2022年から2023年にかけて「DX/自動化」の波が強まると同時に、チャットボットを活用している企業は少なくありません。「コールセンター白書2023」を見ると、コールセンターにおけるチャットボット対応率は44.8%で、約半分のセンターがチャットボットを導入している結果となっています。

最近では、生成AIによる高性能なチャットボットの活用が注目されていますが、言わば「旬のチャネル」はチャットボットだけなのでしょうか。実は、ボイスボットも注目されています。

今回は、次に来るチャネルである「ボイスボット」とは何なのか、ボイスボットを今活用するメリットは何なのかを解説していきます。

この記事が解決するお悩み

コミュニケーションの自動化を図るにあたり、次にどのチャネルに対応するかを検討中

シニア対応を視野に入れたコミュニケーションの自動化をしたい

競合他社との差別化のため、トレンドの一歩先のチャネルに対応したい

「旬のチャネル」のボイスボットとは?

生成AIを使ったチャットボットの実用化が推進される中、昨年から今年にかけてボイスボットの注目度が上がってきています

ボイスボットとは:
ボイスボットとは、AIを実装した自動音声応対システムのことです。コールセンター業務においては、オペレーターの代わりに顧客対応を行います。受電時に音声ガイダンスを流すIVR(Interactive Voice Response)との大きな違いは、お客さまにボタンを押させる負担があるかないかです。ボイスボットは、お客さまにかかる負担が限りなく0に近いのが特徴です。

「コールセンター白書2023」の調べによると、「今後対応予定のチャネル」において45.3%ともっとも多数を占めたのがボイスボットです。この数値は、昨年度調査の24.1%から大幅に増加しています。ボイスボットに対する業界の関心度がうかがえる結果です。

「コールセンタージャパン」2023年10月号では、現在見られるLLM(大規模言語モデル)の急展開により、今後は自律型・知識参照型ボイスボットに向けた発達が進むと予想されています。同記事では、従来のボイスボットが不可能だった「問い合わせに複数の質問が含まれている場合」でも、これからは該当する複数のFAQを抽出、統合して回答することが可能であると解説されています。

機械ゆえの無機質さが一種の特徴であったボイスボットですが、今ではプロンプトによる指示で、「丁寧に」「フランクに」といった「人間らしさ」を加えることもできます。

出典:ITR Market View:対話型AI・機械学習プラットフォーム市場2023

上のグラフは、ITRが2023年8月に発表した「ITR Market View:対話型AI・機械学習プラットフォーム市場2023」の結果の一部です。この調べによると、国内のボイスボット市場は大幅な成長を見せる予測となっており、3年後の2027年には売り上げ88億の規模に到達すると見込まれています。

業界としての関心度」「ボイスボットをとりまく技術」「市場予測」の3つの観点から、ボイスボットが今後の「旬のソリューション」になる可能性は非常に高いと言えるでしょう。

しかし一方で、「コンタクトセンターで導入しているものの、十分な効果を発揮していないテクノロジー」として「チャットボット・ボイスボット」が51%の回答率を占めている(出典:「コールセンタージャパン」2023年10月号)ことは無視できません。

では、今改めて考えるボイスボットの魅力とは何でしょうか。

すでにボイスボットに対応してはいるものの「効果を発揮できていない」「活用しきれていない」と感じているコールセンターはどのような強みについて見直すべきでしょうか。

ボイスボットのメリット5つ

ボイスボットへの注目と期待が高まる中、あらためてボイスボットにはどのようなメリットがあるのかを5つ紹介します。

1. 業務効率化・工数削減と顧客体験の向上

ボイスボットにカスタマーサービスの一次受けを任せられると、顧客対応の始めから適切なオペレーターへ取り次ぐことが可能です。

そのため、お客さまを必要以上に待たせたり、たらい回しにしたりしなくて済みます。待ち時間の長さや電話のたらい回しはお客さまのストレスとなり、顧客満足度の低下を招くので、これらを回避することによって、クレームやカスタマーハラスメントが発生リスクを押さえられます。

