多くの企業家が熱い視線を向けているのが教育ビジネス業界です。LTV(顧客生涯価値)が高いという教育市場の特徴があらためて評価されています。オンライン学習という新たなサービスを活用しながら、広がり続ける教育ビジネス業界に今回は注目します。

教育ビジネス業界でカスタマーサクセスを実現するために、顧客接点がどれほど重要になるかを解説していきます。後半にはコールセンターが教育市場のカスタマーサクセスにどう貢献できるか掘り下げますのでご覧ください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、17年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

教育ビジネス業界の可能性

国内でも海外でも安定して利益を確保できる分野として教育市場が注目されています。教育ビジネス業界といえば、塾、家庭教師、通信講座などすでに成熟しきった印象です。なぜ成長の可能性があるとみなされているのでしょうか。経営者たちが評価する教育ビジネス業界の5つの可能性を紹介します。

オンライン学習の定着

コロナ禍によってオンライン学習が定着しました。受験のミカタが行ったアンケートでは、対象となった中高生の半数がオンライン授業が増えることに賛成と答えました。

理由は「登校時間が減り、その分の時間を勉強や休憩に回すことができる」「オンライン授業では、巻き戻してわからないところを何度も見ることができる」というものです。

さらに、受験勉強のサポートで利用しているサービスについて尋ねたところ、「従来の塾、予備校、家庭教師」に続いて「オンラインの動画授業、家庭教師」が2位にランクインしていました。

オンライン授業に賛成している学生の人数が多いことを考えると、今後さらにオンラインサービスの利用者が増えると予想できます。

通信制高校の人気

「コロナ禍ではオンラインが人気だったが、これからはリアルの教育に戻るだろう」と思われるかもしれません。しかし教育現場のリアル回帰が進んでいる中で、通信制高校の生徒数が増加しています。

上のグラフ(参照:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」)の赤線を見ると、通信制の生徒数が平成27年から令和1年にかけて増加しています。左の表の数値を見ると、平成27年から令和2年にかけて通信制を選ぶ生徒が2万人も増えています。

同じく私立の通信制高校の数自体も増加傾向にあります。

ビジネス感覚が鋭い私立の通信制高校が需要をいち早く感じ、投資を継続しているのです。現在では、高校生の約13人に一人が通信制高校に通っていると言われています。

顕在化した学生たちのニーズ

オンライン学習が定着するにつれ、学生たちのニーズが明確になってきています。

  • 通学にかかる移動時間を趣味や習い事に使いたい
  • 勉強のペースを自分でコントロールしたい
  • すでに経験したオンライン授業のメリットを捨てられない

これまで、高校で学ぶ目的は「レベルの高い大学へ進学すること」と考えている学生が多くいました。しかしオンライン授業を経験することによって「なぜ学ぶのか」を考える時間が生まれ、「自己実現のために学びたい」というニーズが顕在化してきたのです。すきま時間が増えたおかげで「自分が研究したい分野」がはっきりしたという学生たちが増えています。

広がり続ける教育ビジネス業界の市場

教育ビジネス業界の市場は学生だけではありません。大人の学びのニーズも高まっています。EDUSEARCHの「社会人の習い事についてのアンケート調査」では、コロナ禍で始めた習い事をこれからも続けたいと考えている方が対象者の8割でした。スキルアップ、語学習得、検定取得などを提供する習い事への関心が依然として高いことが分かります。

政府も社会人の学びを後押しします。社会人の教育市場に政府から1兆円支援が入ることによって、教育市場は今後さらに拡大していくことでしょう。

国内外における大学市場の大きさ 

国内の大学進学率は上昇傾向にあります。文部科学省の調査によると、2022年は大学への進学率が56.6%と過去最高を記録しました。さらに、短大や専門学校なども含む進学率も過去最高とのことです。

