コールセンターを始めとしたカスタマーサービスの分野で普及が進む有人チャット。お客さまの利便性が高いため、有人チャットは広く活用されています。
しかし課題や問題点があるのも事実。そのため導入に二の足を踏む企業がまだまだ多いのが現状です。

今回は「有人チャットの特徴と導入メリットはなにか」「失敗しない導入、スムーズな運用方法」について解説します。最後には有人チャットの運用に役立つ6つのよくある質問も掲載しているので参考にしてください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、15年間にわたって日本市場へローカライズしてきたCBAが解説します。

有人チャットとは? 

有人チャットとは、人間の担当者が問合せにチャットで対応するサービスです。

文字でのやり取りがメインなので、お客さまが電車の中など色々な場所から問い合わせができる利便性があります。近年利用率が高まっているカスタマーサービスのチャネルです。

有人チャットとチャットボットの違い

有人チャネルとともに、ノンボイスのチャネルとして普及が進んでいるのがチャットボットです。二つのチャネルにはどのような違いがあるでしょうか。有人チャットとチャットボットの違いは、人間が対応するかロボットが対応するかの違いです。

それぞれの特徴を簡単に説明します。
最新のチャットボットにはAIが搭載されているため、無人で多くの問合せに対応できます。しかし複数の質問に同時に答えられなかったり、長文の文脈を理解して対応したりするのが苦手です。

一方、有人チャットは人間が対応しますから、お客さまの質問にきめ細かく対応できます。AIが苦手な部分をカバーできるのが有人チャネルです。顧客満足度の高いサービスですが、人件費がかかるのがネックです。

どれがおすすめ?

「有人チャットとチャットボットのどちらを導入したら良いの」と思われますか。結論から言えば、両方です。
しかしケースによっては、どちらか一方だけを導入するのが最適なこともあります。有人チャット、チャットボット、両方を利用するハイブリッドがおすすめなケースを紹介します。

1. 有人チャットがおすすめなケース

人材が十分にいるコールセンターやカスタマーサポート             

すでにチャットボットを導入しており、有人チャットで足りない部分をフォローしたい

2. チャットボットがおすすめなケース

人材が足りないコールセンターやカスタマーサポート             

24時間365日対応にしたい                          

同じ内容の問い合わせが多い                        

3. ハイブリッド運用がおすすめなケース

問合せの前さばきをチャットボット、実際の対応を有人チャットにしたい    

一般的なFAQはチャットボット、複雑な質問は有人チャットとすみ分けしたい  

有人チャットとチャットボットのそれぞれの特徴を活かしやすいのが、ハイブリッド運用です。しかし、とりあえずどちらかひとつを導入したいときには、有人チャットを試してください。チャット対応のナレッジと経験をある程度蓄えたあと、チャットボットを導入すると運用がしやすくなります。
どちらにするか決められないときには、ベンダーに相談すると良いでしょう。

有人チャットとチャットボットのハイブリッド運用方法 

有人チャットとチャットボットのハイブリッド運用をどのように行えるでしょうか。たとえば問合せの流れを「初期対応」「中間対応」「クローズ」の3つに分けて、各システムを割り振れます。

  • 初期対応→チャットボット
  • 中間対応→有人チャット
  • クローズ→チャットボット

実際の流れをECサイトの例で見てみましょう。

初期対応

こんにちは。なにをお探しですか

来週、結婚記念日なので妻へのプレゼントを探してます

プレゼントをお探しですね。かしこまりました

中間対応

奥さまはおいくつですか

35歳です。ナチュラル系の服が好みです

好みの色はありますか

よくわかりませんが、パステル系は苦手みたいです

-購入商品決定

クローズ

お支払いは前回ご利用のクレジットカードでよろしいですか

はい

送付先はご登録の住所でよろしいですか

はい

定形シナリオで対応できる「初期対応」「クローズ」の部分はチャットボット、お客さまによって異なった問い合わせが来る「中間対応」はオペレーターが対応できるでしょう。

有人チャットのメリット

有人チャットとチャットボットにはそれぞれ特徴があります。ここでは有人チャットのメリットをさらに掘り下げて考えていきます。
実際に導入している企業が実感している有人チャットのメリット8つを紹介します。

1. 臨機応変な対応

カスタマーサポートに寄せられる問い合わせは多岐にわたります。質問ではなく相談だったり、他社の商品と比較しながら自社製品の特徴を尋ねてきたりします。有人チャットはこれらの複雑な問合せに、臨機応変に対応することが可能です。

