ChatGPTに始まり生成AIについて耳にしない日はありません。生成AIが脚光を浴びるようになり、すでに以前から始まっていたカスタマーサービスにおけるAIの活用は加速度的に進むようになりました。
現在、カスタマーサービスの現場で使われているAIは、チャットボットなどの対話型AIがメインです。もしかしたら「対話型AIと、生成AIにはどんな違いがあるのか」と感じられるかもしれません。
今回は、二つの用語の違いと、対話型AIを活用する4つのメリットについて解説していきます。「チャットの活用は、従来型のチャットボットで止まっている」「生成AIは活用したいが、チャットチャネルで使うにはまだ早い」と感じている方の参考になる内容ですのでご覧ください。
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対話型AIと生成AIの違いとは
対話型AIとは、人間とコンピュータとの対話を、あたかも人間同士がしているように自然な形にするためのテクノロジーです。対話には、テキストベースと音声ベースが含まれます。
諸説ありますが、具体的なサービス名でいうと、ChatGPT、Bing、Bard、siri、Alexaなどが含まれます。
一方、生成AIとは、ある種のデータを学習し、対話に限らず、文章、画像、音楽、動画などを生成できるテクノロジーです。
よく知られているサービスでは、ChatGPT、Stable Diffusion、Midjourney、DALL-E2などがあります。
生成AIという用語は広範な意味で使われるのに対し、対話型AIは対話に特化した分野で使われます。
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国内で高まる対話型AIのニーズ
カスタマーサービスの現場で実際に使われているAI、または導入が検討されているAIの大半は対話型AIです。
コールセンター白書2022によると、「導入、あるいは導入検討しているAIソリューション」を尋ねたところ、回答した企業の69.8%が「チャットボットなどコミュニケーションの自動化」と答えました。つまり対話型AIです。
このことから、チャットボットで使用できる対話型AIの需要が高いことと、対話型AIに対する信頼性が高いことが分かります。どんな課題を解決するために対話型AIが求められているのでしょうか。
同白書では、「チャットボットに期待している導入効果」についての調査を行いました。結果は、「電話の呼量削減」が90.8%、「顧客満足度、カスタマーエクスペリエンス向上」が77.6%でした。
対話型AIには呼量削減に加えて、顧客満足度向上が期待されていることが分かります。
では、対話型AIを活用することによって、顧客満足度がどのように向上していくのかをこれから考えていきましょう。
対話型AIのメリット4つ
国内では、依然として電話がコールセンターの対応チャネルで高い比率を占めています。しかし米国はどうでしょうか。対話型AIをはじめとしたデジタルチャネルの活用が進む米国では、電話対応の割合は51%程度しかありません。
年々、デジタルチャネルの割合が増え、電話のチャネルの割合は減少しています。なぜなら対話型AIのメリットとして、業務効率化だけではなく、顧客満足度向上を実感しているからです。
企業側の都合だけでは、対話型AIが顧客からの支持を得ることはありません。顧客自身もカスタマーエクスペリエンスの向上を実感しているからこそ、電話より対話型AIを好み、進んで活用するようになっているのです。では、米国のテレマーケティング業界では、対話型AIのどんなメリットが見られているのでしょうか。
この記事では4つのメリットをピックアップします。
- 顧客理解が進む(Understand)
- つながりやすさ(Connect)
- オペレーターへのサポート(Assist)
- 顧客ファーストの自動化を実現(Automate)
それぞれのメリットについて解説します。
顧客理解が進む(Understand)
対話型AIと連携して運用されることが多いのがチャットボットです。チャット内容のテキストデータを分析すると、「顧客のニーズ」「コールリーズン」「顧客が企業に期待する体験とは何か」が見えてきます。
顧客がホームページでどのページにどれくらい滞在しているのか、どのリンクをクリックしたのかを分析するより、顧客の意図をより正確に理解することが可能です。
※従来の「シナリオ型チャットボット」と「AIチャットボット」との違いについては以下の記事を参照してください。
AIチャットボットとは|メリット・デメリットと導入の注意点 - TPIJ by CBA |
つながりやすさ(Connect)
最新の対話型AIプラットフォームは、メッセージング対応です。従来のセッションの間中画面に張り付いていなければいけないチャットではなく、いつでも都合の良いときに返信しながら会話を続けられるメッセージング型に対応しています。そのため、顧客は時間と場所に縛られずに、問題解決のサポートをカスタマーサービスから受けられます。
さらに最新の対話型AIプラットフォームは、オムニチャネル対応です。顧客がチャットの途中でチャネルを切り替えたとしても会話を継続できます。たとえば、Webチャットで始まった対話型AIとの会話が、途中でLINEによる有人チャットへ切り替わっても問題ありません。
