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AI自動音声応答でオペレータの7割が救われる?|カスハラ時代を乗り切る新たな鍵

株式会社リンクの調べによると、電話対応の業務に携わる400人のうち、7割以上がカスタマーハラスメントを経験したと回答しています。「カスハラ」という言葉が一般化した一方で、企業による対策や、東京都が実施しているカスタマー・ハラスメント防止条例の認知度は、まだまだ十分ではありません。

本記事では、顧客満足度や顧客にとっての利便性向上をベースに据えつつ、カスハラの抑止にも効果を期待できるアプローチとして、「AI自動音声応答システム」に注目していきます。従来型のIVRとの違いや、AI自動音声応答システムを活用するメリット、先進事例についても紹介するので、コールセンター運営における新たな選択肢として、ぜひ最後までご覧ください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、19年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

【この記事が解決するお悩み】

 

企業の重要な顧客接点の一つ、むしろカスタマーサービス最後の砦として機能してきたコンタクトセンター。しかし今その足元が、静かに、そして確実に、崩れ始めています。それもそのはず、時代の変化や技術発展に伴い、数年前とは本質的に異なる課題や問題に直面しているからです。それでもやはり、技術の進歩は著しい。近年稀に見るレベルで急速に普及しているのが、AI技術です。数年前まで、とくに生成AIという文脈において、AIはテキストデータの扱いがメインストリームだという認識でした。でも今は状況が違います。AIを活用した音...
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AI自動音声応答システムとは

AI自動音声応答システムとは、コールセンターに寄せられる問い合わせに対し、AI技術を活用して自動で応答するシステムのことです。音声認識や自然言語処理を用いることで、問い合わせ内容を理解し、適切な回答や対応を行います。

AI自動音声応答システムは、製品や企業によってさまざまな名称で呼ばれています。中には「AI IVR」という名前を使うものもあるため、IVR(自動音声応答システム)と混同してしまうことがあるかもしれません。

従来型のIVRと言えば、あらかじめ担当部署やオペレータを電話の番号に割り振り、自動音声が一次対応をしながら、用件に応じてユーザーに番号を選んでもらう仕組みです。しかし、この方法では「自分の悩みがどの番号に該当するのかわからない」「窓口につながるまで時間がかかる」といった不便さが課題となってきました。また、あらかじめ電話のプッシュボタンを設定するため、複雑な質問や想定外の問い合わせには対応しきれず、柔軟性に欠けるという課題もあります。

一方、AI自動音声応答システムは、オペレータと直接話しているような自然な対話が特徴です。顧客が発した内容を音声認識ですぐに理解し、文脈を含めた判断と柔軟な回答が実現します。そのため、ユーザーが抱く複雑な課題や細かな要望にも、スムーズな対応を期待できるのです。

AI自動音声応答システムを選別・導入するときには、自然言語処理や音声認識によってAIが自動応答できるものであることを確認するようにしましょう。

「オペレーターの応対品質にばらつきがあり、顧客からのクレームが減らない…」「通話内容の確認(モニタリング)に膨大な時間がかかり、スーパーバイザーの業務を圧迫している…」「『顧客の声』をサービス改善に活かしたいが、全通話を聞き返すのは現実的に不可能だ…」コールセンター運営において、このような課題をお持ちではないでしょうか。実は、これらの悩みは「音声認識システム」を導入することで、解決できる可能性があります。近年、AI技術の進化などを背景に国内の音声認識市場は急速に拡大しています。調査会社のITRによる...
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現在すでにIVRを活用していて、うまく運用ができていると感じているセンターにとっては、「AI自動音声応答システムって本当に必要?従来のIVRからそんなに大きく効果がある?」と思われるかもしれません。ここからは、従来のIVRではなく、AI自動音声応答システムを利活用するべき3つのメリットを説明します。

自動応答の最適化ができる

AIによる自動音声応答は、過去の通話データから学習を繰り返すので、顧客応対の精度を継続的に高め続けることができます。AIによる自動音声応答が活用されればされるほど、スムーズで的確な対応や、複雑な問い合わせへの対応などができるようになるということです。

システムに搭載されているAIが感情分析機能を備えている場合は、顧客の感情や意図を理解し、パーソナライズされたより最適なサービスを提供できます。もしお客さまが不満を感じている場合は、共感しつつ適切な人間のオペレータへエスカレーションすることも可能です。

人間のオペレータに近い自然な対話が実現すると、自動音声応答システムにありがちな「無機質さ」や「冷たい印象」の軽減が見込めます。くわえて、利便性と柔軟性を損ねずにユーザーの自己解決を促進できるので、顧客満足度の向上に貢献していけます。

