朝の深夜2時、突然携帯がけたたましく鳴る。あのメロディーは営業部からのものじゃない。緊急だ。

「すみません。XXXXさんのコールセンターから緊急電話が入りました。通話ができなくなっているようなので、ちょっと見てもらっても良いでしょうか。起こしてしまってすみません」。

「お疲れ様です。分かりました。すぐPC立ち上げますね。今どこでみなさん作業されていますか」。遠隔会議ツールと会議室番号は複数あるので、最初に確認すべきは集合場所。ぼおっとしていた頭が徐々に回り始め、アドレナリンがかけめぐる。

PCを立ち上げながら、原因となることがなかったか必死に思い出す。

・直近のメンテナンス作業が問題になっていないか。最後にした作業は何か

・サーバの容量がいっぱいになってしまったか(ツールで常時、監視しているのでまさかそれはないよな)

・お客様のネットワーク環境の問題か、回線の問題か、PBXの問題か

・最初にみんなに尋ねるべき点は何か

さっき電話をかけてくれたAさん、今晩は緊急当番だったな。何人集まっているだろうか。会議ツールに入ると、すでにオンラインで5人集合している。

「お疲れ様です。」

「サーバは生きてます。SIPフォンにお客様からのコールが来ていないようですね」。最初の報告。最悪の状況ではないようだ。万が一、サーバにアクセスできない、という状況だった場合は、メインに障害が発生してフェイルオーバーも失敗した、ということになる。サーバ上のアプリの不具合か。

「オペレータさんのSIPフォンのレジは上がっていますか。あと内線通話もできるでしょうか」。

集合してくれたメンバーを確認する。みんな眠いだろうに。えらい。このメンバーの場合には、自分が旗振り役だ。すぐに作業分担を考える。すでにPBXサーバにSSH接続して確認作業をはじめてくれているのはXさんなので、そのまま作業を継続してもらおう。

「Xさん、オペレータの電話のレジが上がっているかを確認してください」

「Yさん、お客様からの報告はチケットでも情報が届いていますか」

「いえ。まずはコールセンターの通話が止まったということで緊急電話をかけてこられたようです。詳しい情報が分かり次第、チケットでも報告してくださるそうです」

「了解。Zさん、(コンピュータによる監視ツール)を確認して、おかしなところがないか調べてもらえますか」

コールセンターの入電が止まった場合には時間との戦いだ。できる限り最善・最短の作業で復旧させないといけない。そのためには直接の原因を突き止めることが先決だ。

「まだ(ベンダー)に緊急連絡は入れていないですよね」

開発元との時差を頭の中で計算する。もう向こうも業務がはじまっっている。いざとなればすぐに連絡できる時間帯になっている。

「これ、キャリアの問題じゃないかなぁ。別のキャリアを使っている外線通話のほうは何通かつながっていますよ」

Zさんが声を上げる。そういえば、コールセンター拠点の設備については不具合のアラートメールが何も来ていない。

「内線通話大丈夫です。レジも問題なく上がっています」

ということはサーバは動作している。オペレータさんたちのいるコールセンター拠点のネットワークも動作しているようだ。

「やっぱりキャリアからの入電が来ていませんね」

「Pさん、キャリアの障害情報が出ていないか、念の為、Webサイトの情報の確認をしていただけますか」

「チケットでも情報が送られてきました。やはり先方でもキャリアでの障害を疑って、(電話キャリア)に確認をするそうです」

「了解。キャリアの障害だとすると、こちらは待つしかないね。皆さん、ほかにできることありますか」

「まだ(ベンダー)に連絡は入れなくて良いでしょうか」

「Xさんの画面共有で見ると、コンソールの様子を見る限りPBXの動作は正常ですね。(ベンダー)への連絡は少し待ちましょう。」

 その場の空気が少し緩む。サーバのハードウェア障害が発生してしまった場合とは違う空気だ。アマゾンのAWSなどを使ったクラウドサーバも増えては来ているが、まだまだコールセンター拠点にあるオンプレミスサーバも現役で稼働している。冗長化されており、万が一の場合には瞬時に切り替わるようにしてあるが、それでも不具合が発生すれば、夜中の2時でもサポート技術チームは活動を開始する。

 ほかにできることがないかも考えながら、しばし雑談がはじまる。ひそひそ声で話すUさんのことを笑う。子どもたちや家族を起こさないように気をつけているのは自分も同じだ。(といっても、もう家族も慣れっこでだれも起きてこないが・・・)もうすぐ結婚する社員のことが話題になる。住む場所も決まったらしい。海外に出張中の社長からの投稿写真が流れてくる。社長はまた寝ずに会議らしい。

「Yさん、(社内連絡ツール)にも状況を投稿しておいていただけますか」

「あっ、それはもうやっています」

「(コールセンター)から連絡が来ました。やはりキャリアの上流での不具合ということでした。現在、大規模障害が起きているらしくもう少し復旧には時間がかかりそうです。コールセンターではXXXの回線のほうで外線発信をかけて途中で切れてしまったお客様へのフォローアップを続けているということです。またこちらにももう少し待機してほしい、ということでした。あと復旧時に正常動作になったかの確認をお願いしたいということです。」

「了解しました」

そして夜が明けていく。

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CBAの社内でいちばん多いのが技術サポートのメンバーです。
わたしたちがお手伝いするコールセンターの中には、全国に拠点があるものや、24時間対応をしている「眠らない」職場もあります。そうした社会インフラを守り、支え、いつでも頼られる技術チームを目指して、日々おもてなしの心でサポートと技術研鑽に励んでいます。