インバウンド/アウトバウンドを問わず、応対品質の平準化を重視しているコールセンターは少なくありません。

コールセンター白書2024」では「コールセンターの品質管理においてもっとも重要な要素は『平準化』」と説明されているほどです。

しかし、経験値が大きな強みとなるオペレータ業において、新人オペレータとベテランオペレータの応対品質を平準化することは容易ではありません。

インバウンド業務以上に難易度が高いとされるアウトバウンド業務では、平準化がとくに難しいと言えるでしょう。自分たちから架電し、攻めの姿勢でお客さまと対話するオペレータたちには、高いコミュニケーション力や精神力が求められるからです。とくに高いコミュニケーション力は、オペレータとしての経験やそれに基づく勘・スキルがベースとなります。

この記事では、どのようにアウトバウンド業務において新人とベテランのスキルを平準化していけるのかに注目します。3つの方法を紹介しますが、最新のAIを活用した策も含みますので、ぜひ参考にしてください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、18年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

この記事が解決するお悩み

新人オペレータとベテランオペレータの応対品質にバラつきがあり、一定の品質を保つのに苦労している

初期研修の期間が限られているため、新人オペレータを早期に戦力化できない

SVの負担が増大し、個々のオペレータに対するきめ細かなサポートが難しくなっている

 

イベントカレンダー

 

アウトバウンド業務が再注目される背景

最近では、以下のような理由からアウトバウンド業務が再注目されています。

  • インバウンドで解決できなかった案件のコールバック
  • 既存顧客へのフォローコール(セールス以外)
  • 手続き対応における提出物の不備を補完する
  • 既存顧客の離反防止
  • カスタマーサクセスへの着手
  • インサイドセールス

「コールセンター白書2024」によれば、70%のコールセンターがインバウンドとアウトバウンドの両業務に対応しています。

新人オペレータにのしかかる初期研修

業務分担や経験値に基づく適切な配置にもかかわらず、オペレータに求められるスキルと業務内容は急速に多様化しています。

「覚えることが多い」ことが早期離職の主な要因の一つとされるなか、研修の重要性がますます高まっています。最新の調査によると、オペレータの初期研修期間は以下のように分布しています。

  • 1ヶ月程度:39%(最も多い)
  • 2週間程度:16%
  • 1週間未満:18%

特筆すべきは、全てのコールセンターが何らかの初期研修を実施していることです。前年と比較すると、研修への取り組みは明らかに強化されています。

2023年と2024年を比較すると、コールセンター業界の研修に対する姿勢は大きく変化しています。

  • 2023年:初期研修が3日間〜1週間程度のセンターは10%、研修未実施は2%
  • 2024年:1週間未満の研修期間のセンターは18%、研修未実施は0%

わずか1年で、業界全体の研修への取り組みが大きく進化したことが明らかです(「コールセンター白書2024」調べ)。新人オペレータが覚えるべき情報は増え続けているのです。

アウトバウンド業務の平準化に立ちはだかる「スキル差」

とはいえ、1ヶ月前後の研修で全オペレータが完璧な応対スキルを習得し、ベテランオペレータとのスキル差を埋めることは不可能と言っても過言ではありません。

研修内容の良し悪しに関係なく、1ヶ月程度の研修経験しかない新人オペレータと、1年のオペレータ経験があるオペレータでは、対応できる件数やスピード、「ゴール」(商品購入や成約、アポイント獲得など)までのアプローチ力に差が生じることは当然のことです。 

アウトバウンド業務の場合、必ずしもお客さまにとって都合の良いタイミングに、お客さまが求めていた情報を発信できるとは限りません。むしろ、予期していないタイミングで電話を受けている人が多いでしょう。そのためオペレータは、お客さまへ警戒心や嫌悪感を抱かせないための話し方、言葉遣い、アプローチの流れといった高いスキルが求められるのです。これらのスキルには、アウトバウンド業務における経験やノウハウが必要不可欠です。

そのため、新人オペレータとベテランオペレータのスキル差を埋めて、平準化していくことは大変難しいと言えます。

音声のみでお客さまとコミュニケーションをとるコールセンターでは、電話口のオペレータが新人なのかベテランなのかを可視化することはできません。実店舗に従事するスタッフのように「初心者マーク」をつけられないからです。しかし、応対品質にバラツキがあったり、架電する側でありながら不自然な応対をしたり、商品・サービスの知識が不足していたりすると、お客さまに不信感や不快感を与えるリスクが高まります。

オペレータのスキル差を最小限にとどめて平準化することは、新規顧客の獲得や売り上げ向上、ロイヤリティの醸成において必須条件と言えるのです。

オペレータのスキル差を平準化する3つの方法

初期研修やトレーニングの強化は、応対品質の平準化や早期離職の予防といった観点で非常に重要です。同様に、SVによるリアルタイムフォローや定期的なトレーニング、教育カリキュラムの整備の重要性の強調される一方、SVの業務は複雑化と多様化を極めています。平準化を目指すとはいえ、SVによるサポート体制には限界があると感じるでしょう。

