2021年はワクチン接種も進みパンデミックが収束するかに思われました。しかし2022年に入った今もパンデミックの影響はコールセンターやお客様の生活に大きな影響を与えています。
コロンビア大学医療センターの救急医学の准教授であるダラ・カス博士(ニューヨーク・タイムズ紙2021年11月16日の引用)はCovidについて以下のようにコメントしています。
パンデミックの影響に対処し、お客さまによりよいサービスを提供していくには何をすべきでしょうか。今回は2022年にコールセンターが取り組むべき3つの課題を取り上げます。
- インフレ
- サプライチェーンの悪影響
- 高い離職率
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インフレ
過去10年間、ブランドの差別化はプロダクトの価格だけではなく、顧客体験の質が重視されてきました。その中で現在のインフレはお客さまの顧客体験への期待値を大幅に引き上げています。どういう意味でしょうか。
インフレでプロダクトの価格が上がれば上がるほど、お客さまはより良い顧客体験を求めるようになるということです。
価格が高騰するとプロダクトの購入回数は減っていきます。そのためプロダクトを購入したお客さまへのサービスの質が非常に大切になります。なぜなら優れたサービスが、顧客満足度の向上と次回の購入への促進に繋がってくからです。
コールセンターはお客さまと直接コンタクトをとる拠点のため、存在価値と責任は今まで以上に大きくなっています。
「インフレは一時的」「インフレの影響で右往左往すべきではない」と考えるかもしれません。確かにインフレによる価格の上昇は一時的かもしれませんが、お客さまのサービスに対する期待値は上昇していく一方です。プロダクトの価格が再び下がったからと言って、お客さまのサービスへの期待値が下がることはありません。
コールセンターはインフレの影響にどう対処できるでしょうか。積極的にパーソナライズされた情報をお客さまに提供することで対処できます。
先進的な製品メーカーや小売業者は、SNSで顧客が発信する自社のプロダクトについての不満や疑問点を洗い出し、自分たちから顧客へ情報提供しています。顧客が自社のFAQなどで解決策を見つけるのを待つのではなく、自分たちから接触し、顧客と対話をしようとしているのです。
購入後のパーソナライズされたサポートを通し、アップセルやクロスセルにつなげています。
コールセンターからお客様に直接コンタクトをとるために、オムニチャネル対応のコンタクトセンターシステムやLINE連携機能が役立ちます。有人チャットやメッセージングのプラットフォームも各社で導入が進んでいます。
サプライチェーンの悪影響
2022年現在、サプライチェーンは多くの問題を抱えています。「半導体不足」「輸送費の高騰」「配達員の不足」などの問題です。
サプライチェーンの問題はお客さまに悪影響を与えています。「新商品がほしいのに買えない」「注文した商品の納期が未定」といった状態がストレスを与えているのです。
コールセンターも悪影響を受けています。ストレスを抱えたお客さまからの問合せやクレームが増加しているのです。
サプライチェーンの悪影響は数字にも現れています。Wakefield Researchは、2021年11月19日から11月30日までの間に1,000人の米国の消費者と500人の米国のカスタマーサービスワーカーの調査を実施しました。消費者とカスタマーサポートの担当者は、どんな不満を持っているでしょうか。
消費者の約30%が、今年は過去よりも頻繁にカスタマーサポートに連絡したとコメント。しかし約45%がカスタマーサポートとのやりとりにストレスを感じると報告。
カスタマーサポート担当者の76%は、顧客からの問い合わせに対応するのに十分なスタッフがいないことに不安を感じるとコメント。
カスタマーサポート担当者の52%は、仕事を辞めることを検討していると回答。
上記の調査からはわかるのは、呼量の増加とオペレーターの人手不足、それによる顧客満足度の低下とクレームの増加という課題です。結果としてオペレーターはストレスを感じ、潜在的な離職率の上昇が生じています。離職に至らなくてもオペレーターの燃え尽き症候群のリスクは確実に上がるでしょう。
サプライチェーンの悪影響にどう対処できるでしょうか。お客さまのニーズは主に3つです。
- スピーディな対応60%
- フレンドリーな対応57%
- いつでも利用可能53%
お客さまの3つのニーズを満たすためには何が必要でしょうか。
スピーディな対応には、電話対応だけでなく、IVRやビジュアルIVRを使った適切なチャネルへの振り分けが必要になります。メール、有人チャット、メッセージングのチャネルを活用してください。
フレンドリーな対応をするためには、オペレーターが余裕を持って顧客対応ができる環境を整えることが必須です。オペレーターUIが優れたコンタクトセンターシステムを使ったり、時間をかけて顧客対応ができるメッセージングを採用したりしてください。
いつでも利用可能なニーズに対応するために各社が進めているのは、AIチャットボットの導入です。
簡単にまとめると、ノンボイスチャネルを活用することで上記の3つのニーズを満たせます。ノンボイスチャネルのメリットは、オペレーターの数を増やさずに顧客満足度を向上させられることです。
高い離職率
コールセンターに限った話ではありませんが、高い離職率はどの業界でも直面している課題です。離職の理由はさまざまです。「在宅ワークの環境が整っているところで働きたい」「ストレスに耐えられない」「燃え尽き症候群になってしまった」などの理由です。
カスタマーサポートやコールセンターの業界でも高い離職率は深刻な課題です。ガートナー社の2021年のレポート「サービス担当者が離職する理由とその対処方法」によると、調査をした600人の担当者のうち38%がすでに離職しており、84%が退職を考えているか転職活動をすでに始めていました。
別の調査レポート「健全なコンタクトセンター2021」ではオペレーターの現状や要望が明らかにされています。
オペレーターは、より多くの入呼、より多くのチャネル、そして複雑化する応対フローによって圧迫されている。仕事と生活のバランスを取りながら、1日あたり7.2件以上の対応が求められている。
83%のオペレーターが、顧客の問題解決を阻む最大の原因は、データ不足と適切な技術ツール不足と回答している。
オムニチャネル対応のコールセンターシステムを使用しているオペレーターのストレスは総じて少なかった。
オペレーターの満足度を高めるには、キャリアアップの支援が欠かせない。オペレーターが希望するのは、定期的に提供されるパーソナライズされたトレーニング。しかも日々の業務スケジュールの中でこなせるトレーニングを希望している。
これらの調査でわかることは、オペレーターが望んでいるのは、使いやすいシステムや見やすいデータです。そのためにはコールセンターシステムがオムニチャネル対応であることが必要です。オムニチャネル対応であれば1画面で全てのチャネルデータを確認できますし、CRM連携によって必要な顧客情報を参照できます。
さらにオペレーターは、キャリアアップを望んでいます。新たなナレッジやスキルを学べる環境を用意してあげることが離職率を下げるために必要です。オペレーターのキャリアをサポートしてあげるコールセンターは従業員満足度を向上させられます。
最後に
優れた顧客体験は、優れた従業員の体験なしには提供できません。今回取り上げた3つの課題に首尾よく対処するためにも、オペレーターを支援するシステムと環境を提供しましょう。
オペレーターが満足できるツールを用意し、やりがいを感じる環境を提供するなら、離職を防ぐだけではなくて新たな雇用もスムーズに行えるでしょう。