コールセンター業界でよく起きるのが「良かれと思って取り入れたものが、かえって問題を大きくしてしまう」「答えだ!と思ったものが、より一層の疑問を生み出してしまう」という現象です。コールセンター運営やCX向上の施策を実践するうえで、とくにこれらの現象を経験することがあるかもしれません。

たとえば、コロナ禍で「従業員の能力向上のために採用したソリューションが、実は顧客と企業間のコミュニケーションを阻害していた」と感じたコールセンター管理者の方は多くおられます。同時に多くの企業が、人材や業務プロセスの最適化を通じて困難な状況を乗り越え、事業継続を実現してきたのも事実です。

かといって、すべての設定目標を達成し完璧なコールセンターや事業を実現できているわけでもありません。企業やコールセンター事業者の多くは、より一層の生産性向上、コストセービング、CXの改善、顧客満足度の向上が見込めると考えています。

コールセンター業界が将来の目標を達成するために、どんな技術と備えが必要なのでしょうか。

本エントリでは、コールセンター業界向け展示会など世界最大規模のプラットフォームを提供するCCWが発行する市場調査を分析。

2022年のコールセンター業界の動向を掘り下げます。たくさん図表を用意したのでご覧ください。

本調査は、コンタクトセンター技術と課題について、コンタクトセンター、CX、デジタル戦略、セールスやマーケティング、製品開発、トレーニング、企業間パートナーシップ部門を対象に実施されました。回答者は、様々な規模の主要産業における企業から成っています。

CCWとはー米国ラスベガスで毎年行われるコールセンター関連のカンファレンスイベント。顧客対応、顧客サービス、CX、コンタクトセンター関係のベンダーが一同に介する。米国はラスベガスで1999年より毎年開催されている世界最大規模を誇る展示会。

▶CCWについての参考情報:https://www.eventglobe.net/event/ccw-exeex/

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

コールセンター業界は「これからのトレンド」にどの程度対応できているか?

コールセンター業界の「これからのトレンド」には以下の6つの点が含まれます。

  • 複雑化するオペレーター業務
  • 多様な顧客ニーズ
  • ノンボイス化(チャット・メッセージング)
  • セルフサービス
  • オムニチャネル化
  • 業務のリモート化・ハイブリッド化
コールセンター業界のトレンド
出展:CCW市場調査

コロナ禍で浮き彫りになった「場所に縛られない働き方」として、業務のリモート化やハイブリッド化が脚光を浴びています。リモートワークに対応できているとした企業が52%ほどでした。

対して、顧客体験に対する要求やニーズが変化して進化していく部分、例えばノンボイス化については、問題なく対応できているとしている企業は若干減っています。

企業の多くは概ね自社は様々なトレンドに対応できているという見方をしているとわかりますが、依然として二割強はあまり対応できていないと感じているようです。

全体としては、多くの企業が分散型労働時代の幕開けである2022年に向けたフレームワークを構築していると分析できます。しかし構築したフレームワークを柔軟に拡張し、発生していく課題をいかにつぶしていけるかが重要な点です。

2022年にコールセンター業界が掲げる目標は?

2022年、コールセンター業界や企業はどんな目標を掲げているのでしょうか?

2022年のコールセンター業界の目標
出展:CCW市場調査

「コスト削減+生産性向上」を目標に掲げている企業が多いことがわかります。そして「顧客側の負担軽減」、「オペレーター側の負担軽減」、「e-learningの活用」、「データ・ナレッジの活用」と続きます。

やはり生産性向上・業務効率性の改善はトップゴールとして君臨しています。これはコロナ禍を通じ「プロセスの無駄な部分が露呈したこと」「業務を進めるスピードと利便性に光が当てられたこと」で、コスト・生産性という従来からの課題が引き続き注目を集めた結果といえます。

コロナ禍で意識が変わったのは企業側だけではなく、顧客側も同様です。

顧客は「使い勝手が悪い」と感じるならそのサービスからすぐに離れてしまいます。非効率的で魅力的とはいえない顧客体験に正直に反応するのです。

そういった面から上記の表にある「トップ3」を目標に据える企業が多いのも驚きではありません。

このグラフから、オペレーターにはリモートワークで扱いやすいシステムやプラットフォームが必須である点も考察できます。なぜなら、顧客が感じる企業との摩擦を減らすには、オペレーターの労力軽減が欠かせないからです。

オペレーターの働き方を改革するつもりで在宅ワーク環境を導入しても、コミュニケーションをとりづらいシステムやプラットフォームだと、オペレーターの労働環境は悪化してしまいます。直感的で使いやすいソリューションであれば、本当の意味でオペレーターの生産性は改善され、結果的に良質な顧客体験を生み出すことに繋がるのです。
この点は次の結果からも裏打ちされています。

コールセンターが新規ソリューションを導入する際に重視することは?

