コールセンターにおいて「ノイズ」は切り離したくとも、なかなか切れない存在です。

コールセンターに限らず、一般的にノイズの抑制には「ノイズリダクション」「ノイズキャンセル」が有効とされます。イヤホンやヘッドフォンの機能説明において「ノイズキャンセル/ノイズキャンセリング」を聞いたことのある人は少なくないでしょう。

では、「ノイズリダクション」と「ノイズキャンセル」の二つは何が異なるのでしょうか。この記事では、コールセンターにおけるノイズ抑制に注目し、ノイズリダクションの必要性や最新のノイズリダクションツール3つについて紹介します。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、17年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

この記事が解決するお悩み

コールセンターの応対でノイズを可能な限り0にしたい

ノイズリダクションとノイズキャンセルの違いがわからない

日本語に対応しているノイズリダクションツールが見つからない

ノイズリダクション(NR)とノイズキャンセル(ANC)の違い

コールセンターにおけるノイズリダクションについて検討する前に、「ノイズリダクション」と「ノイズキャンセル」の違いについてまとめてみましょう。

ノイズリダクション

「フィルター」を通して、不要な振動成分や「ノイズ」だけを取り出し減少させる技術のことです。ノイズリダクションは、主に「アクティブノイズキャンセリング」と「パッシブノイズリダクション」の二つに大別されます。

ノイズキャンセル

ノイズキャンセルは、ノイズリダクションにおいて大別される二つの機能の一つです。ノイズに対して逆位相の音を発生させ、ノイズを打ち消し(キャンセル)ます。この技術の精度はリアルタイムで生成する音波に依存するので、使用するデバイスの処理能力がカギを握ります。

補足:騒音が多いコールセンター業務の一覧

  • 自動車保険の事故受付―自動車の往来がある路肩からの問い合わせが多い
  • スポーツイベントやコンサート会場からの問い合わせ受付―観客の歓声や音楽が鳴り響く中で、チケットや入場についての問い合わせがある
  • 工場からの連絡―製造ラインの稼働音や機械音の中から、機器のトラブルシューティングや部品の緊急発注などの問い合わせがある
  • 建設現場からの問い合わせ受付―建設作業中の騒音や機械音の中から、資材の発注や納期確認、安全管理に関する問い合わせがある
  • 飲食店からの連絡―厨房の騒音や店内の喧騒の中から、食材の発注や機器のトラブル対応などの問い合わせがある
  • 救急医療―災害現場や事故現場など、サイレンや周囲の騒音がある中での緊急連絡がある

コールセンターとノイズリダクション

私たちの日常生活や日常業務の中で騒音は不可避です。とはいえ、人体に影響を与えることすらあるノイズは、なるべく0にしたいものです。とりわけコールセンターにおいては、ノイズが命取りになることもあり得ます。

そのため、ノイズキャンセル機能付きのヘッドセットや、防音機能を備えたパーティションなどを活用しているコールセンターは少なくありません。

しかし現在は、このようなハードウェア的アプローチだけではありません。アプリケーションによるノイズリダクションというアプローチが進んでいます

最新のノイズリダクションツールでは、めまぐるしく進化するAIの活用により、以下のような機能が付加・強化されている製品があります。

  • 人の声と騒音の区別
  • 特定の声の区別(「子どもの泣き声は騒音と判断する」など)
  • 欠落した音声の穴埋め

では、コールセンターにおいて「ノイズが命取りになる」とはどういうことでしょうか。

コールセンターにおけるノイズリダクションの重要性

コールセンターがノイズ抑制において考えるべきは、ただ「お客さまの声が聞きとりやすいかどうか」「オペレーターの声が届いているかどうか」だけではありません。

もしも「オペレーターの声は聞こえるけどノイズが多い」という状況に手を打たないなら、お客さまとのコミュニケーションの妨げになったり、お客さまに不信感をもたれる原因になったりするリスクがあります。

非対面の顧客接点であるコールセンターは、お客さまとオペレーターの双方にとって「音声が命」と言っても過言ではありません。個人情報のような機密性の高い情報を取り扱う部署であるため、顧客が自分の情報の取り扱い環境について不安を感じる事態は避けたいものです。加えて、お互いの感情把握に限界がある電話越しにおいては、ちょっとした聞き間違いや音声の欠落が、お客さまとの良好な関係を崩すリスクとなります。

