クッキーレス(Cookieless)によってマーケティングはジレンマを抱えるようになりました。なぜなら消費者はパーソナライズされたサービスを企業に求めると同時に、個人情報の保護も求めるようになっているからです。
どのようにしたらクッキーレス時代の中で顧客のニーズを理解し、顧客が求めるパーソナライゼーションを提供していけるのでしょうか。答えは、企業が必要とする顧客のプライバシー情報をカスタマーエクスペリエンスの中に組み込んでしまうことです。簡単に言うとAIチャットボットに尋ねてもらうのです。

今回はマッキンゼー社のEコマースに関する最新レポートと、米国のカスタマーサービスにおけるトレンド情報をもとにパーソナライズを実現する方法を説明していきます。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、15年間にわたり日本市場へローカライズしてきたCBAが解説します。

2022年の消費者トレンド予測

2020年初頭から、デジタル・データ・プライバシーに関するマーケティングのトレンドはパンデミックの影響により、速いスピードで変化してきました。

消費者のデジタル利用率のグラフ

マッキンゼー社のEコマースに関する最新レポートをご覧ください。消費者のデジタル利用率が過去10年間の合計より、この1年間のほうが多くなっています。リアル・デジタル・バーチャルな体験が今まで以上に融合しているのです。
たとえば消費者は病院の予約、アクセサリーの購入、ホテルのチェックインなど様々な体験をデジタルを介して行うようになっています。

つまり現在のマーケティングにおけるトレンドとは、デジタルを利用したカスタマーエクスペリエンスが標準になっているということです。
個人商店からフォーチュン500の大企業まで、デジタルを使ったカスタマーエクスペリエンスの構築を余儀なくされています。しかもデジタルの活用に慣れ始めた顧客は、より快適なサービス、つまりパーソナライズされたサービスを求めるようになっています。

2022年の消費者トレンドは、デジタルのパーソナライゼーションが重視されるようになるでしょう。

パーソナライズを実現するのが難しい理由

デジタルを活用する顧客が望むのは、自分にピッタリのパーソナライズされたサービスです。しかしデジタル上でパーソナライゼーションを提供するのは簡単ではありません。
個人情報保護、セキュリティ強化がますます重視されるようになっているからです。

2018年以降AppleのSarafiでは、3rdパーティクッキーや計測に関する規制が強まっています。Google Chromeは、2023年には3rdパーティクッキーを規制する予定です。Webにおけるクッキーレスの流れは決定的になっています。

顧客は自分のデータを企業ではなく、自分が管理したいと考えています。「どのデータをいつまで共有するか」「企業は自分のデータを使って何をするか」を自分が決めたいと願っているのです。

これまで企業は顧客にパーソナライゼーションを提供するため、いくつもの技術を使ってきました。

  • マスクデータ
  • ホモモーフィック暗号化
  • セキュアフォーム
  • フィンガープリンティング

しかし、もっとシンプルに顧客にパーソナライゼーションを提供できる方法はないのでしょうか。顧客に企業から監視されていると感じさせずに、マーケティングに必要な個人情報を手に入れる方法はないのでしょうか。

パーソナライズを実現するのはAIチャットボット

AIチャットボットは、プライバシー重視とパーソナライゼーションという相反する課題を解決してくれます。これまでのカスタマーエクスペリエンスにAIチャットボットを組み込むだけで以下のことが実現できます。

  • 顧客の個人情報保護
  • 収益アップ
  • コンバージョン率の向上
  • 顧客ロイヤリティの向上

AIチャットボットと顧客が会話することで、上記の4つのポイントを実現していけるのです。

AIチャットボットの対応例

上記の写真には、アパレルECサイトのAIチャットボットと顧客の会話が表示されています。AIチャットボットが顧客に「買い物履歴をどれくらいの期間保存して良いですか」「今回の情報を在庫管理に役立てても良いですか」と尋ねているのです。

AIチャットボットを使うなら、1stパーティデータを顧客からの信頼を失わずに収集していけます。データの保存期間、使用用途の許可を、顧客が買い物をしている機会を活用して収集することが可能です。

マーケティングに欠かせない1stパーティデータ

AIチャットボットを活用することで、カスタムインテントデータを構築していけます。カスタムインテントデータとは、なぜ顧客が自社を利用したかを知るデータのことです。
具体的には「何を知りたいのか」「何をしたいのか」「何を買いたいのか」といった顧客の意図を正確に知るデータを表します。「手続きに必要な書類について知りたい」「注文状況を確認したい」「商品選びを手伝ってほしい」などのデータを収集することです。

本人から直接手に入れる1stパーティデータはマーケティングに大いに役立ちます。正確なデータなので、データを活かした顧客のニーズと希望に合わせたカスタマーエクスペリエンスを作りやすくなります。
さらに1stパーティデータに基づいてカスタムインテントデータを構築することで、製品、UX、サプライチェーンの改善など、より規模の大きな調整を行っていくことができます。

「1stパーティデータの入手は難しい」と思われるかもしれません。しかしAIチャットボットとの会話によって、顧客は自分が入力したデータが快適な買い物に役立つことをまず体験できます。そして体験した直後に、データの使用方法についてボットから質問されるので快く協力したくなるのです。結果として個人情報の収集率が高くなっていきます。

最後に

AIチャットボットは顧客と企業が双方向でつながる機会を与えてくれます。顧客はAIチャットボットによるサービスを「個人情報を保護しながらパーソナライゼーションを提供してくれている」と受け止めます。企業は顧客とのエンゲージメントを高め、収益、コンバージョン、ロイヤリティを向上させることができます。
クッキーレス化は進んでいきますが、AIチャットボットを活用することで、パーソナライゼーションを実現していきましょう。