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IVRだけじゃない!ボイスボットによるアウトバウンドの自動化

アウトバウンドコールは、企業にとって顧客とのコミュニケーションを深める重要な手段のひとつです。とはいえ、人手不足が深刻化していく中、アウトバウンド業務も多くの課題を抱えています。そのため、アウトバウンド業務の自動化に着手しようとする企業は少なくありません。

アウトバウンドの自動化といえば、オートコールシステム(IVR)が真っ先に思い浮かばれるでしょう。しかし、最近は「ボイスボット」が注目されています。「ボット」と言えばチャットボットが取り沙汰され、実用化が進んでいるように思えます。一方で、ボイスボットは今後のポテンシャルやニーズの高まりの観点から注目度が高まっています。

この記事では、アウトバウンド業務の自動化という側面から考えるボイスボットについて紹介します。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、18年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

この記事が解決するお悩み

オートコール(IVR)よりもユーザーフレンドリーな自動化の案を知りたい

ボイスボットの活用は、CSを下げてしまうのでは?

従業員体験を向上させたい

 

 

ボイスボットへのニーズと投資意欲が高まる

コールセンター白書2023」によると、2023年時点でのボイスボット導入率は8.2%にとどまっています。とはいえ、この数字は決して低いわけではありません。昨年度(4.8%)からは大きく増加しており、ボイスボット導入が拡大傾向にあることをうかがえる数字です。

同書の「今後導入予定のITソリューション」では、「音声認識システム」が最多を記録しており、続いて22.6%が「ボイスボット」と回答しています。また、「AIソリューションを導入、導入検討している分野」という問いに対しては、「ナレッジ検索の精度向上(66.7%)」に続き、「チャットボットやボイスボットなどコミュニケーションの自動化(60.6%)」が挙げられています。

概して、音声関連ソリューションの導入・投資意欲の高まりと、それによるコミュニケーションの自動化ニーズの高まりが見受けられる結果です。

では、チャットボット躍進の裏でボイスボットが注目されているのはなぜでしょうか。その背景には以下のような要素が考えられます。

上記のような要素を背景として、ボイスボットの注目度と需要は右肩上がりになっています。

それを裏付けるコメントとして、「コールセンタージャパン2024年6月号」でボイスボットを提供するベンダーは、「昨年と比べて引き合いは非常に多い」と言います。さらに、アウトバウンドにおけるボイスボットの利用も徐々に増えていると指摘されています。

アウトバウンドの自動化というと、オートコールシステム(IVR)が一般的ですが、ボイスボットによる自動化と何が異なるのでしょうか。 

 


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オートコールシステム(IVR)とボイスボットの違い

アウトバウンドの自動化として代表的なオートコールシステム(以下IVR)と、現在導入が進むボイスボットにはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴についてまとめてみましょう。

オートコールシステム(IVR)

お客さまが自動音声の案内に従って操作をすることで、事前に録音してある音声が自動で再生される。IVRは、企業が設定した選択肢の中で顧客が動いていく。そのため、シナリオの管理や把握という観点で企業フレンドリーなのはIVRと言える。ただし、シナリオ外の顧客対応ができないため、リアルタイムかつ柔軟に顧客対応を行っていくには限界がある

ボイスボット

お客さまの発話内容に合わせて会話を進めていくことが得意。そのため、シナリオ外の会話に対して柔軟かつ臨機応変に対応できる。複雑な顧客対応が難しかったり、音声認識の精度に課題があったりと、現状では決して万能なわけではない。とはいえ、対応回数の積み重ねによる機械学習や、音声誤認識の要因となる雑音を除去することによって対策・改善が期待できる。決まった音声のみが流れるIVRと比較すると、相対的にユーザーフレンドリーであると言える。

音声認識の精度を向上させるノイズリダクションツール:「Namitechソリューション 

 

ボイスボットの導入は「企業のイメージ」をダウンさせる?

ボイスボットによる自動化は、柔軟性やリアルタイム性を特徴とします。しかし、「それはあくまでも企業側にとってのメリットでしかないのではないか。ボイスボットに変えたら、企業のイメージが無機質で機械的なものになり、イメージダウンにつながるのでは…」と思われるでしょうか。

トランスコスモス株式会社による「音声AI(ボイスボット)利用実態調査2023」によれば、ボイスボットを導入している企業への印象は非常にポジティブなものです。利用者の大部分が、「デジタル化が進んでいる」「新しいことにチャレンジしていると思う」「問い合わせる人のことを考えてくれていると思う」といった印象を持っています。

ボイスボットによる自動化が直接的原因となって、顧客満足度の低下や顧客離れを引き起こすことは稀であることが推察できます 。

 

