「カスタマーサービスでは高いコミュニケーションスキルが大切です」。「いまさら何を言っているのだろう。当たり前じゃないか」と思われますか。しかし、近年改めてコミュニケーションスキルが注目されるようになっています。 

リスキリングで学ぶべきスキルとして、コミュニケーションスキルが挙げられるほどの注目度です。誰もが重要性を認めるスキルが、なぜ今になって再注目されているのでしょうか。カスタマーサービスではどのようなスキルが活きますか。すぐに実践できるスキルから注意点まで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、17年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

なぜ「今」コミュニケーションスキルが必要か 

カスタマーサービスの提供方法には、音声ベース(電話やオンライン接客など)とテキストベース(メールやチャットなど)の2種類が存在します。

いずれの場合も、顧客へ良質なサービスを提供することが一番の目的です。だからこそ、コミュニケーションスキルはこれまでも重視されてきました。なぜ今改めてオペレーターのコミュニケーションスキルが注目され、スキルアップの必要に迫られているのでしょうか。 

コミュニケーションスキルに関する今の流れは、決して時代の繰り返しではありません。

再注目にいたった一つの理由は、生成AIの台頭やボットの浸透を含めた「自動化」の普及です。 

加速する自動化は、さまざまな企業の業務効率化に確実に貢献しています。とはいえ、自動化および効率化が広まっているからこそ、サービスのスピードや正確さが武器にならなくなってきているのも事実なのです。 

競合他社との差別化はますます困難を極めつつあります。加えて、「AIの民主化」により「迅速で正確な対応」は人間だけの能力ですらなくなってきました。 

多くの企業が、競合他社との差別化のみならず、AIと人間の差別化を図らなければいけない局面に立っています。自社だけ、あるいは人間だけがもつ武器が、今まで以上に重要になってきているのです。とりわけ、「ホスピタリティ」や「共感性」といった顧客へ寄り添う姿勢が、差別化と顧客ロイヤルティ醸成のカギを握ります。 

顧客が考える「利用したチャネルにおける顧客対応で、もっとも重要だと思うこと」
引用:「コールセンター白書2022」147ページ

コールセンター白書2022」の「利用したチャネルにおける顧客対応で、もっとも重要だと思うこと」(メールと有人チャットのみ)を見ると、顧客のニーズが「丁寧さ」と「迅速さ」で割れていることが分かります。 

「丁寧さ」というニーズを満たす上で、オペレーターたちのコミュニケーションスキルは最重要要素です。ホスピタリティを含め、オペレーターが思う丁寧さと、顧客が感じる丁寧さは乖離することがあるからです。 

オペレーターと顧客のスキマを可能な限り埋めるためには、高いコミュニケーションスキルが求められます。 

アンケート結果を見れば、顧客がカスタマーサービスにおける「丁寧さ」にアンテナを張っていることは明らかです。自動化によって「迅速さ」を実現できているからこそ、「丁寧さ」のニーズが高まっているのでしょう。 

「丁寧さ」はいたるところで表出しますが、AIが台頭してきたからこそ「寄り添い」による丁寧さの表現が大切です。オペレーターが顧客に寄り添うためには、やはりコミュニケーションスキルが必要です。 

では、「コミュニケーションスキル」とは具体的に何を指すのでしょうか。

カスタマーサービスに必要なコミュニケーションスキルとは

カスタマーサービスの現場に、「皆と同じようにマニュアル通りの対応やサポートをしているはずなのに、なぜか顧客からの評判がいつも良いオペレーター」という存在はいませんか。 

評判が良いオペレーターと他のオペレーターの違いは、寄り添う姿勢が顧客に伝わっているかどうかです。言い換えれば、高いコミュニケーションスキルを有しているかどうかです。 

コミュニケーションスキルとは:HRproの記事では、コミュニケーションスキルは「相手との情報共有や意思疎通をスムーズに行うための能力や技術を意味する。相手に、自分の想いや持っている情報を上手く伝えることに重点を置きがちだが、それだけではない。相手からしっかりと情報を受け取ることもポイントになる」と定義されています。 

「コミュニケーション」には言語的コミュニケーション(話そのもの、話し言葉、手話やメールなども含む)と非言語的コミュニケーション(身振り手振り、口調や表情など)の2種類が存在します。

