コールセンターの一部を在宅勤務へ移行する流れが強くなっています。

今回は「コールセンターの拠点と在宅勤務を実現する仕組みをどう作ったらよいか」を解説します。さらに在宅勤務をすでに導入したものの「在宅オペレーターの離職が増えている」といった課題への解決策も考えます。
最後には米国の事例と日本の成功事例から「在宅オペレーターと運営側がウィンウィンの仕組みとは何か」検証していきます。

米国の最新コールセンターシステムを15年にわたり国内へローカライズしてきたCBAが解説します。120名の社員すべてが世界中でリモートワークしているノウハウも紹介しますので参考にしてください。

コールセンターで在宅勤務の仕組みをどう作る?

コールセンターの数席を在宅勤務へ移行させたい場合、どのような仕組みが効率的でしょうか。「管理者とオペレーターがスムーズに在宅勤務へ移行できる仕組みにしたい」との要望に答えるため、最低限覚えておきたい4つのポイントを取り上げます。

  • コンタクトセンターシステム導入
  • セキュリティ対策
  • オペレーターと管理者の連絡手段
  • 勤怠管理

それぞれのポイントについて説明します。

コンタクトセンターシステム導入

在宅勤務の仕組みを作る際に必要なのが、クラウド型のコンタクトセンターシステムです。

クラウド型のコンタクトセンターシステムのメリットは2つ。導入後すぐインフラ調達ができること、規模拡張やバージョンアップが簡単であることです。

しかし「どのコールセンターシステムを選べばよいかわからない」と感じるかもしれません。在宅勤務にぴったりのシステムを選定する上で大切なのは2点だけです。

  • 設定変更の簡単さ
  • リードタイムの短さ

システムの設定変更は定期的に必要になります。在宅勤務への移行、在宅オペレーターの人数変更、拠点数の変更、使用チャネルの追加の際に設定変更が必要です。柔軟に変更ができ、リードタイムが短いことは、センターと在宅の2拠点運営には欠かせません。

セキュリティ対策

コールセンターは個人情報を扱うためセキュリティ対策が必要です。
最新のコンタクトセンターシステムは高いセキュリティ性能を備えています。たとえばあらかじめコンタクトセンターシステムに、セキュリティ機能が組み込まれたソフトフォンが内蔵されている製品もあります。

システム選定の際には複数のベンダーに相談し、セキュリティ機能がどの程度か確認してください。

注意すべき点は、海外からの不正アクセスに強いコンタクトセンターシステムかどうかも確認することです。

最近のサイバー攻撃は海外から行われます。海外のセキュリティ基準や個人情報のコンプライアンス基準を遵守しているコンタクトセンターシステムを選ぶと安心です。

ベンダーによっては、在宅オペレーター用のセキュリティツールも合わせて提案してくれるでしょう。

オペレーターと管理者の連絡手段

コールセンターの拠点で勤務していれば、わからない点をSVや周りのオペレーターへ気軽に尋ねられます。しかし在宅勤務ではそうはいきません。周りとのコミュニケーションが減ることで、在宅オペレーターの生産性や士気が下がってしまうことがあります。

在宅オペレーターが管理者や他のオペレーターと連絡しやすい環境を整備してください。おすすめはビジネス用のチャットツールです。詳しくは後の項目で説明します。

勤怠管理 

在宅オペレーターの勤怠管理を適切に行えるツール、もしくは仕組みを用意してください。たとえば「システムへログインしている時間を勤務時間とみなす」などの仕組みを作れるでしょう。

全社員テレワークをしているCBAでは、勤怠管理にClickUpを利用しています。クラウド上で各社員の勤務時間、タスクの進行情報を確認できるツールです。
使用して感じたのは、タスクごとに時間を計測すると、常に時間を意識するため業務が効率化するということです。
ClickUpは直感的に操作できるので導入と運用が簡単です。無料で利用できるのも良いですね。個人的にはPCのブラウザ、iPadアプリ、iPhoneアプリの連携が便利で気に入っています。
参考までにClickUpの使い方を知るうえで役立ったサイトを紹介しておきます。
▶参考情報
『ClickUp』の機能詳細 ? 階層構造ごとの特徴・使い方etc
Clickupというタスク管理ツールがすごい

