今までのカスタマーサービスは電話の音声対応が主流でした。しかし最近はチャットを使用した非音声対応が増えつつあります。いわゆるノンボイスチャネルを使ったカスタマーサービスが普及しているのです。
今回は「カスタマーサービスのノンボイス化とは何か」「ノンボイス化するのにチャットから始めるとよいのはなぜか」を解説します。後半ではチャット運用をする際の注意点や、おすすめプラットフォームの特徴を紹介するのでご覧ください。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、15年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
カスタマーサービスのノンボイス化とは
ノンボイスとは、英語で「non voice」、つまり音声ではないという意味です。つまりカスタマーサービスにおけるノンボイスとは、電話やビデオ通話など音声チャネル以外で対応することです。
ノンボイスチャネルで代表的なチャネルは以下のとおりです。
- チャット
- Eメール
- 問い合わせフォーム
- SMS
- SNS
- サポートコミュニティ
- FAQ
数あるチャネルの中で何を選んだら良いのでしょうか。または、今後どのチャネルに力を入れていくべきでしょうか。
カスタマーサービスのノンボイス化をチャットから始める4つの理由
現在のカスタマーサービスにおけるトレンドはチャットチャネルです。各企業がノンボイス化を推し進めるためにチャットへ力を入れているのはなぜでしょうか。4つの理由を取り上げます。
スマートフォンで検索
ノンボイス化でチャットが欠かせないのは、スマートフォンが普及しているからです。何かわからないことがあるときに、スマートフォンを使って検索することが一般化しています。お客さまはテキストで調査することに慣れているため、企業へ問い合わせるときもテキストで問合せたほうが楽と感じているのです。
株式会社KDDIエボルバが発表した「企業とお客さまとのコミュニケーション実態 2021年版」からも、チャット窓口の利用を希望するお客さまが年々増えていることがわかります。
小売業はこの傾向にいち早く反応し、チャットチャネルを活用するチャットコマースに力を入れています。
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コミュニケーションに電話を使わない
コミュニケーションの主な手段は電話からLINEなどチャットへ移行しています。なぜならチャットのほうが便利だからです。双方の都合の良いときにコミュニケーションが取れる、画像・動画・音声を簡単に送れるため、電話より利用されています。
コールセンター白書2021では、テキストベースのコミュニケーションが主流になりつつある現状を次にように分析しています。
「非対面のコミュニケーション手段の中心は、すでに電話からメールやチャット、LINEなどのメッセンジャーに移行している。総務省が2021年2月に発表した調査結果「通信量から見た我が国の音声通信利用状況―令和元年度における利用状況」によると、2019年の国内音声トラフィックの通信回数は、2013年度と比較して、実に約17%も減少。このダウントレンドは加速するという見方が圧倒的に強い。」
電話よりテキストベースのコミュニケーションが一般的になっていることが分析できます。
在宅ワークの普及
カスタマーサービスを提供する企業側の環境も変化しています。コールセンターを中心に顧客対応していた環境から、在宅ワークも含めたセンター運営が必要な状況へと変化してきているのです。その点、チャット対応であれば、在宅オペレーターの限られたネット環境やPC環境でも対応することができます。
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カスタマーサービス部門の離職率の高さ
チャット対応は電話対応よりストレスが低いとされています。とくに次世代チャットのメッセージングは非同期なため、スピーディな返信が必要ありません。プレッシャーを感じずに、リサーチやSVへの確認の時間を十分に取れます。結果として、カスタマーサービス部門の離職率を押さえられます。
ノンボイス化に必要なチャットチャネル
「チャット運用を始めたいけど、どこから手を付けようか」と思われるかもしれません。まずノンボイス化に必要な3つのチャットチャネルについて知っておきましょう。
- AIチャットボット
- 有人チャット
- メッセージング
これら3つのチャネルの特徴を知ると、自社のニーズに合わせて何を導入すべきかがわかります。
AIチャットボット
AIチャットボットは、AI自ら学習と判断をしつつチャット対応していくチャネルです。得意なことは、24時間365日の対応、お客さまの問い合わせ内容の確認、最適な担当者への振り分けです。苦手なことは、長い文章の解読や文脈を踏まえた対応です。
AIチャットボットの導入をおすすめする分野は、商品注文の受付、多言語対応、社内FAQ、配送・医療・保険業界などの手続き受付です。
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有人チャット
有人チャットとは、人間の担当者が問合せにチャットで対応するサービスです。AIチャットボットと違って人間が応答するため、お客さまからの難しい質問に対応することが可能です。複数の質問を同時に受け付けたり、文脈を理解した応答をしたりすることができます。難点は、チャット対応のために担当者を割り当てる必要があること、営業時間外は対応ができないことです。
有人チャットの導入をおすすめする企業は、チャットボットをすでに導入していてフォローが必要な企業、チャットボットとのハイブリッド運用がしたい企業です。
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メッセージング
メッセージングとは非同期が特徴のチャットです。Webサイト上であっても、チャットをしている双方が好きなタイミングで会話を始められ、中断も継続も都合が良いときにできることが特徴です。さらに、企業サイトで始めた会話を、LINEで続けるなど異なったチャネル間で会話を継続することが可能です。ただしメッセージングは新しいチャネルなので、お客さまがチャットと勘違いし、即時返信を期待されることがあるので注意してください。
メッセージングがおすすめなケースは、製品の不明点を問い合わせる、自分の登録情報に関して質問するケースです。
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カスタマーサービスのノンボイス化が進まない背景
ノンボイス化が世界的なトレンドにも関わらず、日本では未だに電話比率がカスタマーサービスにおいて高いのが現状です。
