カスタマーエクスペリエンスの要はコンタクトセンターです。しかしコンタクトセンターはパンデミックが原因で、インフレ、サプライチェーンの悪影響、高い離職率などの課題を抱えています。
ではコンタクトセンターが課題を克服し、カスタマーエクスペリエンスを実現するには何が必要でしょうか。今回は、課題解決に役立つ2022年におけるカスタマーエクスペリエンスのトレンド9つを紹介します。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、15年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
2022年にコールセンターが取り組むべき3つの課題 - TPIJ by CBA |
1. 在宅ワーカーの増加
コールセンターではコロナ渦によって在宅ワーカーが増えました。コールセンターの在宅化の流れはパンデミックが収まっても継続するでしょう。むしろ在宅ワークのメリットを企業も社員も感じたため、2022年移行も在宅ワークは増加していくに違いありません。
しかし在宅ワークはメリットばかりではありません。以下のような課題もあります。
- セキュリティ
- 電話品質
- 在宅ワーカーのメンタルヘルス
- 仲間との情報共有
- SVによる在宅オペレーターへのサポート
課題を解決するには、在宅でも使い勝手の良いコンタクトセンターシステムを活用しなければなりません。どのようなコンタクトセンターシステムを選ぶべきでしょうか。
- 国際レベルのセキュリティ基準を遵守
- ソフトフォン対応
- 品質チェック機能
- MicrosoftTeamsとの統合
上記の特徴を持っているシステムであれば、セキュリティ、品質、オペレーター管理、オペレーター感のコミュニケーションの課題を解決できます。とくにMicrosoftTeamsなどのコミュニケーションプラットフォームとコンタクトセンターシステムを統合することは、カスタマーエクスペリエンスに欠かせません。
システム運用に加え、在宅ワーカーのメンタルヘルスケアの仕組みも作ってください。
社員のメンタルヘルスを守るためにできる5つのこと - TPIJ by CBA |
2. スマートフォンへの対応
スマートフォンの利用者、利用率は年々増加しています。海外のある調査では、アンケート参加者の39%がソーシャルディスタンスを保つためにスマートフォンの利用が増えたと答えています。さらに買い物の際にはアプリを利用する消費者が23パーセント増加したとも報告されています。
2020年のカスタマーエクスペリエンスのトレンドは企業がスマートフォンというチャネルに対応することでした。しかし2022年はもう一歩進み、ソーシャルチャネルとメッセージングチャネルへの対応がトレンドです。
現在、スマートフォンの利用率の高まりとともに、ソーシャルチャネルの利用も活発になっています。各企業はカスタマーエクスペリエンスのためにどのようなソーシャルチャネルを活用しているでしょうか。
- Googleマイビジネス(GMB)
- Apple Business
上記のソーシャルチャネルを使って、企業は顧客のフィードバックを得たり、音声アシスタントに対応したりしています。
メッセージングチャネルへの対応も欠かせません。世界の企業は以下のメッセージングチャネルにおけるカスタマーエクスペリエンスの構築に励んでいます。
- Facebook Messenger
- Line
- Viber
- Telegram
上記のメッセージングアプリを使うことで、企業と顧客はファイル、写真、ビデオの共有ができます。非同期の会話もできるのでお客さまの利便性が高まります。
カスタマーサービスのノンボイス化はチャットから始めよう - TPIJ by CBA |
メッセージングチャネルに対応しているコンタクトセンターシステム「ブライトパターン」社のマーケティング担当Ted Hunting氏は次のようにコメントしています。
モバイルチャネル内でのビデオチャット、写真やドキュメントの共有が標準サービスになりつつあります。たとえば、交通事故の写真をモバイルアプリで保険会社に送ったり、モバイル入金後に銀行からSMSやアプリ内でPDFの通知を受け取ったりするユースケースがあります。
3. AI
カスタマーエクスペリエンスのためにAIの導入が世界的に進んでいます。2022年はAIの導入そのものがトレンドではなく、導入の次のステップである活用方法に焦点が移っています。カスタマーエクスペリエンスに貢献するAIの活用方法は次の3つです。
