お客さまの問合せ手段が多様化するなかで、コールセンターのオムニチャネル化が注目されています。しかし「うちのコールセンターはいろいろな問合せ方法に対応している」「すでにオムニチャネル化している」と考えるかもしれません。
じつはオムニチャネルとともに、マルチチャネルという仕組みがあります。今回はまず2つのチャネルの違いについて考えます。
その後、オムニチャネル化を実現する方法を3つ取り上げます。オムニチャネルで陥りやすい失敗例も紹介します。
最後には、オムニチャネルに必要なコンタクトセンターシステムの機能6選を載せているのでご覧ください。
オムニチャネル化を促進し、持続性のあるコールセンターを実現していきましょう。
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オムニチャネルとマルチチャネルの違いとは?
コールセンターにおける「マルチチャネル」と「オムニチャネル」の違いについて説明します。
マルチチャネルとは、お客さまが問合せられるチャネルが複数ある状態のことです。「どの方法でも問合せできますよ」という状態です。
オムニチャネルとは、複数のチャネルを切り替えながら問合せしてもスムーズに問題解決ができるコールセンターのことです。
近年、お客さまが問合せに利用するチャネルは以下の6つです。
- 電話
- メール
- WEBサイト
- チャットボット
- SNS
- SMS
上記のチャネルからの問い合わせに対応しているコールセンターがマルチチャネルです。さらに一歩進化して、チャネルを切り替えながらでも同じ問い合わせに対応できるのがオムニチャネル化したコールセンターとなります。
オムニチャネルで実現するサービス
コールセンターがオムニチャネル化することで、どのようなサービスを提供できるのでしょうか。
たとえばお客さまが電車のなかでスマートフォンを使って調べ物をします。車内では電話ができないのでLINEでメーカーへ問合せます。オペレーターは問合せにLINEチャットで返答します。
お客さまは電車を降りたあと、LINEから電話へ切り替え、同じメーカーからさらに詳しい説明を聞こうとします。電話で問い合わせ、最初とは違うオペレーターが対応します。
しかしもう一度最初から説明する必要はありません。オペレーターはLINEの履歴を見てそのまま同じ問合せについて説明してくれます。
LINEと電話の2つのチャネルをシームレスに使って問い合わせし、問題解決できるのがオムニチャネルです。
一方、コールセンターがマルチチャネルの状態では、電車を降りてLINEから電話へ切り替えた際、対応した別のオペレーターへ最初から説明しなければなりません。
コールセンターをオムニチャネル化させる3つの方法
コールセンターをオムニチャネル化させるには3つの方法があります。
- 各チャネルの履歴を確認できるようにする
- 利用率の高いチャネルの連携
- 新しいチャネルを追加する
それぞれの方法について解説します。
方法1. 各チャネルの履歴を確認できるようにする
お客さまが各チャネルを利用した際の履歴をすべて確認できるようにしてください。一つの画面でお客さまが電話で問い合わせた履歴、メールで問い合わせた履歴、チャットボットに入力した履歴などをチェックできるようにしましょう。
一画面でお客さまの問合せ履歴がみられるということは、個別のカスタマージャーニーを見れているということです。単に問合せに答えるだけではなく、お客さまのニーズに合った提案をできるようになるのです。
方法2. 利用率の高いチャネルの連携
「オムニチャネル化のため、すべてのチャネルを連携しなければ!」とは考えないでください。まず利用率の高いチャネルを連携させることに取り組みましょう。
問合せの際に利用されることが多いチャネルが、電話とWEBサイトであれば、最初に上位2つのチャネルを連携させてください。電話とWEBの問い合わせフォーム、もしくはメールの問合せと連携を行います。それぞれの履歴が同じ画面で見られるようにしましょう。
米国における最近のトレンドは、webとビデオチャットの連携です。webサイトで調べ物をしているお客さまが、サイト内の問い合わせボタン通すとオペレーターとビデオチャットができるサービスです。
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方法3. 新しいチャネルを追加する
利用率の高いチャネル連携が軌道に乗ったあと、新たなチャネルを適宜追加してください。LINEやビデオチャットを追加していけるかもしれません。
新しいチャネルを追加するときに、マルチチャネルで終わらないようにしましょう。
チャネル間で情報が共有されないマルチチャネルでは、お客さまはチャネルが切り替わるごとに何回も同じ説明をしなければいけません。結果として問い合わせる意欲を失います。
米国のコールセンターでは、以下のチャネルが人気です。
