長年問題視されている、コールセンターの人材不足。それにも関わらず、コールセンターのニーズは拡大し、対応しなければならない業務の多様性も増すばかり…。いたちごっこのようにすら感じることもあるのではないでしょうか。

しかし、実は、今が人材不足の解決に乗り出す絶好のチャンスであるとをご存じでしたか。「月刊コールセンタージャパン」の2022年2月号の調査によると、コロナ禍でのシフト減少を理由に、一般の転職希望者がアンケート回答者の半数を超えているのです。そのうち8割が、今とは異なる職種を希望しています。つまり、この「8割の転職希望者」たちに自社を見つけてもらえるとしたらどうですか。ついに人材不足問題へ「さようなら」を言えるかもしれません。

では、どうやって「8割の転職希望者」たちに自社を見つけてもらえるでしょうか?

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コールセンターの人材不足解消に必要なのは「即戦力」

長いこと人材不足に悩まされていれば悩まされている分だけ、なるべく即戦力になる人材が欲しい!と望むものです。では、「即戦力になる人材」とは具体的にどういう人でしょうか。

コールセンター経験者は言わずもがなですが、前述のコールセンタージャパンのアンケート結果によれば、転職希望者たちの多くがキャリアチェンジを検討しています。つまり、コールセンター未経験者の転職希望者が圧倒的に多いということです。

コールセンターにおいて、業務スキル以外に求められる要素は何ですか。恐らく、何を差し置いても「お客さまへの高いホスピタリティ」が挙げられることでしょう。

お客さまへの高いホスピタリティを既に持っている人材というと、対面接客・対人業務経験者はかなりのアドバンテージを持っていると言えます。しかも、コロナ禍でシフト減少のあおりを一番食らったのが、まさにこの対面接客の業種(飲食店や観光・旅行業など)です。

即戦力になる人材確保という観点から、対面接客経験者を新たな人材としてターゲッティングしてみると、コールセンター側が打つべき策も変化してくるはずです。

コールセンターの人材不足を解決するのは女性たち!?

さて、ひとことに「対面接客経験者」と言えど、その男女比はどうでしょうか。総務省統計局の最新の経済センサスによれば、該当業種の男女比は図1のようになります。

産業大分類、男女別従業者数の構成比
図1 産業大分類、男女別従業者数の構成比

対人業務に従事している人の半数以上が女性です。ちなみに、既出のコールセンタージャパンのアンケート対象者は女性でした。つまり、女性の半数が転職希望をもっており、その女性たちの大半が対面接客、または対人業務の経験者なのです。

コールセンターの人材不足の解決をもっと大枠で捉えると、女性たちのキャリアチェンジという長年の命題に対して、コールセンター業界がいかに寄り添えるかがポイントになります。

女性の転職希望者に寄りそうとのテーマは、4月の育児・介護休業法の改正により、ことさらにホットなテーマになっています。しかし女性のキャリアチェンジにとって一つの壁になるのは、就業条件のマッチングです。働き方の条件をマッチングさせるとの観点から、コールセンター側は女性の転職希望者に何をアピールできるでしょうか。

1.就業環境を見直す

育児中の女性にとって就業環境は、転職先の選択で一二を争う大きな要素になります。在宅勤務の導入や、サテライトオフィスの構築は非常に効果的なアピールポイントになるでしょう。

しかし、在宅勤務やサテライトオフィスの導入メリットは、決して女性たちばかりが享受するわけではありません。会社全体にとってのメリットにも繋がります。例えば、実際にこの2つをすでに導入しているコールセンターによれば、オフィス内の3密を回避できたり、時短勤務だったスタッフがフルタイムワーカーになったりしています。既存の従業員を定着させることにも役立っているのです。

在宅であるがゆえに、セキュリティへの不安もありますが、コロナ禍における在宅勤務の増加に伴い、セキュリティ面の進化はめまぐるしいものがあります。

2.育児に関する保証の強化

育児中の女性にとって、転職の決め手になるポイントは2つあります。

  • 手続き面、社内の雰囲気においても育休を取りやすい
  • 育休中でも一定の業務に従事できる

上記の点は、今まさに育児中の女性にとって転職の決め手になる要素です。

「育児に関する保証の強化」に関しては、男性も例外ではありません。近年、育休を取得したいと望む男性は、女性と同数かそれ以上の比率で存在しています。

その上で、育休中でも一定の業務を行いたいと望む人たちも多いのが現実です。

育児・介護休業法の法改正に期待すること
図2 育児・介護休業法の法改正に期待すること(参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000089.000013597.html

「育児休暇中でも適度に働きたい」というニーズは、Win-Winな立場で仕事を継続できる可能性を秘めています。「もし入社してすぐに育休を取られたら…?人材不足だから採用したのに…。」と心配になるかもしれませんが、仮に在宅勤務がすでに導入されていたり、シフト制のようなフレキシブルな働き方が許されていたりすれば、彼/彼女たちは育休中であっても会社の仕事を喜んで行ってくれます。

働き方のバリエーションは、現在は結婚していない/子どもがいないという女性にとっても、同じコールセンターで長く働けるかを考える上で重要な点です。育休の保証や支援が手厚いコールセンターとそうでないコールセンターであれば、間違いなく前者が選ばれます。

「育児に関する保証の強化」には、既存の女性従業員の離職を防ぐメリットもあります。

人材不足という問題において、新しい人材を確保することはもちろん大切ですが、それと同等かそれ以上に、既存の従業員を離職させないことも大切です。

3.保育施設の併設

「保育施設の併設」をすぐに実施することは難しいかもしれません。しかし保育施設の併設は間違いなく功を奏す策です。社会的に根強い保活問題は未だに解決されておらず、以下の傾向がよく見られます。

