「顧客満足度向上」や「業務効率化」を目的として、既存のカスタマーサポートを強化・改善しようと考えている企業は少なくありません。顧客接点としてのカスタマーサポートは、お客さまの企業に対する印象や評価、信頼に直結するからです。 

皆さまは、現在どのような顧客をターゲットにしてカスタマーサポートを強化・改善しているでしょうか。この記事では、とくにシニア世代のサポート体制に注目しつつ、今シニア対応を強化する必要性、強化のための7つの具体策を紹介していきます。 

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

今カスタマーサポートのシニア対応を強化すべき理由

日本の高齢化社会は、決して今に始まった話ではありません。顧客のターゲットがシニア層であったり、カスタマーサポート利用者の多くが高齢の方だったりと、「すでにシニア対応を強化して何年も経っている」という企業も多いことと思います。では、なぜ改めて今シニア対応を強化するべきなのでしょうか。 

理由の一つは、日本における高齢者人口増加の過渡期とピークが目前に迫っているからです。ご存じかもしれませんが、日本は世界でもトップクラスの高齢化社会です。グローバル・ノートが掲載している「世界の高齢化率(高齢者人口比率) 国別ランキング・推移」によれば、2021年の時点で日本の高齢化率は世界2位となっています。 

内閣府が2022年に公開した「令和4年版高齢社会白書」によれば、高齢化の推計値で先進諸国と比較しても、今後約40年間は常に日本は高齢化率トップランカーとなる予定です。 

「2025年問題」という言葉もあるとおり、再来年には日本は超高齢化社会を迎えることになります。いわゆる「団塊の世代」である800万人全員が75歳以上の後期高齢者となるのです。 

WHOが定めている定義(65歳以上の人口が総人口の21%を超える)では、日本はとっくに超高齢化社会となっているのですが、2025年には65歳以上の人口が30%に到達する見込みです(「日本の将来推計人口(平成29年推計)結果報告書」より ) 

追い打ちをかけるようにして、「2040年問題」も控えています。 

2040年は、急速な人口減少と高齢者人口がピークに達するとされています。第二次ベビーブームとされた団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者になるので、社会保障の増額や労働力の減少…加えて高度経済成長期に建築された多くの建築物の老朽化といった社会問題が噴出・深刻化する予想です。 

私たちは、約1年半後に迫る2025年と、「超高齢化社会」すら超越してしまう2040年を無視することはできません。これから取り組むシニア対応には、スピード性と継続性が求められていきます。 

シニア対応を今強化するべき二つ目の理由は、コロナ禍でシニア世代のデジタル機器環境、それに伴う意識と行動が大きく変化したからです。日本の高齢化が加速しているとはいえ、心身共に元気な高齢者が増加している事実も忘れてはいけません。 

上のグラフは、総務省の「平成25年版情報通信白書」に掲載された要介護者の割合の推移です。8割は心身共に元気な高齢者であることが分かります。

また、内閣府による「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」を見ると、約8割の人が情報機器を活用していること、6割の人がおしゃれをしたいと思っていること、5割の人が社会活動を行っているといったデータがあります。 

心身が健康なアクティブシニアが増加していることは明白です。高齢者の人口が増えているとはいえ、近年の健康寿命が延びていることを考えても、アクティブシニアは今後も増加していくと予想できます。 

アクティブシニアとは 
趣味や仕事に意欲的で、健康志向が高く、新しい価値観を積極的に取り入れようとする元気で活動的な60歳以上(65歳以上と定義する場合もある)の中高年のこと。 

アクティブシニアが増加していることを裏付ける一つとして、コロナ禍でシニア層のスマートフォン利用が活発になった例をご紹介します。 

MMD研究所が実施した「第2弾 2021年シニアのスマートフォン・フィーチャーフォンの利用に関する調査」によると、パンデミック以降にスマートフォンで新たに利用したり、利用が増えたりしたものがあるかどうかの質問に対して、約5割の人が「ある」と回答しています。 

利用の増加が見られたアプリケーションとしては、LINEが1位、続いて2位がYouTubeです。 

このように、「スマホ」と「アプリ」の使用が活発になったことが影響して、シニア世代の問題解決行動も変化してきています。 

NTTコムオンラインが2022年に実施した調査を見ると、約6割のシニア世代が、コールセンターへ電話をかける前にWEBでの自己解決を図ろうとしていることが分かります。年代別グラフで若年層と比較しても、WEBで解決を試みようとしている60代以上の割合は、決して低い数値ではありません。 