メラビアンの法則によれば、コミュニケーションのうち、言語的コミュニケーションの割合は7%、非言語的コミュニケーションは93%です。 

カスタマーサービス従事者は、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションのどちらもバランス良くスキルアップする必要があります。電話、メール、有人チャットなど、さまざまなチャネルでサービスを提供するからです。 

しかし、ただ漠然と「コミュニケーションスキルをアップさせる」と言うと、何から手を付けたら良いのか見失うリスクがあります。オペレーターのコミュニケーションスキルを効率よく確実にアップさせるため、まずは業務に必要なスキルを明確にしましょう。 

この記事では、全部で6つのスキルを紹介します。 

言語的コミュニケーションにおけるスキル4つ

まず「言語的コミュニケーションスキル」の分野におけるスキルを紹介します。

スキル①:顧客の話を最後まで聞き、本当のニーズをくみとる 

顧客の話をただ最後まで聞いて状況を把握し、マニュアル通りに対応することは比較的容易です。「マニュアル通りの対応」という点では、今やAIの方が得意と言っても過言ではありません。 

しかし、マニュアル通りの機械的対応では、顧客ひとりひとりの真のニーズに応えることはできません。これから先のカスタマーサービスには、「本当のニーズをくみ取って応える」ことが求められます。

まずは顧客の悩みや相談事について、必ず最後まで聞くようにしましょう。ヒアリングの過程で行間や空気を読んだり、感情移入したりすることで、言葉にされない顧客のニーズをくみ取るのです。 

顧客に真に寄り添うためには、本当のニーズの把握が必要不可欠です。「マニュアル通りの対応は、一件あたりの対応を効率化できる一方、時に定型文的で無機質になってしまいがち」とジレンマを感じるオペレーターもいるかもしれません。今後は、人間味や温かみのあるサービスへのニーズが高まることが予想されます。生身のオペレーターだからこそのサービスが提供できない、AIと人間の差別化、競合他社との差別化はますます困難になるでしょう。 

では、「本当のニーズをくみ取る」とは具体的にどういうことでしょうか。一例を紹介します。 

例:「会社のプリンターが故障したので対応方法を教えて欲しい」 との問い合わせが入りました。迅速に対応することのみを優先すると、正確な対応方法を電話やチャットで伝えるだけになるかもしれません。しかし、話を最後まで聞いていると、顧客の本当のニーズが「30分後にせまった会議に必要な重要書類を印刷すること」だと分かります。

本当のニーズが分かった上でも、故障時の対応方法を伝えるだけでサービスを完結させるでしょうか。おそらく、多くのオペレーターは「ネットに繋がっている他のプリンターに打ち出す設定方法を教える」のような別の最適解を出すはずです。  

「コールセンタージャパン」2023年7月 29ページ

上記の例にあるように、話し始めのうちは顧客の本当のニーズは掴めないかもしれません。顧客からの要望がはっきりしている場合はとくに難しいでしょう。しかし、「実は○○してほしい」と思っていつつも、口にはしづらいと感じて言葉にはされないニーズがあるものです。または、顧客本人すら自覚していないニーズが隠れている場合もあります。 

的確にニーズを満たすため、まずは顧客から発せられる言葉や感情を最後まで聞くようにしましょう。話されたり書かれたりする内容はもちろん、話の進行速度や感情の機微にも注目して、一度は必ず全てを聞きとることが重要です。 

スキル②:相手に合わせて臨機応変に対応し、論理的説明や豊かな感情表現をする 

顧客が感情的(焦っていたり怒っていたり)になっている場合、何に悩んでいるのか/困っているのかをうまく言語化できないことがあります。まず、顧客の反応にオペレーターが感情的にならないよう気をつけましょう。同時に、相手の感情を逆なでしたりネガティブ思考に至らせたりしないよう、臨機応変に対応することが求められます。 

感情的になっている顧客へマニュアル通りの対応をすると、「自分の悩みを理解してもらえない」と受け取られるリスクがあります。本当のニーズは、自分の気持ちを聞いて受け止めてほしいだけなのかもしれません。オペレーターが臨機応変に対応できないと、対応がより複雑化する可能性があります。問い合わせ内容と解決方法が簡単だったとしてもです。 