「子どもを預けられないから職場復帰できない」→「ブランクが長くなる」→「子どもの預け先が見つかったときには、仕事に戻れず辞めるしかない…」

もし、社内に小さくとも子どもを安心して預けられる場所があれば、女性たちはより早く職場復帰が可能になります。場合によっては時短勤務をする必要すらなくなるかもしれません。長い目で見れば、「保育施設の併設」これもまたコールセンターの人材不足を事前に防ぐ策と言えるでしょう。

オペレーターファーストでコールセンターの人材不足を解決

ここまでは女性にフォーカスをあてて考えてきました。もしかしたら「人材としてのターゲットは女性だけではない。しかも事前に準備しておける働き方のバリエーションには限界がある」と思われるかもしれません。ではもう少し視野を広げた策を考えてみましょう。

地域密着のコールセンター

コールセンターが都心ではなく、地方にある場合は特にこれが重要です。例えば、前述した保育施設の併設において、社員利用専用の保育スペースにとどめず、「保育園」という形にすれば、地域に住む人たち皆が利用することが可能になります。

都心ではなく地方であればこそ、社員の大半が地域住民である可能性は高いでしょう。コールセンターが地域に密着できているかどうかが、社員であり地域住民でもある従業員たちが、会社に定着できるかどうかの変わり目となるのです。実際、自治体と協力しているコールセンターもあります。

資格取得やスキルアップができるコールセンター

理想通りの即戦力を獲得できたとしても、スキルや知識おいて未経験かつ即戦力ではない場合も多いでしょう。だからこそ、スキルや知識面においての基礎固め・レベルアップを図るためのサポートシステムを整えておくことは、コールセンターと従業員の双方にとって有効です。

スキルアップ制度が整っている会社は、未経験でもサポートしてもらえる安心感があるだけ、より多くの人材が求人に応えてくれます。

飲食店のようなシフト制の導入

 在宅勤務の導入や、育休を取りやすくすることはもちろん非常に良策ですが、それらを包含すると、結局は各従業員のライフステージに合わせた働き方を叶えてあげることが最重要になります。

しかし全てのケースを事前に予想して、完全な準備をしておくというのは、現実味のない展望でしょう。コールセンターの規模が大きければ大きいほどより困難になります。

したがって、「シフト制」の導入を検討することは、比較的現実的な策と言えます。各社員の契約時間をベースにしつつもシフト制にするなら、基本的な生活コントロールは各社員のさじ加減次第ということになるのです。シフト制になれば、育休を取らなくても仕事を続けられるケースが出てくるかもしれません。

メンタルヘルスケアができるコールセンター

 コールセンターの離職率が高い原因として、ストレスが挙げられることは珍しくありません。クレーム電話も含めて、業務内容が比較的ストレスフルであることを認め、その最前線にいるオペレーターたちのメンタルケアすることは、既存オペレーターたちの離職を防ぐことに効果的です。

例えば、社内にリラックスできるカフェテリアを設けているコールセンターがあります。些細なことに思えるかもしれませんが、否が応でもストレスがかかる仕事の中で、ほっと息を抜けるその瞬間が良質であれば、ストレスを多少なりとも自己軽減することが期待できます。

オペレーターが知らず知らずのうちにため込んでしまうストレスは、顧客対応の悪化という形で表れてしまうかもしれません。応対品質の低下は対応したオペレーター一人の問題ではなくなってきます。

コールセンター側でできることは、ストレスを「かけない」ようにすることではなく、「ため込まない」ように予防することです。

別策として、定期的な面談の機会を設けるのも有効的でしょう。現場のストレスの種類や原因次第では、会社として改善できることが自ずと見つかってくるはずです。改善点を洗い出すことにが、回り回ってCX向上へつながっていきます。

いずれの分野においても必要なのはスピーディーな柔軟性であり、“当たり前”や“普通”を固定しないことです。オペレーターありきのコールセンターだからこそ、「オペレーターファースト」を実現し、オペレーターに合わせたダイバーシティ化を積極的に取り入れていきましょう。

最後に

拍車のかかる人材不足に対し、「良い人材をより早く、より多く獲得したい」と思わず期待してしまいます。おそらく、どのコールセンターも同じです。だからこそ「会社が即戦力を選ぶ」のではなく、「即戦力に会社を選んでもらう」構図を完成させましょう。今できることから少しずつ体制を整えていくことが必要不可欠です。

企業としてのブランド力(外向きのブランド力)も大切ですが、職場としてのブランド力(内向きのブランド力)を定着させることが理想です。「ここで働きたい」「ここで働けていることが誇り」「ここが一番」。こうしたマインドが各従業員たちにあれば、必然的に離職率は下がり、新たな人材も入ってくることでしょう。

「職場としてのブランド力は、アパレル業界と違ってあまり伝播しない」と思われますか。または「働き方のバリエーションを整えたとしても、コールセンター業界の中でどの程度評価されるのか、結果が出てくるのか分からない」と感じますか。

今はSNS全盛期であるからこそ、良い評判も悪い評判も、思っている以上に身近に転がっていて広まっていきます。まして、この時期に転職を検討している年代層は、まさにSNSを活用している世代です。SNSの伝播力をモノにし、オペレーターファーストを実現できるコールセンターなら、長年の人材不足問題に終止符を打つことができるでしょう。