多様な顧客接点をもつ業界の一つに、コスメ業界があります。ひとこと「コスメ」と言っても、スキンケア商品からメイクアップ商品まで幅広く挙げられますが、この記事では「コスメ」を広義に捉えつつ、コスメ業界の顧客接点のひとつ「オンライン接客」に注目していきます。

コスメ業界でオンライン接客を導入・継続するか否か、今後のオンライン接客に+αの策は何かないか、中国のコスメ業界の動向はどうなっているのかについて解説するので参考にしてください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

オンライン接客が効果的な3つの理由

コロナで対面接客が難しくなったからこそ盛んになったオンライン接客。ポストコロナの動きが加速している今年、オンライン接客を継続、あるいは新規導入するメリットは果たしてあるのでしょうか。結論から言えば、オンライン接客は継続すべきです。まだ導入していない場合は、なるべく早く導入するべきです。

なぜポストコロナの時代にもオンライン接客が効果的だと言えるのでしょうか。ここからは、今でもオンライン接客が効果的と結論できる3つの理由についてご紹介します。

ネットでコスメを購入する人が増加している

顧客にオンライン接客を使用してもらうには、ネットで製品を検討してもらう必要があります。店頭でのタッチアップが再開している今、ネットで化粧品を買う顧客はどの程度いるのでしょうか。

株式会社ライフェックスが2022年12月から2023年1月にかけて行った調査で、実に38%の人がネットで化粧品を購入していることが分かりました。

調査の時期からすれば、すでに店頭でのタッチアップといった対面サービスが戻っている頃です。コロナへの感染対策が緩和されてからも、ネットでのコスメ購入の波が去ってはいないことが分かります。

また、マイボイスコム株式会社が2022年8月に実施したアンケートと、既出の株式会社ライフェックスによる調査の別結果を見ると、40~60代の顧客でネット購入の割合が高く、店舗での事前確認なしで購入していることが分かります。

ネットでのコスメ購入の波が去っていない以上、オンライン接客サービスが認知・活用される機会が失われてはいないことになります。

「二次流通」からのリピーターが存在している

コスメの「二次流通」とはどういうことでしょうか。具体的には、正規商品をオークションサイトやフリマアプリによって安価で手にし、一種のテスターとして活用する動きです。

株式会社アイスタイルの「@cosmeにおける二次流通での化粧品購入実態調査」によれば、アンケート回答者の5割強がフリマアプリやオークションサイトに代表される、いわゆる「二次流通」にて化粧品を購入した経験があります。

「二次流通」でのコスメ購入経験がある人のうち7割が、その後「正規販売ルートにてリピート買いをしている」と回答しています。ブランドが知らないところでお客さまは商品を手にし、評価し、リピーターになっているのです。

とはいえ、お客さまはあくまでも非正規ルートにて商品を試しているので、商品に関しての小さな疑問や悩みが完全に解消されているわけではないかもしれません。

本当は「どの色・どのシリーズにするかを自分の肌質と共に見て欲しい」と思っているかもしれません。ブランド側からすれば「お客さまが二次流通で試したものが必ずしもベストというわけではない」はずです。

オンライン接客サービスがあれば、お客さまにとって都合の良い場所・時間・(カスタマージャーニーにおける)タイミングで、ブランドからのサービスを受けることができます。

タッチアップ無しの購入に顧客が慣れている

タッチアップのサービスや店頭のテスターがなくなってから3年が経ちました。顧客は嫌でもその環境に慣れましたし、一般の人によるSNSでの口コミ・スウォッチ画像の投稿等により、店舗に行かずともより細かでリアルな情報を収集する術を習得しました。

しかし、いずれも商品や肌に関してのプロフェッショナルからパーソナライズされた正確な情報というわけではありません

「情報の信頼性」という側面で公式の情報やサービスに勝るものはないでしょう。そこで、少なくないネット購入者をターゲットとしたオンライン接客があれば、ブランドとしての商品紹介や、お客さまへの提案が可能になります。

