近年、AIのビジネス活用が急激に進んでいます。顧客接点の分野も例外ではありません。

たとえば、「コールセンターの実態調査」(コールセンター白書2024参照)によると、コールセンターでのAI活用についてどんな調査結果が見られているでしょうか。「生成AIの活用・関心度合い」を尋ねたところ、全体の41%が「全社的、あるいはセンター全体で利用している」と答えています。AIを利用しているコールセンターが41%と、前年の13%に比べて大幅に向上しています。

そのような中、AIエージェントという用語が注目されています。生成AIの次のトレンドとも言われている用語です。

今回はAIエージェントとは何なのか、生成AIとの違いは何かについて解説します。AIを顧客接点の分野で運用するために役立つ3つの活用例や、5つのツールを紹介するので参考にしてください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、18年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

この記事が解決するお悩み

「生成AIの次のトレンドが知りたい」

「生成AIとAIエージェントの違いって何?」

「AIが自分の業務をどう変えていくかがわからない」

 

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生成AIとは

生成AI(Generative AI)は、ユーザーからの指示に基づいてコンテンツを生成してくれるAI技術です。文章、画像、動画、音声などの生成に特化していて、ビジネスシーンでの利用が増加しています。

たとえば、ユーザーが生成AIに「〇〇の業界で顧客満足度を向上させる施策を教えて」と指示するとします。するとAIは、その業界の事例を読んで覚えていた知識を使い、さまざまな施策を生成してくれます。

AIエージェントとは

AIエージェントとは、いろいろなタスクを自動的に実行していけるAI技術のことです。

たとえば、あるユーザーが一つの目標をAIエージェントに指示するとします。するとAIエージェントが自ら必要なデータを集めていきます。そして、調査したデータに基づき、AI自らすべきタスクを決め、目標に向けて達成していくのです。AIエージェントは、人が設定した目標を達成するために必要なアクションを「自律的」に選択していきます。

「来月の出張の計画をして」と指示をすると、AIエージェントが行き先やホテルの好みをユーザーに尋ねてくれ、本人が好みそうな交通手段やホテルを提案してくれるのです。ユーザーが了承すると、AIエージェントは予約までを手配してくれます。これらをWebブラウザ上で実行していけます。

生成AIとAIエージェントの違いとは

AIエージェントと生成AIの大きな違いは「自律性」があるかないかです。AIエージェントは「目標達成」のためにいくつものタスクを自律的に実行していけます。一方、生成AIには自律性がなく、ユーザーから与えられた指示だけに基づいてコンテンツを生成します。

従来の生成AIは、人間が質問して初めて返答する仕組みでしたが、自律性を持つAIエージェントは、人間のリクエストだけでなく、AI自身が「これを今やるべきだ」と判断して動いてくれます。

たとえば、AIエージェントがユーザーのスケジュールを確認しながら、「そろそろ夏のイベントの準備をしたほうが良いのではないですか?」と提案してくれるのです。

生成AIとAIエージェントの使い分け

生成AIとAIエージェントを、どのように使い分けたら良いのでしょうか。

業務の自動化を得意とするAIエージェントは、一つのプロセス全体を任せたい場合に適しています。コンテンツを作るのが得意な生成AIは、資料作成やプレゼン用の図解生成などと相性が良いです。

項目生成AIAIエージェント
得意分野テキスト、画像、動画、音声などのコンテンツ生成目標達成のためのタスク実行、業務の自動化
使い方ユーザーが指示を入力し、それに基づいてAIがコンテンツを生成ユーザーが目標を設定すると、AIエージェントが自律的に必要なタスクを判断し、実行
– 文章の作成
– 画像の生成
– 出張の計画
– スケジュール管理
– 顧客対応

第4次AIブームまでの流れ

第4次AIブームまでの流れ

諸説ありますが、現在は第4次AIブームと言われています。これまでAIが発展してきた過程を簡単に振り返っておきましょう。

AI(人工知能)の歴史は1950年代に遡ります。第1次AIブーム(1950年代後半〜1960年代)では探索や推論に焦点が当てられ、その後の第2次AIブーム(1980年代〜1990年代)では音声認識などの技術が実用化へと進みました。

第3次AIブーム(2000年代)では、ディープラーニング(深層学習)をはじめとする革新的な技術が登場します。実用的なAIが開発され、私たちの社会に広く普及していきました。そして第4次AIブーム(2022年〜)からは、ChatGPTに代表される生成AIが急速に普及していきます。

