ポストコロナへ向けてぐいぐい加速する年明けとなった2023年。ビジネスや産業を含み、世界が元に戻りつつあります。また、目を離せないのがデジタルコミュニケーションとAI技術の成熟ぶり。これから先を見通す際に、切っても切り離せないトピックです。

2023年は、デジタルコミュニケーションとChatGPTなどのAI技術が進化することで、コンタクトセンターがテクノロジーへの投資から多くのベネフィットが得られことが明らかになる年となるかもしれません。

本エントリでは、コンタクトセンター業界向け展示会など世界最大規模のプラットフォームを提供するCCWが発行する市場調査を分析し、2023年の業界動向、とくに「どこに投資するのが良いか」について掘り下げていきます。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

コンタクトセンター業界が2023年に「重要視する施策」とは?

コンタクトセンター業界が2023年に「重要視する施策」

確かにAIを中心とした昨今の技術革新には目覚ましいものがありますが、考えなければいけないのは、その技術が「企業の目的達成に役立つのかどうか」という部分です。

したがって、2023年のコンタクトセンター業界におけるテクノロジーのあり方を考えるときにおさえておきたいポイントは、組織が最も重要視する施策は何かという点です。

近年のコンタクトセンターにとって重要視されている点は、「従業員体験」です。

CCWの市場調査においても、従業員のエンゲージメントと満足度の向上が最も重要視されており、89%の企業がそこに注目しています。そして、従業員の知識向上(89%)とコラボ促進(84%)が続きます。

いずれも、組織内に目が向けられており、従業員体験の向上は従業員のストレス低減につながるので、よい状態で働けるハッピーな従業員は、自然と顧客体験をも向上させます。したがって、顧客満足度にもつながるわけで、働きやすい環境やストレスをあまり感じることのないコンタクトセンターソリューションが求められています。

また、かなりの割合で、顧客とのインタラクションや顧客対応に目が向けられていることもわかります。上記の表からもわかるとおり、83%以上の企業が「顧客体験のパーソナライズ化」と「摩擦低減」を重要視しています。いずれにしろ、「エンゲージメント」というのは2023年にも大きな意味を持つトピックとなります。

このような企業の取り組みを強力に支える革新的なコンタクトセンターソリューションには、何が期待できるでしょうか?

たとえば、データの収集、分析、活用を通じて、オペレーターやボットが顧客のニーズやインテントを正確に把握し、カスタマイズされたサポートを提供できます。顧客体験のパーソナライズ化につながる点も見逃せません。

またAIを利用したセルフサービス、スマートルーティング、オムニチャネル対応などの技術を採用することで、より一層快適で、摩擦の少ない顧客体験だけでなく、従業員向けにも働きやすい環境を構築することができます。

コンタクトセンター業界が直面する「課題」とは?

2023年にコンタクトセンター業界が直面する「課題」

「落とし穴」は常に存在しています。発生している問題や、抱えている課題の解消にリソースや時間が取られてしまうと、せっかく投資した技術から最大のベネフィットを得ることができなくなってしまいます

そのため企業は、直面する新たな課題について目を向ける必要があります。とても良いコンタクトセンターソリューションへの投資が、どうも中途半端なリターンしかもたらさないようだと思えるとき、そこにはボトルネックが密かに存在しているからです。

CCWの市場調査によると、やはり大きな懸念として挙げられているのが「予算やコスト削減」という足枷です。その他にも連携・協力の欠如(63%)、優先させるべきソリューションが不明瞭(63%)、そしてリソースと時間が足りないという問題(62%)などの懸念があります。

コンタクトセンターにとって、IT関連部門との連携は必要不可欠で、テクノロジーに対する投資から最大のリターンを得られるかを左右する大きな要素となります。また、一貫したITサポートも必須となります。しかし予算の問題が存在する場合、ソリューション導入の優先度の決定は困難です。したがって、自社内で最も重要な目標からフォーカスを外さないようにする必要があります。

テクノロジーへの投資は、「旅」のようなものです。適切なソリューションを選択して導入すれば終わり、というわけではありません。むしろそれは、第一歩です。新たなソリューションやテクノロジーに対するトレーニング、そしてワークフローを適切に改善し続ける必要があります。それなくして、導入された製品が可能性を発揮することはありません。

コンタクトセンター業界の取るべき「テクノロジー投資戦略」とは?