「進学意識の高まり」「キャリアアップへの関心の高さ」は今後も続くことでしょう。

米国では大学市場の大きさが教育ビジネス業界から注目されています。US News and World Reportによると、米国の大学に在籍する学生の数は平均6,354 人です。大きな大学では60,000人以上の学生がいます。これほど大きな市場をターゲットにして、米国では大学生に対するカスタマーサクセスの施策がいろいろと行われているのです。

教育ビジネスのカスタマーサクセスで大切な5つのこと

教育ビジネスを成功させるカギはカスタマーサクセスです。学生や社会人のLTVを高めていくにはカスタマーサクセスが欠かせません

では教育ビジネスにおいてカスタマーサクセスを実現するのに必要な5つのポイントを見ていきましょう。

顧客接点を重視する

教育ビジネスにおいてLTVを高めるために大切なことは、授業や教材といったのコンテンツの充実だけではありません。オフラインかオンラインかといったフォーマットの多様化だけでもありません。顧客接点が重要になります。

サービスの利用者のニーズは刻々と変化していきます。変化に迅速に対応するには企業が顧客接点を持ち、顧客のニーズをリアルタイムに把握していくことが欠かせません

顧客のニーズに敏感である

教育ビジネスの大きなターゲット層は子どもたちです。子どもの関心の移り変わりはとても速いものです。さらに子どもは柔軟性が高いため、勉強のために使うデバイスやデジタル技術は次から次に変化していきます。コンテンツの内容、サービスを提供するフォーマットは常に子供が興味を持てるものでなければなりません。

社会人のニーズも刻々と変化します。コロナ禍ではエクセルやPythonなどビジネススキルに関連した教育コンテンツが人気でしたが、リアルな職場での業務が増えるにつれ、コミュニケーション術などのビジネススキルが人気です。

企業研修においても少し緩やかですが変化は見られます。これまではグローバル人材の育成がトレンドでしたが、今はコーチング技術が注目されています。

顧客のニーズに敏感であるためには、顧客接点で得られるVOC(お客さまの声)が非常に重要です。サービス利用者の声を収集し、既存サービスの改善と新規サービスの開発を同時に行っていくことがカスタマーサクセスには欠かせません。

すぐに疑問を解消すること

サービスを利用する前、そしてサービスの利用中に顧客が感じる疑問をすぐに解消してあげることも教育ビジネスにおけるカスタマーサクセスには必要です。

塾、予備校、専門学校、大学などオフラインでの教育サービスではまだまだ現場の職員が問い合わせ対応を行っています

コールセンターやFAQを活用することによって、疑問をすぐに解消できる環境を整えてあげましょう。

複数の事業でニーズを満たす

教育ビジネス業界における顧客のニーズは多様化しています。オンラインサービスを使って簡単に教育コンテンツを利用できるようになっているため、顧客のニーズを満たすには複数の事業を展開することが必要です。

広いターゲットに向けて発信するマスプロダクト一つだけでは、顧客を満足させられません。個別のニーズにこたえ続けていくためには、複数の事業を展開する必要があります。

人材不足には事務作業の自動化で対応

顧客接点を維持しながら複数の事業を行っていくには人材が必要です。しかし、人材には限りがあります。そこで重要になるのが事務作業の自動化です。

教育現場の定型業務を自動化することで、教員やサービス開発者たちが事務作業に割く時間を減らせます。

定型作業の自動化ツール(RPAツール)を活用することで、授業コンテンツの作成、新規サービスの開発、生徒と向き合う時間といった生産性の高い業務に時間を費やせるようになります。

教育ビジネス業界のためにコールセンターができること

教育ビジネスのカスタマーサクセスのためにコールセンターができることは何でしょうか。たとえば最新の音声自動応答システム(IVR)を活用できます。

従来の音声ガイダンスが流れる機能だけではなく、スマートフォンでメニューを見ながら選択していける機能(ビジュアルIVR)や、AIと会話しながら回答が得られる機能(会話型IVR)を活用していけるでしょう。

