「チャットコマース」をご存じでしょうか。日本においては、会話形コマースと呼ばれることもあります。この言葉は最近流行りだした…というわけではありません。以前から、世界におけるビジネスの必須条件になっている言葉です。
今回は、チャットコマースとは何か、チャットボットはどのような役割を果たすのか解説していきます。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
チャットコマースとは
チャットコマースとは、企業が様々なツールを用いて顧客とコミュニケーションを取り、購買プロセスをサポートすることです。
マルチチャネルマーケティングの代表格ともいえるチャットコマースは、言うまでもなく企業と顧客の両者にメリットがありますが、そのメリットをより大きくするには、デジタルメッセージングツールやボットを用いることがカギになります。
「コミュニケーションが商売を動かす」という原理は、企業が消費者とコミュニケーションを取る際に証明されます。消費者と良好な関係を築くためには、コミュニケーションが欠かせません。ビジネスにおける顧客とのコミュニケーションは、顧客エンゲージメント戦略の一部です。とくに今は、状況に応じてパーソナライズされたエンゲージメントが必要です。
チャットコマースの普及
会話型コマースそのものは以前から存在していましたが、マーケティング、セールス、サービスそれぞれの重要な側面として価値の見直し・再導入がなされ、2015年にはクリス・メッシーナによって「カンバセーションコマース」という言葉が生み出されました。現在では、「チャットコマース」という言葉のほうが普及しています。どちらも似た意味を持ちます。
余談ですが…
興味深いことに、彼は私たちの誰もがSNSで多用している「#」(ハッシュタグ)を2007年に発明した人物でもあります。
無制限のデジタル化と、ショッピングの場として複数のプラットフォームが突然利用可能になったことにより、企業間の競争のレベルも格段に上がることになりました。ただただ商品を販売することだけが目的ではなくなったのです。各ブランドは、親しみやすさとプロフェッショナルさを両立させ、その中でお客様に「すごい!」と思ってもらえるように、これまで以上に戦略を練る必要に迫られました。
商業ビジネスは大きな変化を余儀なくされ、カスタマーサポートはインテリジェント化、コンタクトレス化、効率化、そしてデジタル重視へと変わっていきました。そしてメッセージングも変化してきています。もはやコミュニケーションではなく、トランザクション(取引)となっているのです。
2022年以降、顧客の期待に応えるオムニチャネル・エンゲージメント戦略が主流になることは火を見るよりも明らかでしょう。顧客は今まさに、アプリ、AI、ボット、メッセンジャーなどの企業が用いるテクノロジーを通じて、複数のタッチポイントの…いわば「交差点」にいるのです。しかしお客様は、人間味を感じられ、なおかつスマートなコミュニケーションを求めています。
チャットボットが顧客満足度を上昇させる
ビジネスの成長に欠かせないチャットは、サービスチームにとっても非常に重要です。バーチャルアシスタント、AI搭載チャットボット、テキストやメッセンジャープラットフォームによるサポートは、お客様の「旅」をサポートできるツールになります。
そのため、これは企業組織全体の顧客満足度(C-sat)スコアに直接的な影響を及ぼすと言えるのです。
会話型テクノロジーの進化
カスタマーサポートは、自動チャットボットから会話へと進化しています。やり取りはチャットインターフェースに限らず、メール対応、自動フォローアップメッセージ、AI主導のコミュニケーション技術、データ・機械学習(ML)・自動言語処理(NLP)・テキストやタッチから音声まで、様々な入力信号を利用するバーチャルアシスタントなど、多種多様なメッセージングプラットフォームが存在しています。
こうした技術は、AIを大いに活用して私たち人間の会話を模倣し、ブランド・ジャーニーを通じてお客様に寄り添おうとするものです。
消費者を中心とした会話
最近の消費者は、企業の戦略が消費者ファーストであることを知っています。だからこそ、消費者の「今すぐ欲しい!」という態度をチャットボットとの会話でサポートしてあげられるでしょう。
例えば…
ジョーはノートパソコンを購入するために、ECサイトを閲覧しています。支払中に問題が発生し、商品カートを一度空にすることにしました。
もしAI搭載ボットが顧客(ジョー)の行動を予測し、適切なソリューションを提供するなら、彼の購入完了までの一連をサポートすることができます。すると、企業側は実際に経済的利益を得ると同時に、顧客のロイヤルティを獲得することもできるのです。
この場合、スマートアシストがポップアップして、ジョーがカートを空にする理由を尋ね、簡単な支払いリンク、配送先の変更、翌日配送などの自動化されたソリューションを提供し、その上ジョーが選択した商品よりも良い商品を提案できれば、ジョーが購入に至る可能性があり、その体験に非常に満足してもらえることになります。
注目されるカンバセーションツール
技術の進化と共に、当然ビジネス戦略も進化しています。あらかじめ設定されたルールに基づいて機能するルールベースや、ディシジョンツリーのチャットボットが基本ではありますが、それらはゆっくりと…しかし着実に、より洗練されたチャットボットへ取って代わられつつあります。
最近はどうでしょうか?
現在は、テクノロジーを使って顧客のニーズを事前に予測し、可能な限りパーソナライズされた体験を提供する「予測型オムニチャネル・カスタマーサービス」の時代になって生きています。
例えば、Amazonの「Alexa」や、Googleの「OK,Google」、あるいはAppleの「Siri」を例に考えてみましょう。いずれも人間に近い知能を持つデジタルアシスタントです。音声を含む様々な入力を認識し、多様な指示に従ったり、サービスを拡張したり、顧客を喜ばせたりすることに長けています。
ヘルプデスクでこのようなスマートなチャットボットを使用すると、オペレーターの満足度を高めるだけでなく、より優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供することができます。事実、最近のチャットボットは、ウェブサイトやアプリ、SNSと統合し、顧客にとって製品発見、支払い、ショッピングを1つの場所で完結することが可能です。
チャットボットは、オペレーターの代わりを担い、サポート案件の解決に向けてお客様をインテリジェントに導きます。チャットボットは、企業の能力をさらに向上させる可能性を秘めていると言っても過言ではないのです。急増するチケットの対応、顧客からの問い合わせ対応、さらにはチームのリモートワークをサポートするために使用することができるでしょう。
チャットボットが消費者を巻き込む
チャットボットは、人間味のあるスマートなコミュニケーションをあらゆる人に提供できるようになりました。WhatsApp、Messenger、Viberなどのプラットフォームの親しみやすさ、快適さ、利便性により、スマートフォンを通じて誰もがカスタマーサービスを利用できるようになっているのです。
スマートフォンは、顧客とのエンゲージメントの優れたチャネルであるだけでなく、コンタクトセンターの通話量を大幅に削減することができるツールでもあります。チャットボットは、厳密な訓練と膨大なデータの研究により、AIとディープラーニングを活用してユーザーの意図を判断し、お客様の問い合わせを効率的に解決できます。これによって、最短の顧客対応時間で、オペレータの満足度も上げつつ、かつ直感的な操作を実現することができるのです。
最後に
カンバセーションコマースが企業にとって必要不可欠であることは明らかです。それは、自動化とスマートな会話型タッチポイントをすでに導入している企業の実数から伺い知ることができます。
最新のチャットボットプラットフォームや問い合わせ管理システムを使用すると、複数のチャネルでお客様をサポートし、運用コストを削減しつつ、生産性を向上させられます。結果として、顧客満足度を高めていけるのです。