自社にチャットボットを導入しようと検討しておられるかもしれません。チャットボット導入の成功を左右するのはシナリオです。利用者が「知りたい情報を教えてくれる」「使い方が簡単」と感じるチャットボットを作るにはシナリオが重要になります。

今回はチャットボットのシナリオ設計について解説します。チャットボットのシナリオとは何か、シナリオを作成する6つのステップを説明していきます。後半ではシナリオ設計がほぼ必要ないケースも紹介するのでご覧ください。

「シナリオって自作できるの」「効率よくシナリオを作りたい」「とりあえずシナリオ作成が簡単なのかどうか知りたい」人向けの記事です。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、15年間にわたり日本市場へローカライズしてきたCBAが解説します。

チャットボットとは

最初にチャットボットについて説明しておきます。チャットボットとは、人間の代わりにお客さまとのチャット(chat)をロボット(bot)が実行してくれるプログラムのことです。日本では2016年頃から普及し始めています。

チャットボットの種類

大きく分けてチャットボットには二つの種類があります。

  • AIチャットボット
  • シナリオ・チャットボット

AIが自ら学習しながら柔軟な対応ができるAIチャットボット、あらかじめ設定されたシナリオ通りチャットをするシナリオ・チャットボットの二種類です。最近はAI搭載型のチャットボットが採用されることが多くなりました。

AIチャットボットでもシナリオ・チャットボットでも、シナリオ設計は必要です。

チャットボットのシナリオって何?

チャットボットのシナリオとは、利用したお客さまが必要とする情報にたどり着くための導線のことです。たとえば、ある商品について不明な点を知りたいお客さまが、できるだけ早く情報を見つけられる導線を用意することがシナリオ設計なのです。

シナリオ設計には、「何をボットに質問させるか」「どんな答えを提示させるか」「どのタイミングで有人チャットへ切り替えるか」を決めることが含まれます。

シナリオ作成が大切な理由

質の高いシナリオを作成できれば、利用者は短い時間で知りたかった情報を手に入れられます。結果として顧客満足度を向上させられます。
反対にシナリオの質が低いと、利用者は同じ質問を何度も繰り返されるループ状態に陥ったり、見当外れの情報を提示されたりして、貴重な時間を無駄にします。
カスタマーサクセスの観点からシナリオ作成は非常に大切です。

良いシナリオはコンバージョン率やアップセル・クロスセルを向上させることに繋がります。

チャットボットのシナリオ設計をする方法

「シナリオ設計は難しそう」「プログラミングができる担当者がいない」と不安になるかもしれません。結論から言うと、シナリオ設計には時間がかかりますが難しすぎるわけではありません。さらに最新のチャットボットツールは、プログラミングができなくてもある程度シナリオを作れるようになっていますので安心してください。

ではチャットボットのシナリオ設計に必要な6つのステップを見ていきましょう。

  • 課題点の洗い出し
  • ペルソナ設計 
  • 質問のリストアップ 
  • チャットボットの作業範囲を確定 
  • フローの作成
  • テスト

それぞれ何をすべきか説明します。

ステップ1. 課題点の洗い出し

チャットボットで解決したい課題を整理してください。なぜチャットボットを導入するのか明確にする必要があります。
課題が曖昧なままチャットボットを導入すると、「導入効果が感じられない」「そのまま放置」「維持のためにお金と人のコストが無駄にかかる」という状態になりかねません。

多くの企業はどのような課題を解決するためにチャットボットを導入しているのでしょうか。参考のために、よくある課題を以下にあげておきます。

  • 問合せ対応
  • マーケティングへの活用
  • コンバージョン率の向上
  • 新規顧客の開拓

問合せ対応:一番よく見かける課題が、「お客さまの問い合わせが多すぎて対応が追いつかない」「対応コストが増えている」です。たとえばコールセンターでは待ち呼・放棄呼が問題になっており、オペレーターの負担を緩和するためにチャットボットを導入するケースがあります。

マーケティングへの活用:一部のチャットボットには利用者が入力した情報を分析する機能が搭載されています。お客さまの動向を把握し、マーケティングに活かしたいと考え、導入する企業も多いです。

コンバージョン率の向上:ECサイトで多い課題が、コンバージョン率の向上です。「サイトの訪問者が必要な商品をすぐ見つけられるようにしたい」「購入を迷っている商品の特徴を伝えて購買を促したい」「カゴ落ちを防ぎたい」といったケースです。

新規顧客の開拓:企業サイトへの訪問者との接点をチャットボットで増やし、新規顧客を開拓していきたいケースもあります。BtoB企業に多い課題です。

ステップ2. ペルソナ設計

課題がはっきりしたあと、チャットボットを利用するであろうお客さま(ペルソナ)を具体的にイメージしてください。ペルソナ設計やマーケティングでよく使われる手法です。
具体的にペルソナを思い描くことで「とくに注力すべき問合せ」「チャットボットの口調」「想定される利用者の言葉づかい」がわかってきます。

