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キャッチせよ!中国コールセンターの“今”

何事もグローバル化がうたわれる近年。欧米のコールセンター事情に明るい方は多くおられることと思います。しかし、中国のコールセンター事情はいかがですか? 

どの分野においても無視はできない中国の存在。コールセンター市場も例外ではありません。とはいえ、意外と目にしない「中国のコールセンター事情」。 

今回は、中国のコールセンター市場の“今”を、中国の最新情報に基づいてお届けいたします。中国で使用されているビデオコミュニケーションの実態や、大手企業のコールセンターが使用しているソフトウェア情報、最も有望なコールセンター市場の情報もありますので、最後までお見逃しなく!それでは…开始吧! 

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

中国コールセンターの“今” 

「中国3000年の歴史」とはよく言いますが(今は5000年の歴史と言うようですが…)実はコールセンター産業の歴史はあまり長くありません。つい「日本よりも進歩していそう…」とか、「独特の発展をしていそう」といったイメージを持ちがちですが、実はそうではありません。 

日本では、1980年代に初のコールセンターが始動しました。対して中国では、1990年代半ば〜後半にかけて、コールセンターが導入され始めました。コールセンターの観点からは、日本よりも歴史が浅いということですね。 

中国人による市場分析でも、コールセンター市場における中国は発展初期であり、今後の発展の余地は多々あると指摘されています。しかし、中国のコールセンター市場は、今後5年ほどで急速な発展をすると予想されます。 

2019年の新型コロナウイルス蔓延を機に、中国のコールセンター数は一度減少しました。 

参照:https://m.chinabaogao.com/baogao/tongxin/561801561801.html

とはいえ、中国が勢いを弱めているわけではありません。 

皆様もご存じの通り、この2年ほどで、AIを中心としたカスタマーサービスのデジタル化は加速し、その需要は高まる一方です。

中国でも、AIを軸とした市場規模が、2020年で30.1億元(前年比88.1%)になるほど爆発的な成長を見せています。市場でAIが浸透し始めている中、2025年の同市場規模は102.5億元を超えると予測されています。 

もとより中国が得意とする「ビッグデータ」「AI」「5G技術」の応用により、コールセンター業務も大幅な拡大を見せています。中国のコールセンター市場は、既に新時代に突入していると言っても過言ではありません。 

職不足の課題はコールセンターが解決

また、中国国内で問題になっている職不足の観点からも、コールセンターは注目を集めています。経済成長が鈍化している現在の中国は、日本に見られる人材不足とは反対に、職が不足し、人材があふれている現状です。 

BPOとしてのコールセンター業界は、就職難の学生たちに多くの雇用機会を提供できると分野と見なされているのです。そのため、コールセンタ業界は政策で奨励されており、長い目で見ても盛んな業界であると言えます。 

しかし、抱える課題は私たちと同じです。顧客サービスのさらなる向上、既存顧客の維持、新規顧客の獲得、顧客満足度とロイヤルティの継続的な向上、事業回転率と市場シェアの拡大…。私たちとしても耳たこのような課題ばかりですね。 

同じ課題に対して、中国ではどのようなアプローチがされているでしょうか。一例をご紹介します。 

中国におけるビデオコミュニケーションの実態

出典: https://www.sohu.com/a/546501621_360086

実際に中国で使用されているビデオコミュニケーション(またはビデオコールセンター)をご紹介します。 

平安保険という総合金融グループ内に、自動車保険の部門があります。同部門のコールセンターでは、ビデオコミュニケーションが採用されており、迅速かつ効率的なサービス提供に貢献しています。 

出典: https://www.sohu.com/a/546501621_360086

事例1 
Aさんが自動車での接触事故を起こした際、ビデオコミュニケーションを通じて、わずか3分40秒で損害調査と請求処理を完了させました。 

事例2
Bさんが自損事故を起こした際、コールセンターへ電話をかけてから、オペレーターがフルリモートで調査を完了するまで、4分32秒しかかかりませんでした。 

いずれも、従来であれば調査員が事故の状況写真を撮影したり、当事者が撮影をして保険会社にアップしたり…と、かなりの時間と手間を要する作業です。 

しかし、5G通話とビデオコミュニケーションの活用により、たった1回の通話で損害確認から請求までを完了できるのです。 

事故が発生すると、お客さまが5Gに対応しているかをシステムが自動で識別し、怪我や物損の有無も自動で判断。お客さまの同意を得た上で、ビデオコールの発信がされます。お客さまは、オペレーターの指示に従って、損傷部分をカメラに写していくだけです。その間、オペレーターがリモートで必要な証拠を収集、システムが情報を自動認識していきます。 

電話をかけてから調査完了までの一連の所要時間は、なんと5分です。また、ビデオコミュニケーションを利用するために、専用のアプリをダウンロードする必要はなく、VoLTE通話を使用すれば良いというシンプルさも魅力です。 

事故直後、ただでさえ心身共にストレスがかかる状況の中、事故の調査や請求が短く簡単であると、高い顧客満足度が自然に獲得できるでしょう。 

しかし、シンプルで迅速な対応は、お客さまだけが得をする話ではありません。現在の日本では、若者の車離れ、高齢ドライバーの事故増加に伴い、保険会社の損害率が上昇傾向にあります。 

自動車保険の度重なる値上がりを伝えるニュースをよく耳にしますね。保険会社としても、早急にコスト削減・効率化を図る必要があります。 

既出の平安保険のカスタマーサービスゼネラルマネージャーは、自社のビデオコミュニケーションシステムが「従来の3.2倍の効率、55%のコスト削減に繋がっている」とコメントしています。 

ビデオコミュニケーションにより、まさにWin-Winなサポート環境が実現できます。 

中国のコールセンターが使用しているソフトウェア一覧

中国のコールセンター市場として、どのようなソフトウェアが使われているのかを見てみましょう。 

全体のトレンドを知っていると、日本企業のソリューションを中国進出させるか考える際に、役立つこと間違いなしです! 

