社員のメンタルヘルスを守ることは企業にとって急務です。なぜならストレスを感じている労働者が5割を超えていることが厚生労働省の調査で明らかになっているからです。
「過度のストレスが原因で離職する人が多い」と嘆く人事担当者も増加中です。人事担当者だけでなく、現場を仕切るマネージャーや管理者も危機感を持っています。
しかし「メンタルヘルスケアのために何をしたらよいかわからない」といった現場の声があるのも事実です。そこでメンタルヘルスケア先進国である米国の最新情報をチェックしてみましょう。
社員のメンタルヘルスを守るために米国企業が意識している5つのことを紹介します。
最後には、社員のストレスチェックに役立つ57の質問を掲載しているのでご覧ください。
社員のメンタルヘルスを守るべき理由
まず米国企業が社員のメンタルヘルスを守ることをなぜ重視しているか解説します。最新の調査で明らかになった「社員のメンタルヘルスを守るべき理由」は以下の3つです。
- 年間5000億ドル以上の損失
- エンゲージメントが高まる
- 生産性が低下する
それぞれの理由について見ていきましょう。
2020年から始まったパンデミックは人々のメンタルヘルスに影響を与えています。ある調査では、2020年にアメリカ人のストレスが67%高くなったと報告されています。
実は米国で社員のメンタルヘルスケアに関する優先順位は2020年までは高くありませんでした。しかし社員のメンタルヘルスケアを怠ると雇用主に5000億ドル以上の損害があることがわかりました。
米国の企業を対象にしたリサーチでは、調査対象の事業者86%が社員の幸福度を高める要素の上位が感情面の健康と答えています。91%の企業が、社員のエンゲージメントを高めるには、メンタルヘルスケアが欠かせないと考えていることも判明しました。
社員の55%がストレスが原因で業務の生産性が低下したというデータもあります。これらの点を考えると、企業が社員のメンタルヘルスケアに力を入れるのは必須であることがわかります。
社員のメンタルヘルスを守るためにできる5つのこと
社員のメンタルヘルスを守ることは、経営の観点、そして社員の幸福度の観点から欠かせません。しかし「社員のメンタルヘルスケアをしなければいけない」と思う一方で、「社内や家庭で抱えるストレスに対処できるようにサポートするなんて無理」と感じるかもしれません。
実は社員のメンタルヘルスケアに大それた方法は必要ありません。近年明らかになったのは5つのことを実践するだけです。
- チェックイン手法
- 安心感を与える
- 話を聞く
- ストレス傾向を分析
- テクノロジーの活用
社員のメンタルヘルスを守るためにできる5つのことについて説明していきます。
1. チェックイン手法
チェックインと聞くとホテルに泊まるときに使う言葉を連想します。しかしメンタルヘルスの分野でチェックインとは、「相手が大丈夫か確認する」「問題なく生活できているか確認する」ことを意味します。
チェックイン手法の効果を高めるには、定期性が重要です。週に一回程度、社員のストレス度合いをチェックする仕組みを作ってください。
チェックインをすることで、社員は自分のストレス状態を自己分析できますし、事業者側は社員のメンタルヘルスを確認できます。
2. 安心感を与える
チェックイン手法を効果的に実施することで社員に安心感を与えられます。
多く実践されているチェックイン手法には2つの方法があります。
- アンケート形式
- コミュニケーション形式
効果性を高めるためにはコミュニケーション形式がおすすめです。社員と担当者が直接会話をする方法です。
しかし社員の数によってはコミュニケーション形式は現実的でないかもしれません。その場合はアンケート形式を採用できるでしょう。
いずれにしても継続性が大切ですので、最初は負担がないやり方を選んでください。
アンケート形式でもコミュニケーション形式でも、社員の現時点での気持ちを理解するように意識しましょう。
3. 話を聞く
社員のストレスが軽減されるのは、自分の気持をわかってもらったと感じるときです。自分の考えていること、感じていることが相手に伝わったと感じるときに「話をきてもらった」と判断します。
チェックイン手法で明らかになった社員の問題点を改善してあげられる場合は、すぐに対応してください。
たとえば現在増えているストレスの原因は、リモートワークです。リモートワークがメンタルヘルスを悪化させているのであれば、週に何日か会社勤務にすることが可能か検討してください。プロジェクトチームごとにローテーションで出社させる施策も行えます。
反対に通勤時間がストレスになっている場合は、リモートワークへの移行を提案してあげられるでしょうか。週に1日だけをリモートワークにする提案だけでも社員は自分の状態をわかってもらったと感じ、ストレスを軽減できます。
