多くの企業、とくに小売業界はZ世代に強い関心を寄せています。これまではミレニアル世代が消費者層の主軸となってきましたが、徐々にZ世代も消費行動の軸を担うようになってきたからです。

Z世代はモノや働き方への価値観が異なるとして、たびたび話題になります。現在、そして将来の顧客として向き合わなければいけないZ世代。ブランドはどのようにしてZ世代と向き合っていけば良いのでしょうか。

この記事では、Z世代の消費トレンドをまとめつつ、どのようにZ世代へアプローチしていけるかを紹介します。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、18年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

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Instagram、それともXやTikTok…Z世代へのアプローチ方法が分からない

タイムパフォーマンスを重視する傾向に対して、ブランドとの個人的な関係を構築してもらうにはどうしたら良いのか

 

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Z世代の消費トレンド

Z世代の消費トレンド

なにかと「他の世代とは違う」と言われがちなZ世代。たとえば、Z世代はいわゆる出世や高収入での生活よりも、プライベートとの両立を目指し、ライフワークバランスの方を重視する傾向にあります。

出典:https://www.huffingtonpost.jp/entry/genz-shukatsu-survey-bokutowatashi_jp_6693b63fe4b094ee6b85d20a

「僕と私と株式会社」によるZ世代対象の就活に関する意識調査では、「安心・安定」が重要なキーワードであることが明らかになりました。従来の初任給や年収などを軸とした企業選びとは大きく異なります。お金やモノよりも、心身の充足(ウェルビーイング)を大切にするのがZ世代の特徴の一つです。

また、Z世代は時間のあるなしに関わらず、「タイパ」(タイムパフォーマンス)を重視します。タイパとは、時間に対する満足感を求める「時間効率」を意識した考え方です。動画の倍速再生やTikTokのような短縮動画、要約サービスが受け入れられている背景には、タイパニーズがあると考えられます。

このような価値観は、消費行動にも表れています。Z世代の主な消費トレンドには以下の3つが挙げられます。

タイパ重視

月額制ファッションレンタルサービスを展開する株式会社エアークローゼットは、2023年に20〜40代の女性会社員を対象に「タイパ」に関する働く女性の意識調査を実施しました。

「買い物の時に本当はもっと時間をかけたいもの」として「ファッション」がトップにあがる一方、働く女性の約6割が「より効率的にお洋服を探したいと思う」と回答しました。さらに、およそ5割の女性が「タイパを意識し高めたいと思う」と回答しています。

ファッションはモノの購買行動における一例に過ぎません。モノに対する消費行動において、もっと時間をかけたいと思いつつ、実際にはタイパニーズがあるということは明白です。

リキッド消費

「リキッド消費」とは、購買の流動性が高い上に、所有欲が低く、商品選択の省略可を重視する消費行動のことです。リキッド消費の背景には、デジタル化、およびSNS活用があります。いつでもどこにでも情報があふれているので、Z世代はより効率よく情報を処理していく必要が生じています。

すぐに多くの情報を見られるので、タイパ意識は強まり、流動的かつ柔軟で、必要なときに必要としているモノを得られるリキッド消費が好まれるのです。

パワーシングル&パワーカップル、インカムリッチの増加による消費の活性化

年々「パワーシングル」あるいは「独身貴族」と呼ばれる高年収の独身者や、「パワーカップル」と呼ばれる双方が高収入で経済的に安定している夫婦が増加しています。

パワーカップル世帯は、2023年の時点で40万世帯を越しており、この10年で約2倍になりました。

広告代理店の博報堂が「インカムリッチ」と名付けた「世帯収入1500万以上の新富裕層」も増えています。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、インカムリッチ世帯は2013年から2022年の10年で、およそ55万世帯にまで上っています。いずれもコロナ禍においてすら堅調に増加していたため、パワーカップルの増加は今後も見込まれると予測できます。

以上の3つのトレンドから、Z世代および若年富裕層は「自分に合うモノを自分に合ったスタイルで購入したい」という意思をもっていると結論できます。

現代はSNSの活性化やインフルエンサーの浸透により、消費行動を含めたさまざまなライフスタイルが身近なものとなっています。言わば購買行動におけるロールモデルがあふれかえっていて情報過多になっているのです。

そのため、顧客接点から顧客体験にいたるまで、従来のスタイルとは一新したZ世代に「ハマる」施策が必要であり、一回の購入で顧客ロイヤルティを獲得できるかどうかが重要となります。