オンライン接客に+αすべき4つの施策

オンライン接客が効果的な理由を3つ紹介しました。とはいえ、「コロナ禍だったからこそオンライン接客が注目された」「もうオンライン接客の波は過ぎたのではないか」と思う方もいらっしゃるでしょう。確かに、目新しいものとして注目される時は過ぎたかもしれません。

しかし、オンライン接客のニーズがなくなったり、オンライン離れが起きたりしているわけではありません。コロナ禍で強いられた「購入行動のオンライン化」は、確実に私たちの新たなカスタマージャーニーを形成しました。言わばコロナがきっかけに起きたパラダイムシフトです。

大きく変化した購入行動の中で、オンライン接客を効果的に展開し続けるためにブランドができることは何でしょうか。オンライン接客と併せて行うべき4つの施策を紹介します。

1. オンラインでのアフターフォロー

コスメ業界では意外と少ないアフターフォロー。基本的には商品を売ることが一つのゴールですが、いわゆる“売りっぱなし”を終わりにするタイミングが来ているかもしれません。

いざコスメを使い始めると「手持ちのコスメとの色合わせが難しかった」「手持ちの中でのスキンケアの順番が分からない」というような悩みや疑問が生じます。でも、限りなくパーソナル、かつ危機的ではない悩みに関して、お客さまがわざわざ店舗まで足を運んだり、コールセンターなどに問い合わせてきたりはしないでしょう。

そこで、お客さまと適度な距離感を保ったオンラインでのアフターフォローは非常に有効です。アフターフォローの押しつけはかえってプレッシャーになってしまうので、ブランドから積極的に提供するアフターフォローというよりは、お客さまが必要だと感じたときに「駆け込める場所」としてのサービスを目指してください。

最新のオンライン接客ツールには、画面共有時のポインタ・書き込み機能があります。オンライン接客ツールを選定する際には、ポインタ・書き込み機能が充実しているかどうかを確認してください。

そうした機能をフル活用してメイク法やスキンケア法などをご案内するなら、よりパーソナライズされたサービスを顧客一人一人に提供することができるからです。

例:5色のアイシャドウパレットに関しての相談が来た場合、商品画像や独自の写真/イラストの画面を共有しながら、まぶたに乗せる色の順番や、乗せ方などを書き込んでいくことができます。

参考情報:コスメ販売に最適なオンライン接客ツール「LiveAssist

2. コミュニティ型CRMの構築

コミュニティ型CRMが構築できていると、ブランドファンの組織化が容易になり、ファン同士でのフォロー体制も創り上げられます。ブランドからすれば、ポジティブな声もネガティブな声も全てリアルに見ることができ、企業活動の全てを顧客接点とできるメリットがあります。

オンライン接客サービスの口コミですら、コミュニティ型CRMの中で広がり、サービス利用者の増減という形で結果が出るかもしれません。

コミュニティ型CRM/コミュニティ型マーケティングについて検討するにあたり、「私域流量」(Private Traffic)の考え方は要注目です。

【用語解説】〈私域流量:Private Traffic〉
2019年頃から中国で話題になっているマーケティング手法で、自社のウェブサイトやアプリなどのプラットフォームにユーザーを呼び込み、ユーザー同士を結びつけることを目的とする。コスト軽減にも繋がる上、ブランドが継続的に顧客と繋がることもでき、顧客に1対1のパーソナライズされたサービスを提供することも可能。

日本で私域流量を作るにあたり、最新のコールセンターシステムが実用的な場合があります。日本市場向けにLINE連携ができるコールセンターシステムがあるからです。

日本人の大多数が使っているLINEであれば、私域流量を作ることも難しくはありません。ブランドとファンの間だとしても、ファン同士だとしても、LINEを通して自由で活発なコミュニケーションを繰り広げやすい環境を用意できます。

参考情報:LINE連携可能なコールセンターシステム「Bright Pattern

3. クロスボーダーできるOMO

コスメ業界に限らず、OMOマーケティングは近年のトレンドと言えるでしょう。すでに取り入れているブランドも少なくないはずです。しかし、今のOMOはグローバル化に対応していますか。現状のOMOでクロスボーダーは可能でしょうか