4. ストレス傾向を分析
チェックイン手法によって集まった回答を定期的に分析してください。たとえば以下の視点で回答データを分析できます。
- 複数の社員に悪影響を与えている共通の問題がありますか
- 同じ部署で共通している問題がありますか
- 以前の施策はうまくいっていますか
- 施策でターゲットにしたストレス原因は減っていますか
分析を簡単にするために、回答データをひとつのダッシュボードで管理することをおすすめします。
5. テクノロジーの活用
テクノロジーは社員同士の孤独を助長する原因にもあれば、エンゲージメントを高めるきっかけになることもあります。メンタルヘルスケアのためには、テクノロジーを使って社員をサポートするフレームワークを作ってください。
先にも述べましたが、会社の規模によっては、毎週一人の社員とコミュニケーションをとることは現実的でないかもしれません。その場合にはストレスチェックツールを使ってください。
ストレスチェックツールでメンタルヘルスの状態を毎週チェックしましょう。テクノロジーを使えば回答結果はダッシュボードへまとめて表示されるので分析しやすくなります。
最新のモバイルヘルス(mHealth)テクノロジーとは
メンタルヘルスケアなどの健康を管理する最新テクノロジーとして、モバイルヘルス(mHealth)が注目されています。モバイルヘルスとは通信と連携ができるモバイル端末、またはウェアラブルデバイスを使った健康・医療サービスのことです。
最近ではスマートフォンやスマートウォッチを活用した健康・医療サービスを指すことが多くなっています。
モバイルヘルス先進国の米国では、さまざまな研究が進められてきました。詳細についてはmHealth Watch jpで知ることができます。
上記の図を見ると、モバイルヘルスによってユーザー自身が精度の高い健康管理ができるとわかります。mHealthアプリで蓄積されたデータをもとに健康診断を行ったり、医師の診断を受けたりすることも可能です。
モバイルヘルスは世界中で注目されています。アジア太平洋地域におけるmHealthアプリの活用について、South Asia and Aon Care社の担当者は次のように述べています。
「アクセスしてからのユーザーエクスペリエンス、そしてデータ分析の分野において、テクノロジーは雇用主が予防医療やウェルビーイングに取り組む方法を大きく変えました」
南米でもmHealthアプリの活用が始まっています。Aon Latin America社のMax Maggio氏は以下のように語りました。
「雇用主は、従業員が365日24時間、機密性の高いカウンセリングにアクセスできるように、テクノロジーを導入できます」
モバイルヘルスの市場は順調に成長しています。2025年までには1500億ドル以上の市場になると予想されているのです。
モバイルヘルス(mHealth)の事例
モバイルヘルス(mHealth)では以下の4つが可能になります。
1. ユーザーの健康状態、ライフスタイルを見える化
蓄積されたデータによって医療従事者はユーザーの健康を正確に把握できます
2. スマートリマインダーとデジタルピルボックス
スマートリマインダーは、社員にデータに基づいた注意を促します
デジタルピルボックスは患者が処方されているとおりに薬を服用しているか把握するのに役立ちます
3. 簡単なアクセス
遠隔地にいたとしても社員は十分な医療サポートを受けられます
4. データに基づくアドバイス
社員の健康データが蓄積されるため、個人に合わせた治療やカウンセリングをアドバイスできます
社員のメンタルヘルスケアに役立つ「ストレスチェックツール」CrisisGo
社員のメンタルヘルスケアに関するデータ蓄積が可能なmHealthアプリは何でしょうか。
いくつものサービスがありますが、運用が簡単なのはCrisisGoです。
シンプルで使いやすいストレスチェックツールなのでmHealthアプリを初めて利用する事業者向けです。またメンタルヘルスへの理解が深い米国で実績を積んできたツールのため安心して利用できます。
CrisisGoには4つの特徴があります。
- アプリでアンケートを取れる
- 設定した期間ごとにアンケートを実施
- ダッシュボードでアンケート結果を一括管理
- アプリでメッセージングができる
CrisisGoはアプリとして社員のスマートフォンへインストールし、アンケートを取ることができます。毎日でも毎週でも設定した期間ごとにアンケートを実施していけます。
回答結果は一括管理され、ダッシュボードに表示されるので分析が簡単です。気になる兆候がある社員には同じアプリですぐにメッセージを送れます。
メンタルヘルスケアで質問はなぜ重要?