2025年時点の日本国内のAI市場規模は、約1兆922億円と推計され、2029年には約2兆614億円に達すると予測されています。

AIエージェントのメリット

AIエージェントの導入にはどんなメリットが有るのでしょうか。

パーソナライゼーション

AIエージェントはお客さまの行動履歴や過去の購入履歴を分析し、個々のニーズに最適化されたサービスや製品を提案できます。

これにより、顧客満足度が向上し、リピート率の増加や新規顧客の獲得が期待できます。アップセルやクロスセル、さらにLTV(顧客生涯価値)の向上も期待できます。

生産性向上

生産性向上は、AIエージェントの重要なメリットの一つです。AIエージェントはタスクを自動化することで時間とコストを削減し、従業員がよりクリエイティブな業務に集中できるようサポートしてくれます。

たとえば、定型的なデータ入力やレポート作成などの反復作業をAIエージェントに任せることで、従業員の負担を軽減し、企業全体の生産性を向上させていけるのです。

データ解析

AIエージェントは、大量のデータの中から有益な情報を自ら抽出してくれます。従来の手法では解析が困難なビッグデータも、AIの高度なアルゴリズムを用いることで迅速かつ正確に解析できます。

AIエージェントを活用することで、市場動向や顧客のニーズをこれまで以上に的確に把握できます。勘や経験に基づいた属人的な要素だけで意思決定していく必要はもうありません。AIエージェントが教えてくれるデータに基づいて、意思決定していくことが可能となるのです。

CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上

AIエージェントは24時間365日対応が可能 です。人間の労働時間に制約されることなく、お客さまからの問い合わせやサポート要求に迅速に対応できます。

深夜であっても、お客さまのトラブルシューティングを行えますし、購入前の問い合わせにも的確に答えられます。結果、CXの向上が期待できるのです。

AIエージェントの課題と対策

AIエージェントは多くのメリットをもたらす一方で、いくつかの重要な課題が存在します。対策方法と一緒にいくつかの課題を見てみましょう。

ハルシネーション:AIエージェントが実際には存在しない情報を生成してしまうリスクがあります。AIエージェントが生成する情報の正確性を確保するために、出力結果を常に確認し、必要に応じて修正するプロセスを導入することが重要です。

倫理的・法的な問題:AIはとかくブラックボックス化しがちです。AIの決定プロセスが見えてこないとき、責任の所在が不明確になるリスクがあります。判断基準を明確化し、倫理的なガイドラインを遵守することで、これらの問題を解決できます。

セキュリティとプライバシーの保護:顧客接点の分野では、必ず個人データや機密情報を扱います。AIエージェントは、情報漏えいや不正アクセスに対する脆弱性を持つ可能性があるので、データの暗号化、アクセス制限、定期的なセキュリティ監査を実施してリスクを軽減していけるでしょう。

上記の課題に対して多くの企業は「ヒューマン・イン・ザ・ループ」という手法で対処しています。

ヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)とは、AI活用において、人間(ヒューマン)の判断や介入をあえて組み入れる手法のことです。AIですべてを完全に自動化しないという考え方に基づいた手法です。

ほかにもいくつかの課題があります。

学習データの質:AIエージェントが良い仕事をするためには、大量の学習データが必要です。自社のカスタマーサービスの仕事を任せるには、自社サービスに関するあらゆるデータを学習しなければなりません。しかし偏ったデータがあったり、質が低いデータがあったりするとAIの判断は誤ったものになるリスクがあります。自社データ(PDF、word、紙のマニュアルなど)をAIが学習しやすいように整えていく作業が必要です。データの構造化と呼ばれる作業が必要となるのです。

AI人材の不足: AIエージェントを効果的に導入・運用するためには、専門知識を持った人材が不可欠です。AIについての研修プログラムを実施したり、AI技術者やデータサイエンティストを採用したりすることで、専門知識を持った人材を確保できます。または、AIツールのベンダーによる「運用サポートサービス」を活用することができるでしょう。

顧客接点におけるAIエージェントの活用例3つ

顧客接点におけるAIエージェントの活用例について解説します。AIエージェントは、カスタマーサービス、バーチャルアシスタント、投資アドバイザーなど、多岐にわたる分野で活用できます。いくつかの例を見てみましょう。

チャットボット

AIエージェントは、顧客からの問い合わせに対して即時に反応し、人間のようなコミュニケーションを実現してくれます。また、AIエージェントは、よくある質問に対する回答を自ら見つけ、回答してくれます。応対プロセスを自動化することで、人間のオペレータの負担を軽減し、より複雑な顧客対応に集中できるようにします。