「シニア世代はすぐにコールセンターへ電話をする」という既成概念はもはや古いと言えるかもしれません。

近年になってシニア世代の自己解決力は高まっているので、企業側はシニア世代がエフォートレスに自己解決できるようなWEBの作り方や、サポート体制を整えていく必要があります。 

カスタマーサポートにおけるシニア対応の強化ポイント7つ

ここからは、具体的にシニア対応を強化するためのポイントを7つご紹介していきます。 

1. FAQへの動線の見直し 

「自己解決の向上」と聞いてすぐに思いつくのは、「FAQの整備」かもしれません。確かにFAQは自己解決率向上のためには欠かせないものです。 

デジタルパイオニアやデジタルネイティブと言われる年代にとっては、FAQという言葉も存在もごく当たり前で、「何か分からないことがあればまずはFAQを見る」という行動が染みついているかもしれません。しかし、最近スマートフォンを使い始めたシニア世代にとってはどうでしょうか。 

「FAQ」という言葉そのものが分からない場合もあります。「FAQ」が分からなければ、当然ふさわしいページにたどり着くこともできません。また、自分の悩みを言語化することも以外と難しい行為です。誰かが困りごとを整理してあげつつ、何に悩んでいるのかを言語化してあげる必要があります。 

そこで効いてくるのが、チャットボットによるFAQへの誘導です。チャットボットによる簡単な問いかけで、お客さまの悩みを整理・言語化し、ふさわしいFAQページへ誘導します。ボットによる誘導があれば、ブランドページやオンラインショップのページからFAQページを探し出し、FAQから自分の悩みに合致する質問を探すという2ステップ以上の手間を省くことが可能です。 

チャットボットへ問いかける例文、プロンプトが3つほど提案されると自分の問題を言語化しやすいでしょう。

シニア層のお客さまが使い慣れているLINEでチャットボットを運用すれば、ブランドページやオンラインショップのページへアクセスする手間を省いてあげられます。シニア世代のお客さまにとって、いかにエフォートレスにするかを重視することがポイントです。 

この成功体験が積み重なれば、シニア層のお客さまは「LINEを見れば…またはブランドページやオンラインショップのページまで行けば自己解決できる」と覚えてくださり、いずれFAQへのルートを覚えてもらえるでしょう。 

よくある別の自己解決の手法は、Googleなどを利用して、商品名と悩みを検索するというものです。そもそも公式ページやFAQの存在を知らなかったり、「困ったことはWEBで検索すればなんとかなる」という限られたイメージを持っていたりすることに起因します。 

WEB検索で解決しなかったから、仕方なくコールセンターに電話をかける…といった行動パターンもよく見られます。 

これに対する企業側の対策としては、公式ページやFAQの存在を周知することと、悩みの言語化が伴ったSEO対策を行うことが効果的です。用意したFAQが活用されていない、FAQにたどり着いてもらえないといった事態は、なるべく早く回避しましょう。 

2. オフラインとの連携 

シニア世代のスマートフォン普及率が上がっていたり、自己解決意識と行動が向上していたりする現状を見ると、思わずオンラインのサービス強化に重きを置きがちです。しかし、オフラインとの連携をおろそかにしないよう注意しましょう。 

シニア世代が情報機器を積極的に使っているとはいえ、シニア世代がオフラインのカスタマーサポートを好まなくなったわけではありません。

お客さまの目に留まりやすいWEBページや商品マニュアルにコールセンターの電話番号を分かりやすく記載したり、問い合わせ方法を丁寧に明記したりすることを忘れないでください。実店舗をもっている企業は、実店舗への案内も行いましょう。 

シニア世代がインターネットで何かをする際、不安は付きものです。とくに金銭が関わる場合には、セキュリティの不安、手続きが滞りなく行えたかどうかの心配など、多岐にわたったストレスを抱えることになります。何かしらの不安を感じたときにオフラインで頼れる方法があれば、企業への安心感や信頼感を持っていただくことに繋がります。 

