ECサイトにおける問い合わせ対応は、非常に重要です。お客様からの問い合わせ対応の内容によって、お客様の満足度は敏感に上下するからです。

お客様の期待を上回る対応ができれば、それだけ自社サイトにお客様をとどめておくことができる、つまり顧客リテンション率を高く保てるのです。それだけでなく、顧客対応をより迅速化しかつ効率化することで、カスタマーサービスの人員は本来注力すべき仕事に集中できます。

顧客対応の効率化は、コロナ禍を通じてニーズがくっきりと浮き彫りになりました。そんな問い合わせの効率化を実現するツールとして、注目を集めているのが問い合わせ管理システムです。

この記事では、問い合わせ管理システムについて、「ECサイトに必要なのか」「Excel管理とどう違うのか」「メリット・デメリット」といった点を解説していきます。「問い合わせ管理システムがECサイトの問い合わせ対応に必要なのかざっくり知りたい」方にオススメの内容です。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

問い合わせ管理システムって何?

問い合わせ管理システムとは、お客さまから舞い込む問い合わせを1つの画面で管理・共有して、カスタマーサービスの担当者間で問い合わせ対応を効率化するシステムです。最終的には企業全体で問い合わせを一括共有・管理できるようになります。

問い合わせ管理システムを導入すると、いつ、誰が、どのチャネルで、どんな問い合わせをしたか、また、どの問い合わせを、いつ、誰が、どのように処理して、どんな結果になっているかを一括で共有できます。対応効率化のためのテンプレ機能や自動化、AIをベースとした機能が備わっているものも数多く、問い合わせのデータベース化も可能です。

問い合わせ管理システムを導入することで、問い合わせ業務の可視化のみならず、マーケティング活動や商品改良、新規事業の開発などにも役立てられます。

なぜECサイトに問い合わせ管理システムが必要なの?

そもそも「問い合わせ管理」とは、書いてそのまま、お客さまからのお問い合わせを管理する業務になります。問い合わせの種類は複数存在します。

  • プロダクトの注文・キャンセル
  • 見積り依頼
  • 納期確認
  • アフターケア

それぞれ内容によって対処法が異なります。また電話やメール、SNSやチャットなど、お客様が問い合わせるチャネルも異なります。

例えば、単純に問い合わせの対応が遅くなるだけで、お客様はすぐにECサイトから離れてしまい、別のECサイトへ流れたり、あろうことか「品質が悪い」とのレビューやクレームを投稿するかもしれません。

対応件数が少ないうちは、問題は顕在化しませんが、問い合わせ件数が急増した場合はどうなるでしょうか?対応漏れ、二重対応、対応品質のバラつきや劣化などが一気に表面化すると考えられます。問い合わせが多ければ多いほど、そして多種多様な問い合わせが増えるほど、正確な管理は困難になっていくのです。

したがって、EC業界で問い合わせ管理システムのニーズが高まっているのは不思議なことではありません。

「Excel管理」ではダメなの?

中小規模のECサイトでは、Excelなどの表計算ソフトやスプレッドシートベースの問い合わせ管理がポピュラーな方法かもしれません。たしかに、日時や氏名、問い合わせ内容、対応状況などを項目ごとに設定して、問い合わせを管理するのは可能といえば可能です。

が、それも「問い合わせ件数が少ないうちは」ということになります。遅かれ早かれ、問い合わせ件数の増加に伴い、管理する側のキャパも限界に近づくことになってしまうのです。

Excel管理で問題になる点は3つあります。

共有の問題-部署間での情報共有は、問い合わせ管理に必須。ただExcelのファイルベースで管理をしている場合、その情報を他人と共有するのが手間です。

セキュリティの問題-データがファイルとして存在しているため、持ち出しが簡単。セキュリティ面で大きな懸念が残ります。

情報更新の問題-情報更新がいつされたのかがわかりにくくなってしまう、また最新の状態に更新されていない場合など、二重対応が発生する可能性が出てきてしまいます。

他にも、管理データが多くなった時に1つのファイルではまかないきれず、複数ファイルにまたがる場合、または1つのファイルが非常に大きくなった場合には、シートが重くなって、ファイルの扱いに支障をきたすということもありえます。

