人間のコミュニケーションは、思っていることや考えていることの交換で成り立っています。そのため、言葉を使ったり文字を使ったりしてコミュニケーションが成り立ってきました。画期的なツールとして登場した「電話」は、遠方の相手との音声を使ったコミュニケーションを可能にしました。その後インターネットの普及で、「Eメール」や「チャット」が新しいコミュニケーションツールとして使用されてきています。
そんな状況を一挙に変えたゲームチェンジャーが「メッセージング」です。スマホの登場と普及に後押しされる形で、メッセージングはそれまでメールやチャットが持っていたコミュニケーションの概念を塗り替えました。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、15年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
メッセージングとは
メッセージングとは一体何でしょうか。簡単に言うと、メッセージングとは非同期のコミュニケーションです。この点について理解するため、これまでのコミュニケーションツールについてまず考えてみましょう。
電話の場合、お互い同じタイミングで話す、またはテキストを送り合う必要があり、常にリアルタイムでコミュニケートする必要がありました。初期のテキストチャットも同じです。一度セッションを張り、そのセッション内にお互いのテキストメッセージを送り合う必要がありました。いわば同期的なコミュニケーションだったわけです。
メッセージングも普通にチャットと呼ばれることが多いため、混同するかもしれませんが、メッセージングとセッションを張るタイプのチャットは明確に異なります。メッセージングアプリの登場により、個人間におけるコミュニケーションの形が変わりました。メッセージングはお互い「よーいどん」でコミュニケーションを始める必要がありません。メッセージを送りたいときに送り、返したいときに返せばよいので、時間に縛られる必要がありません。メッセージングの特徴については後述します。
カスタマーサポートで進むメッセージングの活用
カスタマーサポートの世界においても、チャットは大きな役割を果たしてきました。ウェブサイトに埋め込まれる形で登場したチャットは「ウェブチャット」と呼ばれ、当初、電話をかけずにそのままテキストでやり取りできる!ということで一躍メインチャネルへと踊り出ました。しかしメッセージングが普及した今では、チャットというチャネルに変革が求められています。実際、メッセージングは個人・企業間コミュニケーションのあり方に劇的な変化をもたらしました。
特にコロナ禍を経て、メッセージングのトラフィックが急増。これに伴い、LINE、Facebook Messenger、Instagram、WhatsAppが急速に普及して、すでに「メッセージングアプリありきの世界」になっています。
メッセージングアプリのプラットフォーマーは企業側にAPIを積極的に提供し、企業はチャットやメッセージングを活用しています。
カスタマーサポートにメッセージングを導入することで、「自分の好きなアプリやチャネルで企業とコミュニケートしたい」といった顧客のニーズに応えているのです。
個人と企業間のコミュニケーションにおいて、なぜメッセージングがそれほどゲームチェンジャーとして可能性を秘めているのか、もう少し掘り下げて見ていきましょう。そもそもウェブチャットとメッセージングって、どう違うのでしょうか?
ウェブチャットとは?
そもそもですが、ウェブチャットについてもう一度おさらいしておきます。オンラインショッピングや銀行のオンラインサービス、または企業や行政サービスのウェブサイト上に、チャットボックスを見かけませんか?そう、ズバリあれがウェブチャットです。
ウェブチャットは、電話をかけることなくその場でメッセージを送信できますが、その際にセッションが張られます。セッションが張られることで、企業側のオペレーターとお客さまは同じ土俵に立ってやり取りを始められるのです。
そしてチャットセッションが終わる際には、「これで終わりますね、セッション切りますね」となり、セッションが切れて終了します。その後、お客さまが「あ、これ聞き忘れた」となって再度メッセージを送っても、もう一度セッションを張りなおさなければいけません。
次につながるオペレーターは、同じことを繰り返し質問します。電話と同じ原理です。二者が「よーいどん」でコミュニケーションを始めるため、同期的なコミュニケーションと呼ばれます。
メッセージングの特徴
メッセージングもテキスト情報の交換という意味においては、チャット(ウェブチャット)と同義です。しかし、メッセージングであれば時間に縛られないコミュニケーションが可能です。つまり、メッセージを送りたいときに送り、受け取った相手も、自分のペースで返信できるのです。
そしてウェブチャットと決定的に異なる点として、「履歴が残る」という点が挙げられます。LINEでのやり取りを想像するとわかりやすいと思います。「よーいどん」で始める必要のない、非同期のコミュニケーションといえます。
となると、「ウェブチャットとメッセージングどちらがカスタマーサポートに最適なの?」と思われるかもしれません。
ウェブチャットとメッセージングのどちらを選ぶ?