バーチャルアシスタント

AIエージェントは、お客さまの購買行動を支援してくれると期待されています。たとえば、ECサイトで個人の興味や好みに応じて対話の中で選択肢を示し、「商品が多すぎて選べない」といった悩みを解消してくれるAIエージェントです。

投資アドバイザー

投資アドバイザーとしてAIエージェントが活躍するサービスが人気です。お客さまに対してAIエージェントが投資アドバイス、資産管理サポートを行っていきます

参考情報:
「SBIラップ AI投資コース」https://go.sbisec.co.jp/prd/swrap/aiwrap_top.html
「楽天証券 投資AIアシスタント」https://www.rakuten-sec.co.jp/assistant/

顧客接点で活躍するAIプラットフォーム製品5選

顧客接点の現場では、AIエージェントや生成AIなど、さまざまなAI技術がすでに活用されており、今後さらなる普及が見込まれています。

しかし、多くの企業が以下のような課題を抱えているかもしれません。

  • どのようなAI製品を導入すべきか判断が難しい
  • 導入後のリプレースが不要で、新しいAI技術にも対応できる拡張性の高い製品を探している

そこで、顧客接点で活用しやすいAIプラットフォーム製品を5つ紹介していきます。

GIDR.ai(ガイダーエーアイ)

GIDR.aiは、企業のビジネス情報を活用し、業務効率化や顧客サービス向上を支援する企業向けAIプラットフォームです。

紙のマニュアルを含め、企業が保有する大量の情報を構造化し、AIが学習・理解しやすいデータに変換していきます。その後、RAG技術を活用して生成AIがより正確な回答を生成できるようにします。

また、AIエージェントを作成し、特定のタスクを実行させることで、業務の自動化を促進していけます。

GIDR.aiの主な機能や顧客接点でのユースケースはこちらからご覧ください。

HubSpot Breeze顧客対応エージェント

Breeze顧客対応エージェントは、HubSpotのService Hubで利用可能なAI搭載ツールです。カスタマーサポートを効率化し、顧客満足度を高めることを目指している製品です。

ナレッジベース、URL、ヘルプページ、ブログなどの既存コンテンツをAIエージェントの学習に利用することができます。

Breeze顧客対応エージェントの主な機能や顧客接点でのユースケースはこちらからご覧ください。

ZendeskのAIエージェント

ZendeskのAIエージェントは、顧客とのコミュニケーションを自動化し、顧客満足度を向上させるためのツールです。

このツールは、顧客とのやり取りの80%以上を自動化することを目指して開発されました。AIエージェントが初回解決率を向上させ、より複雑な問題にも自ら対応できるようにすることで、効果的な自動化を実現していきます。

ZendeskのAIエージェントの主な機能や顧客接点でのユースケースはこちらからご覧ください。

ServiceNowのAIエージェント

ServiceNowのAIエージェントは、ITやカスタマーサービス向けに設計された自律型AIエージェントです。

24時間365日の稼働を実現することを目的としています。組織全体のワークフロー、統合、データを調整することで、チームの生産性を向上させるように設計されています。

ServiceNowのAIエージェントの主な機能や顧客接点でのユースケースはこちらからご覧ください。

IBM watsonx Assistant

IBM watsonx Assistantは、企業の生産性向上を支援する高度なバーチャルアシスタントです。スピーディーで親しみやすいカスタマーケアを実現するための対話型AIを提供します。

大規模言語モデル(LLM)、大規模音声モデル、自然言語処理(NLP)、自然言語理解(NLU)、インテリジェントなコンテキスト収集機能を用いて、自然言語による会話の文脈を深く理解できることが特徴です。

IBM watsonx Assistantの主な機能や顧客接点でのユースケースはこちらからご覧ください。

最後に

AI技術の進化により、生成AIとAIエージェントは顧客接点の分野に大きな変化をもたらしています。生成AIはコンテンツ生成に特化し、AIエージェントは自律的にタスクを実行することで、業務の効率化や顧客満足度の向上に貢献しているのです。

今回紹介した企業向けAIプラットフォームは、これらの技術を活用し、企業の業務効率化と顧客サービス向上を支援する強力なツールです。生成AIとAIエージェントの違いを理解し、適切に運用することで、オペレータの負担を軽減し、顧客満足度を高めていくことができます。

今後もAI技術の進化に注目し、最新のトレンドを取り入れていきましょう。

株式会社コミュニケーションビジネスアヴェニューでは、AIに関する専門知識と製品を提供し、お客様のビジネスの成功をサポートいたします。業務効率化や顧客満足度の向上について、お気軽にご相談ください。