一言に「カスタマーサポートのチャネル」と言っても、さまざまな種類がある昨今。電話、メール、チャット、問い合わせフォーム…。顧客接点の観点から、「結局どのチャネルがユーザーフレンドリーなんだろう」「幅広い年齢層に対応できるカスタマーサポートのチャネルとは何だろう」と思ったことはありませんか。
今回は、日本で人気があるカスタマーサポートのチャネルランキング、そして各チャネルの特徴をご紹介します。最後には、今よりも顧客接点をレベルアップさせる作戦もご案内します。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
カスタマーサポート人気チャネルランキング@日本・アジア
皆様は、自分がカスタマーサポートを必要とする際、どのチャネルを使用していますか。一般的に人気のチャネルとは何でしょうか。Infobipの調査報告によると、以下のような結果が出ています。
どのサポートシーンでも、やはり電話が一番人気です。とはいえ、販売前、販売中、FB/クレームのシーンで、特に電話が好まれる傾向にあります。同調査の結果として、日本は有人対応を求める保守的な消費者が多いと分析されています。「大事なことはメールやLINEではなく、直接会うか、せめて電話。」の文化が根強いことの表れでしょう。
私たち日本人が保守的かどうかは別として、「“誰か”に音声で直接相談できる方が安心する」と感じている消費者が多いことは明白です。「人間味」を重視し、人間味をより強く感じられるチャネルに、「安心感」を抱くのでしょう。
例えばチャットでのサポート。ボットではなく生身の人間が対応している場合は少なくありませんが、テキストの向こうにいるのが誰なのか分からないといった不安感は拭えません。
しかし、最近ではチャット、特にAI搭載のチャットボットが注目されています。このトレンドを無視することもできません。先程、電話が最も好まれるチャネルであると述べたものの、この傾向は年齢層によって多少のばらつきが見られます。株式会社KDDIエボルバによる「企業とお客さまとのコミュニケーション実態2022」によれば、電話/チャットに対する抵抗意識に以下のような差が生じています。
20~30代に関しては、電話の方が抵抗感を感じているようです。いわゆる「デジタルネイティブ」の世代だからでしょう。最近の20代は、電話を使う場面が少ないあまり、電話のかけ方が分からないといった話を耳にしたこともあります。疑問に思ったことや困ったことがあれば、ひとまずFAQやチャットで解決させようとするのが、20~30代の傾向です。
一方、40代以上はチャットボットへかなりの抵抗感を感じています。年代が上がれば上がるほど、その抵抗感も増しているので、こちらも無視できない傾向です。困っているお客さまをサポートしてこそのカスタマーサポートでありながら、カスタマーサポートを利用してもらうために、さらに困りごとを増やしてしまっては本末転倒ですね。
会社/ブランドの顧客ターゲット層がピンポイントであれば、その年代が好むチャネルに特化しても良いかもしれません。
しかし、幅広い年代をターゲットにしている会社であれば、カスタマーサポートを特定のチャネルに限定してしまうと、顧客接点を狭め、限定していることになってしまいます。
「じゃあ、具体的にどうしたら良いの?」を考える前に、電話とテキストのそれぞれの特徴と、向いているシーンを見てみましょう。
電話&チャットチャネルの特徴|向いているシーン
各年代層の好みと、各チャネルへの意識は把握できました。でも、「お客さまが好きなチャネル=会社に向いているチャネル」ではありません。各チャネルの特徴を押さえ、それが自社や自社サービスに向いているのかも検討しなくてはいけません。
では、電話とチャットの特徴を一覧で見ていきましょう。
【電話】 | 【チャット】 | |
24時間対応 | ✕ | ○ |
お客さまの状況把握 | ○ | △ |
複雑なサポート | ○ | ✕ |
複数のお客さまの同時対応 | ✕ | ○ |
ホスピタリティの伝わりやすさ | ◎ | ✕ |
問題解決までの時間の短さ | ○ | △ |
お客さまにとっての手軽さ | △ | ◎ |
サポート内容の記録の可視化 | ✕ | ◎ |
お客様にとっての時間や行動の自由度 | ✕ | ◎ |
オーソドックスな特徴ではありますが、電話とチャットがどの条件を得意とするのかまとめてみました。もちろん、業種、お客さまが抱えている問題の種類、カスタマーサポートに属するスタッフの人数、ボット使用の有無といった事情によって、×が○になったり、○が×になったりといった変動はあることでしょう。
とはいえ、電話とチャットのそれぞれの特徴を一言で表すなら、よりパーソナライズできる電話と、お客さまにとっての利便性を重視できるチャットとなります。
デジタルネイティブであり現役世代であるからこそ、スピードや手軽さを良しとする20~30代に好まれているチャット。比較的時間は取れるから、なるべく手厚く親切なサポートを期待している40代以上に好まれる電話。自社の重視したいコンセプト、顧客ロイヤルティーUPを狙えるチャネルはどちらでしょうか。
いくつかの業種を例に挙げて、チャットと電話のどちらが向いているのか考えてみましょう。
アパレル系ECサイト
