新型コロナウイルスの蔓延を機に、私たちの購買行動は大きく変化してきました。最たる変化は「オンラインファースト化」です。オンラインファースト化に伴って、企業のDX化にも拍車がかかっています。加速し続けるオンラインファースト化に対して、企業はどのような策を講じられるでしょうか。
この記事では、「オンラインファースト化とは何か」を再確認しつつ、企業が絶対にすべき対策を2つ紹介します。
「オンラインベースでのカスタマージャーニーを整備したい、見直したい」「オンラインファースト化に有効な策を見つけたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
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「オンラインファースト化」とは
オンラインファースト化の動きは、一時だけの「トレンド」と呼べる傾向ではありません。とはいえ、コロナの感染対策として「非対面」が推奨されたのを皮切りに、「オンラインファースト化」は急激に加速しました。
ここで改めて「オンラインファースト化」について簡単にまとめしょう。
「オンラインファースト化」とは、カスタマージャーニー(認知→興味・理解→購入・継続→口コミ・共有)におけるオンライン上のやり取りや、オンラインでのブランド体験の増加傾向を指します。この傾向は、BtoBやBtoCに関わりなく見られます。
購買行動の変化に伴い、顧客が自らWebやSNSで情報を収集し、購買の意思決定をするケースが格段に増えました。「顧客接点の大半は、オンライン上にある」と言っても過言ではありません。
2022年11月にキャプテラが実施した「ソーシャルメディアにおける消費者の購買行動調査」の結果は、現在のオンラインファースト化を如実に表しています。
アンケート回答者のほぼ半分が、毎日SNSで企業・ブランドの情報を検索しています。カスタマージャーニーの「認知」、「興味・理解」の大半が、SNSやWebでの検索に集約されているのです。
オンラインファースト化は、BtoBにおいても例外ではありません。BtoB企業に関わる行動でも、営業担当者とのやり取りより、Web経由の体験が重視される傾向にあります。
株式会社グリーゼが発表した「BtoB製品購入プロセス」のグラフを見ると、情報収集の段階では圧倒的にWeb経由の行動が多く見受けられます。
営業担当者とのやり取りに関するアンケートでは、約25%の人が「営業担当者とはやり取りをしていない」と回答しています。約4人に1人がカスタマージャーニーにおいて営業担当と関わっていないという計算です。
オンラインだけの情報で製品・サービスの絞り込みがなされていることは明白です。SNSやWebサイトは、もはや顧客接点のメインになっていると考えた方が良いでしょう。
オンラインファースト化のために絶対すべきこと2つ
加速するオンラインファースト化を前に、企業は何をするべきでしょうか。どのような策が有効でしょうか。ここからは、BtoBやBtoCに関係なく企業が絶対に行うべきことを2つ紹介します。
セキュリティ対策強化
「セキュリティ対策を強化しましょう」というのは、決して目新しい策ではありません。しかし、「日本人はオンライン環境に対するセキュリティ意識がとくに強い」という事実を忘れないでください。
上の二つのグラフは、既出の「ソーシャルメディアにおける消費者の購買行動調査」と、同社が実施した「サブスクリプション型サービスに関するオンライン消費者へのアンケート調査」の結果です。
2022年~2023年の時点で、約80%の人がオンライン上に個人情報を保存/投稿されることに不安感を抱いています。利便性や感染対策のゆえにオンラインファースト化が加速しているかたわら、不安感や不信感も変わらず顕在していることを見落としてはいけません。
「顧客自身がオンラインで購入の意思決定をしているのだから問題ない」とは考えないでください。カスタマージャーニーがオンライン化しているからこそ、企業はこれまで以上にオンライン・トラストネス(=オンラインの社会システムに対する信用)獲得に向けて能動的に動く必要があります。
顧客からの信用を確実に獲得・強化していくには、顧客情報取り扱いに関するセキュリティ強化が欠かせません。たとえば、本人確認や個人/企業情報の取り扱いに関するセキュリティの強化です。
最近では「ゼロ知識証明」や「二要素認証」といった技術が実用化されています。これらはハイセキュリティであることが求められる保険業界や金融業界での利用にも対応しています。よりエフォートレスでセキュアな顧客体験が実現できるので、オンライン・トラストネスの獲得・強化に有効です。
参考情報:
ゼロ知識証明のソリューション例:https://cba-japan.com/journey/
二要素認証のソリューション例:https://cba-japan.com/2-factor-authentication/
オンラインサポート体制の強化
カスタマージャーニーのどの段階にいる顧客に対しても、シームレスなオンラインサポートを提供することは大切です。オンラインファースト化には、必要な情報がオンラインで見つからなかったり、手続きがわからなかったりといった問題が付きものだからです。
カスタマージャーニーの中では、顧客が何かしら問題を感じた時点で「旅」を唐突に終えることがあります。いきなり離脱することはなくとも、情報収集や手続きに労力と時間がかかればかかるほど、顧客が感じるサポート体制への不安は高まります。
そのため、「カスタマージャーニーの初期段階から、サポートについての安心と信頼をもってもらうこと」が大切なポイントです。
