カスタマーサポートの分野では自己解決率を向上させることが大切です。なぜなら、かつてなくWebサポートの重要度が高まっているからです。
在宅ワークの普及により、自宅でのインターネットの利用率が上がっています。スマートフォンも普及し、外出先であってもインターネットで調べ物をする人が増えています。お客さまの利用時間が長いWeb上で自己解決できるサポート環境を作ることが、顧客満足度の向上につながっていくのです。
しかし自己解決率の向上は簡単ではありません。「長年取り組んでいるけど思ったように自己解決率が向上しない」「自己解決率を改善しなければいけないとわかっているが、何から手を付けたらよいかわからない」と感じる方もいるでしょう。
今回は、自己解決率の向上を難しくする原因と、自己解決率を向上させる方法について紹介します。最後には、自己解決率を向上させるカギであるWebの動線解析についても解説します。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
一次解決率を向上させる方法7つと注意点1つ - TPIJ by CBA |
自己解決率とは何か
自己解決率とは、お客さまが持つ疑問点を、お客さま自身で解決できた割合のことです。企業のプロダクト(製品、商品、サービス)についてわからない点を、Webの商品ページやFAQで見つけられた割合を自己解決率と呼びます。
いま自己解決率を向上させるべき理由
カスタマーサポートを行うコールセンターやWebサポートチームは、なぜ自己解決率を改善する必要があるのでしょうか。自己解決率を向上させるべき理由は3つあります。
- 顧客は自己解決したい
- 呼量削減が達成できる
- エフォートレス体験が実現できる
それぞれの理由について見ていきましょう。
顧客は自己解決したい
お客さまはわざわざカスタマーサポートに問い合わせしたくありません。チャットやメールで質問したり電話をしたりするのは面倒だし時間がかかると思っています。お客さまは「不明点を感じたときにすぐ答えを知りたい」と願っているのです。もしWeb上で即座に不明点が解決すれば、顧客満足度を向上させられます。
コールセンター白書2021によると、約70%が「電話する前にその会社のホームページを見た」と回答しています。また、高い割合で「その企業のホームページをかなり詳しく調べた」「知りたいことについてGoogleなどの検索サイトで調べた」と回答した人もいました。
(参照:コールセンター白書2021 146ページ)
「Webで自己解決したい」とのニーズがいかに高いかがわかります。
呼量削減が達成できる
自己解決率が向上していけば、当然のことながらお客さまからの問い合わせ数は減ります。日々増え続ける呼量を削減し、応答率を向上させることが可能です。
エフォートレス体験が実現できる
カスタマーサポートにおける「エフォートレス体験」は、世界的なトレンドになっています。エフォートレス体験とは、快適に企業のプロダクトを利用できる体験のことです。時間や労力をかけずにプロダクトを購入し、継続して使用できる状態を表します。
もしお客さまが不明点を自己解決できず、わざわざ問い合わせなければいけないとなると、問い合わせのための時間と労力を払わせることになり、エフォートレス体験を提供できません。
もしかしたら購入まではエフォートレス体験だったかもしれませんが、カスタマーサポートの部分でその体験が壊れてしまうのです。自己解決率の向上は、エフォートレス体験の維持に役立ちます。
自己解決率の向上を難しくする原因
「自己解決率の向上が重要なことはわかっている。でも思うようにいかない」と感じることがあるでしょう。自己解決率の向上を阻害する原因は主に2つあります。
Webサイトの情報不足―企業のWebサイトにお客さまが必要とする情報が掲載されていない。もしくは掲載されているものの、見つけにくい。
FAQの使いづらさ―自己解決に役立つのがFAQ。しかし「自分の不明点にぴったりの質問が見つけられない」「質問は見つけたが、回答が不親切」と感じられている。
自己解決率を向上させる5つの方法
自己解決率を向上させる5つの方法を紹介します。「FAQが活用されていない」「入呼数が減らない」といった悩みを解消できる方法です。
- Webサイトを見直す
- FAQを改善する
- ノンボイスチャネルを設ける
- ビジュアルIVR(VIVR)を活用する
- コミュニティを設ける
各ポイントについて解説していきます。
Webサイトを見直す
Webサイトの情報不足を解消するために、人気商品のページを改善していきましょう。コールセンターに寄せられるコールリーズンを分析し、「どの商品の問い合わせが多いか」「何についての質問か」を洗い出していきます。不足している情報をWebサイトへ追加していきます。
お客さまがWebサイトのどのページを見てから問い合わせをしてきたかを分析することも重要です。Webの動線解析については後ほど説明します。
FAQを改善する
FAQの最初の改善ポイントは、お客さまが自分の不明点にぴったりな「質問」を見つけられるようにすることです。FAQ専用の検索窓を設けたり、閲覧数が多い質問をランキング形式で提示したりできます。
FAQの見やすいデザインは、アコーディオン形式です。しかし注意すべき点は、アコーディオン形式とすぐわかるように各質問の頭に「▶」のようなマークを付けておくことです。
