チャットボット(Chatbot)とは、お客さまとのチャット(chat)をロボット(bot)が実行してくれるプログラムのことです。企業サイトやLINE上で、チャットボットが会話をするカスタマーサービスが急速に普及しています。

チャットボットの導入を検討している企業の中には、「導入してみたいけど、チャットボットの作り方がわからない」「チャットボットを自社開発したほうが良いのか、それともベンダーへ依頼したほうが良いのか知りたい」など疑問に思うかもしれません。

今回は初心者でもわかるチャットボットの作り方と、作成前にすべき準備について解説します。後半ではおすすめのチャットボットシステム9選を紹介するので参考にしてください。

チャットボットの作り方を知ることで、「管理者が運用しやすいチャットボットとはなにか」「ユーザーが使いやすいサービスとはなにか」が見えてきます。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、15年間にわたり日本市場へローカライズしてきたCBAが解説します。

チャットボットの作り方には2つの方法があるの? 

チャットボットの作り方には2種類あります。

  • チャットボットサービスで作成
  • チャットボットを自社開発

それぞれの方法の特徴をチェックし、自社の場合はどちらがベストか考えてみてください。

チャットボットサービスで作成

チャットボットサービスとは、各社が販売するチャットボットを作成できるツールのことです。プログラミング知識がなくても、ノーコードでボットが作れるサービスです。

メリット

チャットボットサービスを使うメリットは3つあります。

  • 専門知識がいらない
  • テンプレートが豊富
  • 自社開発するよりリードタイムが短い

専門知識がいらないため、今いる人員でサービスをスタートさせられます。テンプレートが豊富なので細かな設定に時間を割く必要がなく、FAQ設定などサービスの大切なところに時間をかけられるのもメリットです。結果として、導入から運用までの時間が短くなります。

デメリット

チャットボットサービスのデメリットも紹介します。

  • コストがかかる
  • サービスごとに機能が異なる
  • 他社と差別化しにくい

チャットボットサービスを導入し、運用するには利用料金がかかります。無料のサービスもありますが、AIの精度や利用者の分析機能に限界があることを覚えておきましょう。サービスごとに機能が異なるため、自社にピッタリのサービスを探す手間もかかります。

チャットボットサービスは他の企業も使っているため、差別化がしにくいです。しかしチャットボットにデジタルヒューマンなどのアバターを組み合わせることで、ビジュアルに訴えるカスタマーサービスを展開することが可能です。

チャットボットを自社開発

チャットボットは自社開発することが可能です。Pythonなどのプログラミング言語を使って自社開発できます。

メリット

チャットボットを自社開発するメリットは2つあります。

  • 他社と差別化できる
  • 自社のプロダクトに特化した仕様にできる

競合他社と全く違ったUIや機能を搭載できるため、差別化することが可能です。自社が販売するプロダクトに特化した仕様にもできるので、運用がしやすくなります。

デメリット

続いてデメリットも見てみましょう。

  • プログラミングの知識が必要
  • 開発に時間がかかる
  • 運用時のトラブルに対処しなければいけない

チャットボットを自社開発するときには、プログラミングの知識が必要です。しかし専門知識がある社員がいるのであればデメリットにはならない点です。
チャットボットの自社開発は設計から運用開始までに時間がかかることや、運用時に問題が発生したら自前で対処しなければならないこともデメリットになります。

どちらを選ぶべき?

チャットボットシステムがおすすめな企業は以下のとおりです。

  • 専門知識を持っている社員がいない(もしくは少ない)
  • チャットボットの運用を早く始めたい
  • 初めてチャットボットを導入する

チャットボットの自社開発をおすすめするケースは以下のとおりです。

  • 専門知識を持っている社員がいる
  • チャットボットで対応する業務範囲が狭い
  • 自社プロダクトに特化したチャットボットが必要

チャットボットで対応する業務範囲が狭ければ、開発期間を短くできます。さらにチャットボットのオープンソースを利用したり、TwitterやFacebookが公開しているAPIを利用して開発工程をシンプルにしたりできることも知っておきましょう。

チャットボットの作り方

ここではチャットボットサービスを使った作り方を解説します。専門知識がなくてもドラッグ&スクロールでチャットボットが作れるため、多くの企業が採用している作り方です。