LINEでタイパ重視なZ世代に寄り添う

LINEでタイパ重視なZ世代に寄り添う

では、ブランドはZ世代にハマる施策として何ができるでしょうか。 

1. LINEでタイパ向上に貢献する

トランスコスモス株式会社が「タイパを重視する人の行動7つ」として上げている中に、以下の3つの特徴があります。

  • 隙間時間を活用する
  • SNSで検索を行う
  • オンラインでコミュニケーションをとる

上の3つの特徴を考えると、Z世代がよく利用しているSNSを通して情報を発信したり、コミュニケーションをとったりするなら、彼/彼女たちのタイパ向上へ貢献できると結論できます。

では、Z世代にとってもっとも身近で、よく活用されているSNSとは何でしょうか。

総務省の調べによると、どの年代においても利用率が高いSNSはLINEです。ここで、LINEを活用して顧客のタイパ向上を実現しつつ、的確にターゲット顧客へアプローチしている先例を紹介します。

百貨店の「外商」です。百貨店は若年富裕層へのアプローチとして、オンライン体制を積極的に整備しています。たとえば松屋銀座は、「外商顧客」との連絡手段として「LINE WORKS」を導入しました。

LINEを活用した外商についてSNSを見てみると、担当外商と顧客との関係性や、LINEの活用方法などを垣間見ることができます。

たとえば、顧客から購入したいシーズン限定商品をLINEにて担当外商にリクエストしたり、逆に外商からお気に入りブランドの新商品について連絡が入って喜んでいたりするユーザーの姿などです。

「うちのブランドは百貨店のような大規模小売業ではないし、扱っている商品もそこまで高額のものではないのであまり参考にならない」と思われるでしょうか。百貨店は歴史を通じて小売業のパイオニアと言っても過言ではありません。

世界最古のデパート「ボン・マルシェ」は、現在のバーゲン/セールやカタログ販売の起点です。日本においてヨーロッパで成功した売り方(通販やカタログ販売など)をいち早く取り入れたのも百貨店でした。概してデパートが先駆けて始めた販売方法や顧客との関係作りが、現代の小売業の定石となっています。

百貨店が実践するLINE活用についても参考にすることができるでしょう。

従来の外商はお客さまの家や指定の場所へ行って直接会い、そこで個人的な関係を構築していました。そのため「LINEでのコミュニケーションが主となると、ブランドとの個人的な関係を構築していくことはできないのではないか」と心配されるかもしれません。

LINEによるコミュニケーション事例

では、LINEによるコミュニケーション事例を見てみましょう。

あるユーザーが、比較的安価な商品の手配をLINEにて担当外商へ依頼しました。すると、すぐに外商から商品画像付きの返信がされ、たったの2分で注文までの全てが完了するという購入体験です。

この体験において抜群のタイパが印象的なのは言うまでもありません。

しかし、一連のLINEのやり取りでは、顧客が絵文字を利用しており、メッセージのトーンが友人同士のLINEのようにラフであったことが特徴的でした。

他にも、欲しい商品についてLINEで相談しているという活用法が見受けられました。LINEを介しての顧客と外商は、いわゆるサービス提供者とユーザーという関係性よりも、秘書や先輩、あるいは友人のような関係性と表現する方が適切なのでしょう。 

出典:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2204/18/news061.html

上の図は、Coeto株式会社によるZ世代対象の「新生活・友達作り」に関する調査で、どのコミュニティで友達が多いかを尋ねた結果です。オンライン上で共通の趣味や話題を共有できる環境が一般化していることを背景に、約4割の若者が「オンライン上での友達が多い」と回答しています。

Z世代は「デジタルネイティブ世代」とも呼ばれます。上のアンケート結果に現れているとおりです。そのため、SNSを介したコミュニケーションや人間関係の構築に慣れており、直接対面するよりもオンライン上で関係構築をしていく方が慣れているという人も少なくありません。

Z世代へのアプローチを検討する際は、「オンライン上で関係を構築するなんて無理」という「対面至上主義」について見直す必要があります。

とはいえ、従来の対面での顧客接点を廃止するべきというわけではありません。あくまでも新たな顧客層に対して新たな考え方が求められているのです。

タイパ向上に貢献しつつ、オンライン上でいかに個人的な繋がりを醸成していけるかを重視しましょう。リキッド消費が活性化する中、Z世代の「欲しい」を圧倒的なタイムパフォーマンスで叶え、Z世代にとって楽しく快適な顧客体験を実現するなら、現代から将来の顧客ロイヤルティに直結します。

