現在多くの企業は、データ活用の見直しを迫られています。たとえば、2022年4月には個人情報保護法が施行され、2024年末までにChromeでの3rd Party Cookie(サードパーティークッキー)が完全廃止される予定です。データの収集方法や活用について再検討し、具体的なアクションを起こす必要性は高まっています。一方で、自動化の推進により、顧客データが企業内で点在しているという課題があります。

部署やツールごとでサイロ化している顧客データを効率的に管理し、分かりやすく可視化するツールとして現在注目されているのがCDPです。

この記事では、CDPをコンタクトセンターで活用するメリットやツール選定時のポイントについて紹介します。そして、ニーズが高まる「二刀流のコンタクトセンター」とは何かを解説していきます。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、17年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

この記事が解決するお悩み

顧客データがサイロ化しているので、一元管理したい

データの可視化にかかる時間や手間がかかる

コンタクトセンターで「顧客体験向上」を実現したい

CDPとは

CDP(Customer Data Platform カスタマーデータプラットフォーム)とは、企業内に存在するさまざまなシステムから、顧客に関するデータを収集・統合・分析ができるパッケージ化されたプラットフォームです。

CDPの利活用により、自社の顧客をより深く理解し、顧客体験や顧客満足度向上を実現できるとされています。

CDPでは顧客の年齢や性別といった属性だけでなく、Webサイトのアクセスデータや、検索ワードのデータなども管理できるからです。

さまざまな業界においてレッドオーシャン化が進行する中、顧客体験の向上と差別化、収益力の向上を目的としてCDP導入が進んでいます。どれほど進んでいるのでしょうか。

ITR「ITR Market View:メール/Web/SNSマーケティング市場2024」によれば、2024年度のCDP市場は150億円前後を見込まれています。

自社で収集したデータの活用が課題となる中、ファーストパーティーデータを利用したマーケティング強化や、顧客体験の改善を実現できるCDPへの注目や導入率は右肩上がりということです。

CDPは、「CRM」や「DMP」とどう違うの?

CDPの注目度や活用率が高いことは明らかです。しかし、「データ活用という観点から考えるならば、CDP意外にも『CRM』や『DMP』があるじゃないか」と思われますか。ここからは、CDPが「CRM」や「DMP」とどのように違うのかを説明します。

CRMとの違い

CDPとCRMは、いずれも顧客のデータの収集・管理と、データを活用したマーケティング施策の管理を目的としたツールです。

既存顧客のデータ収集・管理とアプローチを主とするCRMに対して、CDPは既存顧客だけでなく見込み顧客のデータを扱うことができます。

そのため、既存顧客へのマーケティングに注力し、囲い込みを行いたい場合はCRMが適していると言えます。

CDPとCRMはそれぞれにメリット・デメリットを持っているので、相互補完を目的として二つを併用するケースは少なくありません。そもそもCDPはMA(マーケティングオートメーション)ツールのような外部ツールと連携できる特徴をもつので、CRMを含む他のツールとの連携・併用によって、より幅広いデータ活用を実現することができます。

DMP(オープンDMP)との違い

CDPとDMPは、いずれも同じデータプラットフォームです。この二つは、主に取得できるデータの種類や活用方法に違いがあります。

CDPは自社データDMPは第三者企業のデータを主として扱います

DMPでは、インターネット上に蓄積される不特定多数の外部データを取得するため、データから個人を特定することはほぼ不可能です。加えて、競合他社も同じデータを取得できるので、DMPだけで市場におけるマーケティング施策の優位性を獲得・維持することは難しいと言えます。しかし、外部データには自社が保持していないデータが含まれるので、新規顧客の開拓に適していると言えます。

コンタクトセンターへCDPを導入するメリット

CDPと似て非なる2つのツールについて、違いを紹介しました。CDPとCRMやDMPを連携・併用するかは一度置いておき、次はそもそもコンタクトセンターがCDPを導入するメリットは何なのかを考えていきましょう。

顧客分析の精度向上

自動化の影響で、顧客接点の数は少しずつ減少してきています。一方で、残っている顧客接点は多様性を帯び、オペレーターに求められる応対スキルは日に日に高度になっています。

「顧客接点が多様になる」とは、たとえば一人のお客さまが複数デバイスを利用したり、さまざまなチャネルを利用したりすることが含まれます。

コンタクトセンターがCDPを導入しているなら、一人のユーザーに複数の接点があった場合でも、すべて「一人のお客さま」としての一元管理が可能です。

そのため、お客さまへ的外れな情報を提供したり、配信コンテンツが重複したりといった事態の回避が見込めます。常に最適なアプローチをしていけるのです。

顧客接点が多様化していても、カスタマージャーニーが可視化されているなら、顧客をより深く正確に分析し、顧客インサイトを探り、パーソナライズすることは可能です。LTV(顧客生涯価値 Life Time Value)が重視される今、顧客インサイトの掘り下げとパーソナライズはますます重要になっています。