CSを向上させるボイスボットの活用方法4つ

ボイスボット活用と企業イメージのダウンが直結しないことは、ボイスボット導入に向けた大きな安心要素となります。

では、ボイスボットをより効果的に活用し、顧客満足度の向上へ繋げていくために何ができるでしょうか。4つのポイントを紹介します。

1. アウトバウンドの目的を明らかにする

ひとことにアウトバウンドと言っても、インバウンドで処理できなかった案件のコールバックフォローコール督促カスタマーサクセスなど、アウトバウンド業務が担う目的は多種多様です。

そのため、まずは自社のアウトバウンド業務が何を目的としていて、どのような課題を抱えているかを明確にしましょう。目的や課題が明らかになっていれば、ボイスボットの活用方法やソリューションの選び方において役に立つでしょう。

アウトバウンド業務にありがちな課題例を挙げるので、ぜひ参考にしてください。

〈アウトバウンドの課題例〉

2. 有人対応とのハイブリッド運営を目指す

ボイスボットを導入したからといって、有人でのアウトバウンドが一切不要になるわけではないでしょう。お客さまの状況の子細なヒアリングや、複雑な判断などが関係する場合があるからです。

無理矢理に全てをボイスボットに任せるなら、かえって顧客満足度や体験の低下を招くリスクがあります。そのため、ボイスボットをメインとしつつ、必要なときには人間のオペレータが対応する「ハイブリッド運営」の実現を目指すのがポイントです。

3. 定期的なチューニングを行う

ボイスボットには、誤認識や誤回答をするリスクが付きものです。AIの精度を向上させながら、よりお客さまに快適に使っていただくには、定期的なチューニング(メンテナンス)が必要不可欠と言えます。

会話の流れやシナリオを定期的に見直しながら、自社と顧客にピッタリのボイスボットへ少しずつブラッシュアップしていきましょう。

4. 利用顧客層を絞り込む

「コールセンタージャパン2024年6月号」では、「“使えるボイスボット”の先進事例には、利用顧客層を絞り込んだうえで、顧客の特性に合わせて対話フローをシンプルに設計し、検証・改善を重ねるプロセスを踏むという共通点がある。」と分析されています。

ボイスボットを活用する大きな目的の一つは、「顧客体験の向上」です。ボイスボットを最大限に有効活用し、顧客体験の向上を実現するために、まずはターゲット層を絞るようにしましょう。その上で、主な利用顧客にとって使いやすいボイスボットかどうかを検討しましょう。自動化を進めていくにあたり、常にユーザー目線を忘れないようにしたいものです。

アウトバウンドにおけるボイスボット活用事例:NECパーソナルコンピュータ株式会社

「“使えるボイスボット”の先進事例には…共通点がある」との分析がありました。最後に、ボイスボットをアウトバウンド業務に組み込んだ事例を紹介します。

NECパーソナルコンピュータ株式会社では、修理見積金額確認を目的としたアウトバウンドにボイスボットを導入しました。修理依頼時に顧客側が設定した金額を見積額が上回った場合のみに自動架電する流れです。「修理費用は○○円です。修理をお受けしてよろしいですか?」という質問に、「はい/いいえ」で答えてもらう構成で、非常にシンプルかつ無駄のないシナリオです。

「コールセンタージャパン2024年6月号」で同社のサービス事業本部カスタマーエンゲージメントマネージャーの小林義明氏は、「一部のお客様に金額面でご納得いただけずに応対が長引いてしまうこともありました。アウトバウンドの自動化はEX(従業員体験)の観点でも効果がありました」と語っています。

現在は、アウトバウンドの自動化を含むボイスボットの運用で蓄積したノウハウを活かし、新たに修理受付の自動化へと着手しています。

一方で小林氏は、「すべてを発話認識で完結することにこだわると、使い勝手が悪くなり、結果、使われなくなります」とも指摘しています。

やはりボイスボットの活用シーンや有人対応とのバランスが、アウトバウンド業務の自動化におけるカギを握ると言えるでしょう。 

▶参考情報:「NECパーソナルコンピュータ株式会社|ボイスボット黎明期から導入、完了率8割超え、CX向上を実感

 

最後に

ボイスボットはあらゆるシーンでの導入・活用が期待されているソリューションです。音声の誤認識や精度に関連した問題といったボイスボット特有のリスクは否定できないものの、定期的なチューニングや蓄積される機械学習によるブラッシュアップが見込める部分です。

多くの企業がボイスボットに期待と注目の眼差しを向けている今、自社に合うボイスボット活用法を迅速に見つけ、確実にフィットさせていくことは、競合他社の中でより良い顧客体験を提供する上での大きなアドバンテージとなるでしょう。

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