若い世代を中心に広がりを見せている、ビデオコミュニケーション。近年、SNSが画像や動画ベースになってきており、文字中心のサービス利用者はガクッと減り続けています。

従来はブログやFacebookといった文字中心のSNSが盛り上がっていましたが、今ではインスタグラム、ツイッター、You Tubeなど、少ない文字数やビジュアルがメインのSNSに取って代わられてきています。

ビジュアル中心のサービスがトレンドですが、コールセンターにおける顧客対応に影響はあるのでしょうか。顧客のニーズに何か変化が生じているでしょうか。今回の記事では、「ビジュアル」というキーワードに注目して、市場の変化を考察します。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

ビデオコミュニケーションとは

ビデオコミュニケーションとは、電話やインターネット技術を使って、音声と画像によるコミュニケーションを取ることです。音声だけの電話やテキストだけのチャットと異なり、通話と画像によるコミュニケーションが取れることが特徴です。

コロナ禍での変化【音声からビデオコミュニケーションへ】

時代とともに変化してきた人間のコミュニケーション手段は、対面の会話から電話、インターネットを利用したメール、そしてスマホとともに普及したテキストメッセージへと、変化し続けています。

2020年の初めにまん延した新型コロナウイルスの感染拡大は、人々のコミュニケーションに大きな変化をもたらしました。度重なるロックダウンや外出規制により、対面の機会が著しく減り、リモートワークやテレワークの導入により働き方も大きく影響を受けました。

面と向かっての雑談や相談の機会も減ったため、非対面でのコミュニケーションが大きな割合を占めるようになると同時に、対話の重要性が増加しました。

総務省:令和3年の通信利用動向調査によると、固定電話の契約数は年々低下しています。一方、スマートフォンの保有率は右肩上がり(88.6%)です。すでにスマートフォンの保有率はPC保有率を追い越しています。

この波は、高齢者のコミュニケーションにも変化を与えています。

モバイル社会研究所のLINE 利用率に関する調査によると、70代でも7割弱がLINEを利用しています。若者だけではなく高齢者にもLINEは定着しているのです。

高齢者にとってLINEを使ったビデオ通話ができる環境が整ってきたことがわかります。

浸透するビデオコミュニケーション

コミュニケーション手段の変化により、顧客対応に注力する企業やコールセンターを運営する企業にも変革が求められています。電話以外のチャネルによる顧客対応を実現させたり、新しいコミュニケーションツールに対応したりすることが必要になっているのです。

コロナ禍でのリモートワークの普及に伴い、オンライン会議システムがポピュラーになってきました。すでに映像によるコミュニケーションは市民権を得ている状況であり、確実に人々のコミュニケーションになくてはならないツールになっています。

今まで個人間や企業内で利用されていたビデオ通話システムが、企業と顧客の間でもビデオコミュニケーションという形で浸透し始めているのです。2022年はビデオコミュニケーション元年とも言えるかもしれません。

コールセンタージャパン2月号では「ビデオコミュニケーションのニーズ拡大」について、BPO各社の様子が次のように解説されていました。

トランスコスモス「対面接客ができないため、ビデオコミュニケーションによる接客ニーズが生まれている」


TMJ「新規案件も増え、中にはビデオコミュニケーションを使った接客の依頼もあり、今後の広がりが期待できる」

敬遠される音声チャネル

顧客対応やカスタマーサポートでは、次第に音声チャネル(電話)から顧客が離れている状況が観察されています。電話といった音声チャネルが嫌がられる理由として、以下の理由が挙げられます。

  • そもそもつながらない
  • 同じことを何回も説明しなければいけない
  • 視覚的なサポートがない場合、言葉で説明することに難しさを覚える
  • 製品の故障した部分などを見せられないので難しい

音声のみのやり取りを前提としてきたコールセンターでは、顧客もオペレーターも状況や操作の説明を言葉だけで伝え合う必要があります。

シニア層の場合、この手のやり取りは非常にストレスになるのです。

相手が見える対面のコミュニケーションのニーズはより拡大しています。

ビデオコミュニケーションという「当然の」流れ

2020年以降、zoomやTeamsといったビデオ会議システムが一気に浸透し、人々の生活に普及し始めました。こうしたビデオ系ソリューションの活用が進みつつあります。You Tubeなどの動画系ソリューションの活用も定着してきています。