コールセンターで在宅勤務を導入する際の問題点

コールセンターの仕組みを作るときに役立つのが、すでに在宅勤務を導入している企業が抱える問題点を知ることです。さらに問題点の解決方法も知っていれば失敗しにくい在宅勤務化の仕組みを作れます。
ここではよくある4つの問題点と解決策を解説します。

運用までの期間が長い 

コールセンターの在宅勤務をスタートさせると、新たな仕組みを軌道に乗せるまで運用期間が長くなる傾向があります。

運用期間を短縮するにはクラウド型のコンタクトセンターシステムが役立ちます。すでに説明しましたが、インフラ調達がすぐにできるためリードタイムが短くてすむからです。最新のコンタクトセンターシステムでは、2000席規模の仕組みを1週間で導入できました。

オペレーターがストレスを抱える

多くのコールセンターが在宅勤務を導入したものの、在宅オペレーターがストレスを抱える課題に直面しています。ストレスが原因で在宅オペレーターの離職率が高くなる問題も見られます。

米国のコールセンターでは、コロナ渦よりだいぶ前から在宅勤務の仕組みをスタートさせており、ストレスの原因に関するデータの蓄積が進んでいます。在宅オペレーターが燃え尽き症候群になるケースの82%が、「センター拠点にいる同僚よりも一生懸命に働かなければいけない」という意識が原因でした。

在宅オペレーターのなかには、業務に加えて、育児、家庭教育、病気や高齢の家族の世話などの責任を果たさなければなりません。在宅業務はストレスの原因が拠点業務より多いのです。

オペレーターのストレスをケアするには何をしたらよいでしょうか。米国で実践されているのは、業務と休憩のスケジュールを一定に保つことです。センター内で働いているときより厳密に休憩を取らせるように、また業務を長引かせないよう管理しています。
社内で業務時間外のオフ会や、エクササイズの取り組みを積極的に行っているコールセンターもあります。

ストレスの対処法を共有することもできます。コールセンタージャパン2021年8月号付録「在宅勤務の影響度・ストレス実態調査」では、在宅オペレーターが実践しているストレス対処方法7つが掲載されていました。

  • 家でストレッチするなどの体のケアをした(70.1%)
  • 仕事中や休憩時間にお茶を飲んでくつろいだ(70.1%)
  • 目が疲れないように自分なりの工夫をした(69.4%)
  • 臨機応変に対応した(68.8%)
  • マニュアルを厳格に守る(68.8%)
  • 好きなことに没頭した(61.8%)
  • 空調が合わないとき自分なりの工夫をした(61.1%)

どれも小さなことかもしれませんが、管理者が率先して情報を共有するようにしましょう。仕事中でもお茶を飲んでリラックスするよう提案したり、「クレーム対応のあとは他のオペレーターへ必ずフィードバックすべき」などの項目をマニュアルに含めたりできるでしょう。

クレーム対応のあとは誰かと話すと気分を切り替えやすくなります。

オペレーター同士の交流がない

在宅オペレーターは横とのつながりが希薄になりがちです。オペレーター同士のコミュニケーションを円滑にするために何ができるでしょうか。

米国のコールセンターではSkypeやMicrosoftTeamsを使って業務中にチャットや会話ができるようにしています。クラウド型のコンタクトセンターシステムにはSkypeやMicrosoftTeamsと連携できる機能があるため、お客さまの対応中でもSVや他のオペレーターへチャットでヘルプ要請できます。

オペレーター同士の交流を活性化させるため、社内SNSを利用して同僚同士が気軽にチャットをできるようにしているコールセンターもあります。SVが定期的に在宅オペレーターと1対1で話す制度を作っているセンターも増えています。