オンラインとオフラインのどちらかに偏ることなく、2つを連携させることでそれぞれを強化していきましょう。 

3. マルチチャネル対応 

シニア層のために、カスタマーサポートがマルチチャネル対応であることは非常に重要です。年代が上がれば上がるほど、使い慣れた端末やアプリケーションが多様化しているからです。かつ、お客さまが使い慣れていないチャネルの使用を強制されると、使い方が分からないばかりに余計なストレスを強要することになります。 

企業からのカスタマーサポートを、シニア世代のお客さまが使い慣れたもので受けられるよう、企業側がマルチチャネル対応にしておくことは非常に重要です。マルチチャネル化にあたり、LINEは必ず押さえておきたいチャネルです。また、YouTubeも積極的に利用すると良いでしょう。いずれもシニア世代が利用しているアプリケーションのトップ2だからです。 

YouTubeの視聴に関しては一般的な消費行動として定着しつつあります。YouTube利用の目的として多いのは、一番に「なにか新しい情報が知りたい」続いて「商品の使い方について知りたい」との理由が挙げられます。

参考情報:「コールセンタージャパン」2023年2月号46ページ図1

対シニア世代で考えると、YouTubeは十分に顧客接点となるチャネルです。

とくに、商品の使い方セットアップといった内容のカスタマーサポートに関しては、FAQなどの文字ベースよりも、YouTubeなどの動画コンテンツの方が効果的でしょう。

視覚的に自己解決できる環境を整えておくと、シニア世代のお客さまにとってよりエフォートレスになります。 

4. WEBページでの視聴覚・身体対策 

カスタマーサポート強化にあたり、シニア世代が直面する「身体的変化への配慮」も意識してください。 

たとえば、シニア世代の半数以上が白内障を発症しています。白内障の所見率は、50代で37〜54%、60代で66〜83%、70代では80%を超えます。早い人は50代から初期症状が現れ、70代になれば約半数の人が中等度以上の白内障を罹患しています。 

カスタマーサポートのシニア対応を強化するにあたって、お客さまの半数以上が白内障である可能性を検討してください。一般的に白内障の人は全体的に視界が黄ばむので、寒色よりも暖色で、彩度の高い色の方が見えやすいとされています。 

参考情報:長野建築士会諏訪支部青年委員会「高齢者にやさしい色彩計画

また、白内障かどうかに関わりなく、大半のシニア世代にとって小さな文字や行間の狭い文章は読みづらく、小さなボタンはクリックがしにくいものです。ボタンや文字は大きくし、行間も広く取るようにしてください。

専門用語はなるべく避けましょう。私たちが専門用語と思っていない言葉にも注意が必要です。例えば、スマートフォンの操作説明によく使用する「タップ」「スワイプ」「フリック」といった言葉も専門用語になります。

目安として、アルファベットやカタカナをなるべく使わないようにするなら、わかりやすくなります。私たちとシニア世代が思っている「日常的な用語」には乖離があることを覚えておきましょう。

商品ページやFAQでは、文字だけではなく、イラストや写真などのビジュアルを積極的に活用してください。視覚情報をインプットできるサポートがあれば、より正確な情報をより簡単に伝達できます。

WEBサイトや紙のマニュアル作成時には、“シニア層にとってのユーザビリティ”を重視しましょう。

補足:金融業界や保険業界におけるシニア層の本人認証

金融業界や保険業界でニーズの高い「本人確認」に関しても視聴覚・身体対策を講じることは可能です。発信者認証やデジタル認証(顔認証や指紋認証など)、ゼロ知識認証といった豊富で柔軟な機能を備えた本人確認用ソリューションがあれば、シニア層に対応できます。

さらに、視覚/聴覚障害をお持ちのお客さまにも対応できます。たとえば、電話でろう者が本人確認を行なう際に困る場面があります。第三者の手話通訳者が、生年月日といった必要な情報を音声で伝えたとしても、受け付けてもらえないという実態があるからです。

本人確認の手段が電話しかない場合、ろう者であるお客さまにとっての本人確認は大変な負担となります。しかし、顔認証を含めたさまざまな本人確認手段を持っていれば、各お客さまにとって最も都合が良く負担のかからない、かつセキュアな本人確認を行うことができます。本人確認の分野においてもパーソナライズすることが可能です。