Ping An Insurance(平安保险)  

使用ソフトウェア:Genesys Multicloud CX  

Lenovo(联想) 

使用ソフトウェア:Genesys Multicloud CX  

Genesys Multicloud CX は、オムニチャネルシステムで、シームレスなカスタマーエクスペリエンスを提供します。 

Tongcheng Travel(同程艺龙) 

使用ソフトフェア:Genesys PureEngage 

Tongcheng Travelは、2014年まではAvayaを使用していたようですが、方針の変更に伴い、Genesys PureEngageを導入したようです。しかし、これが功を奏し、NPS値は2018年の51%から、2019年の第1四半期で62%へと増加しました。また、アクティブユーザーも2億人を超えるという結果を出しています。 

※現在 Genesys PureEngageは、Genesys Multicloud CXと改称しています。 

補足:中国のコールセンターで注目されているコンタクトセンターシステム 

Wofeng Thechnology(沃丰科技) 

HuaweiとUdeskの協力によって2014年に作られた中国製ソフトウェア。会社の公式ウェブサイト、WeChat、SNSの公式アカウント、Douyin、Weiboといった様々なチャネルに同時接続できます。また、同じプラットフォーム上で、様々な形式の情報を統合することも可能です。 

※ UdeskとHUAWEIクラウドの協力により、Udesk製品がより安定するようになりました。現在、Udeskの各種ソリューションは、HUAWEIクラウドと緊密に統合されています。 

Bright Pattern

弊社が取り扱っているBright Pattern(ブライトパターン)。ブライトパターンはガートナー社が提供するカスタマーレビュー調査、Software Advice,GetApp, Capterraすべてにおいて「業界リーダー」としてランク付け。 CCaaS部門は4年連続の受賞歴。中国のユーザー対応ができることを見越し、WeChatとのSNS連携AIの活用が簡単にできます。

LiveAssist

コンタクトセンターシステムではありませんが、LiveAssistはコールセンターに簡単にビデオコミュニケーション機能を取り込めるツールです。ビデオ通話、ブラウザ画面共有、リアルタイムチャット、チャットボットといった魅力的な機能が搭載されています。Microsoft Dynamics 365上で動作するのが特徴です。オンプレで導入できるバージョンも用意しています。

中国のオペレーターはAIなの!?

中国では、音声AIをオペレーターとして導入する動きが見られます。顧客満足度の向上を狙った策でもあり、オペレーターの早期離職への打開策でもあるようです。

高度なAI学習技術により、人間のオペレーターとの区別が付かないほど、自然な会話を実現できるという特徴をがあります。音声AIがお客さまをフルサポートするときもあれば、人間のオペレーターの裏でAIがオペレーターをサポートするケースも見られます。

いずれも、音声AIが高度に訓練されていれば、コールセンターの稼働時間が制限されることはなく、人間のオペレーターは、より高度なお客さまサポートに回ることが可能です。まさに人間とAIの協働が実現できます。

音声AIの導入により、繁忙期やピーク時間帯でも安定稼働できたり、新型コロナウイルスの影響でオペレーターが出勤できない場合でも稼働できたり…といった功績をあげています。

日本企業は中国コールセンターへどう貢献するか

グローバルにトレンドをキャッチしようと思っても、思わず欧米に目を向けてしまう傾向がありませんか?しかし、すぐ近くの国にも、まさに新時代の幕開けを果たしたばかりの巨大市場があります。

これを見逃してはもったいない。コールセンター業界にあっては、私たち日本企業は先輩とも言えます。また、“おもてなし”で有名な日本だからこそ完成されているソリューションやサービスもあることでしょう。

今はまさに、中国から学ぶこともできれば、私たちが中国市場に参入していくこともできるタイミングです。逆に、今を逃すと、中国市場は手の届かない憧れの市場になってしまうかもしれません。「逃した魚は大きかった…」とならないようにしたいですね。

では、中国コールセンター産業の中で、今ホットな市場はどこでしょうか。この情報を最後にお伝えします。

ズバリ…行政です!

国や地域の中心オブ中心な行政なんて、もうとっくのとうに仕上がっているのでは?と思われますよね。しかし、日本とは比較にならないほどのマクロ環境を背景に持つ中国です。顧客需要は急増する一方で、国策への注力と支援により、行政サービスの能力強化は必然です。コールセンター市場を分析している中国系記事では、「最も有望な新興市場」とすら評されています。

この機を逃すことなく、共栄共存していくコールセンター市場を実現したいものです。

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