CBAでは社内コミュニケーションのためにMicrosoft TeamsやMicrosoft Yammerを導入しています。Microsoft Teamsは部署内のコミュニケーションのために主に使い、Microsoft Yammerは部署をまたいだ社内の情報共有のために使用しています。
個人的にはYammerがあることで会社全体の動き、役員たちが考えている会社の懸念点、会社の方向性などを知ることができるので重宝しています。
ただ残念な点は検索機能が弱いこと。なので大切なYammerのチャットはリンクを個人メモに貼り付けています。その点MicrosoftTeamsは検索しやすいので助かりますね。

SVのサポートが手薄い

「助けてほしいのにSVがそばにいない」というのが在宅オペレーターの悩みのタネです。SVが手厚いサポートをするには、管理・監視機能が優れているコンタクトセンターシステムが役立ちます。

応答時間が長くなっているオペレーターを教えてくれる機能、サポートが必要なときに出せるアラートで知らせてくれる機能、AIで会話の感情分析をしてくれる機能などが搭載されているコンタクトセンターシステムは在宅オペレーターのフォローがしやすいです。

米国コールセンターから学ぶ在宅勤務の仕組み

米国のコールセンターが在宅勤務を定着させるために導入しようと取り組んでいるのがAIです。AIを何の用途で活用しているのでしょうか。

在宅勤務の定着に欠かせないAI導入 

Canam Research社が行なった調査によると、米国のコンタクトセンター78%が、今後3年間でAIを導入する計画を持っています。
AI導入と聞くとすぐ話題になるのが「AIがオペレーターに入れ替わる」という点です。しかし回答したコールセンターの97%はAIをオペレーターのサポートとして導入すると明らかにしています。AIをオペレーターに置き換えることを検討しているのはわずか7%だけでした。

コールセンターへのAI導入は在宅勤務の仕組みにどう役立つのでしょうか。2つの分野で役立ちます。

  • お客さまの感情分析
  • ワークフローの効率化

AIはお客さまの言葉を分析して、いまどんな感情を抱いているかオペレーターへ提示できます。最新のAIであるIBM Watsonは8つの言語で分析を行えます。
お客さまの感情に応じ、対応のテンプレートをオペレーターへ提案したり、ナレッジを表示したりしてくれます。状況に応じてSVへのエスカレーションも行います。

AIはワークフローの効率化にも貢献します。たとえばボットがお客さまの要望をカテゴリー化し、AIが要望に応じて適切な担当者へルーティングします。結果として対応時間が短縮され、放棄呼を減らせるのです。
AIとボットを活用するには、これら2つの機能と連携させられるコンタクトセンターシステムを選んでください。

在宅オペレーター管理に役立つ7つのKPI

続いて米国のコールセンターが在宅オペレーターの管理で使っている7つのKPIを紹介します。
リーダーやSVが在宅オペレーターをサポートするには、実用的なKPIの設定が欠かせません。長年コールセンターの在宅勤務を実施してきた米国で使われているKPIを見てみましょう。

1. オペレーターのステータス

この指標はログインしている在宅オペレーターのステータスのことです。ステータスには主に「準備中」「準備完了」「忙しい」の3つがあります。
単純なステータスですが、複数のオペレーターが「準備完了」ステータスなのに、待ち呼がたまっているときには何らかの問題が発生していると判断できます。

2. 後処理時間

対応の後処理に1日平均どれだけ時間を費やしているかを示す指標です。拠点オペレーターより在宅オペレーターのほうが後処理の時間が長いときには、ワークフローの見直しが必要かもしれません。

3. アイドル時間

平均のアイドル時間を分析すると、一日のなかでアイドル時間が長い時間帯がわかってきます。オペレーターの手が空く時間帯は、チャットやメール対応を割り振れるでしょう。

4. 対応時間

対応時間とは、コール中の対応時間と後処理の時間を合計した指標です。あるオペレーターの指標が他のオペレーターより高い場合、効率化のためにサポートが必要かもしれません。

5. 稼働率

占有率(Occupancy)とも言われる指標です。稼働率とはオペレーターが作業した合計時間のうち、各コールを処理した平均割合です。チームごとの稼働率をみると生産性の高いチーム、改善が必要なチームが見えてきます。

