情報通信業の売上高は、ここ5年間はおおむね横ばいで推移しています。一部では、「オワコン」とすら言われている通信業界。現代の私たちの生活には欠かせず、むしろ依存していると言っても良いほどの通信業界に一体何が起きているのでしょうか。通信業界が抱える問題と、打開策について考えてみます。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
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通信業界が抱える問題
多くの変化が求められている通信業界の前には、実に多様な壁がいくつも立ちはだかっています。
- 顧客の高まり続ける期待
- 苛烈を極める業界内競争
- 予算
- 人材不足
- 急速に進むDX化への取り組み
今目の前にある壁だけでも挙げればきりがありません。加えて、総務省が取り組もうとしている2030年頃に向けた「通信市場のグローバル化」問題も無視できません。ICT機器の輸入額は輸出額を上回っており、残念ながら日本の通信業界は世界からはすでに遅れを取っているのが現状です。
自然災害の多い日本では、現場に行っての作業がどうやってもできなかったり、プライバシー問題のせいで各家庭や企業に技術者が向かえなかったりと、一朝一夕には解決できない問題もあります。
問題は山積しているのに、どれも速やかに解決をはかり、通信業界の頭打ち状態を打破しなければいけない状況です。
今回は、数ある課題の中でも、特に人材不足の問題にフォーカスをあてていきます。
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通信業界に見る人材不足問題
通信業界の人材不足問題…もっぱらIT人材の不足は、先に挙げた他の問題にも深く関係していきます。人材不足問題は一番高い壁と言っても過言ではなく、かつ乗り越えられた暁には、連鎖的に他の壁も壊せてしまう重要な壁です。
人材不足がいかに重要かを示す一例を考えてみましょう。近年急速に進み、ことあるごとに声高に叫ばれるDXですが、DXを進めるうえで一番の課題になっているのが、人材不足なのです。
総務省が2021年に発表した「令和3年 情報通信白書」によれば、企業でDXが進まない理由の一番に「人手不足」(53.1%)が挙げられています。また「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には業界を問わず約644万人の人手不足が起きるとも予想されています。
進み続けるDX化と人材不足は、足を引っ張り合う関係です。DXに関してただでさえ世界的に遅れを取っている日本ですが、このままでは「2025年の崖」にただ落ちるだけになってしまいます。可及的速やかに人材不足問題の解決が求められているのです。
▶補足:「2025年の崖」とは
経済産業省の「DXレポート」にて使用された言葉で、日本のDX化が推進できなかった場合、2025年以降の5年間で最大12兆円の経済的損失を被るという内容の警鐘です。
人材不足な「現場作業」
別の観点からも見てみましょう。通信業界での顧客接点は、お客さまへの技術的サポートや修理といった「現場作業」が付きものです。当然、専門的な知識や技術をもった人材がキーマンとなります。
専門のスタッフが現場に行かなければいけない状況が複数発生したとしても、都合良く人材が増えるわけではありません。とはいえ、貴重な既存の人材に過度な負担を強いるわけにはいかないでしょう。
CXやCSの維持・向上の視点から、お客さまのサポート業をおろそかにすることは言語道断ですから、限られた人的リソースを最大限効率よく活用しなければなりません。
限られた人材を効率よく活用していくために大きな役割を担うのが「AR技術」です。なぜでしょうか。
AR技術によってできること
まず、一般的にARに期待できることをいくつかご紹介します。
スポーツ観戦
AR技術を用いたスポーツ観戦は、近年非常に活発化しています。例えば、KDDIはサッカーのキリンチャレンジカップ2019で、タブレットを使用したAR観戦を実施しました。KDDIによるARサッカー観戦では、好きなときに好きな場所から観戦することができるようになり、スタジアム観戦にありがちな問題(座席が遠くて試合が見づらい、人や物が邪魔で良いシーンを見逃すなど)を解決することができました。
AR空間でのライブやミーティング
AR空間を用いたオンラインライブやミーティングは、コロナ禍で特に重宝された分野です。有名なアーティストやアイドル、アニメなどのイベントが、既にAR空間でのライブを実現してきました。
家具・家電シュミレーション
AR技術によって擬似的に大型家具や家電を自宅へ置くことができます。画像では分かりづらいサイズ感を、多角的に確認することが可能です。自分の置きたい場所に,検討中の家具を「置いてみる」ことができるので、家具・家電系ECサイトではすでに活用されています。
観光業の活性化
実際の観光地にAR技術によって歴史的建造物を再現したり、音声ガイドを行ったりと、観光業とARは非常に相性の良い組み合わせです。また、アニメの舞台となる場所を巡る「聖地巡礼」では、該当場所にアニメのキャラクターを出現させることもでき、ファンにとってはより満足度の高い聖地巡礼ができるようにもなっています。
遠隔作業支援
ARを活用すると、専門的な知識や技術をもつ社員が現場の作業員に的確な指示を出していけます。一人の専門スタッフが複数の現場スタッフに指示を出すこともできます。医療、製造、通信、航空等、専門的な知識や技術が求められる業界で活躍が見込めます。
CareARで通信業界の今を生き残る|ARがもたらす6つの展望 - CareAR AI/AR遠隔サポートプラットフォーム |
なぜAR技術が通信業界の人材不足を解消できるの?
先述の「遠隔作業支援」を、通信業界に当てはめてみてください。ほぼ全ての現場作業を遠隔でこなすことができるとしたら、現場作業効率の向上と人員配置の見直しが可能になります。一人の専門スタッフが、同一拠点から何件ものサポートを同時またはロスタイム無しにこなすことができるのです。
まさに限られた人員を最大限活用することができ、スタッフがサポートや修理、点検のために各地を走り回る必要もありません。出張回数の削減も見込めるので、コストカットも実現できます。コストカットができれば、通信業界にとっての別の壁である予算問題にもアプローチしていけるでしょう。
スタッフの安全確保
現場作業を行うスタッフの安全確保も期待できます。規模に関わりなく、自然災害が起きた場所で、インフラ確保のためにすぐに現場へ向かわなければいけない場合もあるでしょう。急行する現場が必ずしも安全というわけではありません。「急行」といってもある程度の時間も要します。
もし災害発生後すぐに遠隔作業を行える体制があれば、安全な場所で即座にサポートすることが可能です。遠隔でスピーディーにサポートが受けられるとすれば、現場へ向かうはずのスタッフにとっても、被災者にとってもメリットとなります。
効率的な海底ケーブルの敷設
通信業界のグローバル化を推し進めようとすれば、海底ケーブルの敷設といった大がかりな必要も出てくるかもしれません。既存の海底ケーブルの修理・調査用ロボットにAR技術が搭載されれば、より高度な作業や繊細な作業を行うこともできるでしょう。
スタッフのトレーニング
新規でIT人材を増やすことなくサポート件数を増やそうとすると、当然専門スタッフ一人あたりの負担を増やすしかありません。短期決戦としての策ならアリかもしれませんが、長期戦で考えたときには現実的でない策です。
通信業界で遠隔作業支援をするとなると、遠隔で指示を出すスタッフと現場のスタッフが、お互いに状況を正確に把握し、的確な指示がないと問題解決が難しい場合があります。問題解決のために時間がかかったり、初回で解決できなかったりすれば、CSを下げることになりかねません。
視覚支援が可能なARシステムを導入すれば、現場でのサポートが円滑に進むこともさることながら、ITの知識や技術がないスタッフをトレーニングすることにも役立ちます。人材不足に対して、自社の既存スタッフの中からまかなっていくことも夢ではないのです。
顧客の自己解決率向上
視覚支援機能のあるARをお客さまが使えるようにしたり、取扱説明書をAR機能付きで提供したりすれば、お客さまの自己解決率を上げることも可能です。
結果的に、お客さまからの問い合わせ件数そのものを減らすことにも繋がります。
▶参考情報:視覚支援が可能なARシステム「CareAR/Xerox」
最後に
AR技術の導入は、人材不足問題の解消に直結する策です。今はまだ普及率の低い5G通信ですが、5Gが主流になってくればARやVRが真価を発揮すると言われています。
ご存じの通りARはまさに「これから」の技術で、ARは今後一般化が見込まれる技術です。最近ではスマートグラスとARの融合技術も注目されています。日常的な使用を視野に入れたスタイリッシュで装着感の良いスマートグラスなども開発されてきています。
AR技術の活用で、目の前の壁であるDX化を乗り越え、数年後に迫る大きな人材不足問題も華麗に乗り越えていきましょう。