ペルソナ設計の際には次の点を考えましょう。

  • 名前
  • 年齢
  • 問い合わせの目的
  • 仕事
  • プロダクトに関する知識レベル
  • 利用端末

自社の顧客データ、お問い合わせ利用者のデータを基にペルソナを作っていきます。

ステップ3. 質問のリストアップ

課題とペルソナがはっきりしてくると、利用者がチャットボットに何を質問するかが見えてきます。続いて、想定される質問のリストアップをしましょう。
予想される質問をすべて洗い出し、似た質問をカテゴリごとに分けていきます。今まで蓄積してきたFAQ情報を活用することができるでしょう。

ステップ4. チャットボットの作業範囲を確定

チャットボットは何でもできる万能ツールではありません。そのためチャットボットの作業範囲と人間の作業範囲を分けてください。
チャットボットが対応する質問、もしくは対応するカテゴリを決めます。利用者からの質問が○個以上になったら人間のオペレーターへ切り替える、といった点も決めておくとよいでしょう。

チャットボットの作業範囲を決めるのに役立つ情報を紹介します。
一般的にチャットボットに割り当てるカテゴリは5つまで、質問のステップは4つまでとされています。多すぎるとシナリオ設計が複雑になりますし、お客さまも延々と質問されてイライラしてくるからです。
ただしこの数字はあくまで平均であり、扱う業務によって変わってきます。

ステップ5. フローの作成

これまで揃えた情報を基にしてチャットボットの応対フローを作成していきます。チャットボットのお客さまへの挨拶からクロージング、もしくは有人チャットへの切り替えまでの流れを組みます。
フローを作成するときにチャットボットをどのタイミング、どのページで表示させるかも決めてください

チャットボットから人間へ切り替える様子を動画からご覧いただけます。

ステップ6. テスト

一旦フローが出来上がったらテストを行い、イメージ通りの使い勝手になっているかチェックしましょう。

可能であればベテランオペレーターにテストしてもらってください。

顧客対応の経験が豊富なオペレーターは、お客様目線で会話の自然さ、想定される質問の口調などをチェックすることができます。

チャットボットのシナリオ設計の際に、「人」の大切さがわかる動画もご覧ください。

実際にシナリオ設計する手順を見てみよう

実際にツールを使ったシナリオ設計の様子を見てみましょう。ツールを使うのはステップ6のフローを作成する段階からです。

流れをイメージしやすくするため、弊社のLivePerson(ライブパーソン)を使って解説します。

1. 「簡単シナリオ設計」メニューを選ぶ

チャットボットのシナリオ設計
(左上のノンコードで設計できるメニューを選ぶ)

2. シナリオのフローを作る

チャットボットのフローを作成
お客さまへの挨拶からクロージングまでのフローを作成
チャットボットのシナリオテンプレート
テンプレートのフローをそのまま使用することも可能(小売業用のFAQ用・新規アカウント作成サポート用・プロモーション用などのテンプレートがある)

3. 必要なら画像や動画などの機能を追加する

チャットボットのフローに画像を入れる
画像や動画をフローに含めると見やすいシナリオになる
チャットボットのシナリオに画像を入れる

4. テストする

チャットボットのシナリオをテストする
フローを追加するごとにテストする

▶参考情報:リンク先のサイトで動画からシナリオ作成の流れを見ることもできます。
https://knowledge.liveperson.com/ai-bots-automation-conversation-builder-conversation-builder-overview.html

シナリオ設計が簡単なチャットボットの特徴 

チャットボットツールは数多くあります。それぞれの製品ごとに違った特徴があり、得意分野があります。しかしこれだけはあると便利という特徴がありますので6つ紹介します。

  • エンジニア以外でもシナリオ設計ができる
  • ドラッグ・アンド・ドロップでシナリオが作れる
  • 管理しやすいダッシュボード
  • ベテランオペレーターが参加できる
  • テンプレートが豊富
  • 他システムと統合しやすい

各特徴について見ていきます。

エンジニア以外でもシナリオ設計ができる

プログラミングができない担当者でもシナリオ設計ができるツールを選んでください。なぜなら必ずしもエンジニアがカスタマーサービスに詳しいわけではないからです。シナリオ設計に必要なのは、お客さまのニーズや現場対応の経験が豊富な担当者です。

ドラッグ・アンド・ドロップでシナリオが作れる

チャットボットのシナリオをドラッグ・アンド・ドロップで作る

専門的な知識がなくてもシナリオ設計がしやすいのは、ドラッグ・アンド・ドロップでフローが作成できるツールです。ドラッグ・アンド・ドロップでフローを構築できれば、運用を開始したあとに最適化したり改善したりすることが現場レベルで行なえます
コードを書き直さなければいけないツールの場合、調整するたびに開発部門へ依頼しなければいけなくなります。シナリオの最適化に時間がかかってしまうので気をつけてください。
可能な限り早くお客さまが使いやすいシナリオへ改善していくには、ドラッグ・アンド・ドロップ機能があるツールがベストです。