結論から言うと、双方の特徴を知って最適な方を選ぶことになります。ただし時代は既存のウェブチャットからメッセージングへ移行してきています。
「でもウェブチャットとメッセージングはほぼ同じでしょ」と思われますか。ニュアンスの差こそあれ、メッセージングはチャットとはだいぶ違います。違います、というか、メッセージングは次世代チャネルと言ったほうが良いかもしれません。
SNSの影響を受けているメッセージングには、チャットやウェブチャットには見られない機能を備えています。
例えば、相手が文字入力中であることを示すインジケーター、既読インジケーター、グループチャットなどです。
また再三述べている通り、非同期のコミュニケーションであるため、ユーザーは好きな時に会話を開始したり中断したりできます。履歴が残っているため、文脈に沿った会話をその場で再開できます。
カスタマーサポートに置き換えると、これは顧客側のみならず、オペレーター側にもメリットがあります。ピークタイムに合わせたスタッフィングが不要になるからです。
もう少しメッセージングとウェブチャットのメリットについて深堀りしてみましょう。
ウェブチャットのメリット
リアルタイム性が最大の売りであるウェブチャットですが、確かに顧客・企業双方にメリットがあります。
リアルタイム性を発揮できるウェブチャットでは、素早く顧客対応ができます。ウェブサイト上での顧客のリテンションを維持できます。複数チャットに対応できる人材を確保できれば、コンパクトなカスタマーサポートチームを構築できます。
メッセージングのメリット
ウェブチャットと違い、リアルタイム性を排除したメッセージングは、非同期性コミュニケーションが最大のメリットです。顧客もオペレーターも時間に縛られず、いずれも自分のペースでゆるゆるとコミュニケーションを続けられます。そこが実際多くのユーザーに受け入れられ、現在のメインコミュニケーションツールとして確固とした地位を築いた所以です。
顧客は、自社チャネルであろうとサードパーティ製チャネルであろうと、デバイスを問わずにメッセージングを利用できます。この顧客が好むチャネルでコミュニケーションが可能ということは、顧客側の利便性を大いに高められます。
欧米ではZ世代を中心に「メッセージングができるからこのブランドから買おう」という流れが見られるほどです。
オペレーターに関しては、メッセージングの導入が離職率の低下につながることがわかっています。それもそのはず、電話だとリアルタイムで顧客と繋がるため、顧客が言うことをその場で聞かなければいけません。対応をその場で行うか、掛け直しにするかも決定しなければいけません。ときには罵声を浴びることさえあるでしょう。
メッセージングであれば、ある程度時間を取りつつ考えられた対応を提供することができます。お怒りのお客さまを前にクレームを頭から浴びせられることもありません。何よりリアルタイムで顧客対応に張り付く必要がないので、プレッシャーにさらされることが減り、メンタル面で余裕もでき、フレキシブルな働き方が可能になっていくのです。
履歴が残るという特徴も見逃せません。ウェブチャットの場合、問題についてカスタマーサポートにチャットを投げ「これこれをお試しください」と言われいったんチャットを切り、提案を試したところうまくいかなかった。もう一度ウェブチャットで繋がろうとしても、また最初から会話を始めなくてはなりません。
メッセージングであれば、問題改善の提案を受け取るまでの会話履歴が保存されています。改善案を試して上手くいかなかったとしても、その時点でカスタマーサポートとの会話へすぐに戻れます。思いついたときに質問を送って、担当者の手が空いた時に返信を受け取ることができるのです。カスタマーエクスペリエンスがぐっと改善されるのではないでしょうか。
可能性を秘めたツール、メッセージング
メッセージングツールは、コロナ禍より前にすでに存在してはいましたが、コロナ禍を経て人々の生活に完全に浸透してきました。情報共有、仕事、チーム間のコラボレーション、友人・家族間の連絡など、ビジネスからプライベートまで、今や重要なライフラインとさえ言えます。
メッセージングが一般化する流れは加速しています。現在の顧客には「自分の好むメッセージングアプリで企業と繋がりたい」とのニーズがあります。
実際、メッセージングチャネルによる問い合わせ数は過去一年で急増しています。メッセージングであれば、企業とのやり取りを友人への連絡で使っている同じアプリ行うことが可能です。しかもアプリを通じて企業からパーソナライズされたサポートをいつでも受けられます。
企業サイドから見れば、メッセージングを顧客とのコミュニケーションチャネルとして導入することで、呼量の急増に効率的な対応ができる利点があります。
メッセージングチャネルは、必ずしも即時対応が求められるものではないので、在宅勤務などのフレキシブルな働き方にフィットします。AIやチャットボットを実装することで、初期対応を自動化することも可能です。結果として顧客の利便性が向上し、優れたカスタマーサポートを提供できます。
最後に
顧客が望むチャネルでサポートを提供することが、これからの顧客体験を左右する世の中になっていきます。オンラインへの移行が著しかったコロナ禍を経て、メッセージングの導入が今後のビジネス成長のカギとなるでしょう。
メッセージングは、その場限りのコミュニケーション手段ではありません。
顧客とのコミュニケーションを劇的に変革する、新たなチャネルです。顧客とのコミュニケーションに、会話や対話を盛り込むことができるのがメッセージングです。その対話のプロセスに、購買から決済まですべてを入れ込める画期的な取り組みも、市場に出てきています。
もちろん、これまでの電話やメールなどのチャネルがなくなるわけではありません。電話やメールはこれまで通り、顧客接点として機能し続けます。しかしメッセージングを導入することで、よりパーソナライズされた顧客体験を提供することができ、顧客の期待に応えられます。
カスタマーサポートの環境を、ウェブサイト、アプリ、SNSといったどのチャネルからでもアクセスできるようにしてください。メッセージングを通じて顧客とのコミュニケーションを強化していきましょう。メッセージングを活用することで、カスタマーサポートにおける優れた顧客体験を実現してください。