アパレル系ECサイトの場合は、ターゲット層が比較的明確に決まっていることでしょう。ターゲット層が若ければ若いほど、FAQやチャットでカバー可能です。若い層は、チャットでのサポートを好むだけでなく、FAQによる自己解決も好むからです。むしろ、わざわざ電話をかけることを手間と考え、サポートのためには電話をかけなければならないと言う展開の方が、敬遠されるかもしれません。
製造業
カスタマーサポートのシーンがアフターサービスであることが多い製造業。アフターサービスであればこそ、お客さまが複雑な問題に直面していたり、お客さまの年齢層が少し高めであったりすることが予想されます。パーソナライズの高さが重要になってくるので、電話の方が向いていると言えます。
とはいえ、機械の不備がいつ起きるか分からない以上、なるべく24時間体制のサポートが必要になります。また、専門知識を持つスタッフに繋がなければならない場合も発生するでしょう。カスタマーサポートが電話だけだと、カバーできるアフターサービスにもかなりの制限がかかると予想されます。電話で対応できない時間を、チャットボットで対応させるなどの施策が役立ちます。
金融業
金銭的な内容のサポートをメインとする金融業。「人間味」による「安心感」を重視するべき業界になるので、電話が向いています。しかし、サポート内容が必ずしも複雑とは限らず、お客さまが幅広い年齢層である以上、電話だけでカバーするのは難しいかもしれません。
また、国内外を問わず、移動先で何か取引をしたいお客さまもいらっしゃるでしょう。その場合、電話よりはメールやチャットの方が、お客さまのニーズに合わせやすいと言えます。ビデオで通話ができるビデオコミュニケーションもおすすめです。
3つの業界に該当する方なら言わずもがなですが、どの業界もターゲット層には幅があり、どのお客さまへも「安心感」をご提供したいはず。要するに、二者択一的なチャネル選択はほぼ不可能と言っても過言ではありません。
企業としては、各サポートでの一貫性を損ねるわけにはいきません。とはいえ、「複数のチャネルを導入して業務を複雑化してしまうのは避けたい」ところ。しかし、チャネル一つだけでサポート対応していると、カスタマーサポート業界のトレンドに乗り遅れてしまうのではないか…という不安も拭えません。
お客さまにもお客さまの都合がありますから、カスタマーサポートを電話でして欲しいときもあれば、テキストでサポートして欲しい場合もあります。お客さまの“わがまま”と私たちの“わがまま”、どちらも叶えるためにはどうしたら良いでしょうか。
オムニチャネル化という選択肢
要するに全部取りしたい!
…ならしましょう!
カスタマーサポートをオムニチャネル化してしまえば、お客さまに対して常に一貫したサポートを提供できます。そして、オムニチャネル化することで、顧客接点そのものを広げることができ、CSの向上も期待できるので一石二鳥です。
オムニチャネル化とは
オムニチャネル化とは、顧客情報やお客さまとの会話履歴が、チャネルをまたいでも引き継がれ、一貫してパーソナライズされたサポートを実現できることです。
複数チャネルを切り替えながら使用しても、途切れることなくスムーズに問題解決がはかれるのが特徴です。
ただし、各チャネルを連携できることがオムニチャネル化のカギになります。連携ができないのであれば、オムニチャネルではなく「マルチチャネル」になってしまい、かえってカスタマーサポートを複雑化させるリスクがあります。
電話、メール、フォーム、チャット、SNSといった代表的なチャネルを、シームレスに連携できるコールセンターシステムの導入が、オムニチャネル化のカギになるでしょう。
▶参考資料:オムニチャネル化できるコールセンターシステム:Bright Pattern
もちろん、オムニチャネル化にすればすべて解決するわけではありません。運用を間違えると失敗するケースもあるので要注意。成功のために役立つ情報は下記の記事からご覧ください。
最後に
今後、カスタマサポートのためのチャネルが増えていくのか、逆に減っていくのか。いずれにしても、「カスタマーサポート」がなくなるわけではない以上、私たちは常に万全のサポート体制を整えていなくてはなりません。現在の日本では、メール、問い合わせフォーム、電話、チャットでのサポートが主流ですが、海外ではSNSでのサポートが人気になりつつあります。日本でも、LINEやInstagramでの問い合わせを導入している企業が増えてきました。
カスタマーサポートのチャネルになり得るものが増えてくると、その分だけカスタマーサポートそのものにも、より高度な柔軟性と多様性が求められます。今後、前述のLINEやInstagramだけでなく、メタバースもカスタマーサポートのチャネルになるかもしれません。
チャネルが増えに増えてからオムニチャネルを検討・準備するより、まだチャネルの数が少ない今のうちにオムニチャネル化をはかり、待ち受けるカスタマーサポートの進化に備えるべきではないでしょうか。
カスタマーサポートをオムニチャネル化することで、顧客接点を手広く・手厚くし、お客様の“わがまま”に答える形のでサポートが実現出来ます。必然的にお客さまの顧客ロイヤルティーは向上するので、ロイヤルカスタマーになっていただける可能性も高くなります。
もしも新規顧客獲得に難しさを感じているなら、今のカスタマーサポート体制を見直してみると、なにかヒントが見えてくるかもしれません。