チャットボットサービスを使った作り方3ステップ

チャットボットサービスを使った作り方の簡単な流れを確認しておきます。

チャットボットを作る流れ

ステップ1. 初期設定

どのチャットボットサービスであっても初期設定を決めておかなければなりません。初期設定には次の点が含まれます。

  • ウィンドウデザイン(サイズ・色・形)
  • チャットボットを表示させる場所とタイミング
  • お客さまに求める情報(名前・メールアドレスなど)
  • チャットボットの対応時間(営業時間内だけor24時間)

ステップ2. 会話のトーン設定

会話のトーン設定で考えることは2つあります。

  • チャットボットのキャラクターデザイン
  • 会話のトーン(丁寧な口調orフレンドリー)

ステップ3. チャットボットのチューニング

チャットボットのチューニングも必要です。チューニングの仕方はチャットボットがAI型かシナリオ型かによって変わってきます。

AI型のケースでは、表記のゆれに対応できるようチューニングしなければなりません。たとえば商品購入の方法について尋ねているお客さまはいろいろな表現で質問してきます。
「商品の購入方法を教えてください」「商品の買い方がわからない」「〇〇を買うにはどうしたらいいの」などの表現の幅をAIに覚えさせなければなりません。大変そうですが、AIの教育はベンダーがサポートしてくれるので安心してください。

シナリオ型のケースはチューニングが簡単です。商品購入の方法について尋ねるお客さまに対し、「本日のお問い合わせ内容を次の3つからお選びください。1…、2…、3…」といったようにシナリオを設定するだけで良いからです。

作り方を実践してみよう

実際にチャットボットサービスを使った作り方を見てみましょう。
流れをイメージしやすくするため、弊社のLivePerson(ライブパーソン)を使って解説していきます。しかし作り方の流れは、どのチャットボットサービスも大きく変わりはありません

今回はAIチャットボットの作成手順を見てみます。

1. チャットボットがお客さまに応答する際の設定をする

AIがお客さまの多種多様な挨拶の仕方に対応できるように、表記のゆれのパターンを選びながらチューニングしていけます。
学習させた挨拶がトリガーとなってボットによる応対をスタートさせたり、有人チャットへ切り替えたりできます。

2. AIチャットボットから有人チャットへ切り替える設定を行う

有人チャットを担当するオペレーターや、オペレーターが対応する内容をテンプレートを使って選択していきます。

3. 作成したチャットボットのテストを行う

テストのために、クラウド上のテストページへログインします。

ログイン後に、最初にAIへ覚えさせたトリガーとなる挨拶をしてみます。それから設定どおりに有人チャットへ切り替わっているか確認してください。

上記の流れで、AIチャットボットが対応する範囲、有人チャットが対応する範囲を自由に設定していけます。

シナリオの作成やAIのチューニングは細かく行うことができます。ドラッグ&ドロップで設定してください。

補足:Instagram用チャットボットの作り方 

Instagram上でチャットボット運用をしたいときの作り方も紹介します。今回もLivePerson(ライブパーソン)を使用します。

1. 必要な準備をする

  • Facebookビジネスページへ接続されているInstagramアカウントを用意する(Instagramアカウントはビジネスアカウントでなければならない)
  • Instagramアカウント設定で「メッセージへのアクセス」を許可する(場所は、[設定]-> [プライバシー]-> [メッセージ])
  • Instagramアカウントには1000人以上のフォロワーが必要

2. ログイン後、チャットボットを作成したいプラットフォームを選ぶ

右上にあるInstagramのタイルを選んだら、Facebookへログインします。

ツールの指示に沿ってInstagramとチャットボットを接続してください。

3. Instagramユーザーがチャットしてきたときのシナリオを設定する

チャットボットサービスLivePersonでは、LINE上でもチャットボットを作ることが可能です。

チャットボットを作成する前にすべき準備

チャットボットを作り始める前に行う準備はとても大切です。もし準備をしないと「導入はしてみたけどもう使っていない」「効果が実感できない」「導入に時間がかかって運用開始にたどり着けない」などの事態が発生してします。
「使える」チャットボットをスムーズに運用するには、良い準備が欠かせません
事前にすべき準備は9つあります。

チャットボット作成の準備

チェック項目の内容をひとつずつ確認していきましょう。

1. 導入する目的を洗い出す

各企業がチャットボットを導入する目的は何でしょうか。コールセンター白書2021が行った「チャットボットやLINEボットで対応しているコンタクトリーズン」の調査結果から各社の導入目的を知ることができます。上位3つのコンタクトリーズンは次のとおりです。

  • 1位 FAQに記載されている問い合わせ(98.7%)
  • 2位 既存顧客からの利用に関する相談(23.1%)
  • 3位 購入相談(5.1%)