SVの負担を軽減しつつ、スキル差を最小限にして平準化するには何ができるでしょうか?具体案として3つの方法を紹介します。

① トークスクリプトの作成

トークスクリプトには、話し方や言葉遣いといった基本的な電話応対のほか、さまざまな場面に適した対応方法が記載されます。トークスクリプトに沿って会話を進めれば、オペレータの経験値に依存することなく一定レベルの顧客対応が実現できるのです。

お客さまに伝えるべき注意点や、押さえておきたいセールスポイントの漏れやミスなどを防止する点でも効果的と言えます。OJTの一環としてトークスクリプトを活用しながら業務をこなしていくなら、理想的なトークの進め方を学びながら、即戦力として業務に組み込んでいけるでしょう。

「コールセンター白書2024」の調査結果によれば、54%のコールセンターはトークスクリプトを「必要に応じて更新している」とし、22%が「定期的に実施している」と回答しています。

トークスクリプトは一度作ったら終わりではなく、製品やサービスの変更に応じて定期的に調整していくことがポイントです。

オペレータたちからの意見を聞きながら改良していくなら、より実用的でお客さまに受け入れてもらいやすいトークスクリプトをつくっていけるでしょう。

スクリプトの定期更新や共有が簡単にできるオペレータ応対支援システムを活用するセンターが増えています。

参考情報:スクリプトの更新と管理が手軽にできるオペレータ応対支援システムKotonami(コトナミ)」

② オペレータ向けFAQの整備

FAQを利用したマニュアルがあれば、新人オペレータが業務中あるいは応対後に参照し、自己解決を目指せます。整備されたFAQの活用はSVの負担を軽減できるだけでなく、オペレータ本人の自信につながったり、情報を記憶しやすくなったりする効果も見込める方法です。

「コールセンター白書2024」によれば、74%が「オペレータ向けFAQ」を「用意して随時アップデートしている」と回答しています。

同書によれば、「オペレータに求めるスキルでプライオリティの高い要素」の一位は「コミュニケーション能力」です。とりわけアウトバウンド業務においては、お客さまの気持ちや状況を考慮しながら話を進め、内容や流れをパーソナライズしていくので、非常に高いコミュニケーション力が求められます。

オペレータとしての経験値が強みとなる業務内容において、新人オペレータを即戦力としながらも平準化するには、ベテランオペレータおよびセンターが蓄積してきたノウハウやナレッジを共有できる環境が必要不可欠なのです。

最近はコンタクトセンターシステムの中に、オペレータを支援する機能が搭載されています。たとえば、「Bright Pattern」のエージェントアシスト機能のようなものです。

③ AIサポートの活用

生成AIがコールセンターにおいて実用化されている今、コールセンターがAIに期待する内容は変化を見せています。

AIソリューションの導入あるいは検討する一番の理由は、「人手不足対策のため顧客対応を自動化あるいはオペレータ対応の生産性を上げたい(77.4%)」というものです(「コールセンター白書2024」調べ)。

アウトバウンド業務における生産性とは何でしょうか。重要な指標のひとつは、オペレータの稼働率です。オペレータのスキル差を最小限にして平準化するなら、新人とベテランの稼働率を近づけることができ、センター全体の生産性向上に直結します。

稼働率を向上させる上で、最新のAIはリアルタイムでオペレータをサポートすることが可能です。

たとえば、お客さまとオペレータの会話をリアルタイムで文字起こしし、会話内容に適した回答やリアクションをAIが瞬時に提案してくれます。

稼働率のアップや平準化において、「リアルタイム性」は重要なポイントとなります。トークスクリプトやFAQは、想定外のコミュニケーションが必要な場面で対応できないからです。トークスクリプトやFAQにないイレギュラーな応対が発生すると、最終的には経験やノウハウが応対品質を左右します。

しかし、AIでリアルタイムサポートができるなら、つねに「今」の応対内容や流れにあわせて、オペレータをサポートすることが可能です。「リアルタイムサポートをAIだけに任せるのは不安だ」と感じるでしょうか。

コールセンターシステムあるいはAIソリューションによっては、AIによる一連のサポート状況をSVがテキストベースでモニタリングできます。そのため、会話の進行が順調でないオペレータを迅速かつ的確にフォローすることが可能です。

「想定外」をカバーできるリアルタイムサポートでオペレータのスキル差を平準化し、稼働率を上げられるなら、コールセンターの生産性向上が実現します。AI時代となった現代だからこそ、応対品質の平準化において新たにカギを握るのは「リアルタイム性」であり、AIによるリアルタイムサポートが実現できるのです。

参考情報:最新のAIによるサポート機能を備えたコールセンターシステムBright Pattern

参考情報:高度なカスタマイズ力をもつオペレータ応対支援システムKotonami

最後に

オペレータはつねにインプットし続けながら、お客さまに向けてアウトプットしていかなければいけないポジションです。

「覚えることが多い」とされ、経験値がコミュニケーションスキルにつながるオペレータ業において、新人とベテランのスキルを完全に平準化することは非常に難しいと言えます。とはいえ、事前に用意できるトークスクリプトやFAQに加え、「想定外」に対応できるAIからのリアルタイムサポートも活用するなら、スキル差を最小限にしつつ平準化することは可能です。

アウトバウンド業務が再注目されている今、AIによるサポートを効果的に活用しながら、コールセンター全体のさらなるレベルアップをはかりたいものです。