参考情報:次世代eKYCプラットフォーム「Journey

5. 公式サイトのスマートフォン対応

多くの企業が、すでにスマートフォン対応のサイトを作成しています。しかし、ペルソナ設定が完全にシニア層である企業にとっては、これまではスマートフォン用サイトにあまり需要がなく、パソコン用サイトやオフラインのサービスに力を傾けてきたかもしれません。

まだスマートフォン対応の公式サイトがないのであれば、早急にスマートフォン対応サイトを作成してください。すでに触れた点でもありますが、シニア世代のスマートフォン所持率と、スマートフォンによる情報収集や購買行動率が非常に高くなってきているからです。

上のグラフ(MMD研究所「第1弾 2022年シニアのスマートフォン・フィーチャーフォンの利用に関する調査」より)の通り、シニア世代のモバイル端末所持率は94%であり、そのうちの89%がスマートフォンを利用しています。併せて「令和4年版情報通信白書」のインターネット利用状況を見ると、2021年時点でパソコン(48.1%)よりもスマートフォン(68.5%)の方が利用率が高いとの結果が出ています。

今や世代に関わりなく、サイトへのアクセスはスマートフォン経由が多いということです。今後を見据えても、スマートフォン対応のサイトは必須となります。

今からスマートフォン用サイトを作成するのが大変であれば、すでに運用しているサイトをレスポンシブデザイン化しましょう。レスポンシブデザイン化すると、サイトを閲覧しているユーザーの画面サイズに自動で最適化表示されます。スマートフォン用サイトを別で作るよりも簡単で、サイト管理の手間も省けるので、長期的に見て大きなメリットがあります。

6. オフラインでのホスピタリティや安心感をオンラインでも提供

金融業、観光業、保険業におけるカスタマーサポートではとくに顕著かもしれませんが、オフラインだからこそ築けるお客さまとスタッフの関係性は確かに存在します。

何事もオンラインで済ませようとする傾向には、メリットもある反面、デメリットもあります。特に「人間味」や「ホスピタリティ」の観点では、オンラインでのカスタマーサポートはマイナスになりがちです。

しかし、オンライン接客ツールを活かせば、サポートの場所が店舗からお客さまの自宅に変わるだけで、提供/享受できるサポートの質、人間味、ホスピタリティの質が落ちることはほとんどありません。

たとえば、最新のオンライン接客ツールを活用すると、パソコンやスマートフォンのブラウザ上で音声またはビデオコミュニケーションを開始することができます。アプリが不要であることは、シニア世代のサポートを行う上で欠かせない条件です。

途中でチャネルを変える必要が生じても、シームレスにチャネル切り替えができれば、シニア世代のお客さまに負担をかけたり、不安に感じさせたりすることもありません。

画面共有の機能はもちろん、入力支援機能があるとシニア世代のオンラインサポートに最適です。必要なフォームの入力を、担当スタッフが遠隔でサポートしてあげることが可能だからです。

「フォーム入力の仕方が分からない」「文字を入力することが困難」といったお客さまの代わりに、スタッフが代わりに情報を入力できます。プライベートな情報や、セキュリティ上お客さま本人しか見てはいけない情報などに関しては、マスキング機能によって隠すことができるので、セキュリティの面でもお互いに安心です。

参考情報①:コンタクトセンターシステム「Bright Pattern」のビデオチャット・画面共有機能
参考情報②:マスキング可能なオンライン接客ツール「LiveAssist

お互いの顔が見える形でコミュニケーションを取り、対面サポートと同じようにリアルタイムで必要なサポートを提供できるなら、各スタッフが持つホスピタリティを強みとしつつ、企業としてお客さまに安心感を届け続けることが期待できます。

ビデオによるオンライン接客・サポートを活用すれば、オフラインサポートの良さをオンラインでも変わらず提供していけます

ポイントは、オンライン接客・サポートの存在と使い方を、シニア層に周知することです。公式サイトの分かりやすい場所に大きく配置することや、LINEで定期的に案内することは効果的です。

