かなりの浸透を見せている「SDGs」。しかし、なんとなく「環境問題に関する言葉」というイメージが強くありませんか。食品ロスの削減に代表されるように、食品系企業には大きな関係があっても、コールセンター業界にはあまり縁のないものというイメージもあるかもしれません。
一方で、「SDGsに積極的に取り組んでいる企業かどうか」「どのように取り組んでいるか」が、企業同士または労働者から見た企業のブランド基準にもなっています。「世界的な取り組みだから」の理由を除外しても、決して「できる企業がやれば良い」という取り組みではありません。
では、コールセンターとして具体的にどのSDGsに取り組めるでしょうか。取り組み方の一例と、取り組む過程でご活用いただける情報をご説明します。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
SDGsをおさらい
SDGsについて改めて確認しておきましょう。ユニセフはSDGsについて、「誰ひとり取り残されることなく、人類が安定してこの地球で暮らし続けることができるように、世界のさまざまな問題を整理し、解決に向けて具体的な目標を示した」ものと説明しています。2015年に採択され、2030年を目標達成年に設定した取り組みです。全17の目標があります。
人権、経済や社会、地球環境と、多岐にわたった分野での目標設定がされています。当初の目標達成年と設定されている2030年まで、早くもあと7年ほど…。これから本格的にSDGs取り組む企業にとっては、ちょうど中長期的な目標となる年数でしょう。
SDGsに取り組むメリット
「持続可能な社会が実現する」メリットはよく分かりますが、一企業として…「ビジネス」としてSDGsに取り組むメリットは何でしょうか。誤解を恐れずに言えば、「多くの企業がすでに取り組んでいる中で、これから自社が取り組むメリット」は何でしょうか。
一つは、民間企業によるSDGs取り組み支援を受けられるケースがあることです。一例として、コールセンタージャパン2022年2月号に事例が載せられています。
三井住友海上火災保険が、「横浜市SDGs認証制度」を取得した事業者に対して、SDGsへの取り組み支援を無料サービスで展開しています。
二つ目のメリットは、SDGsに取り組んでいる姿勢を見せる/アピールすることで、企業としての対外的な評価が上がることです。逆に言えば、みんながやっているからこそ、やらない企業の価値が下がってしまうのです。SDGsに取り組むか否かが、企業のブランド力、対外的なイメージ、価値判断の一端を担っている昨今、SDGsに取り組まないことはかえってリスクとなります。
「最近の流れの中、SDGsにまだ取り組んでいない企業。企業体制そのものがブラックかもしれない…」就職・転職希望者にあらぬ悪イメージを持たれてしまうと、優秀な人材を逃すことにも繋がります。
持続可能な社会を目指さない限り、魅力的な企業として持続していけなくなっているのです。
コールセンターが取り組めるSDGs
スケールも分野も多岐に渡り、17もあるSDGsの目標。一つの企業が全ての目標にアプローチすることはほぼ不可能です。では、コールセンターとして取り組めるものはあるでしょうか。
一つ一つの目標が定めているターゲットを見ると、コールセンターと親和性の高い項目が見えてきます。このブログではとくに以下の2つに注目します。
- 目標「8」 働きがいも経済成長も
- 目標「10」 人や国の不平等をなくそう
2つの目標ターゲットを見てみましょう。
8 働きがいも経済成長も
8の目標ターゲットの中に、「若い人たちや障がいがある人たち(中略)も働きがいのある人間らしい仕事をできるようにする。そして、同じ仕事に対しては、同じだけの給料が支払われるようにする。」とあります。
10 人や国の不平等をなくそう
同じく10の目標ターゲットには、「年齢、性別、障がい(中略)にかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。」とあります。
それぞれ目標ターゲットの共通点として、「障がいがある人を取り残さない」点が挙げられます。コールセンターとしては、障がいがある方をどのようにサポートできるでしょうか。
障害者雇用促進法により、どの企業も法定雇用率が決められています。2022年現在は2.3%ですが、今後は法定雇用率も引き上げられていくとされています。