ボット -IBM ワトソン・ Alterra
メッセンジャーアプリ -Facebook Messenger・WhatsApp・WeChat・ Telegram・LINE・Viber
オムニチャネル化の失敗例
コールセンターのオムニチャネル化で失敗しやすいケースをひとつ紹介します。WEBサイトのFAQと、チャットボットの連携が失敗するパターンです。
コールセンタージャパンが行った2021年5月の調査では、チャットボットやLINEボットへ問い合わせる前のユーザーの行動には以下のパターンがありました。
- その企業のホームページにある「よくある質問」を検索した(52%)
- その企業のホームページをかなり詳しく調べた(17%)
問い合わせをしてくるユーザーの70%弱が、すでに企業のホームページをある程度調べているのです。つまりホームページのFAQを見て解決できなかったお客さまがチャットボットを利用しています。
しかしチャットボットの主な役割はFAQのガイドです。チャットボットはFAQの中の情報をお客さまへ提示する働きをします。
FAQを見て回答を見つけられなかったお客さまが、チャットボットを利用しても問題は解決しません。むしろお客さまを不快にする悪循環が生まれます。
FAQを見て解決せず、チャットボットを利用、チャットボットからFAQの情報を再び提示される、依然として問題は解決しないというケースです。これではCS向上は見込めません。
チャットボットのオムニチャネル化を成功させるコツ
FAQとチャットボットのオムニチャネル化を成功させるには、2つのコツがあります。
ひとつは有人チャットと組み合わせる方法です。たとえばチャットボットで問題を明確化しておき、すぐに有人チャットへ引き継ぐ流れです。
ふたつ目の方法は、メールでの問い合わせへ誘導する方法です。定型文が書かれているメールへ誘導することで、チャットボットから離脱しそうなお客さまをフォローしていけます。
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コールセンターのオムニチャネル化を「いま」すべき理由
コールセンターをオムニチャネル化するには、チャネル間の導線を整備する作業が欠かせません。
「そこまで手間かけてオムニチャネル化する必要はあるのか」「オムニチャネルに対応するのはまだ先でもよいのでは?」と思いたくなるものです。しかし「いま」オムニチャネル化に取り組むべき理由が6つあります。
- スマートフォン利用のニーズに答える
- 顧客とのタッチポイントを増やす
- マーケティングの強化
- 顧客対応時間の短縮
- 顧客情報の更新
- CSへつなげるクレーム対応
それぞれの理由について解説していきます。
スマートフォン利用のニーズに答える
スマートフォンの普及が進み、電話によるコールセンターへの問合せが減っています。LINEなどテキストチャットでの問合せが増えているのが現状です。
総務省発行の令和元年度版「通信量からみた我が国の音声通信利用状況」では、音声通信時間と音声通信回数が年々減少しています。
音声通信は明らかなダウントレンドです。電話による問合せから、メールやSNS、そしてチャットボットといったテキストベースの問合せへと移行が進んでいます。
しかしオペレーターから音声ベースで説明を受けたいというニーズも一定数存在します。
だからこそ音声とテキストのどちらでもシームレスに対応できるオムニチャネル化がこれからのコールセンターに必須なのです。
顧客とのタッチポイントを増やす
お客さまが問合せられるチャネル数が増えるほどタッチポイントを増やしていけます。同時に、顧客とのエンゲージメントも高めていけます。新たな商品やサービスを販売する商機も増やせるでしょう。
マーケティングの強化
オムニチャネルにすることで、コールセンターに寄せられた問合せ内容、クレームの情報が一箇所に蓄積されていきます。保管された大量の音声とテキスト情報をAIによってテキストマイニングし、マーケティングに活かすことが可能です。
お客さまの声をプロダクトの改善や、新しいプロダクトの開発へと活用していけるのです。
顧客対応時間の短縮
コールセンターがオムニチャネルに対応すると、オペレーターは一画面でさまざまなチャネル情報を処理できます。LINEから始まった会話が電話へ移行しても、すべての履歴を確認しながら対応していけます。
また、手が空いたオペレーターは保留になっていたメール対応をすることも可能です。結果としてコールセンターの稼働率、生産性がアップします。効率化により1件あたりの処理時間も短縮できます。
米国トランスコスモス社はコールセンターをオムニチャネルにすることで、お客さま一人あたりのメール処理時間を12時間以下へ短縮しました。
顧客情報の更新