従業員体験を向上させたい、顧客体験をスムーズにしたい、顧客対応をパーソナライズしたい、オムニチャネルコミュニケーションを実現したいなど、実現したいことは山積していますが…

2023年において、コンタクトセンターのテクノロジー戦略を構築する際に、企業は多くのことを考慮する必要があります。

たとえば、新たなソリューションの投資をどうするのか、古いソリューションをアップグレードするかどうか、どんな目標を優先すべきか、予算的な余裕についてはどうなのか。この難題をうまく乗り越えた企業は、無駄のないオペレーションと顧客中心のビジネスを実現することができます。2023年以降のテクノロジー投資戦略について、CCWの市場調査から何がわかるでしょうか?

2023年にコンタクトセンター業界の取るべき「テクノロジー投資戦略」

コンタクトセンターが実現したいことすべてに効く特効薬は残念ながらありません。しかし、成功に大きな影響を与えるアクションがいくつか存在することは確かです。

上記の表を見てみると、クラウドベースのオムニチャネルプラットフォームへの投資がその一つであることがわかります。

2023年中に一つだけ投資できるとしたらという前提で、25%がクラウドベースのオムニチャネルプラットフォームカテゴリーへの投資を選ぶということです。その他、カスタマーインテリジェンス(16%)、セルフサービス(13%)、デジタル化プラットフォーム(12%)と続きます。

パーソナライズという大きな課題に対しては、やはりデータへの投資に熱い注目が寄せられています。

とくにAIを活用した最新のソリューションで顧客情報を収集し、分析して統計化することで、企業はより良いカスタマージャーニーを設計することができ、顧客対応の細かいところまで調整できます。

また、圧倒的多数の企業が、2023年はセルフサービスが来るだろうと予測しています。顧客が自律的に企業と対話できるようにするテクノロジーへの投資も非常に価値が高いと言えます。自律的かつパーソナライズされたインタラクションを通じて、顧客はセルフサービスとの親和性が高くなり、顧客満足度の向上とインバウンドコールの削減につながります。

そして忘れてはならないのが、ノンボイスチャネルです。チャットやSNS、メッセージングの利用が増加しているため、デジタルエクスペリエンスプラットフォームが重要視され始めています。単に顧客向けでメリットがあるだけでなく、直感的でローコードもしくはノンコードで魅力的なワークプロセスやコンテンツを制作できるため、従業員側の働く視点におけるデジタルエクスペリエンスも向上します。

2023年にすべき効果的な「AI投資」とは?

運用面での拡張の必要性が高まる一方で、リソースは限られているため、現代のコンタクトセンター業界において、AIは切っても切り離せない存在となっています。AI対応というとチャットボットがまず挙げられますが、2023年においてはチャットボットがAIを代表する技術であるとはもはや言えません。

2023年にすべき効果的な「AI投資」

CCWの市場調査によると、81%の企業が「顧客分析」を強化する方法として、AI導入の優先度が高いという結果となっています。

AIは正しく活用すれば、企業の強力な味方になります。ChatGPTに代表される会話形AI技術の急速な進化により、あらゆるタッチポイントにおいて対話が可能となります。

AIは感情を認識したり、顧客ニーズや意図を理解したりしてその情報をオペレーターにサジェストすることもできます。それだけでなく、データの統合と分析の自動化もAIの得意分野のため、従業員はよりクリティカルな対応やもっと時間をかけるべき業務に集中しやすくなります。繰り返しの多いバックエンドプロセスも自動化できるため、AIは「時間を生み出す」ことができるとも言えます。

AIへの投資は、2023年現在ですでに必要不可欠になっており、今後はAIを導入するべきかどうかというより、AIを導入してどんな業務を担当させるかを具体的に考える段階に来ているでしょう。

最後に

今回は、「テクノロジーへの投資」という観点でコンタクトセンターを俯瞰してみました。CCWの市場調査から以下の結論が引き出せます。 

  1. 「従業員体験の向上が顧客体験の向上につながる」というコンセプトから、多くの企業は従業員体験を優先しており、2023年の戦略的目標に「従業員エンゲージメントの向上」、「従業員のナレッジの強化」、「コラボレーション強化」などが挙げられている。 
  1. オムニチャネル対応+パーソナライズの促進が可能となるソリューションへの投資が効果的となる。 
  1. AIを導入するか否かではなく、AIを導入してどのように普段の業務に活かすかという、具体的な部分に踏み込んでいる。多くの企業がAI導入への投資として、「顧客分析」、「プロセスの自動化」、「デジタルエクスペリエンスの実装」などが上位を占めている。 

ポストコロナの大海を泳いでいく際、上記のポイントを押さえることが役立つでしょう。アドバイスが必要でしたら、ぜひコールセンターソリューションや市場向けコンサルティングを得意としている株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューまで、お気軽にお問い合わせください。