2023年10月1日から電子インボイス制度がスタートします。今回は電子インボイス制度とは何かを解説します。覚えておきたい関連用語もわかりやすく解説するので参考にしてください。

電子インボイス制度をきっかけにデジタル化を進めたい」「バックオフィス業務をデジタル化するため、電子インボイス制度を会社を動かす材料にしたい」方におすすめの記事です。

電子インボイス制度を理解し、何からデジタル化をスタートさせられるか考えましょう。

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電子インボイス制度にいち早く対応しよう

2023年10月1日から電子インボイス制度がスタートする予定ですが、準備を進めている企業はごく僅かです。

株式会社ROBOT PAYMENTが行った調査によると、インボイス制度について詳しく把握できているのは、全体の15.3%の企業だけでした。インボイス制度に関連する国際規格Peppolについて理解していると答えたのは、わずか2.5%です。

さらに、電子インボイス制度の準備を「進めている」企業は全体の20%に過ぎません。大部分の59.3%はまだ「進めていない」、もしくは20.7%が「分からない」と答えています。

全体的に対応が遅れている現状が見て取れます。対応が遅れている原因は「電子インボイスが何かよくわかっていない」、だから「どこから手を付けたらよいかわからない」ということです。

そこで、まず電子インボイス制度が何かを理解しましょう。それから対応するために何をしたらよいか考えていくことをおすすめします。

電子インボイス制度とは

電子インボイス制度とは、電子化された請求書データを保管しなければいけない制度です。

厳密に言うと「電子インボイス制度」という名称はありません。データ化された請求書を意味する「電子インボイス」と、2023年1月からスタートする適格請求書等保存方式の通称「インボイス制度」が一緒になった便宜上使われている言葉です。

電子インボイスとは

電子インボイスとは、電子化された請求書のことです。

これまで請求書は紙やFAXでアナログ方式で処理されてきました。しかしキャッシュレス決済やインターネットでの事務用品購入が進む中で、アナログ方式はバックオフィスの生産性を落とす原因になっています。そこで請求書を電子化し、請求処理をデジタル化させようという取り組みが始まりました。

▶参考:電子インボイス推進協議会公式サイト 

インボイス制度とは

インボイス制度とは、現状の請求書に以下の3点を追加して記載しなければいけない制度です。

  • 消費税
  • 適用税率
  • 登録番号

消費税は8%か10%の税率ごとに区分した消費税額でなければなりません。

適用税率ごとに合計額を記載する必要もあります。           

登録番号とは適格請求書発行事業者の登録申請書(登録申請書)の申請をした法人に付与される番号です。

適格請求書とは
引用:国税庁「適格請求書等保存方式
の概要」

▶参考:国税庁インボイス制度公表サイト 

適格請求書等保存方式とは 

適格請求書等保存方式とは、インボイス制度の正式名称です。8%と10%の複数税率に対応した仕入税額控除の方式です。

企業が購入した商品に対する仕入税額控除の適用を受けるには、通常の帳簿に加えて、購入した際に発行される「適格請求書」が必要になります。もし「適格請求書」がなければ、企業が作成した仕入れ明細書でも対応が可能です。

適格請求書とは 

適格請求書とは前項で説明した必要事項が記されている請求書のことです。請求書とは呼ばれない以下の書類も、必要事項が記載されていれば適格請求書とみなされます。

  • 納品書
  • 領収書
  • レシート
  • 電子データ

注意したいのは、適格請求書を発行できるのが税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」だけであるという点です。

登録申請手続きはe-Taxで行えます。

Peppol(ペポル)とは 

電子インボイス制度がベースにしている規格は、国際標準規格Peppol(ペポル)です。PeppolとはPan-European Public Procurement Onlineの略で、請求書などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための国際規格です。

日本には、国内の商習慣に合わせてカスタマイズされたPeppolが導入されます。

Peppolでは、「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」の仕様が世界共通で決まっています。電子文書のやり取りは下図のようにPeppolのシステムを介します。

Peppolとは
https://www.eipa.jp/peppol

Peppolは操作が簡単で導入がしやすいのが特徴です。世界の企業や政府機関とスムーズな取引ができます。

電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引の違いとは 

電子インボイス制度で理解しておきたいのが、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の違いです。それぞれの用語にはどのような意味があるのでしょうか。

電子帳簿等保存:保存は任意。会計ソフトなどで作成したデータを保存すること。

スキャナ保存:保存は任意。紙の請求書をスキャナで読み込み電子データで保存すること。

電子取引:保存は義務。メールやPDFの請求書を保存すること。     

電子インボイスは電子取引に該当します。

「請求書はほとんど紙だからうちは関係ない」と思われるかもしれません。しかし取引先が、2023年以降は電子インボイスで納品してほしいと要望してくるかもしれません。さらに自社で楽天やアマゾンを使って備品を購入した場合、発行される請求書は電子取引とみなされます。キャッシュレス決済を利用した買い物や、eチケットで出張チケットを手配した際も電子取引です。

電子取引の請求書は一定期間保管しなければなりません。会計ソフトやメール管理ソフトを使って管理する準備をしていく必要があるでしょう。

電子インボイス制度の覚えておきたいポイント 

電子インボイス制度の対象は、売上が1000万円を超える課税事業者です。1000万円以下の事業者は消費税の納税義務が免除されているので、電子インボイス制度の対象とはなりません。

電子インボイス制度に対応するためにできること

電子インボイス制度に対応するためにできることは以下の3つです。

  1. 適格請求書発行事業者に登録
  2. 会計システムの導入
  3. 電子インボイス制度のためのメール管理

適格請求書を発行するために、適格請求書発行事業者への登録を済ませておきましょう。電子インボイスに対応した会計システムの導入も検討できます。

「とりあえず様子を見たい」「コストが掛からない簡易的な対策をしておきたい」というときには、メール管理ツールの活用がおすすめです。電子取引に該当するメールを自動で仕分けし、保管しておけます。

いずれにしても、今から電子インボイス制度に向けて何らかの対策を行っていきましょう。

最後に

電子インボイス制度とは、電子化された請求書データを保管しなければいけない制度のことです。関連する似たような用語がいくつもあるので正確に理解しておきましょう。

簡易的な施策で様子を見たいときには、電子取引の請求書を保管できるメール管理がおすすめです。

電子インボイス制度の準備を進めている企業がまだ少ない中、早めに対策を取ることで差別化を推し進めていきましょう。