お客さまがコールセンターに電話をかけるのには、必ず何かしらの理由があります。自己解決ツールが発展している今、コールリーズンの特定と分析はとりわけ重要です。
コールリーズンが明確であれば、通話時間の短縮や、応対スキルにまつわるリスキリング、自己解決促進のための改善策を講じることができるからです。しかし、問い合わせの複雑化や人材不足、コスト問題が立ちはだかる中、どのようにより正確なコールリーズンの分類や分析を行えば良いのでしょうか。
この記事では、AIを活用したコールリーズン分析に注目し、具体的なメリットや成功事例を紹介していきます。顧客体験の向上やコスト削減を実現したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、18年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
この記事が解決するお悩み
真のコールリーズンを見極めるのが難しい
コールリーズン分析に割けるリソースが不足している
把握していますか?お客さまが問い合わせてこられる理由。 - TPIJ by CBA |
AIによるコールリーズン分析のメリット4つ
コールリーズンの分析といえば、これまでは主に人手によって行われていました。たとえば、問い合わせ内容の分類は、電話を受けた各オペレータが後処理業務の一環として実施していました。
しかし、この業務体制ではどうしてもオペレータの主観が入ってしまいます。結果として、コールリーズンのカテゴリ分けにおける一貫性や効率性が欠けるというデメリットが存在するのです。
FAQやボットといったツールによる自己解決が定着している現在、さらなる顧客体験の向上を実現するには、コールリーズンをより正確に分類・把握し、適切な改善策を講じることが必要不可欠です。
「コールリーズンの把握が大切なのは分かるけど、時間やコスト、人的リソースに限りがある。もうこれ以上労力や人手を分析のために割くことはできない」と思われますか。
ここでAIを活用するなら、従来よりも的確かつ少ないコストとリソースで、顧客の「真のコールリーズン」を特定することができます。
AIによるコールリーズン分析のメリットを4つ紹介します。
分類精度の向上
コールリーズンのカテゴリ分けにAIを活用すると、分類精度を大きく向上させられます。最新のAIは、文脈から言葉の意味を特定したり、漢字変換を行ったり、問い合わせ内容を要約したりすることが可能です。各種LLMと連携できたり、RAG技術を採用していたりするAIであれば、専門用語や業界特有の言葉に対しても安心です。
▶コールリーズン分析に役立つ最新AIの例:https://gidr-ai.cba-japan.com/
【テキストマイニングによる分析との違い】
コールリーズン分析をテキストマイニングでおこなっているセンターは少なくありません。しかし、テキストマイニングは、頻出単語に基づいた分類になることが一般的です。そのため、一連の内容における本当の言葉の意味や、業務を踏まえた適切な分類が難しくなります。
オペレータの負担軽減
オペレータによるコールリーズンの入力作業をカットしていけます。これによりオペレータはお客さまとの応対だけに集中しやすくなります。また、後処理時間の短縮と業務の効率化が見込めるので、全体として業務の生産性アップが期待できます。
カスタマーエクスペリエンス向上
AIによって「真のコールリーズン」が特定できれば、お客さまのインサイトを見極められます。インサイトが把握できれば、カスタマーエクスペリエンス向上を目的とした取り組みにおいて、効果性の少ない分野へ時間やコストをかけなくて済みます。むしろ顧客が一番求めている改善策を講じることができ、自己解決率のさらなる向上や、顧客ロイヤルティの獲得が見込めるのです。
コスト削減
顧客体験の向上を目指す過程において、チャネルの増強やオペレータの増員、配置換えといった、少なからずコストのかかる取り組みへチャレンジすることがあります。しかし、その投資は「真のコールリーズン」と合致しているでしょうか。
AIの活用によって「真のコールリーズン」が把握できていれば、本当に必要な分野へ十分なコストをかけることができます。逆にあまりニーズがない分野については、コストカットを図れます。
たとえば、お問い合わせの80%が「FAQがわかりにくかった」というコールリーズンだったとしましょう。するとカスタマーエクスペリエンスを向上させるために必要なのは、オペレータの増員でも、新規チャネルの追加でもありません。必要なのはFAQの改善です。
FAQの改善をすることで、カスタマーエクスペリエンスが向上します。同時に、入電数は減り、オペレータの配置を効率化でき、コスト削減へとつながっていくのです。
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AIによるコールリーズン分析の成功事例
ここからは、実際にAIを活用し、成果が出ている2つの企業について紹介します。AI活用の成功例としてぜひ参考にしてください。
スカパー・カスタマーリレーションズ
スカパー・カスタマーリレーションズは、従来からコールリーズン分析に注力してきましたが、オペレータの生産性と分類項目の精度という課題がありました。そこで、分類項目の設定にAIツールを活用し、分類精度の向上と負担軽減を図りました。
人が分類項目の数を指定し、指定数に合わせてAIが特徴キーワードを抽出。それに基づいて人がカテゴリを決定していくという流れです。
これにより、コールリーズンの分類精度は51%から75%へ向上し、「その他」に振り分けられるボリュームが20%から5%に低減するという効果が出ています。
キーワード抽出の作業が自動化されたことにより、キーワード設定の工数が不要となり、メンテナンスの負荷を軽減することも可能となりました。
▶参考情報:https://callcenter-japan.com/image/custom/pdf/2111_award02.pdf
https://www.spcc-sp.com/case/1043/
明治安田生命保険
明治安田生命保険では、以前はコールリーズンの分類業務をすべて手作業で行っていたそうです。そのため、作業が各担当者の理解度や経験に依存し、問い合わせ内容を正確に分類することが課題となっていました。
保険業界という性質上、とりわけセキュリティ面への注意が求められるものの、セキュリティを担保しながら問い合わせと質問をカテゴリ別に分類して集計、分類精度の向上と業務負担の軽減に成功しました。
▶参考情報:https://callcenter-japan.com/article/6252/1/
https://www.hitachi-solutions.co.jp/katsubun/case46/
カインズも取り組むカスタマーエクスペリエンスマネジメント(CXM)とは - TPIJ by CBA |
最後に
コールリーズンの特定と分析は、今や呼量削減だけでなく、顧客体験の向上やコスト削減のために必要不可欠です。
また、お客さまの問い合わせ内容が複雑化しているため、「真のコールリーズン」の見極めがより重要になっています。とはいえ、コストや人材といったリソース問題を無視することはできません。ぜひ「猫の手」ならぬ「AIの手」を借りて分業し、より効率的で正確なコールリーズン分析を実現しましょう。