カスタマーハラスメントの抑止とコントロールが可能

お客さまが抱く「不満」は、クレームやカスタマーハラスメントのきっかけとなることがあります。AI自動音声応答システムを導入すれば、まずはAIが不満を受け止め、初期対応を行います。そのため、「不満を伝えたい」「原因を解決したい」というお客さまの場合、AIの一次対応だけで気持ちが落ち着き、問題が解消されることも珍しくありません。

お客さまが「クレームを伝えたい」と思って電話をかけてきた場合でも、AIが事前に内容を聞き取ることで、最初から適切なオペレータにつなぐことができます。これにより、お客さまをたらい回しにしてしまったり、専門外のオペレータが対応してしまったりするリスクを避けられます。

AIがすべての一次対応を行うことで、カスタマーハラスメントを事前に検知することも可能です。たとえば、各企業やセンターで定めている「カスハラに該当する単語やフレーズ」をAIに学習させておけば、AIが「NGワード」を検出した時点で通話を終了したり、最初からSVへエスカレーションしたりといった対応ができます。

このように、カスタマーハラスメントを抑止・コントロールできれば、オペレータの精神的な負担を軽減できるだけでなく、顧客対応によるストレスが原因の離職防止にも効果が期待できます。

業務効率の向上

AI自動音声応答システムを導入することで、人間のオペレータによる問い合わせ対応の件数を大幅に減らすことができます。その結果、人間ならではの判断や対応が必要な業務に集中できるため、全体の業務効率が大きく向上します。また、余裕が生まれることで、新人オペレータの研修やサポートにリソースを回しやすくなります。

さらに、この仕組みは繁忙期や閑散期といった変動にも柔軟に対応できるため、予想以上に問い合わせが増えた場合でもスムーズに対応可能です。

AI自動音声応答システムの活用による業務効率化は、オペレータの稼働率向上につながり、結果として顧客と従業員の双方の満足度を高める効果が期待できます。

AI自動音声応答搭載のコンタクトセンターシステム「Bright Pattern」

昨年、厚生労働省が「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成したことは、サービス業に従事される皆さまの記憶に新しいことでしょう。また、任天堂が「修理サービス規定/保証規格」に「カスタマーハラスメント」の項目を初めて盛り込んだことも話題になりました。これらを機に急激に浸透した「カスハラ」(カスタマーハラスメント)という言葉と危機感は、多くの企業が直面していたカスハラに立ち向かう転換点となりました。この記事では、コールセンターにおけるカスハラがどういうものかを分析し、どのようにオペレータ...
カスハラ対応でオペレーターを守る方法7つと改善策3つ - TPIJ by CBA

AI自動音声応答システムを活用する3つのメリットについて紹介しました。最後に、メリットが可視化されている先進事例として、SBI生命保険株式会社の活用例を紹介します。

SBI生命保険株式会社では、年末調整や確定申告前の時期に、生命保険料控除証明書の再発行に関する問い合わせが集中し、繁忙期へと突入します。繁忙期におけるオペレータの負荷増大や、人員の増員・研修にまつわる時間とコストの負担が課題となっていました。

AI自動音声応答システムを導入後は、受付から処理まで完全自動で処理できるようになり、再発行手続き対応における処理時間を年間300時間削減することに成功しています。くわえて、苦情や不満も発生しなくなり、大きな成果が見られています。

企業の重要な顧客接点の一つ、むしろカスタマーサービス最後の砦として機能してきたコンタクトセンター。しかし今その足元が、静かに、そして確実に、崩れ始めています。それもそのはず、時代の変化や技術発展に伴い、数年前とは本質的に異なる課題や問題に直面しているからです。それでもやはり、技術の進歩は著しい。近年稀に見るレベルで急速に普及しているのが、AI技術です。数年前まで、とくに生成AIという文脈において、AIはテキストデータの扱いがメインストリームだという認識でした。でも今は状況が違います。AIを活用した音...
音声AIエージェント時代のコンタクトセンター戦略を考える:5つの壁と7つの解決... - TPIJ by CBA

AI自動音声応答システムは、従来のIVRの弱点を補い、顧客にとっても企業にとっても利便性と満足度を高める仕組みです。自然な対話によるスムーズな応対は、顧客満足度を向上させるだけでなく、カスタマーハラスメントの抑止にもつながり、業務効率の大幅改善や、センターの運営全体へのプラス効果もあることを紹介しました。

コールセンターにおいて、AI自動音声応答はもはや「あると便利」ではなく「なくてはならない存在」になりつつあります。自社の課題に照らし合わせながら、導入を検討してみてはいかがでしょうか。SBI生命保険株式会社のように苦情や不満が発生しなくなれば、カスハラの防止にもつながり、引いては7割近くのオペレータを救う手段にもなるかもしれません。


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