「せっかくオンライン接客・サポートの準備を万全にしたのに使ってもらえない」という事態が起こらないように工夫しましょう。

7. シニア対応へ重きを置いたスタッフのリスキリング

カスタマーサポートの業務の代表例は、コールセンターでの電話対応です。スマートフォンによる自己解決率がシニア世代で高まっているとはいえ、コールセンターへの電話問い合わせがなくなるわけではありません

いざという時には、チャットやメールでの問い合わせよりも、電話での問い合わせが利用されることでしょう。ですから、コールセンターとしてシニア対応を強化することも怠ってはいけません。

日頃からオペレーターが行っているホスピタリティにあふれた対応はもちろんですが、さらに適切なシニア対応のためには一種のスキルが必要です。シニア層と私たちの身体的・精神的状態には、少なからず差があることを理解した上で、その差をなるべく埋められるようにリスキリングしましょう。

「シニア世代のお客さまだから仕方ない」で済ませることなく、シニア世代のお客さまにパーソナライズされたサポートを提供するようにしてください。

たとえば、一般的にシニア層の方は、高い・小さい・早い声を聞き取りにくい傾向にあります。また、年齢とともに認知・記憶の機能にも変化が起きるので、一度に多くの内容をインプットすることが難しくなります。様々な要素が絡まった結果として、苛立ちやすかったり、パニック気味になってしまったり…といったネガティブなリアクションを引き起こします

もちろん、例に挙げたような事例はシニア世代のお客さま個人によって変化します。しかし、大抵の場合はオペレーター側の話術とも言えるスキルで、お客さまにエフォートレスなサポートを提供することが可能です。

ありきたりではありますが、落ち着いた声のトーンで、大きくゆっくりはっきり話すことは外せないスキルです。また、伝えるべき内容を要約して伝えたり、一言を短くして情報を分割したりすることで、情報を整理していただきながら話を進めることができます。

若者からミドル世代への対応では、どちらかと言えばスピード性の方が求められるので、瞬時にシニア世代への対応へ切り替えることは容易ではありません。あらゆる分野で注目されているように、オペレーター側へのリスキリングが求められます。

しかし、情報伝達の分野でオペレーターがリスキリングすることには、コールセンター全体の稼働効率や生産性にも大きなメリットがあります。サポート中の話が理解できないことによる会話の長時間化や、それに伴う顧客満足度の低下を回避できるからです。

一人あたりの対応時間が長くなれば、当然コールセンター全体としての応答率も低下してしまいます。コールセンターにおけるシニア対応の難しさの一つに、会話の長時間化が挙げられます。会話が長くなる原因の一つは、話が聞き取れなかったり情報を理解できなかったりすることによる「聞き返し/言い直し」「同じ会話の繰り返し」です。

オペレーターがじっくりゆっくり的確にサポートし、確実に情報を伝達していくことこそが、結果的にはコールセンターの稼働効率を上げ、応答率を低下させることなく生産性を向上させることにつながります。

シニア対応に関するオペレーターのリスキリングを体系化するため、高齢者対応トレーニングツールや、研修プログラムを活用することは現実的です。

とくに、高齢者対応トレーニングツールに関しては、高齢者の視覚や聴覚を擬似的に体験できるものもあります。擬似的に高齢者の身体状況を体験すると、ただ知識として知っているだけでなく、共感することができるようになります。オペレーターがより高いホスピタリティをもってシニア対応に取り組む点で実用的です。

オペレーターがリスキリングの結果で得たスキルは、決してコールセンターでしか活かせないわけではありません。オンラインサポートやオフラインでのサポートでも役に立ちます。結果的に、全顧客接点の中で変わらないクオリティのシニア対応を行っていけるので、お客さまからの信頼感や安心感は大きくなるのです。

最後に

シニア対応の強化を今行うべき理由と、強化のための具体策を紹介してきました。「シニア世代への配慮が裏目に出ないか心配」「自分たちとシニア世代の常識の乖離が怖い」など、不安は尽きないかもしれません。

パーソナライゼーションを考えるなら、シニア世代からのフィードバックや、不安になる原因に敏感であるようにしましょう。デジタル機器の使用による情報格差が問題視されることが多々ありますが、カスタマーサポートの点でシニア世代を置き去りにすることがないようしてください。

顧客接点の全てにおいて、シニア層のユーザビリティを意識し、エフォートレスなサポートを提供していきましょう。