コールセンターにおいては、周辺の騒音が「顧客接点におけるノイズ」となり、それが企業全体にとっての命取りとなるのです。最悪の場合、顧客体験の低下や機会損失につながりかねません。

また、オペレーター同士の音が気になって業務や顧客対応に集中できず、知らぬ間に業務効率やクオリティが下がっている可能性も見落としてはいけません。オペレーター間で発生する音としては、キーボードやマウスの操作音、他のオペレーターの話し声、エアコンなどの機械音が挙げられます。

オペレーターにとっては、いずれも必要最低限の環境音であり、不必要に発生させている音ではありません。つまり、各自の意識次第で容易に0にできる音ではないということです。しかし、お客さまから「仕方のない環境音」と捉えてもらえるかは別問題です。だからこそ、ノイズリダクションによるノイズ抑制が重要となります。

「顧客の声」が聞きやすい音声認識システム

コールセンター白書2023」の調べによれば、コールセンターが「今後導入予定のITソリューション」第一位は「音声認識システム」です。

この結果の背景には、「既存の通話録音システムだけでは、コールリーズンやVOCの分析が十分に行えない」「AIの発展により、通話音声の認識率が従来よりも向上している」といった要素が関係しています。

とはいえ、もっと前提の部分で共通しているのは「より正確に『顧客の声』を聞きたい」という願いではないでしょうか。この願いを実現するには、お客さまとの円滑なコミュニケーションと、お客さまが「話しやすい」と感じられる通話環境が必要不可欠です。

最新のノイズリダクションツールは、さまざまなWeb会議システムやコンタクトセンターシステムの連携が可能です。ローカル環境での運用ができるものもあるため、機密性の高い情報を扱うコールセンターにおいて、よりセキュアに活用することができます。

最後に、コールセンターで活用できるノイズリダクションツールを3つ紹介します。

ノイズリダクションツール3選

ノイズリダクションあるいはノイズキャンセリングのツールは、製品によってさまざまな特徴をもちます。そのため、「自社センターにあった機能が搭載されているかどうか」や、「必要なシステムとの連携ができるかどうか」を確認するようにしましょう。また、海外製品が多いので、どの言語に対応しているのかも確認しておくと安心です。

これから異なる特徴をもつ3つの製品を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

Namitech(ナミテック)ソリューション

ノイズリダクションツールであり、独自のAIシステムを搭載しているNamitech(ナミテック)ソリューション

  • 単純なノイズ削減技術ではなく、登録した人の声以外を除去するMy Voice Only機能を搭載
  • SNR-6dbの環境でも機能する(SNR-0db:子どもの泣き声、犬の鳴き声、電車の音など)というハイスペック
  • ノイズリダクションのソリューションには珍しいアジア発のアプリケーションで、日本語とベトナム語に特化

teamsやzoom、Google Meetといった大手Web会議システムと連携可能。それだけでなく、Genesys Cloud、Genesys On Premise、Bright Patternといったコールセンターシステムとも連携でき、ローカル上で音声処理を行うので、コールセンターでのセキュアな活用ビジョンが描きやすい。

URL: https://namitech.cba-japan.com/

Krisp

AIが組み込まれたノイズキャンセリングツールのKrisp

600を越えるアプリケーションと連携可能。
音声処理はすべてローカルで実行するので、音声データが外部に漏れる心配がなく、コールセンターでの活用においても安心できる。
2024年7月現在、日本語はKrisp1.0のみ対応している。

URL: https://jp.vcube.com/form-inquiry-md11-krisp.html

Noise Blocker

雑音を記憶させ、覚えた雑音のみを除去するという明快なソリューション。

各雑音を覚えさせる手間はあるものの、その分高い精度でのノイズ除去が可能。「記憶させていない雑音はカットされず、記憶させたはずの音でもカットされない場合があった」というレビューもあるので、どのような場面でどんな音をカットしたいのかといった目的を明確にしておくことがポイント。

URL: https://closedlooplabs.com/

最後に

コールセンター業務は、非対面な顧客接点だからこそ音声こそ命であり、オペレーターにとっての顔となります。音声が明瞭であればあった分だけ、オペレーターの高い顧客対応や豊富な知識などが本領を発揮し、より光ります。決してノイズに邪魔されることなく、オペレーターとお客さまの双方にとって快適なコミュニケーションを実現しましょう。