2. 問い合わせハードルを下げる

お客さまが感じる疑問は、わざわざ電話やメールで質問するまでもないものの、ちょっと気になる程度のものがあります。そんなときチャットであれば気軽に尋ねられます。
電話と違って声を出さずに問い合わせができるため、場所を選ばず使えることも評価されています。

3. 人件費削減 

電話による対応は1対1での会話が基本です。有人チャットであれば1対複数の対応が可能なので人件費削減に繋がります。

4. オペレーターの作業効率アップ

有人チャットでは、1人のオペレーターが複数の問い合わせに対応できます。対応中にデータベースやナレッジをもとに回答していけるため、クローズまでの時間も短めです。
さらにチャット対応は電話対応に比べ、ログを残す後処理の時間が必要ありません。CPH(コスト・パー・アワー)が高くなります。

5. 待ち時間の短さ 

お客さまをイライラさせる理由のひとつが待ち時間です。有人チャットでは一人が複数の問い合わせに対応するので、電話対応より待ち時間が短くなります。
チャットボットを組み合わせれば、一般的な対応はボットに任せ、人間は複雑な案件だけに集中できますから待ち時間はより短くなっていきます。

6. 回答の速さ

有人チャットは回答スピードが早くなります。メール対応と違い、まとまった文章を用意する必要がないため対応に時間がかかりません。短い文をやり取りしていくのでテンポよく対応できます。

7. 呼量を減らせる

有人チャットを導入することでコールセンターへの呼量を減らせます。一般的な問い合わせはチャットで対応し、どうしても電話で問い合わせたいお客さまにだけオペレーターが対応していく体制を作れます。

8. 外国人が使いやすい 

有人チャットは外国人が使いやすいメリットもあります。コールセンター白書2021には、有人チャットのメリットについて次のように書かれていました。

「外国語がわからなくても翻訳機能を使って会話できる」など、チャットならではという使い方をしているユーザーも見られた。 

出典:コールセンター白書2021 オムニチャネル体験調査

インバウンド対応が必要な観光業、外国人が多く住む地方自治体などで実感されているメリットです。

有人チャットのデメリット

続いて有人チャットのデメリットを4つだけ見ていきましょう。デメリットの対処法についても解説します。

1. 専任の担当者が必要 

有人チャットなので当然のことながら専任の担当者が必要です。人材が限られているコールセンターやカスタマーサポートには痛いデメリットです。
有人チャットに割ける人材が不足している場合、チャットボットの導入で対応できます。

2. 返信の遅れ

チャットはお客さまにとって利用しやすいチャネルなため、問い合わせ件数が増える傾向があります。対応が追いつかず返信が遅れやすくなるのがデメリットです。

有人チャットの返信遅れに対処する方法は2つあります。

  • サポート体制を万全にする
  • 期待値を下げる

「チャット担当者向けのFAQの充実」「よくある問合せのシナリオを作成しておく」などのサポート体制を万全にしておくなら返信スピードを向上できます。

有人チャットを利用したお客さまの期待値をあえて下げることも対処法のひとつです。実際の事例を見てみましょう。

一部の企業は、チャットのリクエストを受けた段階で「複数のお客様に対応しているため、対応開始およびご回答の入力までにお時間を頂戴することがあります」と自動返信を設定しているところもある。
「X秒以内に対応開始する」というルールと合わせて、こうした“期待値を下げる”取り組みも必要だ。 

出典:コールセンター白書2021 オムニチャネル体験調査

お客さまに「すぐに返信が来るわけではない」と知ってもらえれば、返信の遅れが離脱やクレームに繋がることを防げるでしょう。

3. 営業時間外は対応不可 

有人チャットは営業時間外には対応できません。祝日や週末の対応も限られます。お客さまは「知りたいときに回答がほしい」といったニーズを持っているため、回答できない時間帯があるのはデメリットです。

海外在住者をチャット担当者にして24時間対応にするか、チャットボットを導入して対応できます。シナリオ型の簡易チャットボットに「次の営業時間内にメールで返信します」などのメッセージを送信させることもできるでしょう。

4. チャットウィンドウで離脱

チャットウィンドウが画面に表示されることを煩わしく感じ、離脱してしまうケースがあります。有人チャットのポップアップを出すタイミングや、ページデザインをよく考えてください。

有人チャットを導入する流れ 

有人チャットを導入する場合、いくつかの準備が必要です。なにを準備したらよいか知るために、有人チャット導入の流れをチェックしておきましょう。

有人チャット導入は5つのステップに分けられます。

ステップ1. 課題・目的・ゴールを洗い出す

有人チャット導入によってどの課題を解決するのか、どんなゴールを達成するのか洗い出してください。取り組むべき課題がわかると対応件数が把握でき、担当者の選定に役立ちます。ゴール達成が明確であればKPI設定も用意になります。