6. インバウンドメトリック

インバウンドメトリックとは、オペレーターが1日に処理したコールの数です。この指標が急増したときには、扱っているプロダクトに問題が発生したのかもしれません。

7. アウトバウンドメトリック

アウトバウンドメトリックには、「アウトバウンドインタラクション」と「アウトバウンドコール」の2種類があります。

チャット対応やメール対応などが「アウトバウンドインタラクション」です。平均アイドル時間が長いオペレーターに、アウトバウドインタラクションがどれだけ割り当てられているか定期的にチェックしてください。オペレーターの生産性を高められます。

「アウトバウンドコール」の指標は、アウトバウンドがメインのセンターで活用できます。たとえば「準備中」ステータスの時間が長いオペレーターがアウトバウンドコール数が少ない場合、何が原因か調べてください。

補足

7つのKPIを1画面で見られるコンタクトセンターシステムは管理がしやすいです。例として弊社ブライトパターンの画面を紹介します。お客さまへの対応内容、各KPIが一つ画面で確認できます。

さらに必要なKPIだけを指定して見られる機能も分析をしやすくしてくれます。

コンタクトセンターシステムを選定する際は、管理がしやすいKPIが設定されているか、UIは使い勝手がよいかチェックしましょう。

コールセンター在宅勤務の成功事例から学ぼう

国内でも在宅勤務の仕組み化を成功させています。参考になるのはチューリッヒ保険のコールセンター在宅勤務化です。チューリッヒ保険の成功事例から学べる点は4つあります。

  • 機器の貸し出し
  • 仮想デスクトップ
  • 事前研修の実施
  • 定期的なミーティング

在宅勤務を実現するために課題となったのは、各オペレーターの自宅に機材がないことでした。そこで通話用ヘッドセット、PC、WIFIルーター、スマートフォンを貸し出します。ほかにも足りない機材があるときには、購入をサポートする制度を設けました。

セキュリティ強化のために仮想デスクトップを導入しています。仮想デスクトップはお客さまの個人情報が在宅オペレーターのPCに残らないメリットがあります。

いざ在宅勤務の仕組みを実行するときは、オペレーターが不安になるものです。そこでチューリッヒ保険は事前研修を実施しています。オペレーターが自宅で機材をセッティングする方法、コミュニケーションツールを使って連絡する方法などをロールプレイングしてもらいます。

在宅オペレーターが寂しさを感じないように、定期的なミーティングも実施しています。ミーティングは子育て中のオペレーターでも参加しやすいように、チャットやカメラオフの通話だけの会議にしているようです。

最後に

コールセンターで在宅勤務の仕組みを作るにはコンタクトセンターシステムをまず導入すること、そしてセキュリティ対策をすることが必要です。オペレーター同士や管理者とのコミュニケーションが円滑にいく仕組みも作ってください。在宅オペレーターに合わせたの勤怠管理の方法も用意しましょう。

在宅勤務はオペレーターがストレスを抱える原因になりえます。メンタルヘルスケアをするために、まずストレスの原因を特定するようにしてください。それから原因を解消する仕組みづくり、ストレス解消法の情報共有などを行っていきましょう。

ぜひ将来のさまざまな変化に対応していけるように、コールセンターの在宅勤務化に引き続き取り組んでください。

おすすめのコンタクトセンターシステム「ブライトパターン」 

ブライトパターン

ブライトパターンは柔軟性のあるコンタクトセンターシステムです。センターと在宅の2拠点運営に対応できますし、拠点を設けず全員在宅で働くバーチャルコールセンターとしても活用できます。

在宅勤務に最適なブライトパターンの特徴は以下のとおりです。

  • 各地の災害に強い堅牢なシステム
  • AIを活用したスムーズなオムニチャネル
  • セキュリティの国際基準を遵守
  • ダウンタイムなし
  • 世界中で在宅勤務が可能
  • 24時間対応ができるようにオペレーターを自動でセレクト
  • 遠距離による音声の劣化を防ぐ

在宅勤務化したいというニーズにしっかり答えてくれるのがブライトパターンです。世界のコールセンターで使われており、使いやすさを徹底的に追求したコールセンターシステムです。