一言に「障がい」と言っても、身体的または精神的なもの、程度等、考慮するべき点は多々あります。今回は、視覚障がいをもつ方をどのようにサポートできるか考えてみましょう。
コールセンターが視覚障がい者を支援するために
視覚障がい者が仕事を検討する際、そもそもコールセンターは候補になり得るのでしょうか。実は、コールセンター業務は視覚障がい者に非常に適した仕事です。
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が発行している「はじめからわかる障害者雇用 事業主のためのQ&A集」では、視覚障がいの特性に応じて職務の領域を決めるならば、「視覚的判断や頻繁な移動の必要がない電話対応の仕事」が挙げられています。
とはいえ、日々複雑化しているコールセンター業務。当然、ただ電話を取れば良いだけではありません。しかし、近年の技術の発展により、視覚障がい者にとってオフィスでの事務作業そのものがかなり身近になっていることは事実です。
視覚障がい者がコールセンターで働けるよう何ができるのか…本題に入りましょう。前提として、視覚障がい者が働きやすい環境を作ることは必要不可欠です。職場のバリアフリー化であったり、他の従業員が受け入れられる雰囲気作りであったり…。
今であれば、在宅ワークに対応できているコールセンターの方がより有利でしょう。仮に職場のバリアフリー化が難しくとも、在宅ワークが可能であれば、視覚障がい者の従業員にとっては基本的に働きやすい職場と言えます。
しかし、一番整えるべきは、使用しているコンタクトセンターシステムです。今導入しているコンタクトセンターシステムは、視覚障がい者向けですか。
画面情報の音声読み上げ機能、システムへの音声入力機能は充実していますか。もし支援機能がないコンタクトセンターシステムを使用しているのであれば、支援機能が充実しているシステムの導入を検討なさってください。
補足:視覚障がい者が使いやすいコンタクトセンターシステム「Bright Pattern」
ここでは、視覚障がい者が使いやすいコンタクトセンターシステムの一例としてBright Patternをご紹介します。
Bright Patternを推奨する理由は3つです。
クラウド型
クラウド型であるゆえに、在宅ワークが簡単に行えます。
スクリーンリーダーが使いやすい
視覚障がい者がよく使用するPC用スクリーンリーダーJAWSなどのスクリーンリーダーが備わっており、ポップアップ通知を読むWAI-ARIAタグもインターフェイス内に組み込まれています。キーボードナビゲーションやキーボードショートカット機能もあります。
スーパーバイザー機能
画面録画、通話録音、通話記録、モニタリングなどをウォールボードで確認できるため、スーパーバイザーは、視覚障がい者のユーザーへ的確にアドバイスができます。
コールセンターが視覚障がい者の支援で覚えておきたいポイント
最近では、各視覚障がい者が日常的に使っている支援機能/ソフト/アプリがありますので、実際に普段何を使っているか、他に何が使えるかを確認することも必要です。
視覚障がい者の就労支援のため、今のうちから様々な準備をしておくことは大切です。しかし、どれだけ準備しても、いざとなったとき「自社で働きやすいと感じてもらえるだろうか」と不安になるでしょう。
全てを事前に予測して完璧に対策することは不可能です。視覚障がい者の中でも、どの程度見えるのか、どのように見えているのかは大きく異なります。必然的に、各個人が対応できる仕事内容は変わりますし、元々持っているスキルによっても変わります。
イメージや一部限定的な経験で決めつけることなく、その時一緒に働いている視覚障がい者に寄り添っていくかたちで支援していきましょう。ポイントは、「取り残さないこと」です。視覚障がいの方々は、会社や業務のために色々なことを覚えて、慣れようとしてくれます。私たちも、視覚障がいそのものについての理解を深め、どの視覚障がい者も取り残すことなく働いていきたいものです。
最後に
今回ご紹介しなかったSDGsの目標に関しても、コールセンター業界に全く関係ないわけではありません。むしろ、コールセンター業界に関係する目標は意外とたくさんあります。それで継続的に、自社が取り組みやすそうな項目を探してみることをおすすめいたします。
今よりも自社のブランド力やイメージをUPしたいと思われる企業は、SDGsに取り組んでいることをさらにアピールしたり、取り組む目標を増やしてみたりできるかもしれません。