ステップ2. サービスの選定

有人チャットのサービスを選定する際は、チャットボットや後述するメッセージングに対応しているか確認しましょう。拡張性があるサービスを導入したほうがお客さまのニーズに将来的に答えていけます。

ステップ3. 担当者の選定

チャット対応は会話による対応に近くなります。メール対応の実績が豊富なオペレーターより、電話対応のベテランを選ぶほうが良いでしょう。

ステップ4. 担当者のトレーニング(チャットマナー・オペレーション)

担当者のトレーニングではチャットマナー、ツールの使い方を教えてください。初めてチャットサービスを始めるときには、外部の有人チャットを扱った研修コンテンツを活用できます。ベンダーによっては研修コンテンツも提供しているので相談してください。

▶参考情報:
インソース「チャット対応研修」
株式会社プロシード「有人チャットマネジメント研修」

ステップ5. チューニングしながら運用

有人チャットサービスは運用しながら徐々に改善していき、顧客満足度向上を目指します。対応履歴やお客様の評価を見ながら運用してください。
お客さま用FAQの改善、担当者用テンプレートの整備などのチューニングが必要です。

有人チャットの運用でよくある質問

有人チャットの運用が始まるとさまざまな課題が見えてきます。実際に有人チャットの運用をしているコールセンターが抱える6つの課題を質問形式で考えていきましょう。

チャット対応に最適なのは電話担当?メール担当? 

前述しましたがチャット対応に向いているのは電話担当です。多くのコールセンターはメール対応のオペレーターにチャット対応を割り当てています。
コールセンター白書2021では、チャット担当者を誰に割り当てているかのアンケートに、最も多い37%の企業が「メール対応のオペレーターが兼任」と答えました。
しかしチャットで必要な対応スキルは電話対応のほうが共通点が多いことを覚えておきましょう。

オペレーター1人あたり何件までチャット対応可能?

有人チャットは1人の担当者が何件もの問合せに対応できます。しかし件数が増えすぎるとミスや品質が落ちてしまうので気をつけてください。では1人何件までチャット対応ができるのでしょうか。
多くのコールセンターは1人3件まで対応させています。注意したいのは、対応件数は扱う質問内容によって違うことです。一般的な質問であれば同時に3件の対応が可能ですが、込み入った内容では1件だけのほうが良いでしょう。問合せ内容に合わせて最大対応数を決めてください。

有人チャットのKPIはなに?

有人チャットの対応品質を向上させていくために、どのようなKPIを設定できますか。

  • 応答時間
  • 顧客満足度
  • 平均対応時間
  • 解決率

チャットは応答件数が急増することがあるため、応答時間は重視してください。

つながらないときの対処法は?

有人チャット担当者の手がふさがっていて誰も応答できないときはどう対処すべきでしょうか。3つの対処法があります。

  • 待ち行列に入ってもらう
  • 平均応答時間をアナウンス
  • チャットのポップアップを非表示

「チャットのポップアップを非表示」は使いすぎると、有人チャットサービスの存在をお客さまに認識してもらえなくなるので気をつけてください。

お客さまからの返信がないときはどうする?

お客さまとのチャット中に返信がなかなか来ないことがあります。返信が来ないとクローズできないため業務が滞ります。一定時間待った後、セッションを終了してください。
半数以上のコールセンターは、待ち時間を5分から10分の間で設定しています。

どの時間にチャット担当者を増やす? 

有人チャットの運用を始めたあと、管理者の頭を悩ますのが配置人数の調整です。どの時間帯に担当者を多く、または少なく配置すべきでしょうか。モビルス社の「お客さま窓口の利用実態に関するアンケート」で時間帯別の有人チャット利用率を見てみましょう。

上記の表をみると、10時から17時の日中に有人チャットの利用率が高いことがわかります。

24時間対応の有人チャットでは利用率はどうなるでしょうか。

24時間対応の場合、お昼の時間に利用率が急増するものの、9時から0時頃までは利用率が一定数あります。利用率が減る時間帯は明け方の1時から6時頃だけです。

上記の情報を参考に人数配置を行っていけるでしょう。有人チャットは一人のオペレーターが2、3件対応することが可能ですから、電話対応より担当者の配置を柔軟に行なえるメリットがあります。

いま有人チャットを導入すべき理由 

有人チャットの導入や運用を考えると、「時間やコストが掛かりそうで大変だ」「この時期は忙しいからもう少し後で導入しよう」と感じるかもしれません。
たしかに有人チャットの運用を軌道に乗せるには時間とコストが必要です。しかしベンダーにセットアップや研修などのサポートをしてもらいながら行っていけば効率よく導入と運用を行えます。