通信制の高校や大学に入学する前の時期には、たくさんの疑問があるものです。入学手続き、奨学金、留学などについて多岐にわたる質問があります。

こういった質問は季節によって増えたり減ったりします。とくに問い合わせが増える時期は、窓口がつながりにくくなりカスタマーサクセスを阻害する要因になります。最新の音声自動応答システムで対応するなら顧客体験をより良いものにできるでしょう。

Z世代が対象ならオムニチャネルがカスタマーサクセスのカギ

教育ビジネス業界のターゲット層で今後伸びていくのはZ世代です。Z世代はウェブベースのコミュニケーションを好みます。Webチャット、ビデオ通話、メッセンジャーアプリなどです。教育ビジネスにおける顧客接点では、必ず対応しておかなければいけないチャネルです。

現在はGIGAスクールの取り組みが定着してきているため、Z世代の次の世代もこれまで以上に多様なチャネルやツールを活用していくことでしょう

一方、すでに社会人になっている人やシニア層に訴求することも教育ビジネスでは欠かせません。高い年齢層が好むチャネルは、電話、電子メールです

いくつも教育ビジネスの事業を展開するときに、これらすべての顧客接点のチャネルをカバーしておくことは大切です。そのためにはオムニチャネルに対応したコールセンターシステムが役立ちます。最新のオムニチャネル対応コールセンターシステムであれば、Webサイト上のチャットを、電話での会話にスムーズにつなげることが可能です。

▶参考:教育ビジネスで使いやすいオムニチャネル対応コールセンターシステム「Bright Pattern

教育ビジネス業界が導入しやすいコールセンターシステムはクラウド

教育ビジネスが対応する問い合わせは、年間で激しく増減します。ただし問い合わせの増減には規則性があるため、予測が比較的簡単です。入学前の問い合わせ、学年の始めの問い合わせ、奨学金についての問い合わせなどには季節性があります。

問い合わせの増減に合わせて柔軟に対応できるのがクラウド型のコールセンターシステムです。問合せが多い時期に席数を増やしたり、少ない時期には減らしたりすることが可能です。

さらに問い合わせが多い時期に席数を増やすのではなく、チャットボットや会話型IVR(ボイスボット)を使った対応をするといった施策もできます。

最新のクラウド型コールセンターシステムはカスタムAPIを使って、すでに大学などの教育現場で使われているシステムと統合できます。学生の記録にアクセスしながら問い合わせ対応することが可能です。

問い合わせ履歴と学生データを組み合わせていけば、個別に最適化された学習を提供できるでしょう。カスタマーサクセスに必要なパーソナライズされた教育を提供していけます。

カスタマーサクセスにはスピード感が必要

カスタマーサクセスに大切なのはスピード感です。顧客接点の準備に時間をかけすぎていると、顧客ニーズはあっという間に変化していきます。そのため、スモールスタートで施策を走らせていくことが重要になります。

たとえば、「少ない席数から最新コールセンターシステムを使うこと」「まずはひとつのチャネルの問い合わせ処理から自動化してみること」「とりあえずひとつの事業でビデオ通話を取り入れてみること」ができるでしょう。施策を実際に始めてみて、分析と改善を行っていくことがカスタマーサクセスには必要です。

最後に

教育ビジネス業界はこれから成長が見込める市場として注目を集めています。現在の教育ビジネスで成功するには、カスタマーサクセスが欠かせません。

カスタマーサクセスは顧客接点から実現していけます。生徒やお客さまのニーズに敏感であったり、すぐに疑問を解消してあげたりすることが大切です。そのために音声自動応答システムや、クラウド型コールセンターシステムを活用していきましょう。

「顧客接点を重視することでうまくいくのか」と不安になるかもしれません。VOCの活用は確実にLTVの向上につながります。スモールスタートをすることで、いち早くカスタマーサクセスを実現していきましょう。