クレームやカスタマーハラスメントに繋がる場合もあるので、「マニュアル通りの対応が絶対」とは思わないようにしましょう。 

顧客の状況やテンションへ柔軟に対応しつつ、抱えている問題や悩みについて論理的に言語化・説明し、整理してあげてください。うまくまとまらない自分の考えが言語化されると、「自分のことを分かってもらえた」という感覚が生まれるからです。すると、顧客の感情の波がおさまることも期待できます。結果として、顧客とオペレーターのそれぞれが落ち着いて、一緒に問題解決へ取り組むことが可能になります。 

論理的に言語化・説明したり整理したりする際に注意すべき点があります。オペレーター側の憶測によって、顧客の状況や感情を決めつけないことです。「○○ということでしょうか?」のように、顧客の質問や悩みの本質を確認する会話を挟むようにしてください。意識のすりあわせを目的とした会話を挟めば、無意識に起こる認識のズレと、それに伴う問題の複雑化を予防できます。 

加えて、オペレーターとして豊かな感情表現をするよう意識しましょう

なぜなら、顔が見えない環境における会話(音声とテキストの両方を含む)では、お互いの感情を正確に把握することが難しいからです。豊かな感情表現で、顧客が大切にしているものを同じように大切にする姿勢や、顧客の感情に共感しようとする姿勢を見せられます。 

オペレーターがマニュアル通りの対応に固執したり、(最適解だとしても)顧客の感情を無視した提案をしたりするとどうなるでしょうか。顧客は「冷たい」「わかってもらえていない」と感じるかもしれません。逆に「自分の気持ちを分かってもらえた」「共感してもらえた」と感じれば、オペレーターへの信頼感が生まれます。「寄り添ってもらえた」という感覚は、顧客ロイヤルティ醸成に直結します。 

スキル③:相手の理解度や状況に合わせて、必要な情報をわかりやすく提供する 

このスキルは、とくにシニア対応の場面で活きてくるスキルです。具体的には、会話の中でなるべく横文字を使わないことや、一度に多くの情報を伝えないことなどが挙げられます。 

たとえば、横文字に関しては「専門用語と思ってもいない言葉が実は専門用語だった」という場合があります。「タップ」「スワイプ」「フリック」といった、スマートフォンやタブレット端末に関する説明では必ず使う言葉も専門用語です。「みんながわかる言葉」を、「今話している相手もわかる言葉」と決めつけないようにしてください。可能な限り相手が使う言葉と同じ言葉を使って会話をしましょう。 

また、一度に多くの情報を伝えることは避けましょう。シニア層は、年齢により認知・記憶機能が変化します。これに伴って、一度に多くの内容をインプットすることが難しくなります。ですから、伝えるべき内容を要約して伝えたり、一文を短くすることで情報整理しながら会話をしたりすることが必要です。 

このスキルが強化されると、パーソナライズされた的確なサービスを提供できます。また、聞き返し/言い直しが予防できるので、カスタマーサービスの生産性向上も見込めます。 

スキル④:クッション言葉(ビジネス枕詞)を活用する 

クッション言葉は、本題や要求、提案を相手へ伝えるとき、相手を気遣う気持ちや敬う気持ちを添える目的で用いられる言葉です。コミュニケーションの潤滑剤とも言えるでしょう。チャネルを問わず使えるクッション言葉の例をいくつか紹介します。クッション言葉の活用は、すぐにでも使えるスキルなのでぜひ参考にしてください。

【クッション言葉の例】 

  • お手数ですが 
  • 差し支えなければ 
  • 誠に申し訳ございませんが 
  • 申し上げにくいのですが 
  • 恐れ入りますが 

クッション言葉は、決して特殊な言葉を使うわけではありません。むしろ、カスタマーサービス従事者の多くは、すでにクッション言葉を活用しておられることでしょう。チャネルを問わず便利なクッション言葉ですが、活用には注意が必要です。 

クッション言葉を多用しすぎると、かえって対応が白々しくなったり、回りくどくなって本題や意図が伝わりにくかったりします。また、オペレーターからの依頼を「断っても良い」と勘違いさせてしまう可能性もあります。ただ言えば良いわけではないクッション言葉。利用シーンや頻度については、細心の注意を払いたいものです。 

非言語的コミュニケーションにおけるスキル2つ

続いて、非言語的コミュニケーションにおけるコミュニケーションスキルについて解説します。

スキル⑤:声のトーン、大きさ、スピード(=近言語/パラ言語)に注意する

このスキルは、カスタマーサービスの中でもとくにコールセンターのオペレーターに求められるスキルです。コールセンターで活きる非言語的コミュニケーションスキルを4つ紹介します。

