AIの実用化と発展により、より良い顧客体験の追求は熾烈化しています。とりわけカスタマーサービス部門においては、より良い顧客体験の提供とAIの採用率が密接に関係しています。

株式会社Zendeskの調査レポート「CXトレンドレポート2025」によれば、CX先進企業は従来型企業に比べて、AIエージェントや感情分析ツール、カスタマーサービス品質管理向けAI、問い合わせ目的検出ツール、AIチャットボットなど、AIツールの採用率が約4倍高いという結果です。

では、カスタマーサービス部門の代表例であるコールセンターでは、どのようにAIを活用して高い効果を得られるでしょうか。顧客体験とAIのつながりが強まっている今だからこそ検討したい「コールセンター×AI」の最新ビジョンを紹介します。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、19年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

この記事が解決するお悩み

「○○できるようになるだろう」といったAI活用の理想的な将来像ではなく、今すぐ実践できる活用ビジョンが知りたい

コールセンターでのAI活用に関するイメージをはっきりさせたい

あえてAIを導入するメリットと、導入・活用に伴うリスクとの天秤にかけるのが難しい

 

 

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AI活用で得られる3つの成果

生成AIが登場した当初から、コールセンターによるAI活用とその効果性は度々注目されてきました。効果性の高さと共に、「人間味」やセキュリティ面など、さまざまな要素が懸念事項として上がっていたことは記憶に新しいでしょう。

コールセンターにAIを導入する企業が増えたり、現代のニーズに応えるAIツールが続々と出てきたり、最小限のリスクでAIを活用するための提案がされたり…と、コールセンターを取り巻くAI事情は大きく変化してきました。

そこで、今だからこそ「コールセンター×AI」を再検討し、活用ビジョンをアップデートしましょう。ここからは、AIの活用で効果を期待できる3つの要素を解説します。

顧客満足度向上

顧客満足度アップや顧客体験のさらなる改善には、自己解決率の向上が欠かせません。

トランスコスモス株式会社による「オムニチャネル利用実態調査2024」によれば、70%以上の人が「WEBやSNSでの検索する」「サイトの商品・サービス情報やFAQを見る」のように、カスタマーサービスへ問い合わせる前に自己解決行動をとっています

コールセンターへの問い合わせは、多くの場合において「自己解決できなかったとき」ということです。そのため、電話がつながるまでの場合、待ち時間が長かったり、オペレータをたらいまわしにされたりするなら、顧客体験と満足度の低下を引き起こします。

お客さまのセルフサービスや一次解決に貢献し、スムーズかつエフォートレスな体験を提供するため、AIチャットボットや対話型 IVRを活用しましょう。コールセンターへ電話をかける手間や待ち時間を省けるなら、顧客の負担軽減と満足度向上につながるからです。

AIによるメリットはユーザーだけでなくセンター側にも発生します。お客さまの自己解決率が上がれば、コールセンターの呼量は削減され、オペレータの業務負担軽減に直結します。

「AIが進化しているとはいえ、スムーズで自然なコミュニケーションができなければ、かえって顧客は不満を感じるのではないか」と思われますか。

最新のAIツールでは、対話型IVRをLLM活用によって強化し、「AI IVR」として搭載しています。顧客の感情や意図まで把握し、自然な会話で最適解を提供できるのです。

▶︎最新のAIコンタクトセンターシステム「BrightPattern(ブライトパターン)

オペレータ業務の効率化

AIによる効果として大きな期待を寄せられる分野のひとつは、業務の効率化です。

活用するAIにリアルタイムでの文字起こし感情分析機能があるなら、応対中のオペレータを強力にサポートし、サポート時間を短縮することが可能です。オペレータに余裕ができれば、よりパーソナライズしたサポートの提供が見込めます。

AIで効率化できるオペレータ業には、コールセンターが計画的にコントロールしていける分野もあります。たとえば、後処理業務の効率化です。

AIによってお客さまとの対話を自動要約するなら、オペレータが履歴を入力する手間や時間の大幅な削減が見込めます。後処理業務でAIを活用するなら、各オペレータのパソコンスキルや要約スキルへの依存を最低限に抑えられるというメリットもあります。

