ロンドンで毎年開催されるカスタマーコンタクトエキスポは、多くを学んだり体験したりすることができる興味深いイベントです。基調講演やワークショップ、展示が多く発表されます。

そのなかで、今でも深く記憶に刻み込まれているものもあります。2015年にDimension DataのPaul Scottが発表した「デジタライズか、死か」という公演です。

これは単に目を引くための誇張表現ではなく、実際にデジタライズを検討する企業にとって深刻な課題なのです。顧客や従業員、その他の関係者も含め、デジタルを好む動向が急激に増えていることがその背景にあり、多くの変化が不意に訪れてきました。この公演が話されてから約3年経った人々は現在、公私に及ぶ多くの活動においてデジタルテクノロジーやシステムを用いています。

豪華なものから必要最低限のものまで、デジタルチャネルサポートの統合

ディメンションデータの「コンタクトセンターはデジタル化すべき、もしくは死ぬか」というブログ公開から2か月後、ForresterのKate Leggettが「コンタクトセンターはデジタル化しなければならない、もしくは死ぬか」というブログを公開しました。

Forresterは同じメッセージを伝える記事をフォローし、「デジタル化か死か」のトピックを扱うウェビナーも配信しています。このメッセージが熟考に値することに疑いの余地はありません。ForresterやDimension Dataは実際に何を言わんとしているのでしょうか。さらに重要な点として、デジタルサポートチャネルとカスタマサービステクノロジーについて散々話し合われてきた今、なぜもう一度「デジタル化か死か」という話題が優先事項としてあげられているのでしょうか。

すでに2009年にYouGovが行ったアンケートでは次のような結果が発表されていました。 コンタクトセンターの96%はEメールでのサポートを行っており、27%はSMSでの問い合わせを受け付けている。20%はTwitterを含むソーシャルメディアも使用しており、11%はオンラインチャットや他のインスタントメッセージチャネルを使用している。 ここから予想される顧客のサポート使用状況として、顧客の70%がEメールで問い合わせをしており、43%がウェブを使って自分で解決しており、4%がソーシャルメディアを、3%がSMSを使っているということです。

過去の話を考察することで、未来を最適化する

「デジタル化か死か」というトピックが再び人々を引きつけたのには理由があります。いえ、むしろ様々なデジタルテクノロジーが本格的にコールセンター で使われ始めた今だからこそ再考すべきことなのです。

消費者は行動や消費の傾向を常に変えてきました。さらに、色々なチャネルが企業側でサポートされているとしても、そのチャネルによるサービスの質が顧客を満足させるとは限りません。下記にあげるのは、いくつかの興味深い論点です。

急速に成長するコンタクトチャネル

多くのコンタクトセンターは、サービス提供に際してデジタルチャネルを統合することの重要性を、早くから認識していました。一方で、緊急性を理解していないコンタクトセンターも多くありました。先進的なコンタクトセンターは、新しいチャネルの導入や統合について日々進歩をつづけているので、緊急性を理解してこなかったコールセンター は競争や差別化において不利になっています。Dimension Dataが予測するところによれば、今後2年以内にコンタクトのチャネルは顧客が選ぶようになり、長年使われてきた音声ベースのコンタクトから変わっていくとのことです。

ナレッジマネジメントの避けて通れない重要な役割

Kate Leggettが指摘するところによると、デジタルチャネルやソーシャルチャネルは、カスタマーサービスセンターでサポートされているにもかかわらず、それらのチャネルを統合するとなるとうまくいっていないケースが多いようです。既存のチャネル同様、新しいチャネルにとっても優れたナレッジマネジメントプロセスは不可欠です。Leggett氏によると、コンタクトセンターの半数がナレッジマネジメントを使用しておらず、トラブルシューティングのためのFAQも今ひとつ機能していないようです。エージェントは、様々なチャネルを使った問い合わせに対処する備えが十分にできていません。

セルフサービスの最適化

消費者は、最初からオペレーターと会話することを望んでいない限り、人が介入することなく疑問や問題を解決することを好みます。セルフサービスはその期待に応えることができます。米国で行われたForresterの調査によると、自力解決やFAQは顧客が好むサービスチャネルとして電話を上回っています。 
実際、これらのチャネルはここ10年以上の間で多くの投資がなされ、支持されてきました。しかし、それらをコールセンター 業務に組み合わせるとき、その使用方法を最適化する必要も生じてきました。これは、オペレーターと顧客双方のために、ナレッジマネジメントとナレッジベースが改善、拡張される必要が生じるという意味です。

切り離せない3要素:データ、分析、カスタマーエクスペリエンス

企業が乗り越えるべき別の課題は、「分析」です。特にトランザクション分析において、必要が生じています。現在、カスタマーサービスは、企業にとって主要な戦略的指標となります。つまり、これまでにない新たなKPIが開発される必要があるのです。Dimension Dataは、コンタクトセンターの40%にいまだこの能力がないものの、向こう5年で分析が主要な要素になると予測しています。

デジタル社会におけるコンタクトセンターエージェントの未来

明らかに、「デジタル化か死か」問題は、消費者がサービスを受けるためのチャネルが何であるかよりも、スピードや効率を優先させる消費者に注意を向けるよう、企業を促し続けています。重要なのはチャネルの数ではなく、顧客が望むときに企業がすぐに返答できることです。もし、消費者は企業の都合よりも自身の必要を優先しているということを覚えているなら、期待に応えることはさらに重要です。

CEBのMatt Dixonは最近のCustomer Expoでこのトピックについて述べています。

上記の調査は、米国で消費者が好んで使うチャネルとして、ウェブベースのFAQとセルフサービスが、史上初めて電話を上回りました。デジタル化に進むことは、顧客とのやり取りで人の役目が完全に排除されるという意味ではありません。デジタルに頼らない消費者は引き続き、電話やそのほかのチャネルを使用するため、人の働きはいまだ重要な役割を占めています。前述したとおり、コールセンター とオペレーターの役割はなくなったわけではなく、デジタル志向の顧客にサービスを提供するのに不可欠なナレッジマネジメントやカスタマーインタラクションツールを含む、統合システムを使用していく必要があります。オペレーターの訓練やマネジメント、監視、評価、習得のために投資をする必要があります。Matt Dixonは、現在のコールセンターの状態について、人の役割がまるで機械の中の小さな歯車の一つに過ぎない古い工場のようだと述べ、この状態をデジタルによって変え、人でしかできない業務により集中できる状態を作らなければならないと言っています。

皆さんは、どう思われますか?