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社のレポートを見ると、海外企業と比べて日本企業は電話比率が15%以上も多くなっています。チャットなどのノンボイス比率は約10%も低くなっているのです。
依然として電話比率が高い背景には、各企業がセキュリティを不安視していることがあります。
日本のカスタマーサービスでは、本人確認を必要とする業務の比率が高い傾向があります。特に銀行、保険、携帯通信事業、通信販売の企業は、問い合わせの際に本人確認を重視します。そしてほとんどの企業はノンボイスチャネルによる本人確認に対応していません。
セキュリティを確保したノンボイス化には、最新eKYC技術のゼロ知識証明などの導入が必要となるでしょう。
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カスタマーサービスにチャットを導入するメリット
カスタマーサービスにチャットを導入することには、お客さまと運営側の双方にメリットがあります。
お客さまのメリット 利便性が高い
チャットでカスタマーサービスをノンボイス化するなら、お客さまは自分の好きな時間とタイミングで問い合わせられます。電話だけの場合、通勤電車の中や子供が寝ている横で問い合わせをすることができません。しかしチャットボットやメッセージングであれば、24時間365日いつでも問い合わせができます。
運営側のメリット コールセンターの運用費を削減
運営側のメリットは、コールセンターの運用費を削減できることです。チャットチャネルを導入すれば在宅ワーカーを増やせます。拠点の席数を減らすことができるのです。空いた席数を他の業務に活用し、拠点の効率化も進められます。
運営側のメリット マーケティング活用ができる
お客さまとのやり取りは全てテキストデータで保存できます。データを分析して、アップセルやクロスセルにつなげている企業が増えています。さらにお客さまの問い合わせに対する回答だけでなく、あとからお得情報やキャンペーン情報などを送る施策も可能です。
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カスタマーサービスにチャットを導入するデメリット
チャットを導入するデメリットも同時に見ていきましょう。
対応できる範囲に限界がある
チャットは短い文章のやり取りで対応します。そのため複雑な質問や回答には適していません。話したほうが早く解決できる場合があります。
感情が分かりづらい
テキストによるコミュニケーションなので相手の感情が分かりづらいことがあります。復唱して相手の意図を確認しながらチャットを進めてください。オペレーター側の感情が伝わりにくいこともあるので注意しなければなりません。企業によっては、指定された絵文字をオペレーターが使って感情を表現するようにしています。
チャットが苦手なお客さまがいる
インターネットやスマートフォンに馴染みがない人や、苦手意識を持っている人はチャットによる問い合わせを嫌います。ターゲット層を分析し、チャット対応だけでなく、音声対応も併用すべきか判断してください。
チャット運用の注意点
カスタマーサービスでチャット運用をするのであれば、CS向上を実感したいものです。お客さまから「便利!」「また使いたい」と思ってもらえるチャット運用をするために覚えておきたい4つの注意点を紹介します。
お客さまが好むチャネルを選ぶ
問い合わせてくるお客様の層を分析し、どのチャネルが使いやすいか判断してください。たとえば10代~30代であればLINE、高年齢層であればSMSやキャリアメールといった具合にチャットチャネルを決めていけます。
チャットボット運用ではシナリオ設計に気をつけよう
チャットボットの運用ではシナリオ設計に注意してください。質の高いシナリオを作成できれば、利用者は短い時間で知りたかった情報を手に入れられます。反対にシナリオの質が低いと、利用者は同じ質問を何度も繰り返されるループ状態に陥ったり、見当外れの情報を提示されたりして、貴重な時間を無駄にしてしまいます。優れたシナリオはCS向上へ直結します。
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チャット対応はマナーに注意する
チャット対応はテキスト中心です。注意しないと機械的な印象、冷たい印象を与えかねません。丁寧なチャット対応用の言葉づかい、温かみを伝える言葉づかいをするようにしましょう。
チャット対応に役立つ11のコツ|現場で必須のマナー・KPIも紹介 - TPIJ by CBA |
電話対応も活用する
少し前にも触れましたが、チャットでの問い合わせが苦手な人は一定数います。チャットによるノンボイス化を進めると言っても電話対応をゼロにするわけではなく、電話窓口を残しておくと良いでしょう。
多様化するお客さまのニーズに答えるためにはノンボイス化に加え、オムニチャネル化も必要になってきます。
コールセンターをオムニチャネル化させる3つの方法|失敗例も紹介 - TPIJ by CBA |
ノンボイス化におすすめなチャットプラットフォームの特徴
ノンボイス化におすすめのチャットプラットフォームとは、全てのチャットチャネルを幅広く運用できるプラットフォームです。実は真のチャットプラットフォームはまだ少ないのが現状です。
チャットボットだけ、有人チャットだけに特化しているツールは多くあります。またLINEなど特定のアプリだけでチャットサービスができるツールも多いです。
しかしAIチャットボット、有人チャット、メッセージングを、LINEに限らずさまざまなアプリやサービスで提供できるプラットフォームは多くありません。
カスタマーサービスのノンボイス化をチャットから始めるときには、柔軟で拡張性が高い真のチャットプラットフォームを選んでください。
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最後に
カスタマーサービスのノンボイス化をチャットから始めるべき理由は、情報の検索方法がスマートフォン中心になってきていること、コミュニケーション手段が電話からチャットへ移行してきていることです。チャットを導入することは企業側にとっても、在宅ワークを普及させたり離職率を押さえたりする上で欠かせない施策でもあります。
ノンボイス化をチャットで実現するときには、AIチャットボット、有人チャット、メッセージングのどれを活用するか決めてください。自社の課題にどのチャネルが向いているかわからないときには弊社へご相談ください。
お客さまと企業を取り巻く環境は変化していきます。ノンボイス化のニーズに答えることは企業のカスタマーサービスを飛躍させるきっかけになります。チャット運用をすることでCSや顧客ロイヤリティを向上させていきましょう。