アンケートの実に98.7%が「FAQに記載されている問い合わせ」がチャットボットで対応している要件だと回答しています。

自社における導入目的を洗い出すときに役立つのが6W2Hというフレームワークです。ビジネスでよく使われるフレームワークですが、チャットボットにおける6W2Hとは何でしょうか。IT製品のカスタマーサポートを例にして考えてみましょう。

「When(いつ)」導入時期:来年4月から
「Where(どこで)」チャットボットの設置場所:製品サイトのFAQページ
「Who(だれが)」担当部署or担当者:カスタマーサクセス事業部
「Whom(だれに)」ターゲット:自社プロダクトの利用者
「What(なにを)」対応範囲:製品仕様に関するFAQ
「Why(なぜ)」目指すゴール:コールセンターへの入呼を減らす
「How(どうやって)」AIチャットボットorシナリオ型チャットボット:AIチャットボットのチャットボット
「How much(いくらで)」予算:初期コスト40万~50万・毎月の使用料10万まで

上記の点を検討していくことで自社の導入目的が見えてきます。

2. お客さまの課題を把握する

チャットボットの利用者が抱える課題を正確に把握するようにしてください。FAQ対応のためにチャットボットを導入するのであれば、「どの問い合わせが多いのか」「FAQを読んで解決しなかったのはどの項目か」などを分析しましょう。
お客さまの課題を詳細に把握できれば、利用者にとって使い勝手の良いチャットボットを作成できます

3. 設置場所の確定

チャットボットの設置場所は目指すゴールによって変わります。たとえばECサイトでカゴ落ち率を下げたい場合、購入フォームに入った人の動きが止まったタイミングでチャットボットを出すように設置できます。とくに送料や支払い方法の箇所で離脱する人が多いのであれば、「送料をお調べになりたいですか」「支払い方法でなにかお困りですか」などチャットボットに尋ねさせられます。

設置場所はホームページだけに限りません。LINE、Instagram、Facebook Messenger、Apple Business Chat、WhatsAppといったプラットフォームにチャットボットを設置するパターンもあります。

4. チャットサービスの選択

チャットサービスを選ぶ際に考えるべきポイントは3つあります。

  • AIの精度
  • 得意な役割
  • 対応しているプラットフォーム

AIチャットボットを利用したいときはAIの精度を確認してください。ベンダー独自のAIに加え、IBM Watsonなどに対応しているサービスがおすすめです。
サービスの得意な分野がECサイトなのか社内用なのかもチェックしましょう。
ターゲットにしているお客さまが一番多く使っているプラットフォームに対応しているサービスを選ぶことも重要です。

5. 要件定義の作成

チャットサービスを導入する際にはベンダーと要件定義を交わします。一般的にベンダー側が要件定義書を作成します。自社の意図を汲んだ要件定義になるよう事前のミーティングをしっかり行ってください。前述した6W2Hをしておくとミーティング時にこちらの意図を的確に伝えられます

6. シナリオの作成

チャットボットのシナリオを作っていきます。初めてシナリオを作るときには「選択肢はいくつにすべきか」「最終回答や有人チャットへの切り替えまでは何段階にすべきか」といった点がわからないことでしょう。
顧客が混乱したりイライラしたりしないシナリオの特徴は2つあります。

  • 選択肢は4つ前後
  • 最終回答までの段階は4つまで

お客さまに提案する選択肢が多すぎると混乱させてしまい離脱率が高まります。選択肢は3~5が良いでしょう。
最終回答までの段階は4つまでが良いです。段階を細かく分けすぎていつまでも最終回答にたどり着かないと、お客さまはイライラしてきます。

7. チャットボットのチューニング

チャットボットのチューニングとは、ボットに必要な知識を入力していくことです。AIチャットボットであればAIの教育が含まれます。
チューニングに必要なのは、FAQ情報、製品情報、これまでのお客さまの質問例などのデータです。

8. チャットボット担当者のトレーニング

チャットボットを運用していくためには担当者の選任が必要です。担当者が定期的にチャットボットをチューニングできるようにトレーニングを行いましょう。
管理画面の使い方、トラブルの対応方法、シナリオのPDCAの回し方などを研修で教えていけます。チャットボット担当者へのトレーニングプログラムをベンダーが提供していることもあります