データ利用にまつわる業務効率の改善

CDPを活用すると、部署やツールをまたいだあらゆるデータを一元管理ができます。

データを探し回ったり、見つけたデータが古かったりといった業務効率の低下を招く事態を回避できるのです。むしろ、必要なデータをすぐに探せるので、データ利用にまつわる業務効率を向上させられます。

さらに、従業員にとってエフォートレスなデータ管理環境が実現し、ES(従業員満足度)の向上を目指していけます。

CDPが実現する「二刀流のコンタクトセンター」とは

ではCDPが実現する「二刀流のコンタクトセンター」とは何なのでしょうか。

CDPで「攻め」のコンタクトセンターになる

近年、コンタクトセンターはただの顧客接点ではなく、「顧客体験向上のカギを握る存在」としてプロフィットセンターへの変革が強く求められています。

CDPの導入でコンタクトセンターのデータを一元管理するということは、オムニチャネルのデータを統合するのと同義です。結果として、お客さまひとりひとりをより立体的に把握できるようになり、よりパーソナライズされた顧客体験の提供へと直結します。

「複数のチャネルに対応して、お客さまからの問い合わせを一手に引き受けるコンタクトセンター」という従来の立ち位置から、顧客体験向上のカギを握る中心的存在として「攻めるコンタクトセンター」のポジションを確立できるのです。

▶️参考情報:コンタクトセンターシステム「Bright Pattern」のオムニチャネル機能とは

CDPで「守り」のコンタクトセンターになる

人員の変化が激しいとされるコンタクトセンターにおいて、顧客データを一元管理することは大きな「守り」となります。

オペレーターの応対の質を安定させることができ、運用負荷を軽減することが可能だからです。

データ管理においては、業務効率を向上させつつ、データ取り扱いに関する信頼損失のリスクを最小限に抑えられます。一カ所のデータをメンテナンスするだけで済むからです。これはデータガバナンスの観点からも良い状態であると言えます。

CDPにより、「攻め」と「守り」の両方をカバーできる「二刀流のコンタクトセンター」が実現できます。

CDP選定のポイント4つ

現在は多くのCDPツールが販売されていますが、何を選んでもメリットを享受し、「二刀流のコンタクトセンター」を実現できるのでしょうか。最後に、製品選びで失敗しないポイントを4つご案内します。

データ統合、処理、分析力

CDPツールを選ぶ上でマストな要素です。事前に各種機能のデモンストレーションを見たり、導入事例を確認したりするなら、機能の高さや実用性、利便性を把握することができます。データのリアルタイム性についても忘れずに確認しましょう。自動で情報が更新されていくなら、顧客の興味を継続的に惹きつけられるようすぐに動くことができるからです。

拡張性と柔軟性

導入事例を確認したり、カスタマイズ性やオプション機能についてのレビューを見たりしましょう。チャネルや顧客ニーズ・インサイトの多様化により、CDPツールの拡張性と柔軟性は必要不可欠です。

コストと費用対効果

新しく何かを導入する際には、常にコストと費用対効果を検討するでしょう。CDPについても同様ですが、CDPは種類によってコスト形態が変化するので、自社にあったものを注意深く選ぶ必要があります。

たとえば、SaaS型CDPツールは一般的にランニングコストが高くなりがちですが、開発費用や保守運用費は抑えられる傾向にあります。一方、IaaS型CDPツールは、管理方法次第でランニングコストを抑えられる反面、開発費用や運用保守費用は高くなりやすいと言われます。

CDPツールは、導入後すぐに効果が出るものではないため、長期的に見てどの程度のROIを達成できるのかを明確にし、自社にとってもっともコスト効率が良いツールを選定していくことが大切です。

ベンダーからのサポート体制

CDPツールは多機能かつ導入時の工数が比較的多いため、使用者が使いこなすのには多少の時間が必要となります。そのため、ベンダーから導入前後にサポートがあるかどうか、サポート内容がどの程度充実しているか、そのサポートが自社にとって必要なものかどうかを見きわめておくと、CDPを最大限に使いこなしていく上で安心できます。

最後に

データ活用の本格的な見直しが迫られる中、コンタクトセンターに求められる役割はより高度になり、カスタマーサービス部門における中心的な存在であることが期待されています。CDPツールを慎重に選定し、大胆に活用することで、「攻め」と「守り」の両方を担える「二刀流のコンタクトセンター」を実現していきましょう。