2. タイパ低下をまねくチャネル運用はNG

タイパを重視するZ世代へのアプローチは、タイパ向上だけではありません。タイパを下げかねない要素の回避も含まれます。

たとえば、LINEから電話のようにチャネルをまたいだコミュニケーションが必要になったときをイメージしてください。担当者や以前の会話内容が引き継げていないなら、お客さまにとっての時間を少なからず無駄にしてしまいます。

そのため、顧客とのコミュニケーションや情報管理においてハブとなるコンタクトセンターは、あらゆるチャネルで正確かつ迅速に情報を把握・参照し、スムーズな顧客対応を実現することが求められます。

現在、LINEは日本にとってインフラ的なコミュニケーションツールです。LINEとのシームレスな連携が可能なコンタクトセンターシステムの活用は、Z世代の消費行動に寄り添っていくための一手段となります。

▶「LINE」と「電話」のチャネルが運用しやすいコンタクトセンターシステム「Bright Pattern」

他にも、電話やビデオ会議システム活用時の騒音が、顧客とのコミュニケーションにおけるタイパ低下のリスクを秘めています。

小さな要素に思えるかもしれませんが、騒音による聞き間違いや聞き返しはお客さまの時間を消費し、ストレスとして蓄積されます。そのため、ぜひノイズ環境やノイズ抑制について見直し・検討してみましょう。タイパ低下リスクの回避につながります。

▶顧客接点の騒音を低減できるノイズリダクションツール「Namitechソリューション」

タイパ重視がブランドにもたらすメリット2つ

タイパ重視がブランドにもたらすメリット2つ

タイパ重視の考え方は、決して顧客のみにメリットとなるものではありません。最後に、ブランド側が享受できるメリットを2つ紹介します。

ブランド側のタイパ向上

お客さまのタイパを優先すると、ブランド側のタイパ向上も実現しやすくなります。

たとえば、百貨店外商の例に戻るなら、従来のように「訪問・対面」をメインとしたスタイルから「オンライン」をメインにすることで、担当外商がお客さまの家や指定の場所へ赴く時間が削減されます。

くわえて、オンライン上でお客さまとやり取りするからこそ、同時並行で複数のお客さまへ対応していくことが可能です。一人のスタッフが担当できる顧客数を増やせるので、ブランドとしての生産性向上が見込めます。

Webチャットを導入した企業が、人的リソースの削減、サポートの多様化、スタッフのメンタルケアに成功したという実例があります

顧客とのエンゲージメントが強まる

お客さまにとって身近で使い慣れたSNSを活用するなら、ユーザーがブランドと個人的にコミュニケーションをとることへのハードルを下げることになります。そのため、自然とコミュニケーションの機会が増えたり、関係性が深まることで会話の内容がパーソナルなものになったりする効果が期待できます。

出典:https://www.value-press.com/pressrelease/250700

テアトルアカデミーによる「オンライン上のコミュニケーションに関する調査」では、およそ2割以上の若者が「オンラインの方が自信を持って話せる」と回答しています。

Z世代は、少なからず「オンラインだからこそ話せる」「オンラインの方がリラックスして普段の自分が出せる」という特性を持っているのです。そのため、仮にブランドとの繋がりがオンラインのみであっても、「冷たさ」や「関係の希薄さ」には直結しないと言えます。むしろ、お客さまのよりパーソナルな部分へ寄り添えるチャンスととらえるようにしましょう。 

最後に

現代そして将来の顧客として、Z世代へのアプローチの仕方を紹介してきました。

LINEの活用において百貨店の外商の例を挙げましたが、そごう・西武にて外商として5年勤めているある若手女性スタッフは、「同年代の人はフットワークが軽く、要望や質問にすぐ応えられないと他店に流れてしまう。情報収集と意思疎通が一層大事」と強調しています。

従来の顧客接点やコミュニケーション方法を大切にしつつも、対Z世代を視野に入れた新たな方法も積極的に採用しましょう。Z世代に有効な顧客接点や情報発信の方法、Z世代にハマる顧客体験を探求するなら、今だけでなく将来的に高い顧客ロイヤルティを獲得することができます。