2023年、日本へのインバウンドによって外国人の数は増加しています。また、円安によって日本で“爆買い”をする外国人も見受けられます。

外国人の購入品の中には、当然コスメも多く含まれます。観光省が発表している2022年10-12月の「訪日外国人消費動向調査」によれば、20%の訪日外国人が化粧品・香水を購入しています。買い物代として最も率の高かった菓子類が68.2%であることを考えると、決して少なくない割合でしょう。

しかし、旅行客としての外国人が日本のコスメを購入する場合、その1回限りで終わってしまう可能性は否めません。そこで、OMOの一環として越境ECへの誘導を店舗で行うようにしてみましょう。

旅行を通してブランドに初めて接した外国人にもブランドのファンになってもらう機会を提供できます。韓国や中国を始めとした海外コスメが日に日に台頭している中、日本のコスメをグローバル進出させる良い機会にもなります。

店舗で越境ECへの誘導を行った例:https://www.fashionsnap.com/article/2022-08-04/suqqu-hanghai/

もしブランドの中に外国語が堪能なスタッフがいるなら、オンライン接客サービスでの外国語対応も可能です。

最新のオンライン接客ツールでは、アプリのダウンロード無しでサービスを利用できるので、顧客が帰国した後の外国の環境でも、オンライン接客サービスの活用が期待されます。越境ECへの誘導と外国語対応したオンライン接客サービスの合わせ技は、ポストコロナにおけるインバウンド戦略としても効果的です。

2023年には約5兆のインバウンド需要があると予想されています。国内で主流となりつつあるOMOをただ取り入れるだけでなく、クロスボーダーできるOMOとしてなるべく早く着手するようにしましょう。

4. オフラインを経由しない購入法の強化

店舗に代表されるオフラインを経由しない購入経路・方法の強化も行うべきです。強化法の一つがオンライン接客サービスであるとも言えますが、ここではオンライン接客サービス以外の案をご紹介します。

「WEBでのコスメ購入が今ひとつ…」と感じている場合、以下の方法は功を奏するかもしれません。

近年中国で主流となっているKOL(Key Opinion Leader)を活用したライブコマースをご存じでしょうか。日本での「インフルエンサー」とほぼ同義と言えるでしょう。

しかし、インフルエンサーとの決定的な違いとして「専門性」があります。口コミが何よりも重要視される中国においては、KOLには専門性と信頼性が求められます。コスメ業界に当てはめてみれば、容姿が先立つインフルエンサーに対して、専門的な知識や技術をもつメイクアップアーティストなどがKOLとなります。

上のグラフは、キャプテラが2022年3月から4月にかけて行ったアンケート調査「オンラインカスタマーレビューに関する調査 ──消費者アンケート」の結果です。77%の人がオンラインの口コミを「参考にする」と回答しています。

口コミを重視する傾向は、中国のみならず日本にも根強い傾向です。このように購入行動に関して中国と同じ条件をもつ日本では、KOLによるライブコマースは、「オフラインを経由しない購入の強化」として一定以上の効果を期待できます。

最後に

ポストコロナが進む今、オンライン接客を導入・継続する意義、+αでできる施策4つを紹介しました。コスメ業界には、ライブコマースとXR(クロスリアリティ)へ興味・期待を持たれる流れが来ています。

最後にご紹介する上のグラフは、電通デジタルが実施した「EC・店頭をまたぐ購買行動実態調査」において「次世代コマースに関する興味関心」として出された結果です。

XRはライブコマースの2倍以上の回答数を獲得しています。それだけ期待値が高い証拠です。XRに期待されていることは、XR特有の体験に加えて、「コミュニケーションがとれること」です。

今のうちから行うオンライン接客と+αの行動は、全て顧客とのコミュニケーションがカギになっています。ブランドと顧客のコミュニケーションが重要視される傾向は、続くどころか加速する可能性すら感じられます。

今のうちからオンライン接客と +α の施策で顧客と密にコミュニケーションを取り、ライブコマースやXRが主流となったときにすぐ対応できるよう準備していきましょう。