現代のコールセンターは、慢性的なオペレータ不足や、多様な問い合わせへのスムーズな対応といった課題に直面しています。そのため、限られたリソースでより良い顧客体験を実現するために、平均処理時間(AHT)の短縮を目指すセンターは少なくありません。

平均通話時間と平均後処理時間(ACW)の和から算出できる「平均処理時間」ですが、何に着手すると短縮できるのでしょうか。

この記事では、まず後処理時間の短縮にフォーカスを当てます。そして、なぜ平均処理時間の短縮のために後処理時間を重視するべきなのか、具体的にどのように短縮できるのかを解説していきます。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、18年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

この記事が解決するお悩み

平均処理時間の短縮を実現したい。
でも、どうにも成果が出ていないように思う

後処理時間短縮のために、どのアプローチをするか悩んでいる

 

 

イベントカレンダー

 

後処理時間(ACW)とは

後処理時間(ACW)とは、顧客との通話後に応対内容やVOCの記録、必要な手続きの処理などを行うためにかかる時間のことです。

コールセンター白書2023」によれば、41%のセンターが後処理業務に「5〜10分未満」をかけており、平均すると6.3分ほどかかる業務です。

同書の調べによる平均通話時間の平均値は6.6分なので、後処理にかかる時間は応対そのものと同じか、場合によっては通話時間そのものよりも長いということになります。

後処理時間の短縮はなぜ重要か

平均処理時間の短縮を実現する上で、なぜ通話時間ではなく後処理時間に注目するべきなのでしょうか。

端的に言うなら、通話時間はコールセンターやオペレータの意思でコントロールしきれない部分だからです。

通話時間はお客さまの問い合わせ内容や通話環境といった外的な要素に左右されます。通話時間の短縮を目的として早く切電することは、顧客ファーストな取り組みではなく、顧客満足度を低下させるリスクがあるので、現実的な策ではありません。

一方で、お客さまとの直接的なコミュニケーションが伴わない後処理時間は、コールセンターが計画的にコントロールしやすい部分です。

お客さまに関わる外的要因に左右されないからです。そのため、後処理時間短縮を目的としたアクションは、コールセンターやオペレータファーストで考えることができます

通話時間と後処理時間は、いずれも短縮が可能な分野です。とはいえ、顧客満足度や顧客体験低下のリスクを最低限に抑えつつ、確実に成果を出していけるのは後処理時間であると言えます。

後処理時間が短縮されれば、必然的に平均処理時間も短縮されるので、応答率や生産性の向上にも寄与します。結果として、「電話がつながらない」「待ち時間が長い」といった不満にもアプローチしていけるのです。

後処理時間を短縮するための3つの方法

平均処理時間の短縮には後処理時間を短くすることが有効であると説明しましたが、具体的には何ができるでしょうか。3つの方法について紹介します。

オペレータのスキルアップ

後処理業務は、オペレータ個人のスキルによって差が出やすい業務です。そのため、タイピングの速度や正確性の向上、応対履歴の書き方やコツの共有、ショートカットキーの活用などを、トレーニングの一環として組み込むことは効果的です。インターネット上にある無料のタイピングゲームを活用するのも一つの方法でしょう。

とはいえ、「トレーニングだけで各オペレータのスキル差を完全に埋める」というのは現実的な目標ではありません。オペレータがスキルアップできれば、半自動的に後処理時間が短縮されるとは考えないようにしましょう。

過度なスキル重視の傾向は、オペレータにプレッシャーをかけたり、可視化できる成果主義を助長したりするリスクがあります。結果として、顧客対応の質が低下したり、ストレスを原因とした離職が発生したりするので、スキルの考え方や評価基準、トレーニング法には注意が必要です。

システム・RPAの導入・見直し

後処理時間の短縮効果が可視化されやすい方法としては、コールセンターシステムやRPAの導入・見直しがあります。

たとえば、応対中の音声を自動録音し、テキスト化できる最新のコールセンターシステムを活用したり、RPAに応対内容の転記を任せたりすることができます。後処理時間の短縮効果を数値化しやすい上、オペレータにも変化を実感してもらいやすいアプローチ法です。

後処理時間の短縮に有効なコールセンターシステムの例:https://brightpattern.cba-japan.com/

しかし、ランニングコストの発生や、ブラックボックス化のリスク向上、システムの入れ替えに伴う業務内容やフローの見直しについては、事前の検討が必要となります。何らかのシステムを導入する前に、後処理時間の短縮によって得られるメリットとの比較を忘れないようにしましょう。

生成AIの活用

「AIを導入するかどうか」ではなく、「どのようにAIを活用するか」が課題となっているAI時代の現在、「コールセンター×AI」でとくに注目されているのが、AIによる後処理時間の短縮です。

たとえば、お客さまとのやり取りをAIによって自動要約することで、オペレータが履歴を入力する手間や時間が大幅に軽減されます。結果的に、オペレータ1人あたりの応対可能件数が増加します。人材不足で悩むセンターにとっては、とりわけ魅力的なAI活用法です。

また、AIの活用はより効率的な人材育成にも貢献します。新人オペレータの応対時音声をAIに分析させ、評価基準をプロンプトとして与えておくことをイメージしてください。すると、応対品質や対応時間を分析し、オペレーターのスキルや生産性をAIが自動で評価してくれます。人材育成が効率的になるだけでなく、SVにかかる負担の軽減にもつながるAI活用法です。

後処理業務をAIで自動化するなら、各オペレータのパソコンスキルや要約スキルへの依存を最低限に抑えられます。そのため、応対履歴に関する情報品質や後処理時間を一定レベルで平準化できる効果も見込めます。

コールセンターでの活用に向いている生成AIの例:https://gidr-ai.cba-japan.com/

最後に

後処理時間の短縮には、この記事で紹介した以外にもさまざまなアプローチの方法があります。とはいえ、最終的な方法を決定する際には、「オペレータの負荷やストレスを軽減できるか」という点を押さえるようにしましょう。

たとえば、オペレータのスキルアップに熱が入りすぎてしまうと、常にタイムアタックのような業務スタイルになったり、オペレータへ過度なプレッシャーを与えることになったりするリスクがあります。これでは、仮に後処理時間短縮に成功したとしても、オペレータのストレスを増幅させ、従業員満足度を下げてしまう可能性があります。

システムの見直し・改善や、生成AIの活用においても同様です。現在の自社センターが、どうして後処理業務に時間を要しているのかをはっきりさせつつ、オペレータへ直接的な負荷やストレスがかからないことをポイントとして、後処理時間の短縮を成功させていきましょう。