具体的には、検討段階での相談や、購入時の手続きのサポート、購入/契約後のサポート(保守業務も含む)の全てを、オンライン/遠隔で行える環境を整えることができます。
オンラインファースト化している顧客にとって、「オンライン/遠隔で手軽かつハイクオリティなサポートをしてもらえるか否か」は、スピーディーでエフォートレスな顧客体験への期待に直結していくからです。
高まるチャットのニーズ
BtoC企業を例に考えてみましょう。意外なことに、顧客は企業が思う以上にチャットの利用を希望しています。
トランスコスモス株式会社による「チャットニーズ実態調査2022」では、チャットのニーズについてまとめられています。
結果を見ると、半数かそれ以上の人がチャットサポートにニーズを感じていることがわかります。Webサイト上にオンラインチャット窓口を設けたり、プロアクティブチャットを表示させたりすることは効果的だということです。
加速するオンラインファースト化は、顧客の自己解決を促します。しかし、自己解決は「エフォートレスな顧客体験」と繋がるものの、必ずしも正確な情報によって決定・解決されているわけではありません。
タイムリーで気軽に使えるチャットサポートがあれば、顧客とのコミュニケーションの場を積極的に生み出せます。企業から正確な情報を発信したり、パーソナライズされたサポートを提供したりできるチャンスの場です。
次の一手は「オンライン接客」
すでにチャットを活用済みであれば、「オンライン接客」も検討してください。オンライン接客は、BtoCのみならずBtoBにも有効です。BtoB企業にオンライン接客窓口があると、「認知」や「興味・理解」の段階にいる顧客が、一歩踏み込んだ情報収集を行うときに気軽に利用できます。
オンライン接客は、「Webサイトの情報だけだといくつか不明点がある。でも、アポイントメントを取って話を聞くのはまだしたくない」「検討段階ですらないが、今後管理職に提案できそうな製品・サービスなのかをもう少し詳しく知りたい」のような、顧客のスキマを埋めるサービスになります。
オンライン接客の場があると、顧客は企業とのコミュニケーションを取りやすくなり、企業は商談化率の高い顧客を見きわめる機会として活用できます。オンライン接客時で顧客の温度感が高い場合には、通常よりも少ない工数で商談・成立へ繋がる可能性も高まります。
オンライン接客担当者を営業部から選抜するなら、状況に応じて商談への接続がスムーズになります。しかし、オンライン接客はあくまでも「顧客とのコミュニケーション」を目的にするべきです。準備万端のセールストークをしてしまったり、なんとか商談へ持ち込もうとしたりすると、「顧客が気軽に使えるチャネル」ではなくなってしまうので、運用には注意が必要です。
参考情報:
オンライン接客ツールの例→https://la.cba-japan.com/
最新のオンライン接客は「ARサポート」
オンラインサポート強化策の最後として、AR技術を使ったビジュサルサポートを紹介します。ARによるビジュサルサポートは、主にアフターサポートの分野で効果を発揮します。
何かの製品を購入する際、それが高額であったり精密であったりするほど、「アフターサポート」の有無や手厚さを気にするものです。
オンラインで収集できる情報から意思決定がされていく今、アフターサポートの充実度合いや利便性は、意思決定に影響を及ぼします。どんなシーンで、どのようなアフターサポートが受けられるのかが明確だと、購入後の具体的なビジョンを描きやすくなるからです。
その上、描かれるビジョンは「安心感」の伴ったものになります。オンラインファースト化が加速しているからこそ、オンラインでは得がたい「安心感」が、意思決定時の「もう一押し」に効いていきます。
では、ARによるビジュアルサポート体制のメリットは何でしょうか。
第一に、顧客の手元にある製品や目の前の環境に合わせてサポートを展開できます。「オーダーメイドのマニュアル」にもなれば、技術者が隣にいるようなサポートの提供も可能ということです。音声やテキスト、場所、時間、物理的距離といった従来の枠組みに縛られることなく、真にパーソナライズされたサポートを提供していけます。
第二に、ARを使って遠隔でサポートを行えることは、企業にとってもメリットがあります。たとえば、技術者の現場派遣を最低限に抑えられるので、人手不足の対策やコストカットの実現に繋がります。ARがウェアラブル端末やドローンなどで使えるなら、狭い場所や高所での作業をより安全に行っていけます。ARでのサポートは、顧客の層や業界を問わないオンラインサポート強化策です。
参考情報:
AR技術を活用したソリューション→https://carear.cba-japan.com/
最後に
新型コロナウイルスの蔓延を皮切りに、「何事もFace-to-Faceが当たり前で理想」「オフラインこそが安心安全で便利」の考え方に基づく行動は変化してきました。
社会全体がオンラインファースト化しているので、企業側が変化に対応できていないと、次第に「顧客から認知されない/選ばれない製品やサービス」となるリスクがあります。今後予想されるDX化とそれに伴うオンラインファースト化を生き残るには、オンラインでの顧客接点の強化や多様性が重要です。
オンラインファースト化はすでに力強く進んでいます。メタバースのような空間コンピューティングがもっと普及すれば、オンラインファーストの行動は「当たり前」へと昇華されるでしょう。一刻も早くオンラインファーストに対応できるカスタマージャーニーを整えたいものです。