- AIによる一次対応
- オペレーター支援
- コールセンターの対応分析
パンデミックの影響でコールセンターが対応する問い合わせ数は増加しました。そこでAIに一次対応をトリアージさせるコールセンターが増えています。つまり問い合わせ内容を識別し、適切な担当者やwebページへ誘導させるのです。
実装が簡単なIBM Watsonは、多くのコールセンターで活用されています。2020年2月から4月にかけてはIBM Watsonのトラフィックは40パーセント増加しました。
一つの事例では、IBM Watsonを実装したコンタクトセンターシステムが、全米で展開する小売チェーンの会話型IVRで一時対応を行ないました。結果的に通話量の50%をトリアージさせられました。
AIによる音声認識はオペレーター支援に役立ちます。オペレーターとお客さまの会話をリアルタイムで分析し、感情が高ぶっているような会話を素早く洗い出します。その後、すぐにSVへ知らせてくれます。
コールセンターの対応分析をする上でもAIは欠かせません。コンタクトセンターシステム大手のブライトパターンが行った2019年9月の調査では、コールセンターのすべてのインタラクションを分析する企業はわずか13%でした。音声とテキストチャネルの膨大なやり取りのすべてを分析できないため、音声の一部だけランダムに分析しているセンターがほとんどだったのです。
しかしAIを活用すれば、音声とテキストのインタラクションをまるごと分析できます。AIが分析できるチャネルは以下のとおりです。
- 電話
- Webチャット
- 電子メール
- テキストメッセージ
- ボットの会話
データの分析をAIに任せることで、カスタマーエクスペリエンスの品質向上を図れます。
4. クラウド
カスタマーエクスペリエンスを提供するシステムは、オンプレミスからクラウドへ移行しています。「クラウドはセキュリティが心配」「オンプレのほうがCRMと統合しやすい」といった考えが今まではありました。
しかし今はクラウド・コンタクトセンターシステムのほうが様々なプラットフォームやデータベースとの統合が可能です。カスタム統合もAPIを介してリンクさせられます。セキュリティもPCI、HIPAA、GDPRといった高度なプロトコルに準拠している製品があります。
Markets and Researchの2018年のレポートでは、クラウドベースのコンタクトセンターソリューションに対する世界の支出は、2022年までに3倍になると予想されていました。実際に世界のコールセンターでは、クラウド・コンタクトセンターシステムの導入は加速する一方です。
5. オムニチャネル対応コンタクトセンターシステム
お客さまがシームレスに様々なチャネルから問い合わせられることは現代のカスタマーエクスペリエンスには必須です。多様なチャネル運用に欠かせないのが、オムニチャネル対応コンタクトセンターシステムです。
オムニチャネル対応コンタクトセンターシステムを活用すると、以下のチャネルでお客さま対応ができます。チャネルを切り替えながらのシームレス対応も可能です。
- 音声
- IVR
- SMS
- チャット
- メッセージング
- ビデオ電話
オムニチャネル対応コンタクトセンターシステムであれば、オペレーターは複数のチャネルを使って対応しても、単一の会話をしているかのように顧客対応ができます。お客さまもチャネルが変わるごとに、一から説明する必要がないのでストレスを感じません。
6. 労働管理
コンタクトセンターの運用管理社は、オペレーターのシフト管理と繁忙期の対応にいつも追われています。2022年はコンタクトセンターシステムを使ってオペレーターの労働管理を行う拠点が増えてきました。
コンタクトセンターの労働力最適化(WFO)と労働力管理(WFM)の機能を活用するセンターが増加しています。
労働力最適化(WFO)の機能によってベテランオペレーターに適切な権限を与えられます。業務が効率化するだけでなく、オペレーターがより柔軟な対応ができるため、ベテランオペレーターの離職率が低下するという効果も見られています。
労働力管理(WFM)の機能は、システムが通話量を分析し、自動でスケージュールを組み、各種の問合せが適任のオペレーターへルーティングされるようにしてくれます。
7. MicrosoftTeamsとの統合