さらに今はカスタマーサービスのノンボイス化が必須であることを覚えておいてください。総務省の「通信量からみた我が国の音声通信利用状況」(2021年2月発行)をみると、2019年の国内音声トラフィックの通信回数は2013年と比べると17%減少しています。

携帯電話の契約数は年々増加しているにも関わらず、音声トラフィックは減少し続けているのです。

これは音声よりもテキストによるコミュニケーションがトレンドになっていることを示しています。

コミュニケーションの変化についてコールセンター白書2021には次のような分析があります。

コロナ渦によってBtoBのやり取りですら、社内外問わずSlackなどのチャット型コミュニケーションに置き換わりつつある。
BtoB、BtoCともに、ほとんどの企業が顧客接点としてメール(Webフォーム)を開設し、あるいはチャットやチャットボットを設け、「オムニチャネル対応」を訴求している。

出典:コールセンター白書2021 オムニチャネル体験調査

カスタマーサービスのノンボイス化の流れはすでに始まっています。音声以外にチャットなどのノンボイスチャネルを含めたオムニチャネルのスタイルが今のトレンドです。

しかも有人チャットの利用者は年齢層が高いとの調査結果があります。50代の利用者が32%、60代以上の利用者が24%と、半数以上が50代以上なのです。これからの高齢化社会において有人チャット対応のニーズはさらに高まっていくでしょう。

有人チャットを利用した人の満足度が高い点にも注目できます。チャットやLINEで対応を受けた人の83%が好印象だったと感じているのです。
カスタマーサクセス、カスタマージャーニーを向上させていく上で、有人チャットは効果的な施策です。
これからはお客さま対応のノンボイス化を進めることが急務といえるでしょう。

補足:有人チャットに最適なコンタクトセンターシステムとは 

コールセンターが有人チャット、チャットボットなどのノンボイスチャネルを運用するとき、コンタクトセンターシステムも一緒に導入したほうが良いケースがあります。
オムニチャネルのコンタクトセンターシステムであれば、ノンボイスチャネルも音声チャネルも同じシステム上で運用できるからです。

最新のコンタクトセンターシステムは以下のウェブチャットに対応しています。

  • 有人チャット
  • チャットボット
  • プロアクティブチャット
  • ビデオチャット

現在使用しているコンタクトセンターシステムがオムニチャネルに対応しているか確認してください。オムニチャネル対応のコンタクトセンターシステムについてお知りになりたいときにはCBAが説明させていただきます。

次世代の有人チャットはメッセージング

米国のコールセンターでは次世代チャット「メッセージング」の活用が進んでいます。メッセージングとは非同期のチャット、つまりWebサイト上でもLINEのようにセッションが切れないチャットサービスのことです。

米フォード社が導入したメッセージングサービス

メッセージングのメリットはお客様が好きなときにチャットを始めたり中断したりできることです。リアルタイムのチャットも、しばらく時間をおいてから中断したところから始めるチャットも、Webサイト上で行えます。オペレーターとの会話履歴と文脈がすべて保存されます。

つまり有人チャットで課題になる「一回のやり取りで解決しない」「チャット中は画面の前で待機しないといけない」「セッションが終わると履歴が消去される」という点がメッセージングでは改善されているのです。

メッセージングはオペレーターがリアルタイムで返信することが重視されないため、有人チャット以上の件数を同時に処理していけます。

メッセージングツールについて詳しくお知りになりたいときはCBAへご相談ください。

最後に

有人チャットとはチャットボットと違い、人間の担当者がお客さまに対応するサービスです。テキストによる対応が中心なので、お客さまが場所を選ばずに問合せできますし、人間による対応ですから複雑な問合せにも答えられます。

有人チャットのメリットはオペレーターの作業効率がアップすることや、お客さまの待ち時間を減らせる点です。外国人が翻訳機能を使いながら問合せがしやすいといったメリットもあります。
導入する際は5つのステップを行ってください。始めのステップにある課題を見極めることで、本当に有人チャットが必要か、まずはチャットボットから始めたほうが良いかなどがわかります。
導入後は、人の運用、システムの運用、シナリオのチェックなどが必要です。専任の担当者を割り当ててPDCAを回してください。

「ノンボイス化を進めたいが有人チャットをうまく運用できるか心配」といったときには、まず課題を見極め、とりあえずベンダーに相談してみることができるでしょう。有人チャット、チャットボット、メッセージングのどれから導入したらよいのか教えてくれます。

カスタマーサービスのトレンドは音声からノンボイスへすでに変化していますので、有人チャットを利用して顧客満足度を向上させていきましょう。