Excelではデータの紐付けに関数スキルが必要なため、担当者にスキル習得などの時間が余計に発生することも問題です。

問い合わせ管理システムは、上記の問題点すべてから解放してくれます。多くのスタッフによる同時作業が可能となり、必要な機能を駆使することで効率的な問い合わせ対応が実現できるのです。システムとしては共有サーバーにインストールするタイプのものや、クラウド上でSaaSとして提供されるタイプのものがあり、自社ニーズに照らし合わせて選択できます。

ECサイトにおける問い合わせ管理システムのメリット5つ

問い合わせ管理システムのメリットを見ていきましょう。

管理の一元化

電話やメール、そしてLINEやFacebook MessengerなどSNSなど、問い合わせに使用されるチャネルが多様化している現在、問い合わせをチャネルごとに対応したり管理したりすると、システムのサイロ化を招きます。

問い合わせ管理システムは、そうした複数にまたがるチャネルを一元的に管理することができます。

CRMとの連携

企業によっては、顧客データベースシステムやECシステムを導入しているところもあるかと思います。そういったシステムとスムーズな連携を果たすことができる問い合わせ管理システムであれば、顧客データベースとの連携により、最新の顧客情報を反映させられるでしょう。

効率的な業務の実現

対応業務の効率化とその実現による時間の創出は、問い合わせ管理システムを導入する大きなメリットです。

過去の対応履歴の参照やサジェスト、ルーティーン的な問い合わせ対応の自動化により、作業時間の削減+コストの削減、そして対応時間の迅速化を実現できます。結果、顧客満足度の向上をもたらします。

ミス・事故防止

問い合わせの内容が多岐にわたると、必然的に担当者のミスも多くなりがちです。限界が低い人力での対応は、ヒューマンエラーが発生しやすいといえます。たった1つのヒューマンエラーにより、多くのお客さまを失う結果になります。

二重対応や対応漏れ防止策という側面をも持ち合わせる問い合わせ管理システムを導入することで、お客様からのクレームや顧客満足度の低下に歯止めをかけられるのです。

情報の活用 

担当者の対応時間や、問い合わせ内容を集計・分析できる機能があります。レポートも生成され、そういった分析を通じてサービスや製品の改善を促進できます。

お客様の問い合わせというデータは、今後の対応品質やサービス改善策の宝庫です。問い合わせ管理システムが生成するレポートや分析結果を、自社サイトの改善や他部署へのフィードバックとして活用できるため、その後の顧客体験および顧客満足度の向上へとつなげられます。

ECサイトにおける問い合わせ管理システムのデメリット

もちろんデメリットもないわけではありません。大きなデメリットとしては、やはり導入コストがかかることです。もちろん利用するサービスにより料金体系は異なるものの、初期費用、月額利用費用、メンテナンス費用、サポート費用といったコストは無視できません。

でも少し角度を変えて見てみると、これまで複数のシステムを使用していた場合、それらを問い合わせ管理システムに集約させられると考えれば、結果として導入のメリットが大きくなる可能性もあります。

またセキュリティ対策も懸念点です。会社にとって重要な情報が漏洩する可能性がありますし、サイバー攻撃を受けないとも言い切れません。安心して利用するためには、世界レベルのセキュリティ対策をしているツールを選んでください。

最後に

問い合わせ管理システムを導入する理由やニーズの背後にある課題、また問い合わせ管理システムのメリット・デメリットを見てきました。

ECサイト運営において、問い合わせ対応は顧客満足度に直結する重要な業務です。「業務の効率化を図りたい」「Excelはもうやめにしたい」「顧客体験を改善したい」「顧客満足度を上げたい」といった課題を抱えているのであれば、問い合わせ管理システムの導入を検討してみはいかがでしょうか。

その際、抱えている課題を把握し、自社の課題解決には何が特効薬になりうるかという視点で業務を一度振り返ってみると、改善や向上への道筋が見えてくるのではないでしょうか。