MicrosoftTeamsの利用者はこの数年で飛躍的に増加しています。2016年11月にスタートしたTeamsは、2019年7月までに1日あたり1300万人のアクティブユーザー(DAU)を抱えるまでに成長し、2021年4月までには1億4500万人のDAUとなっています。
カスタマーエクスペリエンスの提供には、企業内やオペレーター間の密なコミュニケーションが欠かせません。そのためユーザー数の多いMicrosoftTeamsと、コンタクトセンターシステムとの統合を重視する企業が増えています。
ひとつの事例として、370,000人以上の会員を抱える非営利団体YMCA of the Northでは、約3,800人の従業員がMicrosoftTeamsを活用しています。Teamsと統合できるコンタクトセンターシステムを導入したところ、3つの導入効果がありました。
- オペレーターの電話対応時間の短縮
- オペレーターの効率化
- ルーチンタスクの自動化
最終的には、約36,000ドルのコスト削減を達成できました。
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8. アウトバウンドの自動化
アウトバウンドコールは、カスタマーエクスペリエンスに貢献します。潜在顧客や購入者を早めに見つけ、相手が必要とする情報を提供するのにアウトバウンドコールは非常に役立ちます。
しかしアウトバウンドは電話をかけても応答する人や話を聞いてくれる人が少ないため、非効率になりがちです。そこでコンタクトセンターシステムの自動化機能が役立ちます。自動でコールをし、応答したお客さまだけをオペレーターへ誘導します。効率的なアウトバウンドのために以下の機能が必要となります。
- プレビューダイヤラー
- プログレッシブダイヤラー
- プレディクティブダイヤラー
- オートダイヤラー(IVR)
ベーシックプランに上記の機能が搭載されているコンタクトセンターシステムであれば、低コストなアウトバウンド運用が可能です。
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9. ITサービスマネジメント(ITSM)
ITSM(Information Technology Service Management)とは、お客さまのニーズに沿ったITサービスを提供するための管理業務を行っていくことです。このITSMという用語は幅広く使用され、サービス設計や作成、顧客への提供やサポートまでのすべてを含んでいます。
たとえばカスタマーサービスにおけるITSMには、以下の3つの管理が含まれます。
- モバイルアプリ
- クラウドサービス
- コンタクトセンターシステム
カスタマーサービスの場合、お客さまの要望を取り入れながらITサービスを改善する業務も重要になります。
2022年のおけるカスタマーエクスペリエンスのトレンドは、ITSMの自動化です。ITSMを自動化するメリットは2つあります。
- ITサービスの管理業務が効率化される
- お客さまの体験が向上する
ITSMに自動化を導入することで、IT部門やITコールセンターの効率化が進みます。顧客対応やデータ分析などの時間を短縮できます。お客さまもスピーディに自分の問題を解決できるので、顧客体験が向上します。
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最後に
2022年におけるカスタマーエクスペリエンスのトレンドは多岐にわたります。コンタクトセンターの課題を克服し、カスタマーエクスペリエンスを提供し続けるには、2022年の最新トレンドを取り入れることが必要です。つまり最新のコンタクトセンターシステムを導入すること、もしくはシステムの最新機能を活用することが必須なのです。
「システムの入れ替えにはコストが掛かりすぎる」「最新機能の導入に割く時間がない」と思われるかもしれません。しかし世界は着実にデジタルチャネルによるカスタマーエクスペリエンスへシフトしています。
最近の2020年IBMの調査では、パンデミックによってeコマースへの移行が5年前倒しされたことが判明しています。マッキンゼーも同じように、デジタルチャネルへの移行が、COVIDによって、わずか8週間で5年も早まったと分析。このデジタルチャネルへの移行は今後も継続していくでしょう。
パンデミックの影響が和らぎ、世界のビジネスが再び加速しつつあります。今こそカスタマーエクスペリエンス実現のためにリソースを投入し、新たな時代のトップランナーになりましょう。