国内の製造業においてアフターサービスの重要性が高まっています。なぜなら、これまで製造業において重要とされていた「技能工でがんばって高品質製品を作ろう」「営業でがんばって低価格で売り出そう」という時代が終わりつつあるからです。海外メーカーの勢力が強まるなか、品質競争・価格競争で利益向上を実現することが難しくなっています。

もちろん品質と価格は最重要ポイントですが、そこだけで競合他社と差別化するのが厳しい現状があります。そこで重要なのがアフターサービスです。アフターサービスを充実させ、カスタマーエクスペリエンスを向上させる企業は収益を順調に上げています。アップセルやクロスセルを行い、安定して収益を上げ続けているのです。

しかし「アフターサービスはすでに行っているが、収益にはつながっていない。どうしたらよいか。」と感じるかもしれません。収益化を実現するには「アフターサービスの効率化」「収集した情報の活用」が欠かせません。

そこで今回は、収益化を妨げるアフターサービスの課題を5つと解決策を取り上げます。最後には、理想的なアフターサービスとは何かについても紹介するので参考にしてください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

製造業におけるアフターサービスの課題6つ

よくある製造業におけるアフターサービスの課題は次の6つです。

  • 取引企業から同じ問い合わせが多い
  • 問い合わせ内容をマーケティングに活用できていない
  • 問い合わせ管理のデジタル化が進まない
  • 問い合わせが多すぎる
  • アフターサービスの対応が共有できていない
  • 問い合わせ情報が一元化されていない

各課題について見ていきましょう。

取引企業から同じ問い合わせが多い 

取引企業から同じような問い合わせが多いことがあるでしょう。ナレッジが共有されていないため、毎回担当者が関係する資料を一から調べなければならず、効率的でないという課題があります。

問い合わせ内容をマーケティングに活用できていない 

アフターサービスで扱う問い合わせ内容をマーケティングに活用できていないため、市場のニーズを把握できず、在庫リスクを抱えがちということがあるかもしれません。

せっかくアフターサービス部門には、お客さまの製品に関する感想や要望といった情報があるのにもかかわらず、営業担当の直感や経験で製品を販売したり、キャンペーンを行ったりして成果が見られないケースがあるのです。

問い合わせ管理のデジタル化が進まない 

製造業のアフターサービスの分野では、まだまだデジタル化が進んでいません。電話による対応が中心になっていたり、エクセルを使って管理したりしています。

結果として、データの収集や分析が難しくなっているのです。どうしても予算が開発部門や営業部門に優先的に回され、アフターサービスのデジタル化が後回しになってしまいがちです。

問い合わせが多すぎる 

製品に関する疑問やトラブルの問い合わせが多すぎて、本来すべきコア業務に支障が出てしまうかもしれません。

企業の規模によっては、アフターサービスと社内ヘルプデスクを兼務しているケースがあります。社内からのメールや電話が多くて、お客さま対応が後回しになりがちという課題が見られます。

アフターサービス対応が共有できていない

アフターサービス用のメールアドレスを一つで運用しているものの、対応情報が共有されていないという課題があります。リアルタイムで情報が更新されないため、「見落とし」「二重手配」「チケットの取り合い」が発生します。

問い合わせ情報が一元化されていない

問い合わせチャネルが複数あり、それぞれ違うシステムを使っているケースがあります。メール用システム、電話用システム、有人チャットシステムが別々になっているケースです。

さらにお客さま情報を管理しているシステムも別ということがあります。複数のシステムを参照しながら問い合わせ対応をする場合、工数が多くなり非効率的です。見落としなどのミスや、同じ説明を何度もお客様にさせることになり、クレームに繋がりやすくなります。

製造業が実行できるアフターサービスの効率化

現在のアフターサービスが抱える課題を解決するにはどうしたらよいでしょうか。アフターサービスを効率化させることです。

効率化したアフターサービスはカスタマーエクスペリエンスを向上させ、アップセルやクロスセルなど収益化に繋がります。

ではアフターサービスの効率化に役立つ4つのポイントを見ていきましょう。

FAQの充実 

FAQ、もしくは「よくある質問」の充実はアフターサービスの効率化に貢献します。取引先や消費者は製品に関する疑問がある場合やトラブルが発生した場合、わざわざ問い合わせるよりも、インターネットで検索をして解決できたほうが便利と感じます。顧客満足度を向上させる施策です。

チャットボットの活用

チャットボットとは、チャットによる質問に自動で返答してくれるツールです。お客様が訪れるWebサイトや利用するアプリに実装することができます。チャットボットのメリットは、営業時間外でも簡単な問い合わせ対応が出来ることです。

ただし、チャットボットが正しく返答できる内容には限りがありますし、設定も簡単ではありません。

効果的なのは、チャットボットで問い合わせ内容の棲み分けをして、FAQや有人チャットへ誘導する施策です。

CRMの活用 

CRMは顧客情報の収集と管理が得意なシステムです。製造業にCRMシステムを導入することには、開発、営業、アフターサービスのどの分野にもメリットがあります。

お客さまや顧客企業の基本的な情報や問い合わせ内容を一元管理できるため、各顧客の要望や課題を正確に把握できます。お客さまの要望や課題は、営業や開発に活かせる情報です。

さらに営業が聞いてきたお客さまの製品に関する疑問をCRMに入力することで、アフターサービス部門へスムーズに対応を引き継げます。

問い合わせ管理システムの活用 

問い合わせ管理システムとは、メールの問い合わせを一元管理できるツールのことです。最新の問い合わせ管理システムはAIが内蔵されているので、システムが問い合わせ内容を把握して分類し、適切な担当者へアサインしてくれます。お客さまのたらい回しや長い待ち時間といった不満を解消します。

ナレッジ機能もついていますから、回答候補を提案してくれるので応答時間を短くできます。お客様が関心を持ちそうな製品の紹介や新機能の案内に役立てられます。

すでにCRMを導入しているのであれば、問い合わせ管理システムと連携することで、お客様にパーソナライズされたアフターサービスを提供できます。

製造業が目指すべき理想のアフターサービスとは

従来のアフターサービスは、お客さまが使っている製品に問題が発生したら対応するスタイルでした。しかしカスタマーエクスペリエンス、カスタマーサクセスの重要性が高まる今、目指すべきアフターサービスとは能動的なスタイルです。お客様が不具合を感じる前にコンタクトをとるスタイルです。

たとえば、製品が壊れないように前もってメンテナンスサービスを提供したり、お客さまが使っていない機能の使い方を説明したりするサービスです。メンテナンス契約をしていないお客さまに、契約のメリットや他ユーザーの声などを提供する施策や、製品使用が一定期間過ぎたお客さまに最新情報を提供する施策は収益拡大へ繋がります。

これからのアフターサービスには、お客さまのデータを蓄積・分析・活用することが欠かせません。

最後に

製造業におけるアフターサービスの課題は、「効率化できていない」「収益化できていない」点です。アフターサービスをクロスセルやアップセルにつなげるには、なぜ効率化できていないかを見極めることが大切になります。

課題を見つけたあとは、FAQといったコンテンツを充実させるのか、CRMや問い合わせ管理システムなどのツールを導入するのか決めてください。

どこから手を付けていいかわからないときは、製品を購入したあとのお客さまや取引企業が何に不満を感じているのか洗い出すようにしてください。不満を解消する施策を打つことで、カスタマーエクスペリエンスを実現できます。結果として、製造業におけるアフターサービスを収益化させることができるのです。