コールセンターをオムニチャネル化すると顧客管理データベース(CRM)とも連携できます。問い合わせ内容や結果も含め、すべてのコールセンターでの情報をリアルタイムでsalesforceやkintoneと共有できるのです。
コールセンターと営業部門が最新の顧客情報を共有し、お客さまへの的確なフォローが行えます。
CSへつなげるクレーム対応
コールセンターの大きな役割の一つがクレーム対応です。
オムニチャネル化されていないコールセンターでは、オペレーターが変わるごとに再度説明を求められクレームが悪化するケースがよくあります。担当者間の引き継ぎがうまくいっておらず新たなクレームを生み出すケースも見られます。
オムニチャネルになっているコールセンターでは、すべての対応履歴を誰もが確認できます。そのためクレームを受けても、履歴を確認してから、的を得た質問や解決策の提案をしていけます。クレーム処理が優れているとCSがアップします。
オムニチャネル化によるコールセンター管理者へのメリット
オムニチャネルに対応することはお客さまだけでなく、コールセンターの管理者にもメリットがあります。
- 経費削減
- 在宅オペレーターの積極採用
- オペレーターの研修を簡素化
- オペレーターのストレス軽減
- SV・管理者の業務簡素化
5つのメリットについて説明します。
経費削減
コールセンターをオムニチャネル化することにより、お客さまはチャットボットや有人チャットだけで問題を解決できるようになります。自己解決率が上がるとコールセンターの席数を減らし、人件費を削減していけます。
米国の大手金融機関ウェルズ・ファーゴ社はオムニチャネルを強化した結果、従業員の最大10%を削減できると発表しました。
AIG社も同様の取り組みを数年前から進めており、10億ドルの経費を削減したと発表しています。
在宅オペレーターの積極採用
コールセンターがオムニチャネル化して、有人チャット業務、メール返信業務が軌道に乗ってくると、テキスト対応に特化した在宅オペレーターを増やしていけます。
BPOであれば、オペレーターの一部を在宅にすることで空いた席に新たなオペレーターを採用し、別の業務を請け負うことも可能になります。
オペレーターの研修を簡素化
オムニチャネルはオペレーターフレンドリーです。一つの画面ですべての情報を管理できるため、オペレーターが使い方を覚える時間を短くできます。
米国トランスコスモス社はオムニチャネルにした結果、今まで3日間かかっていたオペレーター研修を3時間に短縮できました。
オペレーターのストレス軽減
チャネルごとに扱うシステムが別れているとオペレーターにストレスがかかります。応対中に別のシステムを立ち上げたり、複数のウインドウをいったり来たりしなければならないからです。
しかしオムニチャネルでは顧客情報、応対履歴、ナレッジベースすべてが一つの画面で確認できます。落ち着いて応対できるのでサービスの質が上がり、ミスも減らせます。
SV・管理者の業務簡素化
オムニチャネル化されたコールセンターではSVや管理者は全チャネルの様子をモニタリングできます。応対の全体像を瞬時に把握し、オペレーターが必要としているサポートをしていけます。
最新のコールセンターシステムにはAIが搭載されています。AIが通話内容の感情分析をして、問題があるときにはSVへアラートを出します。大きなクレームへ発展する前に適任の担当者へ引き継げます。
オムニチャネル化するコンタクトセンターシステムに必要な機能6選
コールセンターをオムニチャネル化させるには、コンタクトセンターシステムの選定が必要です。「どのシステムを選んだら失敗しないか知りたい」と思われるかもしれません。
オムニチャネルに最適なシステムには、次に説明する6つの機能が必須です。
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機能1. チャネルの追加が簡単
チャネルの追加が簡単にできる機能は必須です。なぜならコールセンターでは複数のプロダクトの問い合わせを受け持つことがあるからです。
たとえば同じ企業のコールセンターであっても、違ったサービスの問い合わせ対応を行うことがあります。すると一つのサービスではLINEチャネルでの対応が必要となり、他のサービスではビデオチャット対応が必要になるケースが出てくるのです。扱うサービスが増えれば、新たなチャネルの追加しなければなりません。
BPOもクライアントごとに業務内容が変わります。あるクライアントはアウトバウンドの音声だけを必要としますが、他のクライアントは複数のチャネルを要望します。この場合もチャネルの追加作業をしなければなりません。
プロダクトやクライアントごとに、チャネルの追加や削除が簡単にできる機能は現代のコールセンターに欠かせないのです。
機能2. 統一性のあるUI
すべてのチャネルを統一性があるUIで作業できる機能は生産性を維持するのに大切なポイントです。