回答はわかりやすいように工夫しましょう。できるだけシンプルな回答がベストです。最大でも2文程度で回答できるようにしてください。説明の詳細については、リンクを載せて別ページへ誘導できます。FAQで長々と説明しないようにしましょう。
反対に、FAQの回答内容にリンクだけを載せるのはやめてください。少なくともFAQだけで何をすべきかがわかるようにしましょう。
【開発レポート】自治体のFAQ用にChatGPTを開発してみた - TPIJ by CBA |
ノンボイスチャネルを設ける
Webサイトにノンボイスチャネルを設けることができます。ノンボイスチャネルとは、チャットボット、有人チャット、メッセージング、LINE連携などのことです。
お客さま自身で到達できなかった情報に誘導してあげたり、その場で答えてあげたりできます。人間が答える有人チャット、メッセージング、LINE連携は、お客さま自身が分かっていない不明点を整理してあげるのに有効です。
カスタマーサービスのノンボイス化はチャットから始めよう - TPIJ by CBA |
▶参考:LINE連携できるコンタクトセンターシステム「Bright Pattern/ブライトパターン」
ビジュアルIVR(VIVR)を活用する
ビジュアルIVRとは、IVRを見える化したものです。企業サイトの中にビジュアルIVRのボタンを設置すれば、お客さまは電話を使わずにお問い合わせメニューを確認できます。
希望するメニューを選択した後は、FAQやチャットボットへ誘導され、自分で問題を解決していけます。
VIVR|ビジュアルIVRとは?コールセンターへ導入する3つのメリット【事例付き】 - TPIJ by CBA |
コミュニティを設ける
お客さま同士で問題を解決できるコミュニティを設けるのも、自己解決率を向上させるひとつの施策です。コミュニティのメリットは、カスタマーサポートの人的リソースを割かずにお客さまの問題を解決できることです。またコミュニティを設けることで問題解決だけでなく、お客さま同士の情報交換を促す、プロダクトへのファンを作りだす効果があります。
顧客コミュニティでカスタマーサポートの人手不足を解消しよう - TPIJ by CBA |
まず自己解決率の向上に必要なのはWebの動線分析
自己解決率を向上させるために何から始めたらよいでしょうか。まずお客さまのWebサイトにおける動線を分析してください。
Webの動線分析をすることで、自己解決率が低下する原因の「FAQの使いづらさ」「Webサイトの情報不足」を改善していけます。
たとえば、お客さまの動線を分析していくと、「FAQのどの項目を見た後に電話で問い合わせてきたか」が見えてきます。該当するFAQの項目は、説明が不十分であることが判明します。
特定の商品ページを見た後に問い合わせが多いのであれば、やはり該当するページの作りがお客さまにとってわかりにくいことが分析できます。
まずWebの動線分析をすることで、やみくもにサイトを改善していくのではなく、必要な箇所だけピンポイントで修正していけます。
動線分析をスピーディに行う方法
お客さまのWebにおける動線分析をするのは時間のかかる作業です。しかしWeb動線解析ツールを使えばスピーディに分析することが可能です。
ツールによって動線の見える化を簡単に実現できます。時間と労力が奪われないので、継続して動線分析を行い、安定して自己解決率を向上させていけます。
Web動線解析ツールを選ぶ際には、以下の機能があると便利ですので覚えておきましょう。
- アクションログ―サイトの顧客動線(閲覧履歴やクリックなどの動き)をデータとして蓄積。オペレータ画面やレポートで見える化してくれる。
- 画面録画―サイト閲覧から問い合わせ時のコブラウジングまで、すべてを画面録画でチェック可能。
- サマリー画面―お客さまとつながったときに、それまでのサイト内の行動や関心事を「ぱっと見」で表示。
- コンタクトリーズン―オペレータが応対時にコンタクトリーズンを登録し、顧客動線と紐づけて分析可能。
▶参考情報:ウェブ解析&ビデオコミュニケーションツール「Optipass」
着信前のCXをオペレーターに可視化させる
どんなにFAQや商品ページを改善しても、お客さまが最終的にWebで問題を解決できないケースは出てきます。お客さまがやむなく電話で問い合わせてきた際には、可能な限りスムーズな対応ができるようにしましょう。エフォートレス体験をできるだけ崩さないようにしたいと思います。
エフォートレス体験を電話対応で実現させるコツは「着信前のCXをオペレーターに可視化させる」ことです。つまり「お客さまがWeb上でどのような検索をしてきたのか」という動線を、対応するオペレーターが見えるようにすることです。
お客さまからの入呼があった際、オペレーターの画面に、「お客さまの企業サイト内の閲覧履歴」「どのキーワードで検索したか」「閲覧時間」などが提示されるようにするとよいでしょう。
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最後に
自己解決率を向上していくなら、快適に企業のプロダクトを利用できるエフォートレス体験を提供できます。しかし自己解決率の向上は簡単ではありません。
まずはWebの動線分析を行い、FAQを改善したりWebサイトの情報を充実させたりしていきましょう。さらにノンボイスチャネルを設けたり、ビジュアルIVRを活用したりすることもできます。
自己解決率を向上させていくことで、カスタマーサポートにおいてもエフォートレス体験を実現していきましょう。