9. 運用プログラムの用意

チャットボットはいきなり完成形を運用できるわけではありません。少しずつ改善して完成形に近づけていくツールです。誰がどれくらいの周期で見直し、修正をしていくのか運用プログラムを用意してください。

おすすめチャットボットサービス9選

チャットボットサービスは何を選んだら良いでしょうか。特徴の異なるおすすめのチャットボットサービス9選を紹介します。

Dialogflow 

  • 提供会社:  Google
  • 特徴:  すべて無料で利用できる(応答回数に上限があるが、限界値が高いので通常の運用では問題なし)。Googleの最新AIを活用できる。Gsuiteとの連携がスムーズ。
  • URL: https://cloud.google.com/dialogflow

チャットディーラー 

  • 提供会社:  株式会社ラクス
  • 特徴:  ルールベース型のチャットボットをノーコードで作成できる。1契約で5つまでチャットボットの作成可能。社内問い合わせ用とお客さま用のチャットボットに対応している。
  • URL: https://www.chatdealer.jp/

Neurox チャットボット 

  • 提供会社:  株式会社SPJ
  • 特徴:  日本語理解が得意なAI機能。お客さまが使ういろいろな表現方法に対応できる賢いAI。独自の対話エンジンを所有。
  • URL: https://spjai.com/service/ai-bot/

HubSpot 

Hachidori 

  • 提供会社:  hachidori株式会社
  • 特徴:  Facebookのメッセンジャーで活用しやすい。専任チームがサポートしてくれる。国内における導入事例が多い。
  • URL: https://hachidori.io/

Flow XO 

  • 提供会社:  Flow XO
  • 特徴:  イギリスのツールだが日本でのユーザーが多い。シンプルなチャットボットを自社開発できる。Flow XOを使ってチャットボットを作ってみた日本語記事がたくさんある。
  • URL: https://flowxo.com/

SUNABA 

  • 提供会社:  NTTドコモ
  • 特徴:  元のサービスはRepl-AI。ドコモの自然対話プラットフォームを搭載しているため高機能。ノーコードで作れる「GUIエディタ」と、マークアップ形式で作れる「xAIMLエディタ」を用意。
  • URL: https://docs.xaiml.docomo-dialog.com/?ref=replai

FirstContact 

  • 提供会社:  株式会社バイタリフィ
  • 特徴:  リーズナブルな価格。チャットボットとIVRの連携開発が可能。チャットボットと有人チャットの切り替えが1クリックでできる。
  • URL: https://first-contact.jp/

LivePerson(ライブパーソン)

チャットボットサービスを選ぶ際の注意点

チャットボットサービスを選ぶときに失敗しないためには、まず前述の「チャットサービスの選択」で説明したポイントを検討してください。
さらに3つの注意点も覚えておきましょう。

  • 分析のしやすさ
  • メンテナンスの簡単さ
  • サポート体制の充実

チャットボットはお客さまの満足度を測定するのに役立ちます。簡単に利用者へのアンケートが作成できるサービスを選んでください。

例:絵文字で感想を伝えられる

「収集したデータをダッシュボードで見やすくなっている」「シナリオの変更がドラッグ&ドロップでできる」といった機能付きのチャットボットサービスはメンテナンスがしやすいです。

サポート体制が充実していると初めてのチャットボット導入でもスムーズに運用していけます。一緒にサービスを開発してくれるベンダーも運用がしやすいです。

最後に

チャットボットの作り方は、チャットボットサービスを使う方法と自社開発する方法があります。プログラミングができる社員がいなかったり十分な開発期間を設ける余裕がなかったりする企業は、チャットボットサービスを使って作成するほうが良いでしょう。専門知識を持っている社員がいて、オリジナリティのあるチャットボットを作りたい企業は自社開発がおすすめです。
導入と運用をスムーズに行うためには作成前に9つの準備を行ってください。とくに導入目的は時間をかけて洗い出しましょう。

チャットボットサービスを使うにしても自社開発するにしても、「役立つチャットボットが作れるだろうか」と不安になるかもしれません。覚えておきたいのは最初から完璧なチャットボットを作ることは不可能ということです。
いきなり顧客満足度を急上昇させるチャットボットを生み出すことはできません。少しずつ改善を加えながらお客さまが使いやすい形を見つけていく必要があるのです。
もちろん完成形に到達するまでのスピードをベンダーに協力してもらって加速させることは可能です。しかし過度な期待はしないようにしましょう。

チャットボットを導入することで、お客さまの問題解決をしっかりサポートし、カスタマーサポートの負担も軽減していきましょう。