結果として、顧客も企業もずっとつながっていられるのです。
メッセージングとは?利用者・管理者のメリットとデメリットも解説 - TPIJ by CBA |
オペレーターへのサポート(Assist)
対話型AIは顧客対応だけをするのではありません。オペレーターのサポートもしてくれます。最新の対話型AIプラットフォームは、顧客との対話を自ら分析し、オペレーターに役立つ情報を提案してくれます。たとえば、有人チャットに切り替わった際、対応に必要なナレッジや顧客情報を教えてくれるのです。
顧客ファーストの自動化を実現(Automate)
対話型AIがもたらす自動化は、企業だけがメリットを感じる業務効率化ではありません。顧客もメリットを感じる効率化が実現します。対話型AIは日々の顧客対応を通して学習を進め、よりパーソナライズされたサービスを顧客へ提供できるようになっていきます。結果、顧客の自己解決率と満足度は向上していきます。
カスタマーサービスの運営側は、自動化によって学習する対話型AIがもたらすデータを分析することで、顧客のニーズや意図をより正確に知ることができます。つまり、上記の図にあるように、4つのメリットは循環しながら回っていくのです。
▶参考情報:対話型AIプラットフォーム「LivePerson」
対話型AIの効果を4つの事例で紹介
対話型AIの効果は現場で実感されているのでしょうか。具体的な事例を前述のメリットごとに紹介していきます。
「顧客理解が進む」の事例
対話型AIは、顧客が会話で頻繁に使うキーワードやフレーズに気が付かせてくれます。これらのデータを分析することで、カスタマーエクスペリエンスを向上させられます。一つの事例を見てみましょう。
あるウェディング関連の小売業者は、顧客がチャットによるお問い合わせの途中で行き詰っていることに気が付きます。会話データを分析すると、顧客が希望する「交換」というキーワードが「返品」として対応されていることが判明したのです。顧客は、チャットで交換処理が完結しないため、コールセンターに再度かけなおすというストレスを感じていました。すぐにAIによるルーティングを調整し、「交換」と「返品」のフローが明確に区別されるようにしました。結果、顧客はチャットだけで交換処理を済ませることができるようになり、カスタマーエクスペリエンスは向上しました。企業側は呼量を削減し、コストの削減も実現することができたのです。
「つながりやすさ」の事例
最新の対話型AIプラットフォームは、メッセージングとオムニチャネルに対応しています。そのため顧客は移動しながらでも問い合わせを続けられます。
ある世界トップクラスの航空会社では、問い合わせをする顧客の多くが移動中であることに気が付きました。そのため、顧客は電話よりもチャットによる問い合わせを好む傾向があると判断します。たしかに、騒音が大きな空港、スーツケースや子供を引き連れながらの移動中に電話はしたくありません。この航空会社は、IVRの選択肢にメッセージングチャネルを追加します。さらに、空港のいたるところにメッセージングチャネルに直接つながるQRコードを張り付けました。結果として、同社は2019年以降、メッセージングによる問い合わせが5倍に増加し、CSAT(顧客満足度)平均が90を維持するようになったのです。
「オペレーターへのサポート」の事例
最新の対話型AIプラットフォームはオペレーターに回答そのものや、回答に役立つ資料を提案してくれます。
ある英国の大手コンタクトセンターは、メッセージングチャネルと対話型AIの活用で大きな成果を出しました。コンバージョン率は42%向上、オペレーターの作業効率は35%も向上したのです。現在は、対話型AIによるオペレーターサポートを強化しています。対話型AIによるサポートを受けているオペレーターは、そうでないオペレーターと比較して42%も優れた応対ができると分析されています。
「顧客ファーストの自動化を実現」の事例
自動化と聞くと顧客を置き去りにし、企業ファーストな施策と思われがちです。しかし対話型AIによる自動化は、顧客ファーストを実現できます。
英国最大の銀行の一つは、「代理店の従業員を増やさずに業務規模を拡大したい」と考えていました。そこで対話型AIによるチャットボットを導入します。まず、一定の人数をチャットボットによる自動化フローの作成に割きました。人間がすべき業務とチャットボットで対応できる業務を見極め、自動化フローを作っていきました。結果、カスタマーエクスペリエンスを向上させるフローが出来上がり、フローの調整をスピーディに実行できる体制も出来上がりました。顧客からの評価はかなり高いものでした。この銀行はチャットボットの効果性が高いことを確信したため、今では従業員のキャリアアップの過程に「ボットビルダー」や「ボットマネージャー」を含めています。
最後に
カスタマーサービスにおける「単なる自動化」は、オペレーターと顧客との会話を、単に機械と顧客との会話にすり替えただけのものです。これでは顧客満足度は向上していきません。
しかし対話型AIの活用は、チャットボットと有人チャットの両方の会話を高品質なものにしていきます。顧客との会話を、よりパーソナライズされたもの、より正確なもの、よりスピーディなものとしていくのです。
対話型AIを採用することで、AIテクノロジーがどれだけ進歩しようとも、人間味を失うことなく高品質なサービスを提供していけるでしょう。