扱うプロダクトやクライアントが異なる場合でも、同じUIであればオペレーターは混乱せずに作業ができます。一人のオペレーターが複数の業務を掛け持ちすることや、新たな業務へ移行することも容易になります。
機能3. 複数のCRMに対応
BPOの場合、クライアントごとに違ったCRMを使っているケースがあります。たとえばzendesk、Microsoft Dynamics 365、salesforce、kintoneなどです。さまざまなCRMとの連携が可能なコンタクトセンターシステムは汎用性が高く、オムニチャネルに最適です。
またCRMとの連携が柔軟に行える機能も使い勝手が良いので覚えておいてください。つまりCRMの中へコンタクトセンターシステムを埋め込むことも、コンタクトセンターシステムからCRMにアクセスすることもできる機能です。
具体的には、kintoneとコンタクトセンターシステムをAPI経由で連携させ、kintoneの中にコンタクトセンターシステムをウィジェットとして追加できるし、コンタクトセンターシステムからkintoneの顧客データへアクセスできるといったイメージです。
機能4. 充実したレポーティング
充実したレポーティングは、応対品質を向上させること、稼働率をアップさせることに貢献します。
アサインされたキュー、キャンペーン、チーム、オペレータに関する統計情報、アラート、アクションをリアルタイムでレポートしてくれる機能や、チャネルを横断したすべての問い合わせ履歴と、関連する統計情報の詳細データを表示してくれる機能が役立ちます。
ただ単に細かなデータを収集するのではなく、ダッシュボードやグラフで見やすく表示してくれる機能があると分析が簡単に行なえます。
機能5. セキュリティ
コンタクトセンターシステムはクラウドでの運用が大半です。そのため高いセキュリティ機能がなければなりません。
海外からの不正アクセスやハッキングが増えていることから、国際基準のセキュリティに対応しているコンタクトセンターシステムを選んでください。
とくに以下の4つの基準に遵守しているかどうか確認しましょう。
PCI-DSS(クレジットカード情報を保護する国際基準)
HIPAA(健康情報の保護を定義した米国連邦法)
GDPR(欧州の個人データ保護に関する規則)
TCPA(テレマーケティングに関する米国連邦法)
機能6. LINE連携機能
日本で利用者の多いLINEとネイティブ連携できる機能は汎用性が高いです。LINEでの相談受付や本人確認サービスを行えます。
LINE通知メッセージを利用できるコンタクトセンターシステムもおすすめです。
この機能があれば、お客さまは企業のアカウントを友だち追加することなく、簡単にコールセンターからの通知メッセージを受け取れます。
待ち呼や放棄呼の削減に役立つ機能です。チャット対応で完了するケースが増えるため、オペレーター不足の解消にもなります。
最後に
コールセンターをオムニチャネル化させるには、各チャネルの履歴を確認できるようにし、まずは利用率の高いチャネルから連携させてください。チャネル間の連携がスムーズになってきたあと、新しいチャネルを追加していけるでしょう。
オムニチャネル化が失敗しやすいのは、WEBサイトのFAQとチャットボットの連携がうまくいかないケースです。有人チャットへタイミングよく引き継ぐ仕組みを構築するようにしてください。
コールセンターのオムニチャネル化を成功させる鍵は、コンタクトセンターシステムの選定です。
「とりあえずいま使うチャネルだけに対応しているシステムを選べば大丈夫」と考えがちですが、次の点を忘れないでください。
お客さまが使用するチャネルは変化していきます。扱うプロダクトやクライアントが求めるチャネルが突然増えることもあります。
チャネルの変更が柔軟にできるコンタクトセンターシステムを選ぶようにしましょう。
ひとつの問合せに関わる全ての人が時間と場所に関係なく、スムーズに使えるオムニチャネルを実現させてください。
おすすめのコンタクトセンターシステム「ブライトパターン」
ブライトパターンは、ガートナー社をはじめ国際的に高く評価されているコンタクトセンターシステムです。
国内でも株式会社ベルシステム24、株式会社アイティ・コミュニケーションズ、ロート製薬株式会社へ導入されており実績が豊富です。
ブライトパターンは以下のニーズに答えます。
- 1画面で音声、モバイル、チャット、Eメール、ビデオ、SNSに対応したい
- LINE、Facebookメッセンジャーと連携させたい
- IVRと通話フローのルーティングを組み合わせたい
- 双方向のSMS送受信をしたい
- 簡単にWEBチャット機能を追加したい
- コール対応とメール対応を同じ画面で行いたい
- kintoneやsalesforceと連携させたい
オムニチャネル化したいというニーズにしっかり答えてくれるのがブライトパターンです。世界のコールセンターで使われており、使いやすさを徹底的に追求したコールセンターシステムです。