CBAがAsteriskによるコールセンタービジネスを手掛けるようになってはや13年。あんなことこんなこと色々ありましたが,Asterisk以外も扱うようになったここらへんで,Asteriskでのコールセンター運用に関するメモを残しておこうかな,と思います。

暗黒の Asterisk 1.2時代

 Asteriskが本格的にブレークしたのはAsterisk 1.2の頃ですが,当時のバージョンでは,「コール数が多くて負荷が高い時に転送処理などをだれかがおこなうと,チャンネルデッドロックが発生する」という現象に出くわしました。調子よくコールセンターが稼働していたのに,いきなり通話ができない,入電がないオペレータが出てきてしまうというのは本当に恐怖でした。いや~,今思い出すと本当に嫌な現象でした。幸い,CBAで使用していたtrixbox Proは初期の頃にAsterisk 1.6にアップデートされたのでその現象には出会わなくなりましたが,Asterisk 1.2でコールセンターを構築した方でその不具合に悩まされた方は少なくないようです。Asteriskの開発はその後もチャンネルデッドロックとの闘いを続けていきますが,未だに報告はあるようですね・・・。

https://issues.asterisk.org/jira/browse/ASTERISK-27299?jql=text%20~%20%22dead%20lock%22%20ORDER%20BY%20cf%5B11200%5D%20ASC

 また,ログイン・ログアウトを同時に数十人が実施するとサーバが落ちる,という笑うに笑えないことも起こりました。これ,コールセンターで使い方講習会をしている時などに発生すると本当に困りました。

安定稼働のAsterisk 1.6

 Asterisk 1.6になるといきなりサーバが落ちる,という現象はほとんど聞かなくなりました。Asteriskの黄金期を築いたのはこのバージョンかもしれません。その後,Asteriskプロジェクトはバージョンの振り方を変更し,Asterisk 11やAsterisk 13などにいきなり数字が飛んだために,1.11 や 1.13 などはありません。しかし,この1.6というのはある意味,Asteriskの金字塔だと思います。この時期,多くのコールセンター製品がAsterisk 1.6で作られました。

何でも載っている Voip-info

 Asteriskの情報を調べる人にとって欠かせない情報源は,https://www.voip-info.org/ です。ここに書いてない情報はない,というほど情報が蓄積されていました。設定ファイルの書き方からパフォーマンスのベンチマークまで,ありとあらゆる情報が掲載されています。同じコンセプトで,日本語情報をまとめて掲載されていたのは,高橋隆雄さんがまとめておられる http://voip-info.jp/ でした。特に日本特有の回線まわりの情報など,非常に役立つ情報が掲載されているので毎日のようにお世話になりました。なお,商用Asteriskとして一世を風靡した trixbox Proについては,http://trixbox-faq.jp/ に情報をまとめていました。いやぁ,懐かしい,という言葉が出てしまうほど一時は毎日使用しているサイトでした。

オープンソースであることの意義

 エンジニアにとっては,「いざとなったらソースコードまでたどれる」というのは大きなメリットです。過去,日本固有の問題が発生したときに,何度かコードまで戻って調査し,コンパイルしなおしたり,バイナリのデータ部分をバイナリエディタで調整して「正しい音が出る」ようにしたりと難局を乗り切れたのは,やはり,ソースコードを読めたことが大きかったのではないか,と思います。これどうやって中で実現しているの?という機能が,実はものすごく簡単な仕掛けてで実現されていた,ということに気が付いて唖然とする,ということもありましたが・・・。またAsteriskでコールセンターを作るさまざまなエンジニアにこれまでお会いしてきましたが,みなさん工夫と努力をコツコツと続けておられました。創意工夫で作るコールセンターシステム,というのも非常に楽しいものだなぁと感じた経験も少なくありません。

これからのAsterisk

 2018年の今年の夏,オープンソースなコールセンターエンジニアには衝撃的なニュースが世界をかけめぐりました。(ちょっと大げさ?)

”SANGOMA ANNOUNCES TRANSFORMATIVE ACQUISITION OF DIGIUM”

 Asteriskの総本山と思っていたDIGIUMが,互換ハードを作っているSangomaに買収されることになった!?とびっくりしました。が,Asteriskの生みの親,Mark Spencer氏はこうコメントしています。

“I created Asterisk and Digium to be disruptive in the communications industry”, said Mark Spencer, Founder and Chairman of Digium. Spencer continued, “I am really proud that it has grown under its current ownership and management to a very successful point, and it is now time to take it to the next stage as part of a larger, public company. Given the involvement of both companies in the history of Asterisk dating back to its creation in 1999, Sangoma is the natural home for the Asterisk project. For many years both companies have had teams working to improve Asterisk and make it more accessible. I believe Sangoma’s commitments should reassure the Asterisk community that Sangoma is dedicated to the project. I look forward to seeing the results of tighter collaboration between those teams, and the benefits to the community, now that they will be part of a single company.”

今後のAsteriskの発展が止まるわけではない,というこの言葉にAsteriskエンジニアたちは涙するのでした。