AIによる業務の効率化は、従業員満足度ややりがいにもつながるでしょう。既出の「CXトレンドレポート2025」によれば、AIツールを活用できているサポート担当者は、AI未活用の担当者に比べて20%高い割合で、「順調に自分の業務を遂行できていると思う」と回答しています。

AI活用がオペレータたちの体感的な効率にも影響することは明らかです。

自分の業務に満足できているなら、やりがいや愛着を感じやすくなり、従業員満足度に貢献します。最終的には離職予防にも効果が期待できるでしょう。

品質管理の簡素化

AIによって応対品質の管理を簡素化できると、SVやQAの業務を効率化することが可能です。くわえて、品質の評価基準の均一化が見込めます。

「簡素化」と言っても、決して管理体制や内容を粗雑にしたり、分析深度を浅くしたりするわけではありません。

たとえば、あらゆるチャネルでの顧客との会話を統合して、品質管理を自動でスコアリングしたり、ダッシュボードで品質を可視化してくれます。同様のことを人手で行おうとすると、かなりの時間や労力を必要とするでしょう。

AIによって品質管理をシンプルにし、効率化していくことで、人間による分析や管理に割くリソースを確保しやすくするのです。

たとえば、コールセンターに最適な最新のAIツールでは、AIが会話内容やチャットデータを分析し、顧客の感情を自動的に判別する機能がついています。また、コミュニケーション内で問題のある箇所を特定しSVに知らせることもできるので、新人オペレータのサポートやトレーニング、クレームへの迅速な対応や、カスタマーハラスメントの予防などに効果的です。

人間では数値化しにくいCSAT(顧客満足度)を自動で計測してくれたり、あらかじめ設定した評価基準に則って対応をスコアリングしたりすることもできます。各オペレータの得意や苦手を把握し、より効果的なトレーニングやコーチングをしていく上で役立ちます。

▶︎コンタクトセンターで使えるAI機能のパッケージ例「AIコンタクトセンタースイート

AIを使わないリスク

コールセンターにおけるAI活用の効果性について説明してきました。しかし、すでに業務の品質管理や効率化がキープできていたり、AI導入によるセキュリティ問題を懸念していたりする人にとっては、「あえてAIを導入するメリットと、導入に伴う煩雑化やリスクとどちらを取るべきか」と悩むかもしれません。

AIのビジネス活用におけるメリットは注目されがちですが、活用しないことによって生じるリスクについてはご存じですか。

現在、組織としてAIを活用しない企業には、「シャドーAIツールの利用」というリスクが迫っています。

「シャドーAI」とは:会社やITチームが把握・承認・管理していない中で、従業員が業務において利用する外部AIツールのこと。

カスタマーサービスの分野におけるシャドーAIの利用率は、2024年から2025年の一年間で、250%にまで急増しています。
(出典:https://cxtrends.zendesk.com/jp/reports

AIのビジネス活用に際して懸念される点はさまざまですが、シャドーAIによるリスクも忘れてはいけません。

たとえば、シャドーAIには以下のようなリスクが潜んでいます。

  • 情報漏洩
  • コンプライアンス
  • サイバーセキュリティの低下
  • 品質の一貫性や信頼性の低下・欠如

会社や各部門が把握していないまま、こうしたリスクが増えていくと、問題が起きた時に素早く適切に対応することがますます難しくなります。管理されていない「シャドーAI」は、会社が正式に導入・管理しているAIよりも、実際ははるかに危険だと言えるでしょう。

AIの導入にあたっては、利活用時のメリットと課題を天秤にかけがちですが、活用しなかった場合のリスクについても検討するようにしましょう。まさに「影」のように、思わぬところにリスクが潜んでいる可能性があるのです。

最後に

コールセンターでAIを活用する際の最新ビジョンと、活用しなかった場合のリスクについて解説してきました。社会全体がAIを活用していく方向へ舵を切り、多くの人がAI利用への関心やニーズを高めています。それゆえに新たなメリットやリスクが次々と生じますが、最大の効果を発揮し、リスクを最小限に抑えながら、お客さまと従業員の全員が満足できる体験を意識したいものです。