管理しやすいダッシュボード

チャットボットの管理画面

チャットボットの運用は機械任せでは限界があります。適切なタイミングで有人チャットやオペレーターとの会話へ切り替えなければなりません。
ボットから人間への切り替えは自動で行われるものの、ボットの動作を人間が管理することは必要です。とくに繁忙期にはチャットボットから有人チャット、会話担当オペレーターへの流入を規制しなければいけないケースがあります。リアルタイムの管理がしやすいダッシュボード機能があるツールは、状況の把握とスムーズな顧客対応の実現に欠かせません。

ベテランオペレーターが参加できる

AIチャットボットは最初にシナリオ設計したあとも、学習を継続させていく必要があります。一般的にAIの訓練に割り当てられるのはエンジニア、開発者、製品マネージャーなどです。しかしAIにお客さま対応を教え込むのに最適な人材は、現場で働くオペレーターです。
チャットボットの運用には技術者スタッフがメインでアサインされることがあるかと思いますが、必ず運用チームにベテランオペレーターも含めるようにしてください。

テンプレートが豊富

チャットボットのテンプレート

テンプレートが豊富なツールはシナリオ設計の時間を短縮するのに役立ちます。小売業、通信業、金融などのテンプレートがあると便利です。さらに上記の画像にあるようなローン申し込み、FAQ対応などの細かなテンプレートが設定されているとフロー構築の手間を省略できます。

他システムと統合しやすい

チャットボットツールは他システムと統合しやすいと効果的な運用が可能です。たとえば以下のようなシステムと統合できるツールは拡張性が高く、将来的に運用の幅が広がります。

チャットプラットフォーム(Webサイト、LINE、Instagram、SMS、Apple Business Chatなど)

運用サービス(Shopify、Salesforce、Timetrade、Hybrisなど)         

社内データ(製品カタログ、注文システム、ナレッジベースなど)        

チャットボットと上記のシステムを統合できると、運用開始までのスピードが早くなります。たとえば小売用テンプレートを使ってシナリオ作成し、すぐにShopifyへ統合して運用を開始できます。

チャットボットのシナリオ設計が簡単なケース 

もしかしたら「シナリオ設計には時間がかかりすぎる」「できるだけシンプルなシナリオからとりあえずスタートしたい」と思われるかもしれません。実はシナリオ設計が必要ないケース、もしくは簡単なシナリオだけで運用を始められるケースがあります。2つの事例を取り上げます。

質疑応答ケース

お客さまがする一つの質問に一つの答えを提示するケースは、複雑なシナリオ設計が必要ありません。あらかじめFAQ情報をチャットボットに登録し、チャットボット利用者に「よくある質問」を提示させ、選ばれた質問への答えを提示するだけであればシンプルなフローで完結します。

手続き受付ケース

照会、申し込み、資料請求手続きの受付でチャットボットを運用するケースは簡単なシナリオで十分です。手続きに必要な情報を入力していくようお客さまへ案内させるだけで良いからです。

品質が高いシナリオを作るコツ 

お客さまにとって使い勝手が良い質の高いシナリオを作るコツは3つあります。

  • 会話のトーンを柔らかくする
  • 定期的にチューニングする
  • サポートサービスを活用する

チャットボットはオペレーターの代わりにお客さまとコミュニケーションをとるツールです。そのため会話のトーンが重要になります。利用者が親しみを湧くような口調、自分のことがわかってもらっていると思えるような相づちなどを含めるようにしてください。

記事の中で何度か繰り返していますが、チャットボットのシナリオは定期的に見直してください。見直すときに注目すべき点は、「どこで離脱しているか」「ループしている箇所はないか」です。

シナリオ設計の際や改善をするときに、ベンダーのサポートが必要だと感じることがあるかもしれません。とくにAIのトレーニングに専門家の知見は助けになります。すべてのケースでサポートが必要なわけではありませんが、ある程度施策を打っても効果が実感できないときなどは、コンサルティングを依頼することができるでしょう。

最後に

チャットボットのシナリオ設計をする方法は課題点の洗い出しから始まります。質問のリストアップや質問のカテゴリ分けはお客さまの利便性に直結する部分ですので時間をかけてください。フローの作成はチャットボットツールのテンプレートを使うと工数を短縮できます。

もし「どこから手を付ければよいかわからない」「とりあえずスモールスタートで運用経験を積んでいきたい」といったときには、質疑応答ケースや手続き受付ケースから始めてましょう

チャットボットのシナリオを最適化していくと、顧客満足度を向上させることができます。さらにカスタマーサポートの担当者の負担を和らげられたり、コールセンターの業務を効率化させられたりします。ぜひ7つのステップを参考にしてシナリオ設計にトライしてみてください。