ボイスボットだけで解決することができなくても、有人対応へスムーズに移行できるなら、業務の効率化、工数削減、顧客体験の向上へ同時にアプローチできます。

2. 人手不足・オペレーターの負担軽減にアプローチ

コールセンター業界は、慢性的な人手不足と採用難が問題になっています。限られたリソースの中でベストなサービスを提供しつつ、既存のオペレーターの離職予防に取り組むことが急務です。

出典:株式会社ビズヒッツ「コールセンターから異職種へ転職した経験がある人」への調査

株式会社ビズヒッツが2022年3月に行った調査「コールセンターから異職種へ転職した経験がある人」によれば、オペレーターの離職要因としてもっとも多いのはストレスです。

ボイスボットによって受電数のうちいくらかでも対応・解決ができれば、オペレーターが接する顧客の絶対数を減らすことができます。人手不足の解消や呼量の削減をすぐに実現することはできなくても、ボイスボットによるサポートでオペレーターひとりあたりにかかる負担を軽減することは可能です。

クレーム対応をするセンターにおいては、ボイスボットの活用でクレーム内容の事前ヒアリングを行えます。現在のボイスボットでは、複雑なクレーム対応を自動完結させることは難しいですが、事前ヒアリングがされていれば、お客さまの意見や要望に迅速に対応する準備を整えて応対できます。必要であれば、有人対応の始めからSVやセンター管理者が対応することも可能です。

同様にカスタマーハラスメントの一次受けともなるので、オペレーターが準備なくカスタマーハラスメントに遭遇したり、連続でハラスメントの被害を受けたりするといった事態を防げます。

3. 24時間365日対応が可能

このメリットは、ボイスボットの利点として必ず挙げられる点です。ボイスボットを活用すると、オペレーターを増やすことなく24時間365日の対応が実現できます。

同じ対応を外注する場合は大きなコストがかかりますし、自社のオペレーターで実現しようとすると、オペレーターの大幅増員が必要となります。

ボイスボットがあればコストを最低限に抑えつつ、人手不足や対応時間外に起因するあふれ呼・放棄呼を削減することが可能です。ボイスボットは費用対効果が高いソリューションだと言えるでしょう。

それだけでなく、お客さまが電話したいと思ったときに電話をかけることができるので、顧客満足度の向上や、機会損失への対策にもなります。

4. 自己解決の促進

ボイスボットの環境が整っていると、ひとつの顧客接点においてボイスボットを起点に、チャットボットやFAQサイト、コミュニティサイトに誘導することができます。

セルフサービスへの誘導がスムーズだと、お客さまはよりエフォートレスにセルフサービスを利活用していけます。自己解決が促進されるので、顧客満足度の維持向上にも寄与します。

また、ボイスボットでは完結できない問い合わせ、あるいは有人対応を希望するお客さまに対してSNSやメール、お問い合わせフォームなど、適切なチャネルへ誘導する上でもボイスボットは有用です。カスタマーサービスにおけるチャネルがどれだけ多様に整えられていたとしても、顧客視点で活用できなければ意味がないからです。

ボイスボットがいわば案内係として適切なチャネルやサイトへお客さまを案内できるなら、顧客体験はより満足度の高いものになるでしょう。

5. シニアフレンドリーな自動化の実現

自動化が進む現在においては、このメリットが一番モダンかつ需要があるメリットといっても過言ではありません。

「すでにボイスボットを導入しているものの、うまく効果を発揮できていない」と感じているセンターには、ぜひ「シニアフレンドリーな自動化」の文脈でボイスボットの活用方法を見直してみてください。

現在は、60歳以上のシニア世代におけるスマートフォン所持率が90%以上になるなど、シニア層のデジタル活用が確実に進んでいます。とはいえ、シニア層は依然として電話対応を好む傾向にあります。