ビジュアル技術のトレンドと個人間で進むビデオ通話の活用が、ビデオコミュニケーションという新たなコミュニケーション方法を生み出すのは当然の流れと言えるかもしれません。この流れは、コールセンターの顧客対応にも大きな影響を与えています。

これまで対面がメインのテクニカル系サポート業務においては、ビジュアルサポートと呼ばれる新たなサポートの形態が浸透し始めています。例えば、顧客企業のOA機器の修理に訪れたエンジニアが、スマホやスマートグラスなどを通して見た様子がリモートでサポートエンジニアと共有されるといった形です。

またコールセンター業務においても、顧客と画面共有を介することで、お互い同じ画面を見ながら操作の説明やサポートができるようにする、ブラウザベースで動作するツールが導入され始めています。

アバイア(avaya)やシスコ(cisco)のコールセンターシステムに、SDKで導入できるビデオコミュニケーションツールが注目されています。

「高齢者がスムーズに使えるビデオコミュニケーションツールが欲しい」「お客さまが難しい操作をせずにすぐ使えるビデオサービスを提供したい」といったニーズに応えるツールです。

映像を活用することで、コールセンター側で対応できる範囲が広がります。エンジニアを派遣する必要がないケースが出てくるため、お客様側そして企業側にメリットが大きいのがビデオコミュニケーションの特徴です。

ビデオコミュニケーションのメリット

ビデオコミュニケーションやビデオチャットを顧客対応に活用するメリットとして、以下が挙げられます。

  • 情報量に縛られない
  • 移動時間に縛られない
  • 場所に縛られない

各メリットを見ていきましょう。

情報量に縛られない

ビデオコミュニケーションの最大のメリットは、「情報量に縛られない」ことです。つまり、音声チャネルだけではなかなか説明できなかった機器の操作方法やフォームの入力方法に、「百聞は一見にしかず」を実現できるため、情報量が限定されません。

音声だけでは伝わらない感情面の情報も、映像であればすぐに伝わります。そして映像で相手の状況を理解することが容易となるため、顧客が何を必要としているのかすぐ把握できます。

移動時間に縛られない

「移動時間に縛られない」こともメリットです。その場でコミュニケーションが開始できるため、現場に向かう必要がありません。移動にかかるコストを他の大切なタスクに振り分けることが可能になります。

場所に縛られない

「場所に縛られない」のも大きな特徴です。インターネットに接続してさえいれば接客や顧客対応、営業商談などのコミュニケーションを始められます。映像で実際の製品や故障状況、また画面を共有すれば、詳細な説明やサポートが可能になるため、スムーズなコミュニケーションが実現します。

ビジュアルコンタクトセンターへ変革を

ビデオコミュニケーションをコールセンターへ導入することで、オペレーターは店舗で対面接客をするかのように一対一のリアルタイム顧客対応が可能になります。ビデオコミュニケーションを実装したコールセンターは、ビジュアルコンタクトセンターへと変革し、新たな顧客体験を提供できるようになるのです。

しかし重要なのは顧客のニーズを見極めることです。

一例として、顧客のセキュリティ意識が高い金融系や遠隔医療であれば、招待制でセキュリティが高いツールを導入する必要があります。ECの分野であれば、サイト上にポップアップしたウェブチャットといった事前のアプリインストールが不要なツールを提供する必要があるでしょう。

最後に

ビデオコミュニケーションを活用するなら、場所や移動時間に縛られず、効率的なコミュニケーションを取れます。顧客対応や接客において、「百聞は一見にしかず」の法則により、従来のコミュニケーションでは難しかった効率化を実現できるのです。

ビデオコミュニケーションをベースとした、次世代型コールセンター「ビジュアルコンタクトセンター」への変革を実現するのであれば、今が一番良いタイミングではないでしょうか。ビジュアルコンタクトセンターで、より効率的で効果的な企業・顧客間コミュニケーションを提供していきましょう。