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コールセンターのAI人材はSVがベスト!?|人材育成の2ステップとは

コールセンターに生成AIを導入し、対応率や顧客満足度、従業員満足度の点で効果を発揮していると語るセンターが次第に増えてきました。

一方で、「まだ生成AIの導入に踏み切れていない」「生成AIをすぐに活用していけるような人材はいないし、新規採用も難しそう」と悩むセンターも少なくないのではないでしょうか。

この記事では、「コールセンターにおけるAI人材」に注目し、誰がなぜAI人材として適しているのか、どのようにAI人材を育成できるのかを紹介します。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、18年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

この記事が解決するお悩み

IT人材が少ないので、AI導入に踏み切れていない

AIを導入したけど、今ひとつ活用できている気がしない

コールセンターで、「AI人材」をどのように育成したら良いのか分からない

 

 

コールセンターのAI人材として最適なのは誰?

コールセンターには、オペレーター、SV、マネージャー、センター長など、さまざまな役割があります。では、「AI人材」として最適なのは誰でしょうか。「デジタルネイティブ」と言われるような世代のスタッフまたは勤務歴の長いスタッフでしょうか。

コールセンターの中で誰が「AI人材」として適しているのか、なぜそう言えるのかを説明していきます。

現場を熟知しているのはSV

ガートナージャパンのリサーチ&アドバイザリ部門データ&アナリティクス担当のシニアディレクターの一志 達也氏は、「コールセンタージャパン2024年8月号」で以下のように述べています。

「そもそも、ITだけでなく日本の企業は専門性を軽視して人材を採用・教育してきた歴史があります。それがAI分野でも露呈しているということ。(中略)AI専門組織のあり方を見きわめ、経営層や事業部門のリーダーを含めてAI戦略、AI専門組織を議論すべき」

しかし、現在は「AI戦略やAI専門組織を議論するためのAI人材が欲しい段階」です。専門人材の新規採用や0からの育成は一朝一夕にはいかず、短期間での実現は不可能に近いと言えます。

そこでキーマンとなるのが、コールセンターの現場について熟知しているSVたちです。

SVがAIに関する知識やリテラシー、ノウハウを身につけられると、コールセンターにとって、もっとも効率的かつ効果的にAI人材を育成することができます。

SVが直面しているキャリア問題

現状のSV職には「将来性がない」「キャリアが打ち止めになる」といったネガティブなイメージがつきがちです。しかし、SVにAIにまつわるリスキリングを任せるなら、SVのキャリア拡大に貢献し、SVがもつ経験やノウハウを最大限活かしながら、そのポテンシャルを経営資源化することができます

また、現在のSVが多くの時間や労力を費やしている業務(新人教育やシフト作成、顧客対応のモニタリングなど)の多くは、生成AIによって業務量と負担を軽減したり、代替したりできると言われています。

「SVがリスキリングするための時間創出」が可能となるのです。まずはAIを活用し、SVの業務負担軽減を実現してみましょう。

AIを使いながらSVのトレーニングをしていくことは、SVとコールセンターそれぞれにとってWin-Winであると言えます。

とはいえ、SVが例外なくAI人材としてのリスキリングや、キャリア拡大を望むわけではありません。そのため、各SVへリスキリングの意思確認をすることを欠かさないようにしましょう。

AI人材を育てるための2ステップ

日本のコールセンター業界、とりわけSVには「十分な教育がなされていない」という課題があります。

たとえば、米国や韓国にはコールセンターに関する専門学校や大学がありますが、現時点の日本において同様の教育施設は存在しません。

また、「コールセンター白書2023」のアンケートによれば、アンケート回答者の約1/3が、SVになるために「とくに研修やトレーニングを受ける機会はなかった」と回答しています。

そのため、SNSやインターネット上には「業務内容がわからないままSVになり、マネージャーからは怒られ、オペレーターからは頼れないSVとして扱われストレスがたまる」といった意見が散見されるのです。

「SVへのキャリアパスが曖昧」という課題は、AI人材育成に対しても同様です。「生成AIをコールセンターで活用できるようにしてください」「AI人材になってください」と言ったところで、多くのSVにとってAI人材へのキャリアパスは不透明です。