では、ボイスボットはシニア世代にどのように受け止められているでしょうか。

出典:トランスコスモス株式会社「音声AIサービス(ボイスボット)利用実態調査2022

上の表は、トランスコスモス株式会社が発表している「音声AIサービス(ボイスボット)利用実態調査2022」の調査結果です。

60代と70代のそれぞれ約30%が、ボイスボットを活用している企業に対して「問い合わせる人のことを考えている」「このサービスを導入している企業の商品・サービスを利用したい」といったポジティブなイメージをもっています。

「電話を好みつつもボイスボットに悪い印象はもっていない」となれば、シニア世代とボイスボットの親和性は高いと言えるでしょう。

実用的なFAQサイトが整備されていたり、SNSやチャットを含む多様なチャネルに対応したりしていても、シニア世代にとってはどれも馴染みがないものなので、活用の難しさや抵抗感を感じる場合があります。そのため、必要な情報を求めてWebサイト内を探し回ったり、サイト内の小さな字を追い続けたり、使い慣れていないチャットやSNSを使ってテキスト入力をしたりすることは、私たちが目指すエフォートレストではありません。

よく「シニア対応の自動化は難しい」と言われますが、従来の電話対応にもっとも近いボイスボットであれば、可能な限りシニアフレンドリーな自動化を目指すことができます。シニア世代の好みや生活スタイルと一致しているからです。

ボイスボットは万能ではない

ここまででボイスボットのメリットを5つ紹介してきました。市場規模の拡大と実用性がますます見込まれているボイスボット。AIのめまぐるしい進化は、ボットとしての精度向上のみならず、人間側のAI受け入れ体制(AIへの認知度や活用シーンへの理解など)の醸成を促しています。市場規模の拡大が予想されていたとおり、ボイスボットは未来のカスタマーサービスには必須のチャネルとなるのかもしれません。

とはいえ、現在のボイスボットは万能ではありません。まだ以下のような弱点をもっています。

  • 複雑な問い合わせには対応できない
  • 音声だけでは情報やサービスが不足することがある
  • お客さまの声をご認識する場合がある

ボイスボット活用における成功のカギを握るひとつは、「現状の電話対応をすべてボイスボットにリプレースする」という使い方をしないことでしょう。あくまでも「今の電話対応の質やスピードを向上させ、オペレーターの負担を軽減するためのサポーター」としてボイスボットを位置づけることが重要です。

そのため、有人対応との柔軟な組み合わせや、定期的なチューニングをおろそかにしないことが必要不可欠となります。

ボイスボットでシニアフレンドリーを実現した例?:みずほ証券

最後に、ボイスボットの活用によってシニアフレンドリーな自動化を実現したみずほ証券の例を紹介します。

みずほ証券のコールセンター利用者は、比較的年齢層が高いという特徴をもっています。そのため、いきなり電話以外へのチャネルに移行するのではなく、まずはボイスボットから自動化に着手しました。

ボイスボットによる自動化の結果、2023年4月の時点で、(ボイスボットによる)月間応対件数は4000件超えとなり、導入当初が82件だったのに対し、約50倍の問い合わせ対応が可能となりました。利用者の6割以上が60代で、電話対応を好むシニア層の自己解決促進につながっていると言います。

難しいとされるシニア対応の自動化ですが、同社の徹底した顧客視点のサービス設計は、コンタクトセンター・アワード2022において「最優秀ストラテジー部門賞」を獲得しました。

最後に

生成AIをとりまく環境の変化により、顧客接点におけるチャットボットやボイスボットの活用は新たなフェーズへ入り始めています。今後あらゆる場面でさらなるデジタル化が予想されますが、DXの波の中でシニア世代のお客さまを置き去りにしたり、負担や努力を強要したりすることがないようにしたいものです。

ボイスボットは人手不足や採用難の慢性化、問い合わせ内容の多様化を極めるコールセンターにおいて強力なサポーターとなりますが、シニアフレンドリーな自動化という文脈においても大きな魅力を持つチャネルです。ぜひ旬のチャネルとしてフォローしていきましょう。