくるでしょう。