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ドローン点検でプラント設備保全を効率化するべき3つの理由

Professional drone flying over factory at sunset

日本には数多くのプラントが存在しています。経済産業省の2019年「保安力の維持・向上を目的とする基礎調査」によると、石油精製プラントは22プラント、石油化学プラントは304、そのほか1339事業所が一般化学プラントを抱えています。これらのプラントの多くは1970年代ごろの高度経済成長期に建設され、現在に至るまで使用されています。

老朽化しているプラントを安全に使い続けるには設備保全サービスが欠かせません。しかし設備保全サービスを行う専門家の高齢化や人材不足が業界の問題になっています。問題解決のために注目されているのがドローン点検です。

プラント設備保全の問題をどのようにしたらドローン点検で解決できるのでしょうか。ドローン点検の実施によって、限られた数のベテラン技術者の有効活用、次世代への経験の継承を実現する方法も考えます。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。


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プラントの設備保全サービスに効率化が必要な3つの理由

プラントの設備保全サービスに効率化が必要な理由は3つあります。

  1. プラント設備の高経年化
  2. 若手の経験不足
  3. ベテラン技術者の引退

石油化学系のプラントで設備保全サービスを定期的に行っていくのは簡単ではありません。ある事業所では、トラブルが起きていないかを広大な敷地の中、技術者が1日3回点検します。これはコストだけではなく、肉体的にもかなり負担のかかる作業です。

経験があるベテラン技術者は引退していき、若手は経験が不足しています。そもそも設備保全を行う若手自体が確保できない事業所も多くあります。

さらにプラント設備は年を追うごとに経年劣化が進みます。「チョコ停」(一時的な設備停止)や「ドカ停」(長期間の設備停止)の数を減らし、安全な稼働を継続するためには設備保全サービスの効率化がどうしても欠かせません。

▶参考情報:「プラント保安分野におけるドローンの活用に向けた取組」(総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省)

現場で求められるドローン点検

プラント保安分野におけるドローンの活用に向けた取組

ドローン点検は、設備保全サービスを効率化させる手段として現場から期待されています。

プラント保安分野におけるドローンの活用に向けた取組」によると、プラント系の86事業所のうち27事業所でドローン点検の活用実績がありました。活用実績がないのは59事業所ですが、そのうち39事業所ではドローン点検の活用ニーズがあります。

活用ニーズがある事業所がドローン点検を実施したい場所は、塔本体・塔頂配管・塔以外高所などの高所です。プラントの現場では、高所や広大な敷地を点検するのにドローンの活用が期待されています。

プラントでドローン点検を実施する8つのメリット

ドローン点検には8つのメリットがあります。

  1. 足場を組むコストを削減
  2. 事故対策
  3. 安全な点検作業ができる
  4. 点検時間が短い
  5. 点検作業に必要な人数が少ない
  6. 点検コストが低い
  7. AI解析が利用できる
  8. 3Dモデリングができる

各メリットについて見ていきましょう。

足場を組むコストを削減

高所を点検する際には、足場を組まなければなりません。しかしドローン点検であれば足場を組まずに点検作業を行えます。足場を組む時間と金銭コストを削減できます。

仮に点検で補修すべき箇所が判明し、修繕作業をしなければならないときも、必要な個所にだけ足場を組むだけなので大きなメリットがあります。

事故対策

プラントの設備保全は命に係わる事故が発生しやすい業務です。とくに墜落や転落といった労働災害がほかの業種より発生しやすくなっています。

ドローン点検を活用して、できるだけ事故発生リスクを減らせば労災対策になります。たとえドローン点検実施のためにコストがかかるとしても、労災コストを考えるとトータルでメリットがあるケースが多いと考えられています。

安全な点検作業ができる

プラントには危険な場所がいくつもあります。

高所や狭所、人が入れないほどの低温や高温エリアなどは、ドローンで安全に点検することが可能です。

点検時間が短い

ドローン点検では、足場の設置やクレーン車の搬入が必要ありません。足場や特殊車両を利用する場合、数時間かけて狭いエリアしか点検できないですが、ドローン点検であれば短時間で広範囲の点検が可能です。

点検作業に必要な人数が少ない

特殊車両を使った点検では、以下のような多くの作業員が必要です。

ドローン点検では、パイロットを含む数名で実施できます。

点検コストが低い

特殊車両を使った場合の点検コストは200万円前後、ロープアクセスによる点検コストは80万円前後です。ドローン点検では、40万円から60万円のコストで済む場合があります。

少人数で短時間の点検作業をできることが、ドローン点検のコストを下げている理由です。

AI解析が利用できる

ドローン点検では撮影した画像や映像をデータ化できます。保存したデータをAI解析し、点検を効率化していけます。

AIがこれまでのデータを学習することによって、経年劣化個所、損傷個所を自動で判定することが可能です。

3Dモデリングができる

ドローン点検で撮影した画像から3Dモデリングを生成できます。3Dモデリングによって、煙突やボイラーの錆を自動解析していけます。定期的に3Dモデリングを生成することで、経年劣化の過程を把握し、将来の補修計画を立てることも可能です。

事業所によっては施設の図面が更新されていない紙の図面しか残っていないことが課題でした。ドローン点検で正確な図面データを残すことで、より綿密な設備保全計画を立てていけます。

政府の実験で確認されたドローン点検の有効性

2021年3月発行の「プラントにおけるドローン活用事例集Ver3.0」(総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省)では、ドローン点検の有効性が確認されています。

ポリブタジエン樹脂製造施設をドローン点検することで、従来は人による点検ができない個所を確認できました。また危険区域に立ち入らずにドローンを飛ばし、プラントの内側を撮影することもできています。これにより死角の点検や危険区域の見直しが現実になります。

ドローン点検によるプラント保安の精度向上が期待されています。

プラント設備保全サービスでドローンが得意なこと

プラント設備保全において、ドローン点検が力を発揮する場所は3つに分けられます。

塔、大型貯槽タンクといった高所は、これまでは点検のために足場を組む必要がありました。地上から目視をするにも限界がありました。しかしドローン点検で高い頻度の日常点検が可能になります。

ドローン点検は画像撮影と画像データの蓄積、そしてデータの解析が得意です。配管の腐食をAIで自動判定したり事故予測をしたりすることができます。

地震発生後の人による点検作業は危険が伴います。ドローン点検であれば浮き屋根の損傷、プラントの異常現象の有無を余震のリスクを気にせずに確認できます。

ドローン点検を安全に実施するためのガイドライン

ドローン点検を実施する際には、最新のガイドラインをチェックしておきましょう。安全なドローン運用に関するガイドラインは以下のサイトから確認できます。

▶参考情報:【労働安全】プラントメンテナンスにおけるドローン利用指針

国内企業のプラント設備におけるドローン点検の事例

国内ではドローンによるプラント設備の点検を続々と実施しています。

出光興産株式会社 千葉事業所―UTドローンを活用して肉厚測定の検証を実施              

ENEOS株式会社―マイクロドローンを活用して石油精製設備インターナル構造物を点検         

三井化学株式会社 市原工場―ドローンでコーンルーフタンク外面の腐食点検を行い、目視点検として十分に活用可能な画像を撮影

▶参考情報:令和4年3月「プラント設備等におけるドローンを活用した点検事例集」厚生労働省

ドローン点検とAR設備保全プラットフォーム

プラント設備におけるドローン点検の現状について見てきました。もしかしたらプラントを所有している事業者や、設備保全の事業者の中には、以下にあげる要望を持っているかもしれません。

「ベテラン技術者の知識や経験を若手に伝えたい」
「次世代の技術者へのトレーニングを効果的に行いたい」
「派遣される技術者が、前もって補修個所の情報を正確に得られるようにしたい」
「補修する技術者が一回で問題を解決できるような周到な準備がしたい」

ナレッジの継承や技術者の現場作業で役立つのが、ドローンと連動できるAR設備保全プラットフォームです。

たとえば弊社の「CareAR/Xerox」では、ドローンで撮影する映像とAR体験をひとつのプラットフォームに組み込めます。ドローンとARを使うことでベテラン技術者も若手も全員が現場にいるかのような体験ができます。

ベテラン技術者はプラントの設備を見ながら、ARツールで若手スタッフにアドバイスすることが可能です。技術者のトレーニングや現場作業の事前準備に活用できます。

CareAR/Xerox」に、ベテラン技術者のナレッジ、これまで蓄積してきたドローン画像、テキストデータをすべて保存できます。蓄積されたデータは、現場にいる技術者がスマートフォンやタブレットをメンテナンスする機器にかざすだけで表示されます。現場作業の正確さや時間の短縮に貢献します。

「ARツールをプラント以外の設備保全でも活用したい」と思われるかもしれません。AR設備保全プラットフォームは、製造機器、サーバー機器、通信機器、医療機器などの設備保全でも運用できます。詳細は「CareAR/Xerox」公式サイトからご覧ください。

最後に

ドローン点検でプラント設備保全を効率化すべき理由は、プラント設備の高経年化、若手の経験不足、ベテラン技術者の引退です。もしドローン点検を導入するなら、点検コストの削減と安全の向上を同時に実現できます。

ドローン点検を導入するときに、「ベテラン技術者の知識や経験を若手に伝えたい」「補修する技術者が一回で問題を解決できるような周到な準備も行いたい」と感じるかもしれません。そのときには、AR設備保全プラットフォームの活用を検討しましょう。AR技術とドローンを組み合わせることで、点検業務を一気に効率化させられます。

今後ますますドローン点検が普及していくことでしょう。ドローン点検によって点検作業の効率化に加え、技術の継承、補修作業の効率化を達成していきたいものです。

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