新たにソリューションや技術を導入する際、コールセンター業界や企業は何を重視しているかについて見てみます。

コールセンター業界が新規ソリューションを導入する際に重視すること
出展:CCW市場調査

近年、様々なベンダーから多種多様なコールセンター業界向けソリューションやシステム、プラットフォームが提供されています。そのため自社と自社の課題に最適なソリューションを選定して決定することが難しいかもしれません。

それでも、上位3位の回答が、初期費用といったコスト面や最近流行りのAI・自動化機能を上回っているのは注目に値します。企業はやはりこれまでにも増して、使いやすさやユーザビリティを重視しているのです。

顧客・オペレーター双方にとって使いやすくなければ、結局のところどんなに魅力的な機能があったとしても宝の持ち腐れになってしまいます。顧客からのフィードバックはカスタマーサービスの改善点を探るに当たり、非常に有用なものです。

既存システムとの統合性についても、システム分離が課題となるコールセンター運用において重視されるのも納得がいきます。やはり業務の断片化、シームレスな機能追加ができないシステム、ソリューションは敬遠されますし、これからのコールセンターには求められていないと考えられます。

コールセンター業界が導入した技術はどの程度役立っているか

コールセンター業界が採用してきた技術はどの程度導入効果が感じられているのでしょうか。

コールセンター業界が導入した技術の満足度調査
出展:CCW市場調査

概ね6割の企業が少なくとも「効果的である」と回答しています。一方で、別の項目では、9割の企業が「よくある対応時でさえ、オペレーターは複数のモニター画面・ダッシュボード・データベースにアクセスする必要がある」と回答しており、その部分でジレンマを抱えていることが見て取れます。

結局この「複数の情報にアクセスしなければならない」という事実は、顧客が抱える不満の上位に入る「長い待ち時間」や「同じ質問に繰り返し答えなければいけない」の課題に直結するわけで、このペインをどう改善し、CX向上につなげるかがポイントとなっています。

コールセンター業界のAIブームに企業はどう備えている?

コールセンター業界では「これからは単純作業であればAIで十分、その分オペレーターを複雑な業務に集中させる」という考え方が一般的です。ではAIがコールセンターに定着するときを見越して、企業はどう備えているのでしょうか?

コールセンター業界はAI導入にどのように備えているのか
出展:CCW市場調査

コールセンターにおいてオペレーターは、大半の時間を「単純な業務」に費やしています。例えば、返品についてのポリシー説明、パスワードの再設定サポート、手動による通話記録対応など、多岐にわたります。このあたりの業務をAIが取って代わる(もうすでに一部では実現していますが)ことになった場合、どんな対応をするかというのは興味深いところです。

回答結果から、5割強の企業がトレーニングを中心として準備をしていることがわかります。そして、トレーニングを重視している企業が、「オペレーターの役割は今後変化していくこと」「一般的なオペレーターはまだニューノーマル時代に対応できていないこと」の2点を現実として認識していると読み取れます。

また上位3位の回答には、採用活動が入っており、時代のニーズに応じて新たな人材の採用に注力していることもわかります。

一方でこの結果から、多くのAIソリューションにローコードまたはノーコード機能を採用していることも頷けます。AI設定を容易に実現できるこうした機能が、顧客体験の改善およびオペレーター業務の効率性に大きく寄与しうるキーファクターとなっています。

最後に

CCWの最新情報を分析すると、コールセンター業界の動向について以下のような結論が導き出せます。

  1. 企業の多くは自社の導入した技術に概ね自信を持っていて「主要なトレンドにある程度対応している」と分析
  2. 2022年において設定されている主要な目標としては、生産性の向上、顧客・オペレーター労力の軽減、トレーニング・eラーニングによるサポートが挙げられる
  3. 新しいソリューション・技術を導入する際に重要視するポイントは、センター管理者、オペレーター、そして顧客にとっての使いやすさである
  4. AIの台頭に向けて、企業ではより複雑な業務に対応するためのトレーニングの実施、分析業務などに向けた教育、新たな人材の雇用に力を入れている

センター運用・事業戦略を見直す際に、上記のポイントを押さえることが役立つでしょう。

「どんなソリューションが自社に最適か?」「どんなツールを選べばよいのか?」「自社の課題はどうすれば解決できる?」といった疑問について提案が必要ですか。
ぜひコールセンターソリューションや市場向けコンサルティングを得意としている株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューまで、お気軽にお問い合わせください。