では、AI人材への道のりとして具体的にどのようなステップを踏めるでしょうか。ここからは、大きなステップ2つを紹介します。

ステップ1:AIに慣れてもらう

AIという言葉に慣れている人は少なくありません。しかし、生成AIを実際に利用して慣れているかというと、人によって大きく差が生じます。

総務省が発表している「2024年版情報通信白書」によれば、国内で生成AIを利用している個人は9.1%にとどまっています。

一方で、「ぜひ利用してみたい」「条件によっては利用を検討する」と回答している人の合計は7割に上り、潜在的な生成AIニーズが見受けられます。同調査によれば、AIを利用しない理由には「使い方が分からない」が最多で4割を超えています。

この結果は、センターのSVにもあてはまります。SVがAIに高い敷居を感じていたり、有用性を体感できていなかったりするなら、センター全体へのAI浸透と活用は難しいと言えます。

そのため、まずはAI人材となるSVがAIになじめるようサポートしましょう。

「コールセンタージャパン2024年8月号」で、LINEヤフーコミュニケーションズ AI運営部 部長の加藤敏之氏は、「AIを好きになってもらいたい」との思いからさまざまな施策に取り組んでいると述べます。

取り組みの例としては、解説とイラストでAIの基礎知識を学びながら学習できる「AIカルタ」や、生成AIを使用して「誰が1番お題に近いものを作れるか」というゲームが挙げられていました。

SVたちとよくコミュニケーションをとりながら、自社センターのSVにとって何がAIへの壁となっているのかを見極めましょう。マネージャーやセンター長だけがAIになじみ、センターでの活用ビジョンを描けていても、SVがなじめていなければセンター全体での活用は先の話になってしまいます。

ステップ2:AIプロデュース能力を育てる集中トレーニング

SVがAIになじんだなら、AIの本格活用に向けて次に何ができるでしょうか。

ELYZA CMO/三井住友カードHead of AI Innovationの野口竜司氏は同誌のなかで、「現場を仕切るSVに2週間ほど缶詰で合宿を行い、AIプロデュース能力がついたら、自律的に設計することはたやすいと思います」と語っています。

例として、「『8〜9割の精度の生成AIを現状の業務にどのように組み込むか、各自考えてください』などの教育は、本格活用のきっかけになると考えています」とも述べました。

精度が100%でないAIを、どの場面で誰を相手にどのように活用するのか…といったアイディアは、現場を熟知しているSVだからこそより現実的な視点で考えることができます。理想論だけで考えず、顧客体験と従業員体験の両方を視野に入れながら検討していけるのです。

続けて野口氏は、生成AIの普及に関して以下のようなステップがあると説明します。

  1. AIの基礎を学び、プロンプトを書けるようになり、企画ができるようになる
  2. 自分個人の業務で何に生成AIが効くのかを考える力を身につける
  3. チーム全体の業務内容と時間に対して、生成AIの効果を時間に換算・計算する力を身につける
  4. 知識やノウハウを自チームに持って帰り定着レベルを把握・報告する力を身につける

この4ステップは、SVがAI人材として育成・成長できているかどうかを判断する参考となります。もしどこかのステップでつまずいているときには、「なぜつまずいているのか、どのように解消したら良いのか」を検討していきます。

SVが4つの能力を身につけたなら、AIを運用できる人材を現場から創出、配置することが実現します。これこそがポイントであると野口氏は指摘するのです。

「通常の業務もある中で、SVのトレーニングに時間や費用をかけることは難しい。むしろ今はコールセンターに向いている生成AIを探したり導入したりすることにリソースを割くべきではないか」と思われるでしょうか。

生成AI活用のサクセスストーリーが出回り始めたり、有用性がさまざまな業界で認められたりしていると、まずは生成AIそのものにコストをかけたくなるかもしれません。とはいえ、生成AIを活用するのはあくまでもオペレーターやSVです。

生成AIの活用で成功を目指すなら、AI人材としての見込みが高く、もっとも現場で旗を振ることができるSVの教育を優先することが、いちばんの近道と言っても過言ではありません。

最後に

生成AIの活用は、AIの導入・利用では終わりません。現場を熟知し現場で活躍できるAI人材の育成こそがカギを握ります。

「生成AIを活用できるコールセンター」であるかどうかは、SVが新たなスキルを身につけることに対して、人材と資金を投下できるかどうかにかかっているのです。

AI人材としての即戦力になり得るSVたちをサポートすることで、「AIとSV」という二つの宝を十分に活用していきましょう。その宝を競合他社よりも輝かせ、お客さまにとってより魅力的な顧客接点、スタッフにとってより快適なコールセンターを創り上げていきたいものです。

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