「社員のメンタルヘルスを守るのに、アンケートだけで十分なのか」と思われるかもしれません。結論から言うと、メンタルヘルスケアにおいては定期的なアンケートを取ることが一番重要です。
なぜそう言えるのかメンタルヘルス対策に必要な3ステップについて知っておきましょう。
メンタルヘルスケアでは未然防止が大切
メンタルヘルスの問題を予防するためには3つのステップが必要です。
- ステップ1:未然防止
- ステップ2:早期発見
- ステップ3:治療
多くの事業者はメンタルヘルスの問題を予防するには、ステップ2の早期発見が重要と考えています。しかし問題を予防するにはステップ1の未然防止が一番効果的です。
ステップ1の未然防止には社員のストレス状態を把握すること、ストレスの要因を改善することが関係しています。
未然防止をするためにアンケートを定期的に実施し、社員のストレス状態を知ることが必要なのです。
ストレスチェックに最適な57の質問とは
ストレスチェックのためには、どのような質問をしたらよいでしょうか。アンケートに含める質問項目は厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」を参考にしてください。
上記のマニュアルには57の質問が載せられています。事業の種類に関係なくストレスの度合いが診断できる質問なので活用してください。
メンタルヘルスの質問は対話型AIがベスト?
メンタルヘルスケアに関する質問を対話型AIを使って行うことが可能です。たとえば対話型AIデジタルヒューマンを使う方法があります。
ある調査では人間のカウンセラーよりAIカウンセラーの方が効果的と判明しています。
南カリフォルニア大学(USC)の研究によると、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ兵士は、高い確率でAIカウンセラーへ自分の症状を打ち明けることがわかりました。
研究に参加した退役軍人は、「人間に知られたくない情報をAIになら話してもよい」と感じたのです。先入観を持って自分を見ないAIを自分の味方と感じ、安心感を持って問題を打ち明けることが確認されました。
別の研究では、対話型AIと患者が人間のカウンセラーと患者が形成すべき治療的関係(therapeutic alliance)を容易に形成することがわかりました。
患者はAIへの信頼を次の方法で表しました。
- 友人のような挨拶をする
- AIカウンセラーに会えた喜びを表現する
- AIカウンセラーのことを褒める
- 再度AIカウンセラーから治療を受けたいと願う
- ソーシャルチャットに参加する
社員のメンタルヘルスをチェックするのに、対話型AIが導入される事例が増えていくことでしょう。
最後に
社員のメンタルヘルスを守るためには、チェックイン手法を実施する、安心感を与える、話を聞く、ストレス傾向を分析する、そしてテクノロジーを活用するといった5つのことが必要です。
テクノロジーによるメンタルヘルスケアや、健康サポートは世界で注目されています。
「社員のメンタルヘルスを上手にケアできるかわからない」と不安になるときは2つの点を意識してください。まずは社員とのコミュニケーションの機会を増やすこと、そしてテクノロジーの力を利用することです。
メンタルヘルスケアに取り組むことで離職者を減らすだけでなく、社員の幸福度に貢献していきましょう。
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