  • 声のトーンは音階の「ファ」や「ソ」が聞き取りやすく聞き心地が良い
  • 1分間に400字程度の情報を話すのがちょうど良いスピード
  • 「あのー」や「えっとー」といった口癖は、顧客を不安にさせる可能性があるので避けるべき
  • 語尾は伸ばさない

コールセンターのオペレーター経験がある方にとっては、決して物珍しいスキルではないでしょう。とはいえ、4つのスキルは自分の応対を客観的に聞かないと分析できないスキルでもあります。だからこそ、SVによるモニタリングやフィードバック、指導、個人レポートの作成といった取り組みが効果的です。

▶参考情報:モニタリングやレポート機能に優れたコールセンターシステム「Bright Pattern

各オペレーターが客観的に自分を分析できる取り組みをするほか、社内外の研修を活用するのも良いスキルアップの方法です。対応品質向上を目的とした取り組みの多くは、継続にこそ意味があります。

定期的に取り組んでいくためには、ある程度の「ゆとり」がコールセンターに必要です。最近は、自動化によってゆとりが創出されるようになっています。AIを含む自動化で生まれたゆとりは、人間だけがもつスキルの向上に活用したいものです。

ここで、カスタマーサービスにおいてゆとりを活用した事例を一つ紹介します。

例:三井ダイレクト損害保険

三井ダイレクト損害保険は、自動化によってできた「ゆとり」で、スタッフの育成強化に力を入れました。具体的には、ホテルのコンシェルジュを目指して「あなたのためのコンシェルジュ」という名称のコンシェルジュデスクを導入しています。同デスクへ配属されるオペレーターは、「コンシェルジュの育成プログラム」の一環として、元ホテルスタッフや元フライトアテンダントが講師となる研修に参加するなどしてスキルアップを図っています。

「コールセンタージャパン」2023年9月号 22ページ

生まれたゆとりを活かして、カスタマーサービスをワンランクアップさせた好例です。三井ダイレクト損害保険のように、社内外での研修を活用することには多くのメリットがあります。研修にて技術的スキルアップが図れることは言うまでもありません。

期待できる別効果として、参加したオペレーターたちが共通の目標をもったり、ロールモデルを明確化したりできる点が挙げられます。目標やモデルが共通すると、サービス品質を統一しやすくなります。企業ブランドに合ったカスタマーサービスの提供という側面でもメリットになるのです。

スキル⑥:笑顔や良い座り姿勢、丁重な姿勢を保つ

サービス提供が音声ベースでもテキストベースでも、オペレーター側の表情や姿勢は顧客からは見えません。しかし、「笑声(えごえ)」という言葉があるとおり、オペレーターが笑顔を保ちながら話すなら、おのずと声のトーンにも「表情」が表れます。対応中の姿勢が良ければ、綺麗な発声が可能です。身振り手振りをまじえながら対応するなら、自然なメリハリがつきます。

また、テキストベースでの対応では、丁重な姿勢を保つように意識しましょう。テキスト対応時は、簡潔さやテンポ感を重視しがちで、注意しないと言葉足らずになってしまいがちです。言葉を慎重に選んだり、感情をコントロールしたりすることで、丁重な姿勢を崩さないようにしてください。

顧客からオペレーターの様子が見えなかいからこそ、見えるとき以上に表情や姿勢、トーンに気を配るようにします。顧客に寄り添ったサービスを提供するには、必要不可欠なスキルです。

最後に

この記事では、改めてコミュニケーションスキルの重要性について強調しました。カスタマーサービスの業務に必要なコミュニケーションスキルは、AIと人間あるいは競合他社との間で差別化を図るカギとなります。「寄り添い」を実現するには、「今」コミュニケーションスキルを磨く必要があります。

しかし差別化を図りつつ、より良いサービスを提供するために注意したい点があります。「寄り添う」=「なんでもする」ではないということです。近年ではカスタマーハラスメントが横行しています。オペレーターたちを守るために、どこまでは「寄り添い」で、どこからがカスタマーハラスメントとしての対応になるのかを線引きしておくべきです。

業務に必要なコミュニケーションスキルは、一朝一夕で完璧に身につけられるものではありません。自動化を味方に付けながら、寄り添うためのスキルを一つずつ磨いていきましょう。