各自治体へChatGPTの導入が進んでいます。本格活用を進める横須賀市やつくば市、試験導入に着手する笠間市、神戸市、そして長野県などです。しかしChatGPTの運用は、主に職員の業務の中でのみ使用されています。

一方、自治体の業務において負担が大きいのは「問い合わせ対応」です。市民の問い合わせに対応する窓口業務、コールセンター業務にはさまざまな課題があります。

どの自治体でも「窓口業務の負担を軽減したい」「コールセンターの案内ミスを減らしたい」「市民へ文書による周知に限界を感じる」「よくある市民からの問い合わせについて正確な対応をしたい」との課題があることでしょう。

今回は、自治体における問い合わせ対応の課題解決にChatGPTがどのように貢献するかを解説します。弊社が行っている自治体用のGPT開発の概要についてもレポートします。最後には、セキュリティに気を付けた運用の仕方についても説明するのでご覧ください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、17年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

自治体のコールセンターへの問い合わせをChatGPTに答えさせる

ChatGPTは自治体の「窓口業務」と「コールセンター」のすき間を埋めるツールとして活用できます。窓口に行って尋ねるほどの質問ではないものの、誰か詳しい人に説明してもらいたいとのニーズにこたえられます。

たとえば以下の項目を回答させることができます。

  • 市の各種手続きや届け出
  • 施設の情報
  • イベント開催情報
  • イベントのネット申し込み

「市役所のどの部署に問い合わせればよいか分からない」「ごみの分別方法や収集日について教えてほしい」「イベントに行きたいけど、開催の日時や場所が知りたい」などの質問に答えてくれます。

運用の精度が上がってくれば、税務部市民税課が扱う「税金や保険料の計算方法の案内」や「督促状が届いた際の納付の相談」などの対応も可能でしょう。

自治体のコールセンターがChatGPTを活用するメリット

自治体のコールセンターがChatGPTを活用するメリットは主に5つあります。

  • コールセンター・窓口の業務時間外に問い合わせをしたい人の対応
  • ろうあ者のフォロー
  • 視覚障がい者のフォロー(ChatGPTと音声対応の組み合わせ)
  • 曖昧な言葉で必要な情報を引き出せる
  • 書面・窓口で周知徹底できない情報を丁寧に発信できる

ChatGPTはAIですので、24時間365日稼働することができます。そのためコールセンターや窓口が稼働していない時間帯でも問い合わせに対応することが可能です。

文字で精度の高い会話ができるため、ろうあ者のフォローに向いています。ChatGPTと音声対応を組み合わせると、視覚障がい者のフォローもしていけるでしょう。

※ChatGPTと音声対応を組み合わせる開発については後ほど解説します。

従来の「よくある質問」の検索では、ぴったりのキーワードを入力しないと適切な回答が得られませんでした。一方、ChatGPTは曖昧な言葉で質問しても、適切な回答が得られるようにサポートしてくれます。

ChatGPTには「書面・窓口で周知徹底できない情報を丁寧に発信できる」というメリットがあります。

たとえば、税金の申告について書面で市民へ通知をしても、なかなか内容を理解してもらうのが難しいことがあります。市民側から「所得が101万円以下は申告が必要ないなんて知らなかった」といったクレームが来ることがあるでしょう。しかし自治体側では「郵送している申告の手引き書に書いてあるでしょう」「窓口でも説明していますよ」と言いたくなります。ChatGPTであれば、手引き書の内容を短く要約しながら説明してくれます。

自治体の問い合わせ対応でChatGPTが活用できるかやってみた

本当に自治体の窓口業務とコールセンターのすき間を埋めるため、ChatGPTを活用できるのでしょうか。弊社ではChatGPTで問い合わせ対応ができるか開発が行われています。その様子を簡単に紹介します。

FAQをChatGPTに説明させる

自治体から提供されたFAQ情報をナレッジベースとして、ChatGPTが市民からの質問にチャット対応できるサイトを作ってみました。

デモ開発の流れとしては、まず自治体が作成したFAQの情報が保存されているエクセル情報を加工します。

自治体が作成したFAQの情報が保存されているエクセル情報を加工します

その後、ChatGPTにワクチン接種の情報などについて答えさせていきます。

ChatGPTにワクチン接種の情報などについて答えさせていきます

ChatGPTの導入・運用をできるだけスムーズにするためには、AIに学習させる資料を整理整頓することが重要になります。AIに学習させる資料を用意するときには、「△・◇などの特殊文字をできるだけ使わない」「Q&A形式でデータを揃える」などを意識していると導入をスピーディに行えます。

開発の詳細については、下記の記事をご覧ください。

電話対応をChatGPTにさせてみる

ChatGPTに電話対応をさせる仕組みづくりは数秒で実現ます。弊社のエンジニアが「現場ですぐできるChatGPTの音声対応」について記事を作成しているのでご覧ください。

「Asterisk PBXを使用して、ChatGPTを開発するOpenAI社のAPIで電話応対が実現できるかテストしてみる」という実験が行われました。作業時間が短いにもかかわらず、おおむね自然な会話がAIで行える結果となりました。

弊社ではChatGPTだけでなく、「AIに問い合わせ対応を行わせる開発」を行っています。コールセンター業界で培った17年の知見を活かした開発です。

セキュリティの不安に対処する

ChatGPTが自治体の問い合わせ対応に活用できるとしても、「市民の個人情報が漏洩することはないのか」「間違った回答をしてしまわないのか」といった心配があることでしょう。

ChatGPTを扱っているOpenAIは、「API経由で使用されるケースではデータを学習に使わない」説明しています。つまりChatGPTのAPIで読み込まれる自治体のデータが、OpenAIの開発のために使用されることはないということです。

そうではあったとしても、リスクを最小限に抑えるために機密情報はChatGPTに読み込ませないほうが良いでしょう。一般に公開されている「施設の情報」「手続きの情報」「イベント情報」などにとどめておくのが安心です。

間違った回答を防ぐためには、ChatGPTが生成した回答に参照資料を表示させるなどの機能を追加できるでしょう。

最後に

弊社ではChatGPTに加え、「AWS Kendra」や「Azure Cognitive Search」を使った問い合わせ対応の開発にも取り組んでいます。ChatGPTよりも簡単な導入、安心できる運用を実現していきます

コールセンター業界で培った17年の知見を活かし、より自然な回答をAIが生成できるようなファインチューニングも得意にしています。

自治体における問い合わせ対応にAIを活用したいときにはお気軽にご相談ください。